求人 NEW

かほくがぎゅっと詰まった
小さなアンテナショップ
ふるさとの星になる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

一足2万円の高級スリッパに、スティックセニョールやセルバティカなどのイタリア野菜。B-1グランプリ入賞の「冷たい肉そば」。

個性的なこれらの産品は、山形県の小さなまち、河北町(かほくちょう)で生まれたものです。

そんな河北町のアンテナショップ「かほくらし」で働く人を募集します。

東京・三軒茶屋にあるかほくらしは、1階が物販、2階はレストランのお店。

今回募集するのは、ショップとレストランで接客や調理を担うスタッフ。経験よりも、かほくらしが目指すものに共感する人を求めています。

まだまだめずらしい、市町村のアンテナショップ。ここを成功させ、河北町全体、さらには日本の地域を盛り上げていく挑戦がはじまっています。



三軒茶屋駅を出て、首都高沿いを歩いていく。

居酒屋やドラッグストア、昔ながらの布団屋さんなどが並び、たくさんの人と車が行き交うこの通り。少し雑多な感じだけれど、人の営みをしっかりと感じられて、なんだかいい。

駅から3分ほどで、かほくらしの看板が見えてきた。

お店で出迎えてくれたのは、株式会社さとゆめの代表・嶋田さん。

数々の地域とまちおこしに取り組んできたさとゆめは、事業計画から運営まで一貫してサポートする“伴走型コンサルティング”が得意な会社。今回も「都内にアンテナショップをつくりたい」という河北町商工会の想いを受けて、設立準備から関わってきた。

「まずお店を案内しますね」

9坪の店内に並ぶのは、町内で収穫された野菜やお米、地元の酒蔵がつくった日本酒、生産量日本一のスリッパなど。河北町のものを中心に、山形県の名産品も置いているそう。

「『冷たい肉そば』はオススメですよ。常温のつゆをかけたそばの上に、卵を産んだあとの親鶏のチャーシューを乗せた郷土食。鶏肉がコリコリして美味いんです。ここでも買えるし、ぜひ上でも食べてみてください」

2階では、河北町の産品を使った料理を味わうことができる。オープン前のお店の一角で、あらためてお話を聞かせてもらう。

山形県中央部に位置する河北町は、最上川と寒河江(さがえ)川に囲まれた、人口1万8000人ほどのまち。かつては山形全土で栽培されていた紅花の集積地として栄え、今も町の基幹産業は農業だそう。

さくらんぼやお米はもちろん、10年ほど前にまちをあげてつくりはじめたイタリア野菜は日本一の生産量で、県内外あわせて200近くのお店に卸すほど。土壌が豊かで、柑橘類以外ほとんどの作物を育てられるのだとか。

「河北町では、『地域循環産業』として、人にも環境にも配慮した生産を地域ぐるみで行なっています。たとえば、米農家の精米で出たもみがらは果樹園の肥料になるし、畜産農家の堆肥はイタリア野菜の土壌になるんですよ」

そんな河北町でつくられた産品を首都圏に届ける拠点として、2019年にオープンしたかほくらし。ここ世田谷区に出店を決めた理由の一つは、23区内で一番山形出身者が多いからだそう。

市町村単位のアンテナショップってめずらしいですよね。

「都道府県と比べたら、まだまだ少ないですね。でも、アンテナショップって本来市町村でやるべきだと僕は思っているんです。同じ県でも海側と山側では文化も違うし、小さい単位のほうが、地域の特徴や想いを明確に伝えられるんじゃないかなって」

「かほくらしで、市町村単位のアンテナショップの成功事例をつくりたい。河北町ができたならうちもできるかもって、ほかの地域にも思ってほしいんです」

目指すのは、補助金に頼ることなく、ちゃんと売上をあげて自走するアンテナショップ。

決して大きくない規模の河北町がモデルとなれば、ほかの自治体の背中を押すことにつながるかもしれない。さとゆめが力を注ぐ理由もここにある。

2020年には店舗をリニューアル。コロナ禍で移動が制限されるなか、現地を訪れることはできなくても、かほくを旅しているような、地域の温かみを感じられるお店を目指してきた。

また、リニューアルを機にそれまで外部に委託していた運営も自分たちで担うことに。

「町内外の企業4社を母体に『かほくらし社』という地域商社を設立しました。さとゆめも出資しています。河北町に想いのある企業が集まってつくった会社なので、地域の魅力をよりストレートに伝えられるようになったと思います」

お店のお客さんから得た情報やニーズをもとに、自分たちで商品開発や陳列をブラッシュアップ。町内でテスト販売を行い、より確度の高いものを東京で販売する流れをつくりだす。

この循環が軌道に乗れば、まちの生産者を持続的に支援することができる。

「アンテナショップは、ものの出口であり情報の入り口。河北町の産業を、川下からより良いものに再構築していきたいと思っています」

今回は、プロジェクトの最前線に位置するアンテナショップを支えるメンバーの募集。

「販売、ホール、シェフ。それぞれ専門領域はあるんですけど、かほくらし社の創業メンバーだと思ってもらいたい。地域商社の経営や運営を、立ち上げから現場で学ぶことができる仕事です」

現場はめちゃくちゃ重要、と嶋田さんは話す。

「現場にいるからこそ湧いてくるアイデアや得られる知識ってすごくあって。僕も現場が好きでしょっちゅう来ています。ここで感じたことを落とし込むから、事業計画もどんどんリアルにつくり込めるんです」

これから入る人も、ゆくゆくは河北町の生産者さんを訪れたり、商品開発に携わったりと、プロジェクト全体に関わるチャンスも出てくる。

それに、嶋田さんの近くで新しい地方創生プロジェクトに取り組むことの学びも大きいと思う。



「ぜひ熱い想いを聞いてほしい」と紹介され、オンラインで話を聞いたのが、河北町商工会の芦埜(あしの)さん。かほくらしの発起人だ。

「いつも着ている」というパーカーからも、熱意を感じます。

「河北町はどんどん高齢化が進んでいます。農業をやっているのもじいちゃんばっかりだし、それを消費する人たちも歳をとっていって。このままだと10年後にどうなっちゃうんだろう!?って。町内だけにとどまっていたら衰退してしまうと思ったんです」

まちの産業を守るため、首都圏での販路開拓や地域に人を呼び込む拠点が必要だと考え、アンテナショップのオープンに至った。

「河北町の生産者って、なんていうか…“変態”が多いんですよ」

変態、ですか?

「ものづくりに対してのこだわりが、強いを超えて変態。でもそういう人たちがつくるものって、やっぱり美味い。たとえばイタリア野菜だって、10年前まったく経験がないところからスタートして、日本一になりましたから」

これまでも新しい挑戦によって名産を生んできた河北町。かほくらし社では、それをもっとブラッシュアップしていきたい。

「正直、アンテナショップの1階、物販エリア9坪が河北町のものだけで埋まらないのは悔しい。みんな、つくるのはうまくても売り方はまだまだなので、いいものを磨いてちゃんと世に届ける仕組みをつくりたいと思っています」



新しく入る人が、日々一緒に働くことになるおふたりにも話を聞く。

まずは、かほくらし全体を統括している支配人の高塚さん。

店頭での接客はもちろん、販売する商品を選定したり、かほくらし社の河北町事業部が都内でイベントをする際の支援をしたりと、幅広く取り組んでいる。

「このアンテナショップは、関係人口を生み出す発信基地でもあります。商品や食材を通じて『このまちに行ってみたい』『生産者に会ってみたい』と思ってもらって、河北町にたくさんの人が訪れるきっかけになったらいいなと思っています」

お客さんは近隣の人たちのほか、わざわざ遠くから訪れる地元出身者も多いそう。

「たとえば酒田出身の若い子は、ここに来ると地元の空気を吸える感じがするって。『ここは僕の聖地です』って言ってくれたのが、忘れられないですね」

東京で長く働いていて、ふるさと山形への想いから、かほくらしを応援してくれる人も多いという。

「わたしは河北町の隣の村山市出身で。馴染みの商品も多くて、ついお客さんと盛り上がっちゃうんですよね。パインサイダーって、昔は木箱に入って瓶で売っていたのにオシャレになって!とか(笑)」

たしかに接客の様子を見ていると、お会計のときに立ち話をしていく人が多い。お客さんと話すのが好きな人なら、楽しく働けそうだ。

今後は河北町へのツアー企画の支援や、生産者がかほくらしを訪れる企画も予定。ここを起点に河北町のファンが増えていけば何よりうれしい、と高塚さん。

新しく入る人も、ともにかほくらしをつくっていくつもりで、どんどんアイデアを出していけるといいと思う。

「ただお店に立つんじゃなくて、かほくらしでやってみたいことを一つでも持っていてくれたらうれしいですね」

「支配人としてそれを実現させてあげたいし、みんなで協力して一人ひとりの想いを二倍や三倍にもして、河北町をもっと盛り上げるための大きな動きをつくっていけたらいいなと思います」

 

最後に話を聞いたのは、日本仕事百貨の記事をきっかけに入社した小高さん。

もともとは雑貨店に10年以上勤務。「もっとつくり手に近い仕事をしたい」と、かほくらしで働きはじめて1年半ほど経つ。

普段はショップでの仕入れや接客に加え、2階の「かほくらし食堂」で調理とホールも担当している。

かほくらし食堂は、昨年の飲食部門のリニューアルで生まれたお店。こだわりの食材を気軽に楽しめて、お腹も心も満たされる、「ただいま」と言いたくなるようなお店づくりを目指している。

スタッフみんなで調理とホールを分担しながら、どんなメニューを提供するか話し合って決めている。

「飲食の仕事は初めてだったんですけど、ものが残らないぶん、思い出に残る体験をつくることがすごく大切なんだとわかってきました」

「お食事中にちょっと河北町の話をして興味を持ってもらえたり、『おいしかったから』ってご友人を連れてリピートしてくれたり。そういうお客さまがいるのは、やっぱりうれしい。これが飲食のおもしろさなんだなって知りましたね」

もともと、山形にはあまり縁がなかったという小高さん。

入社後、研修で初めて河北町を訪れた。

「接客するなかで、山形出身のお客さまから『水が違うからおいしいお米ができる』ってお話をよく聞いていて。実際に行ってみて、その意味がよくわかりました。とにかく、水も食べものも空気もおいしくて」

「果物とか、伝統的な味付けのこんにゃくとか、地域の人にとっては当たり前なんだけど、外からの目線だと全然普通じゃないんです。お客さまと同じ新鮮な感覚を持って、地域や生産者さんから感じたことをお店でお伝えしていけるのは、いいことだなと思っています」

 

かほくらしで出会った人たちから強く感じたのは、「河北町が好き」という想い。

それぞれ仕事や立場は違っても、目指すものが同じだから一丸となって走ることができるのだと思います。

小さなお店から、新たな地方創生のモデルが生まれるかもしれません。この挑戦にワクワクする人がいたら、ぜひ仲間に加わってほしいです。

(2021/5/21取材 2023/5/19更新 増田早紀)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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