求人 NEW

starnetの新しい門出
ふたたび
益子に集まって

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

栃木県益子町にあるstarnet。

オーガニックを基本とした食事を提供するカフェ、益子焼を中心とした器と天然素材にこだわり、日々の暮らしで長く着られる服を販売するストアを営んでいます。

馬場浩史さんが、1998年に始めました。そのときの言葉が残っています。

「それぞれのクリエイターのなかにあるものを、僕は引き出す役割をしているのかな。その人にとって自然な方向にクリエイティブを導いて、その仕事が、スターネットとつながっていくのが理想。いずれは、みんなが持ち寄ったものでスターネットができていくのがいい」

もともと、ファッションデザイナー熊谷登喜男のパートナーとして、ブランドのプロデュースやプランニングに関わっていた馬場さん。

東京での暮らし方に疑問を感じ、もう少し自然に根ざした暮らしを実践していこうと、栃木県益子町にたどり着き、starnetをオープンさせます。

馬場さんの当時の想いは、半径40kmの範囲で野菜や水など必要なものが手に入り、その地域のなかで循環が成立すること。

近くで採れる無農薬の野菜をつかった料理をカフェで提供したり、地元の作家さんと一緒にオリジナルの器をつくってストアで販売したり。

ものづくり、音楽レーベル、イベント、展覧会、レストランなど。若手クリエーターとの連携を軸にさまざまなクリエイティブが展開されていきました。

しかし、2013年に馬場さんは他界。

経営は別の方に引き継がれていきましたが、2024年、馬場さんにゆかりのあるメンバーが引き継ぐことに。

今回は、ストアやカフェでの販売・接客を中心に働くメンバーを募集します。

ゆくゆくは、食材の調達やオリジナル商品の開発、作家さんと連携したギャラリーの企画運営なども担っていく予定です。

 

東京から北へ車を走らせること約2時間。

黄金色に輝く小麦畑、可憐な白い花を咲かせた蕎麦畑、水面に光が反射している田んぼ。その向こうには山と森。

日本の原風景を前にして、肩の力が抜けてきた。

すぐに立派な瓦屋根の建物が並ぶメインストリートへ。

益子は陶器の産地。

いくつもの焼きもの屋さんを越えて、さらに奥へ進むと、starnetのお店を発見。

しっかりとした大谷石が積み上がり、深い墨色の壁と白い窓枠のコントラストが美しい。

大きな木の扉を開けて中へ。

1階はストアとカフェが併設されていて、2階にギャラリーがある。

窓から入る光が、床の木材や置かれている器に反射する。

starnetのみなさんは、お昼ごはんを食べていたみたい。和やかな雰囲気で迎えてくれた。

はじめに話を聞いたのは、共同経営者の及川卓也さん。

マガジンハウスで『anan』の編集長を務め、2012年には、ローカルをテーマにしたWebマガジン『コロカル』を立ち上げる。

「コロカルを立ち上げたばかりの2012年、馬場さんにインタビューをさせていただいて、共感し、感銘を受けました。馬場さんが亡くなられて、益子から足が遠のいていましたが、忘れがたい存在と哲学でした。それで今回事業継承の話をいただいて」

「まずは状況を見にきて。馬場さんの想いを引き継ぐ人々によって大切に守られてきたんだなと感じました。ただ、どこか停止しているような印象も。馬場さんのやってきたことの継続と、新しいことを始めることと、両方が必要なのかなと思いました」

馬場さんがやってきたこと。

「はい。クリエイターたちの仕事をつくっている感覚がありました。たとえば昔、革細工をしている若手の方が週1回東京から通ってきて、鞄や靴をつくる。それを馬場さんが見て、必要に応じてアドバイスする」

「互いに納得のいくものができれば販売してみる。今もその作家さんのプロダクトは売っているんですよ」

一人ひとりのご縁を大切にして、一緒につくりあげてきたstarnet。

ほかにも、美容師の技術を持っている人がいれば、馬場さんはヘアサロンの建物を建てて、開業の後押しをすることもあったという。

「人と会うとき、打ち合わせするときも、すぐに話題に入るんじゃなくて、まずは必ずお茶を淹れて。みんなが向き合えるように、ゆっくりお茶を飲むところから始めていました」

まずじっくりと話してみる。そして何ができるか、一緒に考えながら進めていく。

starnetのスタンダードを大切にしながら、それを押し付けるのではなくて、相手の良さを引き出せる人だったのだと思う。

及川さんは今、週の半分を益子で過ごす、都内との2拠点生活。

今後は、どんなふうにstarnetを引き継いでいくのでしょうか。

「単に“もの”を提供するのではなくて、“暮らしの豊かさへの問いかけ”を提供する。そういう方向を目指したい」

「美しさにはこだわっているけれども、これが美しい!って断言するのも今の時代とは合わない。スタッフそれぞれが感じるstarnetらしさを話し、実践していくことで、1つのまとまりになっていく気がします」

 

隣で話を聞いていたのは、スタッフの御代田佳奈(みよたかな)さん。益子出身で、初めてのstarnet来店は、5歳のときにカレーを食べたこと。

御代田さんは、starnetについてどう思いますか?

「なんて言ったらいいのか、ひとことでは言い切れないですね」

「ただ、暮らしのなかで私がいつも心掛けているのは、できるだけ心身を健やかに保つことで。starnetで提案している食事やものは、気持ちや身体に心地よく寄り添ってくれるので、健やかな生活が実現できているように思います」

高校卒業後は東京の服飾学校へ。その後は、撮影スタジオでカメラマンのアシスタントをしていた。

学校も仕事もやりがいがあって楽しかったけれど、寝る間も惜しんで課題や練習をする忙しい日々のなかで、少しずつ身体に負荷がかかっていたそう。

そんなとき、離島で暮らしていたお姉さんから、八丈島の郷土料理屋での住み込みアルバイトを紹介される。

「わたしの都会での暮らしとは真逆で、島人たちの大自然と共存するたくましい姿に感動しました。魚の釣り方を教わって捌いて食べたり、海で泳いだ後に砂浜でヨガをしたり」

服飾学校の解剖学の授業がきっかけでヒトの身体のつくりに興味をもち、島ではハワイアンマッサージ「ロミロミ」の資格も取得した。心身はつながっていて、そのバランスを整えることがまずは何よりも大切だということを学んだ。

その後もさまざまな場所を巡って益子に戻ってきたとき、starnetに入社する。

starnet歴は今年で4年目。

現在は、ストアでの販売や商品管理をはじめ、作家とのやりとりや商品買付、オリジナル衣類の企画、ギャラリーの企画運営や通販対応など、さまざまな業務を担っている。

「いままで学んできた様々なことが活かせる場所でうれしいです」

「大塚一弘さんという作家さんがいて。ここの地主さんでもあり、馬場さんとも交流が深い方で。かつて馬場さんがデザインして、大塚さんがつくった当店オリジナルの器は、今でも制作をお願いしています」

「この器は、陶土も釉薬もすべて益子の自然から生み出されたものです」

益子焼に使用される土は、砂気が多く粘性が少ないため細かい細工に向かず、かつては厚手のものが主流だった。

それに対して馬場さんは、「伝統的なやり方は一旦忘れて、もっと薄くもっと薄く」と要望を伝えていく。

「こんなのやったことないと思いながら大塚さんはやっていくんですけど、すごく真面目で技術が確かな方だから、出来ちゃうんですよね」

「でも、感覚が先に行ってしまっていたというか。その後また同じバランスや薄さのものをつくってほしいと言われたときに、同じクオリティに行くまでに、時間がかかったそうです(笑)」

新しく入る人も、まずはストア・カフェでの販売と接客から仕事を覚えていく。

取り扱っている商品には、それぞれストーリーがあるので、まずは作家さん一人ひとりと会って話を聞くことが大切。

「どのようにして目の前の作品が出来上がったのか、込められた想いや人柄を知る事ができて面白いです。それをお客さまにも伝えることで喜んでいただけて。間接的ではあるけれど、作品を通して人と人をつなげるお手伝いができることにやりがいを感じます」

どんな人が向いていると思いますか。

「生活全般に重きを置いている人だと、興味が湧く環境なんじゃないかな。作家さんの窯焚きを見に行かせてもらえることもあって。薪窯の炎の前でみんなでお茶を飲みながらいろんな話をしていると、友だちや仲間といるようなあたたかい気持ちになります」

「日常の延長線上に仕事がある感覚なので、切っても切り離せないものがたくさんあるんです」

 

次に話を聞いたのは、今年の3月に入社したばかりの田所美紀さん。starnetでの1日の流れを聞いてみる。

「9時ちょっとくらい前に車で出勤して。まずはみんなと2時間、お店のお掃除をします。棚を拭いたり、掃き掃除をしたり。窓も水拭きと乾拭きをして」

「やり終えると、なんかもうやったなって感じですね。空間も流れる空気も綺麗になって、お客さまを迎えられる準備が整います」

オープンしたあとは、レジ対応や接客。17時に閉店なので、商品の補充とレジ締めをし、カフェの掃除をして退勤。

「毎日同じリズムなので、自然の移り変わりがすごくわかります。花がこれだけ伸びたとか。わたしは坂の上の駐車場に車を停めているんですけど、帰りに空の写真を撮るのが好きなんです。そこから見える景色がほんとうに素敵で」

前職は介護の仕事をしていた田所さん。

仕事にはやりがいを感じ、充実していた。一方で、福祉という制度のなかで利用者の方と接することに悩むことも。

「介護職は生活に寄り添う仕事だと思っていて。その大切さを学んできました。器も人の生活に寄り添うってところで、共通していると思うんですね」

知り合いの作家さんがstarnetで展示をすることになり、お手伝いをしたという田所さん。そのご縁もあって、入社することになった。

「ずっと見ていられるくらい、作家さんの仕事を見るのが好きで。ものづくりの過程やそこに込めた作家さんの想いを、お客さんにも感じてもらいたい。そんな接客ができたらいいなって思います」

 

最後に、共同代表の及川さん。

「衣食住を通して、ていねいに自分の感覚と向き合って、健やかであること。自分の感覚やコンディションだけでなく、多様な他者を承認、尊重できること。それが人間の基本でもあるし、社会の基本でもある」

「その精神性を共有して働けると、いろいろと面白いことが生まれ、軸が見えてくると思う」

これまでstarnetで働いていたスタッフは、ここで自分の感性を磨き、独立していくことも多かった。

今後もそんな生き方を推奨したい、と及川さん。

御代田さんと田所さんの話を聞いていても、自分の大切にしたい美意識や価値観のような、自分にとってしっくりくる、心地いいものを目指してstarnetに辿り着いたんだと思う。

そして、みんなと過ごし、話し合いながら、よりしっくりくる方向へ近づいていこうとしている。

これからのstarnetをつくっていくために、新しい仲間を求めています。

(2024/05/24 取材 杉本丞)

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