第1回 20代のトンネル〈後編〉

はじめまして。日本仕事百貨インターン生の野村愛です。

これから、わたしはどんなふうに働いて生きていきたいんだろう?
就職活動をする中で、そんなことを考えはじめました。

自分に素直に働いて生きるおとなを訪ねて、20代のヒントを得たい。
そんな思いから、コラム「20代のトンネル」を企画しました。

20代のときにどんなふうに自分自身と向き合い、仕事と向き合ってきたのか、その道のりを紹介していきます。

斉藤寛子さんは学生寮『チェルシーハウス』のキュレーター、そしてキャリアアドバイザーとして、誰もが納得感を持って生きていくために仕事をしている。

斉藤さんに大切にしていることを伺うと、こう答えてくれた。

「自分の経験も踏まえて、自分の納得感っていうものをすごく大事に生きている。人と向き合うときも納得感を大事にしているし、いろんな仕事をしているけれどその軸は全部一緒。」

納得感。自分はそんなふうにできているのだろうか。こんなはずじゃなかったのにと、納得できないことのほうが多いかもしれない。あるいは、自分が納得できるかどうかを差し置いて、周りから求められることに引っ張られてしまうこともあるかもしれない。

斉藤さんはどんなふうに自分と、周りと、向き合ってきたのか、聞いてみました。

第1回 20代のトンネル〈後編〉です。

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ーー 自分の仕事をつくっていくなかで、どういうところに葛藤を感じましたか?

斉 藤 仕事もそれなりに充実していたんだけれど...。いつも家族とのことで悩んでいた。特に母はわたしとは考え方が真逆で、これが正しい、こっちが正しくないっていうのがものすごくはっきりしている人で。母の価値観を押し付けられているような気がして嫌だった。わたしは自分が納得しないと前に進めなかったから...。独立するまでは、ずっと自分がやりたいことはできないと思ってた。自分の人生が親に支配されて、箱入りで、操り人形みたいに生きている感じがあって、ずっとモヤモヤし続けていた。

ーー 操り人形。

斉 藤 このままずっと、親のいいようにいつづけるんだろうかって。わたしは自分のやりたいことをやってみたくて。でも親が反対すると思うと自信がなくてできる気がしなかった。わたしも親が悲しむことをやりたいわけじゃないし。自分をとればいいのか、親が言う方向に素直に進んで良い子にしていればいいのか。どうしたらいいのか分からなかった。

ーー それでも独立に踏み出せたのはどうしてですか?

斉 藤 友人の紹介でコーチングを受けたときに、言われたひとことが大きな転機になった。『親は子どもの幸せを無条件に願っている。最初は反対されたとしても、自分の幸せな状態をちゃんと親に見せることができれば、きっと親は喜んでくれる』。
頭では分かっていたつもりだったけど、親が望まない道を選ぶことは親を裏切るんじゃないかなって思っていて。この言葉をもらったときにやっと、自分の思うように生きて良いんだって思えるようになった。

ーー わたしは親になったことがないので分からないですけど、つい反対してしまうのも口を出してしまうのも、きっと子どもに幸せにな
ってほしいからなんですよね。独立を決めたとき、自信みたいなものはありましたか?

斉 藤 独立してやっていく自信もそこまでなくて、どうなるかなんて全く見えてなかった。だけど、ずっと自分ができないと思っていたことが好転したから希望しかなくて。やっと自分の人生がはじまった感覚だった。
それまでは、会社ではいろんなことを学んで、どんどん自分が成長している感覚はあったけど、家族のことでどうしても心の奥底でずっと引っかかっているものがあって。このままある程度稼げるようになったとしても、自分にとって一番近い存在の家族とうまくやっていけないってなんだろうって。だから、吹っ切れたことはすごく大きかった。

ーー 親御さんの反応はどうでしたか?

斉 藤 最初はやっぱり反対された。フリーランスという働き方もなかなか理解してもらえなくて。でも、独立してからわたしがすごくいきいきした表情で働いているのをみて、きっと母も安心したんだと思う。少しずつ母との関係性も変化していって、わたし自身もあまり母の言うことを気にはしなくなったかな。もちろんぶつかることはまだあるけれど、前よりもずっと関係が良くなってきていると思う。

20dainotonnel_4(チェルシーハウスの寮生たちと)

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ーー 斉藤さんはチャンスを掴むために積極的に動いてきたように思います。そのように動き続けられたのはどうしてですか?

斉 藤 周りのおかげかな。家族のことで落ち込んだりしても、必ず友達が助けてくれたり、励ましてくれたり、話をじっくり聴いてくれたりした。わたしはいつもまわりの人に支えられて生きてきた。
そういうなかで、わたしは劣等感しかなくて。どうせ自分らしく生きることができない人生だし...みたいな。なにかやろうと思っても、親に邪魔されてできなくなってしまう。そういう未来しか描けなかったから、周りの友達が楽しそうにしているのがうらやましかった。なんでみんなはそんな楽しそうにできるんだろう、なんで自分だけ苦しまないといけないんだろうって、思う時期もあった。
だけど、そんな自分を支えてくれるひとたちがいたから、そのままじゃダメだなって挫けずに思い続けられたんだよね。自分の本当の思いを聴いてくれる友達がいて、その人たちにかすかな希望をもらいながら、動き続けることができた。

ーー 諦めるのではなく、思い続ける。

斉 藤 自信がでてきたのは独立して1年経ってからかな。30年間、ずっと自信なくて生きているから、むしろ自信ないひとたちの気持ちのほうがよく分かる。そんなわたしでも乗り越えられたから、諦めさえしなければ絶対に叶うって、どんなひとに対しても信じられる。本当にやりたいって強く思い続けていれば、周りに応援してくれるひとや助けてくれるひとが集まってくるから。

ーー 自分の思いがエネルギーとなって周りに伝わっていくというか。

斉 藤 うん。わたしは「できない、できない」って何度も周りのひとに言っていたんだけど、そのたびに周りが「いやいや、できるよ」って言い続けてくれた。それに乗っかってここまできて、自分じゃできないと思っていたことができている実感が持てるようになって。自分が頑張りさえすれば、なんとかなるかもって、そういう自信が持てるようになった。

ーー 最後に「20代のトンネル」期の自分にメッセージをお願いします。

斉 藤 本気でやりたいことを諦めなければ未来は明るい。いまどれだけ落ち込んでいて、自分に自信が持てなくても、自分がどうなりたいかとか、本気で思っていることはなんなのか。そこが分かれば、絶対に近づける。やりたいことをとことんやっていけば、そのうちに絶対にやれる方向に近づいていくから。どんなに紆余曲折あったとしても、失敗したら失敗した分だけそれが糧になる。いまやっていることがどうつながるのか具体的に見えてこないかもしれないけれど、必ずつながってくるから。焦らずに進んでいっていい。いまのわたしが言えるのはそれぐらいかな。

20dainotonnel_6(チェルシーハウスの寮生たちと集合写真)

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斉藤さんが携わっている学生寮チェルシーハウスでは来春入寮説明会を開催しています。各分野の最前線で活躍する社会人メンターとの交流、いろんな生き方や社会を学べるイベント、広々としたリビングやフリースペースなど施設もとても充実しています。本気で大学生活を充実させたい学生におすすめです。

・HP:来春向けのティザーサイト
 http://chelseahouse.org/

・入寮説明会:2月21日(土)
 http://chelseahouse.org/event/briefing-moveinto/