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ひとりひとりに呼びかける

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「ファンドレイジング」は、NPOやNGOなど非営利の組織が、事業に必要な資金を社会から集める手段のこと。

事業を安定的・継続的に運営していくために、その資金を集めるファンドレイザーという仕事があります。

SONY DSC 以前、ウェブの記事で読んだのだけど、多額の寄付を集めてきたある優秀なファンドレイザーが、その理由を聞かれこう答えたそうだ。

「わたしは寄付をお願いしたことはありません。ただ、自分が変えたいと思っている社会状況について丁寧に説明しただけです。」

ファンドレイジングは、たんなる資金集めではなく、共感を得て一緒に社会を変えていく仲間を増やすためのプロセスなのだと思う。

今回は、国際環境NGOグリーンピースで、環境保護と平和を守る活動を続けるため、世界各国にあるオフィスやチームとともに戦略を立てていく「ファンドレイジング・ディレクター」を募集します。

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NGOグリーンピースは、世界40カ以上の国と地域にオフィスがあり、各国で2,500人以上のスタッフたちが活動している。そしてその活動資金は、280万人の個人サポーターの寄付によって支えられている。

政府や企業からの資金提供は一切受けておらず、寄付は個人のサポーターのみによる。それは、市民の立場から、政府や企業に対してはっきりと発言できるようにするため。

とはいえ、個人からの寄付だけで安定した継続的な活動を行なっていくのは、とても難しいことだと思う。

新宿の住宅街にあるグリーンピース・ジャパンのオフィスで、現在ファンドレイジング・ディレクター及びチーフ・オペレーティング・オフィサー(COO)を兼務しているマガリ・レイエスさんに話を伺った。

「NGOは、1930年代にアメリカで、政府に頼るのではなく自ら行動を起こそうという市民の意識からはじまりました。わたしたちも、市民ひとりひとりが力をもっていて、社会を変える力があると思っています。政府や企業から援助を受けずに、個人サポーターから安定的に寄付を集めるのは大変なことですが、それがグリーンピースの強みであると思っています。」

SONY DSC 2011年3月に福島第一原子力発電所事故が起きたときも、グリーンピースはいちはやく放射線調査チームを結成し、所有する3隻の船のうちの1隻が、日本の福島沖へ向かった。

その後、食品放射能汚染と長期的な環境モニタリングが必要だと感じ、東京に「グリーンピース放射能測定室 シルベク」を開設した。

こういう柔軟な行動が起こせることも、政府や特定の企業の意向に依らないグリーンピースだからこそできること。

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「わたしは、グリーンピースに勤める前に別のNGOに勤めていました。そこは企業から寄付を受けていたのですが、そうすると結局企業にばかり目がいってしまい、個人の寄付者の方と丁寧に関わることができなかったんですね。ここでは、市民が今知りたいと思っていることを調査したり、望んでいることをキャンペーンにしていくことができる。ちゃんと個人個人の声に向き合うことができるのが、魅力だと思います。」

マガリさんは、メキシコのメキシコシティ出身だそうだ。人口2300万人ほどの、東京とそう変わらない規模の都市で育った。

両親は休暇になると郊外に連れてっていってくれ、そこで家族と自然のなかで遊ぶのが好きだった。人間は地球のなかのひとつの種であり、他の動植物を絶やすようなことはしてはいけないということを学びながら育った。

大学を出て最初に勤めたのは、貧困問題を扱うNGOだった。そこのファンドレイジングチームに属し経験を積んだあと、知人の紹介でグリーンピースへ。

メキシコの事務所に4年、その後オランダのアムステルダムにある本部に3年勤めたのち、1年半前に日本のオフィスにやってきた。

日本に来るとき、家族や友達に反対されませんでしたか?

「放射能のこともあり、母は少し心配していたのですが、信頼して送り出してくれました。友達も、わたしがチャレンジングな性格だということは知っているので、応援してくれています。」

SONY DSC マガリさんは実はアニメが大好きで、17歳からテコンドーを習っているそうだ。昔からアジアの文化に興味があり、大学時代には日本語と日本文化を勉強していた。

「日本に来て、自分の好きな言葉と文化を学べるのはとても光栄なことです。ただ、楽しいだけではなく、同時に大きな使命と責任も感じています。この1年半を振り返ると、本当に挑戦に溢れてエキサイティングな日々でした。」

原発事故以降、世界から注目を集めたこと、そして国民のエネルギーや環境への意識も高まったことから、グリーンピース・ジャパンのオフィスは、劇的に変化した。

原発事故が起こってしまった日本からこそ、伝えていけることがある。大気や海洋に広がる放射能汚染の被害を調査し、先頭に立って脱原発の声を上げ続けたい。

そうした想いから、2年前から今にかけて、いくつものキャンペーンが立ち上がってきた。

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活動が活発になったということは、そのための資金も必要になるということ。より組織が成長していくために、より効果的なファンドレイジングの必要性が出てきた。

そこでやってきたのが、NGOでのファンドレイジング経験の長いマガリさんだった。

マガリさんは、今はグリーンピース・ジャパンのなかで、総務とファンドレイジング部を兼任している。

「ファンドレイジングの話をした3分後に総務の話をしたり、全く違う2つのチームを日々動かしています。他の人に、2つ脳みそを持っているんじゃないかと驚かれることもあるくらいです(笑)」

とても気さくだけれど、きっと任されている仕事の量からしても「敏腕」なのだと思う。

新しく入る人は、そんなマガリさんに代わってグリーンピース・ジャパンのファンドレイジングを請け負うことになる。

SONY DSC ファンドレイジング・ディレクターは、具体的にどんな仕事をすることになるんですか?

「ファンドレイジング部門では、サポーターを集めるためのプログラムを開発・実行しています。ファンドレイジング・ディレクターはそのなかの責任者。コミュニケーション部門やキャンペーン部門など、他部門と協同しながら、よりサポーターを増やしていくためのプログラムを考えることが仕事になります。」

たとえば、海洋生態系について調査をすすめるチームが現場に行き、「このままいくと今生きている魚の種類の80%は将来いなくなってしまう」ということが分かる。

広報を担うコミュニケーション部門は、その調査結果と解決策を、分かりやすいかたちで伝える方法を考える。

そして、ファンドレイジング部門は、その情報から興味を持っていただいた方に対して、「一緒に行動を起こしましょう」と呼びかける。

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人の目の届きにくいところで起こる環境破壊。その現場へ行って事実を記録し、世界へ発信する。多くの人の意識を変えることで、ボトムアップで問題を解決していくのが、グリーンピースのやり方。

だから、ファンドレイジングにおいても、まずは知ってもらうことが第一段階。

そこから、署名に協力していただく。イベントやセミナーに参加していただく。メルマガに登録していただく。そういうステップを経て関係をつくっていく。

そして、濃いつながりができてきたら、寄付を検討していただけるように説明をしていく。

ファンドレイジング部門には、ダイレクトマーケティング、e-マーケティング、テレマーケティング、大口寄付、遺産・相続財産の寄付など、寄付の形に応じてそれぞれのスペシャリストがいる。

ファンドレイジング・ディレクターは、彼らと一緒になって、サポーターを増やし寄付をいただくための計画を立てていく。

言葉での説明だけではなく、ノベルティやイベントの企画をしたりなど魅力をつくっていくのもひとつ。可能性は色々探っていける。

SONY DSC 「企業と違って、私たちには商品がないんですね。なので、『あなたのサポートをいただくことで、それがこんなキャンペーンになって世界を変えていきます』と伝えてイメージしていただくことが大事です。そしてサポーターになっていただいたあとも、『あなたからいただいた寄付がこのようなキャンペーン活動と結果につながりました』ということをしっかりご報告する責任があります。」

寄付をいただいて終わりではなく、サポーターには定期的にニュースレターを届け、活動報告も続けていく。

「寄付を集める」だけが仕事ではなく、その前後にある「活動を知ってもらうこと」「活動を報告すること」も、ファンドレイジング部門の大切な役割になる。

そうしてサポーターを増やし、一緒により大きな社会変革の波をつくっていきたい。今、日本でグリーンピースを応援してくれているサポーターは5000人ほど。そして、その数は確実に増えてきている。

「海外のオフィスにもファンドレイジング・ディレクターがいますので、常時メールやメーリングリストで、成功した事例を共有しています。年に1度、アムステルダムの本部でファンドレイジング・ディレクターが集まるインターナショナルミーティングもあります。世界と連携しながらすすめていけるのも、グリーンピースならではの魅力だと思います。」

SONY DSC なんだか話を聞いていると、色々なチームプロジェクトがクロスしているし、組織のなかで重要な役割なのだということが分かる。

どんな人が、この仕事に向いていると思いますか?

「一番求められるスキルはマーケティングですね。目標とするターゲット層を分析してどのように寄付に結びつけるか考えられる人。できれば国際的なNGOのファンドレイジングチームで働いた経験のある人がいいと思います。企業での営業経験のある方でもいいと思いますが、企業とNGOのやり方は全く違うので、それをどのようにNGOのやり方に変えていけるかという力も、試されると思います。」

あとは、性格でいうと、強いリーダーシップのある人。「ファンドレイジング部門」をまとめる力。「コミュニケーション部門」「キャンペーン部門」などの他部門とのコミュニケーション。そして、世界のオフィスとの連携まで求められる。

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「でも、やっぱり一番大事なのは熱意ですね。熱意があれば知らなくても教えることができます。今のファンドレイジング部門は、社会を変えていきたい!という熱意があって、仕事に誇りを持っている人ばかりです。自分がここへ来たときもそうでしたが、お互いが持っている知識を交換して吸収していく感覚があるから、外から入る人にもウェルカムな雰囲気です。自分の能力を最大限発揮できる環境だと思いますよ。」

個人の寄付は、ひとり1000円から。もしも企業に支援してもらったら、その何十倍もの資金を一度で得ることができる。それでも、グリーンピースはひとりひとりに呼びかけていく。

寄付を集める苦労があるからこそ、どんな局面のときも、政府や企業に対して、いけないと思ったときにいけないと言えるスタンスを守れるのだと思う。

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ファンドレイジングの仕事は、グリーンピースの立場と活動を守るためにある。だからこそ、より多くの資金を安定的に得る方法を、クリエイティブに考えていくことが求められる。

きっと頼りにされるし、やりがいがあると思います。そして、世界を飛び回って活動してきたマガリさんのような人たちと一緒に働けることも、自分の財産になると思います。(2013/8/21 笠原ナナコup)