求人 NEW

村全体がひとつのホテル
大切な風景や暮らしを守る
新たな宿泊業のかたち

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計画やビジョンづくりにとどまらず、具体的な商品の開発、販路としての道の駅やアンテナショップの運営支援、さらにはメディアでの情報発信まで。

株式会社さとゆめは、地域の人たちと一緒にゴールを目指して走り続ける“伴走型コンサルティング”をモットーに、最初から最後まで一貫したまちづくりを全国各地で手がけています。

中でも最も関わりの深い地域のひとつが、山梨県小菅(こすげ)村です。

来年の5月、ここで新たなかたちの宿泊事業がはじまります。

それは村全体をひとつのホテルに見立てた、地域分散型の古民家ホテル。

その中心となる運営マネージャーとシェフを募集します。



新宿駅から特急列車に乗って、山梨の大月駅へ。ここから車に乗り換え、谷間の道を進んでいく。

すぐ目前には山々が広がり、そのエネルギーをダイレクトに感じ取れる。多摩川源流にある小菅ならではの風景。

小菅村は人口740人ほどの小さな村。

豊かな自然・食を目当てに、年間約20万人もの観光客が訪れるほど人気の地域。

けれども人口は年々減り続け、30年後には約半数にまで減少するというシミュレーション結果が出ている。

何とかして村を活性化できないだろうか。そんな小菅村の声に応え、株式会社さとゆめは2014年から村づくりに携わってきた。

小菅村でお会いしたのは、さとゆめ代表の嶋田さん。

「今年の5月からは『こすげ村人ポイントカード』をはじめました。村をオープンにして、村外から村を応援してくれる人も村人になってもらおうと」

観光で村を訪れる人を1/3村人、村に愛着を持って村づくりに関わる人を1/2村人、そして村に定住する人を1/1村人と位置づけ、1/2村人や1/1村人になると村での買い物や施設利用で優遇が得られる仕組み。

1/3村民から1/1村人へとステップアップしてもらい、ゆくゆくは本当の村人になってもらおうというのが狙いだという。

こうした取り組みによって、観光客数は5年前と比べて2倍に。移住者も増えはじめ、人口は2015年から毎年増加し続けている。

「けれども課題がまだまだあるんですよ」

そのひとつが、宿の問題。

小菅村は昔から夏のスポーツ合宿や体験合宿の受け入れが盛んで、村にある宿の多くは団体客仕様になっているそう。

ところが現在、小菅村にやってくる観光客の7割は40代以上の夫婦や家族連れ。その人たちに合うような宿が村に少ない。

「観光客がいくら増えても、宿泊しなければ村にまとまったお金は落ちません。村内の宿の方々に個人客に対応していただくのも一つだけど、ほとんどの宿のオーナーさんはご高齢なので、これから設備投資をしたり、力を入れてやるのは難しいだろうと」

加えて、村内には多くの空き家が存在する。その中には築100年を超える立派な古民家も多くあり、今のままでは朽ち果てていくのを待つばかりとなってしまう。

「それなら、古民家を利用した新しい宿事業を立ち上げようという話になって、そんなときNOTE(ノオト)さんに出会ったんです」

ちょうどこの日、NOTEのスタッフの方が小菅村に来ているという。

嶋田さんに、NOTEユニットプロデューサーの林さんを紹介してもらった。

NOTEは兵庫県篠山市に拠点を置く会社で、もともとは古民家などの地元資源を活かした地域再生を手がける一般社団法人としてスタートした。

古民家はただ再生・保存するだけだと、コスト面も含めてその後の維持管理が難しい。結果、先祖代々から受け継いだ建物を残したくても、泣く泣く解体したり、売却せざるを得ないことが多々ある。

そこでNOTEは古民家を改修した上で、地域活性化に貢献する持続可能なビジネスとして“活用”することで、歴史ある古民家を残す仕組みをつくった。

それが『分散型ホテル』という新しい宿泊業のかたち。

「歴史的建造物にはその地の風土とか文化とかいろんなものが凝縮されていて、いわば地域のアイデンティティ的な存在です。僕らはそういった地域に点在する古い建築物を再生して、その1棟1棟に、それぞれ受付やレストラン、客室などの機能を持たせていくんです」

お客さんは受付棟でチェックインしたら、地図で紹介されているお店やスポットを巡りながら自分の部屋へ向かう。

「通りを行くと地ビールが飲めるバーがあって、その向こうには地元出身のアーティストによるクラフトショップがある、みたいな。つまり、まち全体をひとつのホテルに見立てているんです」

「お客さんにまちを周遊して楽しんでもらうことで、まち全体の商いが活性化していきます。宿泊施設だけが潤えばいいというのではなく、これは地域を盛り上げていくための仕掛けなんですね」

兵庫県篠山市にある丸山集落は、NOTEの原点とも言える地域。

たった12戸と、とても小さな集落ながら家はどれも古くて立派な建物で、美しくも懐かしい里山の風景が残されている。

NOTEは12戸のうち、当初3つの空き家を改修し、分散型ホテルにした。予約業務はパートナー企業が担当し、現地でのオペレーションはすべて地元の人が担当している。

「朝食は地元のお母さんがつくってくれるんですよ。藁細工が得意なおばあちゃんには体験教室を開いてもらったりして」

今ではすっかりリピーターが定着し、限界集落と呼ばれる農村でも観光ビジネスが成り立つことを証明して見せた。

「最初、集落に12軒あった古民家のうち7軒が空き家だったんです。それが今やゼロです。何が起こったかというと、一度外に出た古民家の所有者が、実際にセンス良くリノベーションされた古民家を見て『これなら自分たちで住みたい』と集落に戻って来たり、集落内に古民家レストランができたことで神戸からシェフが移住して来たり。新しい価値や雇用が生まれたことで、人が惹きつけられているんです」

「さらに面白いのが、集落の田畑全体の半分を占めていた耕作放棄地がなくなったんです。泊まりに来たお客さんが丸山集落を気に入って、『また来るから貸してほしい』と畑を借りていくんですよ」

ここまでの広がりはNOTEの人たちも予想していなかったそう。

そんな林さんの話を受けて、「気づいたことがあるんです」と、さとゆめの嶋田さん。

「この前、古民家ホテルを勉強してみようと思ってNOTEさんのホテルに家族で泊まりに行ったんです。そうしたらフロントの方が『まちの通りがこのホテルの廊下なんですよ』と。その言葉を聞いたときに、自分の原体験を思い出しまして」

嶋田さんは学生のころ京都に住み、鴨川源流の雲ヶ畑という集落に足しげく通っていた。

いつか移住したいと思うほど美しい集落で、とても大切な存在だった。ところが林業の衰退によって木材があまり売れなくなると、土地が売り出され、鴨川源流の川べりに産業廃棄物置き場が生まれていた。

その様子を当時の嶋田さんは眺めることしかできず、「ただただ無力だった」という。

「でも、まちの通りがホテルの廊下なんだと聞いたときに、これがあれば雲ヶ畑を守れたかもしれないと思ったんです。だって、まちがお客さんを迎え入れるホテルなら、常にきれいにしておかなきゃいけないって思うじゃないですか」

宿というのは大抵の人がイメージできることなので、村の人たちと共有しやすいかもしれない。

理解が広がれば、地域がより結束し、ひいては地域ブランディングの向上にもつながっていくだろう。

「古民家を使って地域全体をホテルにするっていうのは、単に面白いとか、設備投資が抑えられるとか、そんなことよりもすごく大きな価値があるんじゃないかなって」

小菅村では、まずは第1弾として村に点在する3軒の古民家を改修する。

そのうちのひとつが、村の人なら誰もが知っている、築140年を超える代々からの地元名士の古民家。ここをメイン棟として、受付や客室、レストラン、セミナールームなどを設ける。

残りの2棟は小菅村の特徴とも言える切り立った斜面に建つ小屋で、開けた谷を一望できる客室棟にする予定。

運営マネージャーは、そんな村全体を舞台にしたホテルを任される。

日々の予約・運営業務はもちろん、アクティビティーなどの企画運営も行っていく。

川遊びや山菜採り、ナイトハイクや星空観察など、既に小菅村には体験プログラやそれを企画運営する団体が複数ある。これらの既存プログラムとの連携に加えて、新たな高付加価値のプログラム開発も一緒に進めていくことになる。

ふたたび嶋田さんに伺う。

「お客さんには体験プログラムを商品として提供しますが、究極的には、体験してもらうというよりは小菅村の人たちの生業や暮らしをお手伝いしてもらう、というところまでできたらと思っています。農家さんと一緒に特産品を植えて、1年かけて育てていくみたいな。収穫のときは、村の人たちと一緒に収穫祭をやれたらいいですね」

「村の人との関わりをつくりながら1/1村人を増やしていく。そのためには村の人たちとの関係づくりも大切です」

小菅村は協力的な人が多く、とくに村長は今回の古民家プロジェクトを起爆剤に村の観光産業を盛り上げていければと意気込んでいるそう。

NOTEの林さん曰く、ここまで土壌が整った地域はめずらしいそうだ。

ただ、地域全体が一つのホテルという分散型ホテルのコンセプトは新しい考え方なので、これから村内に浸透させていく必要がある。

「住民の方々の協力なしではできないことなので、これから丁寧にご説明して、村全体の風景を守ることにつながるんですというメッセージを発信していきたいと思ってます」

旅で地元の食材が使われた美味しい料理を食べると、その地との距離感がぐっと縮まったように感じる。

料理をつくるシェフも、このプロジェクトに欠かせない重要な存在。

小菅村ではメイン棟に20席ほどのレストランを設ける予定。宿は1泊朝食付で1人1.5〜2万円ほどを予定しているので、料理もそれに見合った本格的なものが求められる。

小菅村は野菜や山菜、ジビエや川魚など食材は豊富にあって、山梨県全体に目を向ければワインや果物もある。

「料理の腕前も重要ですけど、マネージャーと同じように村全体の資源を使ってサービスしてほしいです。ゆくゆくはお客さんに野菜を育てるところから参加してもらうとか、そういうストーリーができると、もう一段深い味わいにつながっていくと思うんですよ」

マネージャーとシェフ、どちらもいわばこのプロジェクトの顔となる。

都心からやってくる感度の高いお客さんや小菅村の人たちと日々コミュニケーションをとることを考えれば、人生経験が豊富で、ほどよいバランス感覚のある人が望ましいかもしれない。

でも、さとゆめの嶋田さんは「若い人でも大丈夫」だという。

「天性のバランス感覚を持ってうまく立ち回る人もいるけど、僕みたいに地雷を踏みまくって怒られて、数年してやっと受け入れられていく人でもいいんですよ(笑)小菅村でも僕は地雷を踏んでます。大事なのは、めげないこと」

続けてNOTEの林さんもこう話す。

「経営とか数字の部分は僕らも入ってしっかりサポートしますから。少しずつ慣れて自分で回せるようになってもらえたらいい。過去の経験で凝り固まっているよりも、素直で何でも吸収して、楽しめる人だといいですね」

オープン後も空き家の改修を進め、客室を増やしたり、シェアオフィスやコワーキングスペースといった新しい機能も追加していく予定だという。

1年を経るごとに少しずつアップデートしていく感じ。

ここで働く人も、そうやって一緒に成長していけたらいいのだろうな。

(2018/7/31 取材 森田曜光)

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