2013年、大切にしたい言葉たち

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みなさま、明けましておめでとうございます。日本仕事百貨で、取材して記事を書いている笠原ナナコと申します。

去年は、北海道から沖縄まで、全国各地のさまざまな人と仕事に会いにいきました。

そのなかで、印象に残った言葉を紹介します。


「この人とだったら、あとの人生半分、違う生き方ができるんじゃないかって思ったんだ。」 (株式会社石見銀山生活文化研究所/統括部長 福里靖)

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一瞬、プロポーズのときの話かな、と思った人もいるかもしれません。でも、そうではなくて、これは転職の話です。

島根県の石見銀山から、素材や製法にこだわった服をつくり販売している「群言堂(ぐんげんどう)」というブランドに、ひとりの男性が出会いました。

「群言堂」の東京の店舗をとりまとめている統括部長の福里さんは、もともと百貨店に勤め、マネージャーをしていた。そして「群言堂」は、導入した店舗のひとつだった。

ある日、「群言堂」をつくった会長の松場大吉さんの一言に、福里さんは衝撃を受ける。

「『我々は先導者ではなく伴走者なんだ』先頭に立つのではなく、隣にいて一緒に走る。そして、落っこちそうな人間がいたら支える。そんな伴走者でありたいと、言ったんだよ。」

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年功序列で学歴社会の世界にすっかり浸っていた福里さんにとって、大吉さんの言葉は衝撃的だった。

すぐに会社に辞表を出し、石見銀山の本社へ足を運んだそうだ。

会社ではそれなりの地位を築いていたし、家庭もある身。百貨店から1ブランドの営業担当になるというのは、思い切った決断だったと思います。

生涯の伴侶のような仕事に出会えた福里さんの言葉は、迷いがなくて真っすぐだなと感じました。

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「だんだん、生きることと働くことが近づいてくる。」 (ゲストハウスtoco. /女将 山田華南子)

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9月の秋晴れのある日。東京・日比谷線の入谷駅から歩いて数分の、築90年の古民家を改装したゲストハウス「toco.」へ取材に行きました。

この宿を切り盛りしているのが、女将の華南子さん。

女将の仕事は、世界中のバックパッカーから週末の息抜きに立ち寄る人まで、様々なところからやってくるお客さんをもてなしながら、宿を守ること。

スタッフの食事を準備したり、掃除、チェックイン、掃除…。暑い日も寒い日も、掃除は欠かせない。

「だって、綺麗じゃない宿にいい宿はないじゃないですか。」

心地よい空間を提供する、というのは、瞬発力ではできないことなのだろうな。きっと、日々の積み重ねからこそできるもの。

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「淡々と、仕事と人生を割り切ってできるような仕事じゃないからね。働くこと、生きること、暮らすこと。わたしにとって、曖昧だったそういうものが、ここで働くことによってぎゅっとシャープになっていくというか、極められてきている感覚がある。わたしがこうやって生きていきたいな、と思い描くものの過程が、ここで得られると思っているんだよね。」

朝から夜まで宿の仕事をした後、毎日プールに通って泳いでいるという華南子さんの表情は、パリッとしていてとても凛々しかったです。

仕事と人生を割り切る、という考え方ももちろんあると思うけれど、もし仕事と自分の進みたい道が重なったら、ものすごいパワーを発揮するのかもしれないと思いました。

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「小さくても、それなりに面白いですよ。」 (株式会社マルセイ/代表 小山直)

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太平洋に面した海辺の町、北海道の浦河(うらかわ)町。サラブレッドの生産地でもあり、海のものも丘のものも新鮮で美味しい豊かなまち。

この町でエネルギー事業を担うマルセイの代表、小山直(すなお)さんの言葉です。

小山さんは、いままで燃料屋さんとして、灯油やガスの配給を請け負ってきた。これからはもう少しエネルギーを広くとらえて、町のニーズに応えていく会社になっていきたい、という想いを持っている。

たとえば、今やっているのは、ニュースペーパー「マルセイニュース」の発行や、「おかんのおかず弁当」というお弁当の配達サービスなど。

「灯油は1ℓいくらの世界なんです。値段の勝負になってしまうと、大きな会社には敵わない。だから、戦わずに自分らしさを考えていきたいと思っているんです。」と小山さん。

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他人との関係をボロボロにしなくても、共感されるようなことをしていれば仲間は増えていく。

同業者とも奪い合わず、問屋にも無理強いせず、お客さんとも喧嘩しない。だけど決して言いなりにならず、ちゃんと意見を言う。そんな「戦わない経営」を、目指している。

それは、決して大きくはないかもしれないけれど、豊かなことかもしれないと思いました。小さくても、毎日が満ち足りている。そんな様子が伝わってきました。

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ほかにもたくさんの素敵な言葉をいただきました。ありがとうございました。今年もみなさん、どうぞよろしくお願いします。

笠原ナナコ

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<「2013年、大切にしたい言葉たち」ーナカムラケンタ編ー