取材の寄り道
東京・学芸大学編
学芸大学駅の近くで取材を終えたのは、よく晴れた日の夕方4時のこと。
そういえば1年前に取材をしたHIGUMA Doughnuts(ヒグマドーナツ)が近くにあったっけ、とお店をのぞいてみることに。
お店に伺うのは1年ぶり。カウンターでドーナツとソフトクリームを頬張りながら、汗をかきかきドーナツを揚げるスタッフに話を聞いたのをよく覚えている。
店前の看板をにらめっこしてメニューを選んでいると、スタッフが「こんにちは」と声をかけてくれた。「どれを選んでも間違いない。全部うまいっすよ」
悩みに悩んで決めたのは、ハニーマスカルポーネとホットカフェラテ。やっぱりここのドーナツは本当にうまい! そんなことを考えながら、いつ身を明かそうかと考えていると、うっかり手が滑ってカフェラテを床にこぼしてしまった。
「全然大丈夫っす」とサッと拭いてくれたのは、1年ぶりに会うスタッフ・増田さん(通称DK)。このタイミングで…と少しためらったものの、ええい、ままよ! 「日本仕事百貨の遠藤です」と声をかけてみる。
すると「あっ」とすぐに奥から一人のスタッフを連れてきてくれた。「こいつ、あの記事で入ったんです!」
彼の名前はショータくん。「すげえワクワクして応募したんです」と、記事を呼んだ当時のことを話してくれた。
釣りをしたい一心で鹿児島から札幌の大学に進学したこと、大学4年の春に記事を読んだこと。北海道が好きなヤツ募集、という言葉にドキドキしたこと…
気づけば日が暮れかけていた。名残惜しくも帰ろうとすると、ショータくんが「記事のお礼」と言ってドーナツを一つ渡してくれた。袋に入っていたのは、「店で一番うまい」と言っていたリモンチェッロ。
うれしいやらドキドキやら、いろんな感情がないまぜになった帰り道。ドーナツを口いっぱいに頬張りながら、なぜか涙が止まらなかった。
ショータくん、ドーナツありがとう。最高にうまかったっす!
(2018年4月に掲載したHIGUMA Doughnutsの、1年ぶりの寄り道です)