山のサハラさん
2021/11/22

11月22日 月曜日

山を下りて2週間が経つ。

山小屋退職後の数日は、昼から酒が飲める身分を楽しんでいたが、新たな仕事が始まってそうもいられなくなった頃。

今は長野から岐阜に引越して、いくつかの仕事をしている。

ひとつは、大学のホッケー部員の寮食をつくる料理の仕事で、もうひとつは、高級車BMWの洗車の仕事。と、たまに造園の仕事もする予定です。

冬の間はぼちぼち仕事をしつつ、飯屋開業に向けて準備をしていく。春になったら滋賀に引越して、いよいよ飯屋ができたらいいなあ。

長かった山暮らしからの下界暮らし、そして新しい仕事と岐阜で出会った人達。

一日の全てを過ごした山小屋とあんなに密に接していた小屋番達だったのに、下りてしまえば既に薄れていくものを感じます。いや、薄れるというよりは、自分の中のポケットにしまったような感覚でしょうか。

いやいや、新宿行きのあずさ車内で勝手に涙がこぼれたことを思い出した。やっぱり、八ヶ岳を離れることが寂しかったんだ。

出戻りからの、2シーズン。まさかの想定外でしたが、山で働くことができて本当に良かったと思います。

楽しいことばかりではなく、悩んだり泣いたり怒ったり。しんどいことも沢山あったけれど、山小屋は善し悪しや弱さを持つどんな自分であっても、お互い様として受け入れらえるような場所だった。

山小屋の先代であるおやっさんに、最後に言われた一言は

「自分の意見ばかりではなく、おめえがまず相手に尽くしてやれよ」

そうそう、私事ですが去年八ヶ岳のご縁で知り合った人と結婚することになったのです。いやはや、八ヶ岳には足を向けて寝られない・・

そうこう山のサハラさん最後の日記をつけていたら、出勤時間が近づいているじゃないか。

それでは、新しい仕事に行ってきます。


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「山のサハラさん」は、日本仕事百貨のメールマガジンから生まれたコンテンツ。全国を旅するように働く佐原真理子さんが綴る日記です。この日記の続き「ゐ処ができるまで」は、日本仕事百貨のメールマガジンにて不定期連載中です。