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わたしたちの続け方
天然の色で服を染める
小さな工場の場合

「宝島染工の仕事は、天然染料で染めた服が普通に買える“状態をつくること”で、自分たちのブランドを売るのが目的ではないです。だから、できあがった服には自分たちの匂いが残らなくていい」

「ものだけを見て、あ、いいなと思われるのが理想です。本当にいいものであれば、背景やつくり手が分からなくても、ものが勝手に喋り出すような強さがあると思うので」

そう話すのは、宝島染工の大籠(おおごもり)千春さん。福岡県南部の筑後地域で、藍などの天然染料で服を染める工場を営んでいる方です。

物事がスピーディに変化していく時代、草木染めのように手工芸をルーツとするものづくりを、仕事として続けていくのは簡単なことではないと思います。

どうすれば自分の好きな色を守れるか。

課題を一つひとつ言語化し、仕組みづくりから取り組んできたのが宝島染工です。

今回はここで働く人を募集します。特に生産管理と現場のマネジメントに携わる人を求めています。

アパレルなどの経験が活かせる部分も多いですが、必須ではありません。「経験者でなくても働ける状態をつくる」ことも、この工場が意識的に取り組んでいることのひとつです。

移住することに迷いがあるなら、地域で暮らしながら働く「お試し雇用」の制度もあるので、ぜひコンタクトを取ってみてください。



福岡市の中心部から電車で1時間ほど。宝島染工の最寄りとなる大溝駅は、田園風景の広がる住宅街のなかにある。

昼下がり、下校中の小学生とすれ違いながら20分ほど歩いていくと、宝島染工の建物が見えてくる。

ここを訪ねるのは5年ぶり。早速、一階の作業場を覗く。

入り口に近いスペースが洗い場と干し場、その奥に藍染めの甕(かめ)があり、窓越しに見える裏の大きな畑では近所の方が農作業をしている。さらに遠くのビニールハウスまで見渡せるほど平地が広がっている。

染めた服を洗う水の音、藍の匂い、いろんな色が染み込んだ壁。

オフィスでデスクワークをする私の日常とはまったく違う情報があふれる空間に、新鮮な気持ちが湧いてくる。

「うちは、前回取材いただいたときから何にも変わってないですよ」

開口一番、そう言い切るのは代表の大籠さん。すごくさっぱりしたこの人柄も、前と同じだ。

もともとこの地域で生まれ育った大籠さんが、宝島染工を立ち上げたのは2001年のこと。

筑後地方は久留米絣(かすり)など伝統的な染織産業が盛んで、子どものころから藍や染めものが身近にあったそう。

「最初は、天然染料の服にもいろんな選択肢があれば、という気持ち一つで始めました。たとえば、縫製がきれいなプレーンなシャツで、藍染のものってなかなかないし、逆に藍染といえば民芸品っぽい雰囲気で自分たちの普段着とはちょっと違う」

「自分がほしいと思えるデザインが選べる。そういう状況を、天然染料の服でも成立させたかった。それにはまず生産の場がいるという発想ですね。最初は一人で少しずつ染めていたので、とても『工場』とはいえない状況でしたけど」

宝島染工が手がけているのは「製品染め」といって、服の形に縫製した状態で染液に浸けるやり方。

単色の無地のほか、チェックなどの織模様の上から色を重ねたり、絞り染めを応用した模様を施したり。

紺、墨、灰など、ベーシックなトーンのなかにも色彩の深みが感じられるのは天然染料ならでは。

宝島染工ではアパレルメーカーのOEMと、ファクトリーブランドとしてのオリジナル商品の両軸でものづくりを続けてきた。工場として成長できたのはOEMの存在が大きいという。

前回の取材でも「オリジナルだけやっていると、仕事が下手になる」っておっしゃっていましたね。

「本当にそうなんです。相手が求めている色の表情や、そもそもなぜ天然染料の色を選んだのかっていう背景も汲み取りながら、色を出していく作業は本当に勉強になります」

天然素材である以上、100%均一な状態で量産することは難しい。それでも仕上がりに対しては、プロとして説明ができる現場でありたいと大籠さんは言う。

「失敗が悪いとは思わないし、むしろ失敗しながら覚えてほしいんですけど、スタッフが理由もわからず作業をしている場合は結構はっきり言います。違うよね、ダメだよ、って。ダメなことを、妙に優しい言葉で誤魔化すのは違う気がして」

「まあ、これがもし2〜3人の現場だったら空気が悪くなっちゃうかもしれないけど、今はスタッフ同士で『また言われちゃいましたね〜』って、フォローしてくれる関係性もあるし。たまにきついことを言うのも私の仕事かなと思ってやっています(笑)」

宝島染工には今13人のスタッフがいる。染色や服づくりの仕事に関する経験も人それぞれで、未経験で始めた人も多い。

フルタイムで働く社員もいれば、子育て中だったり、ダブルワークをしていたり、自身の創作活動と並行していたり。パートタイムで働く人もいる。途中で働き方を変えることも増えてきたという。

職人的な世界かと思いきや、結構フレキシブルな現場ですね。

「そのときにいるメンバーでできる方法を考える、そのために仕組みを変えていくっていう考え方でいいと思っていて。クオリティは妥協できないけど、技術的な部分も手順を細分化して共有することでやっていけますよ」

現場の仕事は、経験差がある人同士がペアやトリオになって進めていく。

言語化しにくい技術や感覚を必要とする作業も、なるべく属人的になりすぎないようにコントロールされている。

「こうして水を使う工場を、今後誰かが新たにはじめるのは難しいと思うんです。もう生産されていない機械を使っている場合もあるし。染めの仕事を維持していくためには、今あるものをいかに減らさないようにするか。そのためにはまず業界として、新しく人が入りやすい仕組みが必要です」

「しかも、ものづくりの現場ってだいたいこういう地方の、さらに中心部から1時間くらい離れたようなところにあって。暮らす環境や職場の人間関係が自分に合うかどうか、移住してみないとわからないのは、お互いに大変ですよね」

大籠さんは数年前から、地域の同業他社と連携して「お試し雇用」の取り組みを始めた。

宝島染工をはじめ、家族経営の織物工場や化学染料の染工場など、さまざまな形態の5社が連携してインターンの機会を提供する仕組み。実際に暮らしながら働いてみることで、お互いの相性や適性をはかることができる。



5年前、その制度を利用して宝島染工で働き始めたのが西さん。

「当時は都内の美大の院生としてテキスタイルを専攻していて、将来は手仕事のある現場で働きたいと思っていました。ただ実際の繊維産業は機械がメインで、自分が思い描くイメージとはギャップがありました」

宝島染工の存在を知ったのも、ちょうどそのころ。隣の広川町に滞在しながら仕事を経験してみることに。

見学だけでなく、染め場で布を染める前の作業などを実際に手伝ったそう。

「現場に入ってみたら思った以上に手仕事で、いろんなことを人力でやっているのに、量産が成り立っている。そのバランスにすごく魅力を感じました」

「人数が少ない現場なので、完全な分業は難しくて。染めだけじゃなく、デスクワークをしたり、クライアントとコミュニケーションをとったり、いろんな側面で服づくりに携われるのもいいところだと思います」

この日、西さんは頑丈そうなゴム長を履いて染めの作業をしていた。

水を使う作業は全身を使う。デスクワークが続いた後久々に染め場に出ると、筋肉痛になるという。

染める量と納期、スタッフのシフトなどを考慮しながら、パズルのようにスケジュールを組むのも西さんたちの役割。

「まだそこはちょっと苦戦しているんですけど、改善点が見えるからこそ、頑張んなきゃなって思っています」

もともと好きだった染めの仕事。

最近はOEMの業務とは別に、社内の「テキスタイル部」でオリジナルのテキスタイル制作にも取り組んでいる。

依頼通りに仕上げる技術を磨くのと同時に、色に対する興味を自分なりに掘り下げる経験も、きっと仕事のモチベーションにつながっていると思う。

最後に紹介するのは、生産管理を担当している諸富さん。

もともとはアパレルで企画やデザインに携わっていて、4年前に染め場の担当として入社。生産管理に担当が変わったのは2年前のことだそう。

生産管理の仕事は、資材の準備や在庫管理、縫製工場への依頼や染めの段取りなど多岐にわたる。それぞれの工程を滞りなく流すための舵取り役のような存在。

諸富さんは、まもなく産休に入るので、今回新しく入る人は仕事を引き継いで進めていくことになる。

「手作業だから思い通りにいかないことも多くて、常に緊張感はあります。一方で、やっぱり天然染料は独特の経年変化がきれいだし、均一じゃないのがいいところ。野菜とか、ワインとか、そういうのに近いのかなと思うんです」

野菜に近い?

「たとえば麻の生地は毎年仕上がりが違って、不作の年は服づくりの過程でもトラブルが起きやすいんです。でも、よく考えたら自然のものだし気候によって変わるのは当たり前だなって私は納得していて。そういう感覚で仕事を楽しめるといいのかもしれないですね」

とはいえ、なるべく急なトラブルに遭遇しないよう、事前に予測できるポイントはサンプルの段階でチェックする。

たとえば染めの作業で力が入る部分は破れやすい。洋服のデザインや仕様を見てリスクを予想して現場に共有ができるだけでも、後の負担を減らせる。

「そのあたりは、洋服の仕事や勉強をしたことがある人だと、感覚として掴みやすいかもしれない。ただ経験者じゃなくても、興味があるなら挑戦できる仕事だと思います。私も生産管理自体は未経験で、手探りでしたし。最初は誰でも、分からなくて当たり前だと思うので」

宝島染工の現場は、いろんなところにラベルや注意書きが貼ってある。

過去に誰かが困ったこと、間違えたこと、そういう経験も蓄積していけば、これから入る人の道標になる。

外から入りやすい入り口は、中の空気を循環させる。空気がめぐれば新しい芽もでる。

それが宝島染工の続け方、自分の好きな色の服が買える状況を守る方法なのだと思います。

(2024/2/16 取材 高橋佑香子)

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