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一人ひとりの顔が違うように、アンティーク家具にも一つひとつ、表情があります。
茨城県の常陸太田市にある株式会社ライジングプレナー。アンティーク家具の仕入れからリメイク、国内最大級のネットショップ「ラフジュ工房」での販売、「RAFUJU ROOM」「RAFUJU MAG」での提案までを、一貫して手がける会社です。
今回は、カメラマンを募集します。
会社の敷地内には、家具のリメイクを行う工房も、カスタマーセンターも、スタジオもあります。
「間近で工房の仕事を見ているから、いい加減には撮れません。」
カメラマンの方からは、そうした声も聞こえてきました。
現時点で写真撮影に関する経験や、家具についての知識は問いません。
周りは、里山と川をはじめとする豊かな自然に囲まれたロケーションです。四季の変化をはじめとして日々の小さな気づきを大切にしつつ、写真を仕事にしていきたい。そんな方にぜひ読んでほしいです。
時計は正午。
ライジングプレナーの事務所の2階にあるスペースでは、TVを見つつ、みなさんが昼ご飯を広げているところ。
和気あいあいと話す姿からは、仕事中と休憩時間に、メリハリのあることが伝わってきます。
時計が13時をまわると、みなさんは各々の持ち場へ。
販売のチャンネルをWEBに統一しているライジングプレナー。
WEBサイトに掲載する写真は、商品を伝える上でとても大切な手段です。
今回募集をするカメラマンは、会社とお客さんのちょうど中間に立つ存在といえます。
スタジオを訪ねると、撮影が行われていました。
この日話をうかがったのは入社4年目の瀧(たき)さんと、2年目の川上さん。
また、一緒に仕事をすることの多いインテリアコーディネーターの関口さんにも同席いただきました。
右から瀧さん、川上さん、関口さん
はじめに話をうかがったのは、4年目の瀧さん。
常陸大宮市出身の方。大学ではものづくりを幅広く学び、広告や雑誌制作に取り組んできました。
「もともと写真は好きでしたが、入学当時は携帯電話で撮影して、ブログにアップするくらいだったんです。あるとき、頼まれた撮影の評判が良かったんです。そのことがうれしくて、写真にのめり込んでいきました。」
カメラマンの仕事を探す中で、ライジングプレナーを見つけたという。
「家具が特別好きだったわけではないんです。けれど働きはじめると、ブライダルや“ブツ撮り”と呼ばれる商品撮影とも違う魅力があることに気づきました。」
「家具を一点一点撮影する日もあれば、インテリアコーディネーターと打ち合わせつつ、モデルを入れた撮影も行います。」
家具と一言にいっても、一人でも持ち運びのできるちゃぶ台から、高さが2m、重量が100㎏近くある棚まで幅広い。
商品によって撮りかたも変えていく。
「一般的な家具であれば、数カットで終わります。中には、引き出しの中に小さな引き出しが隠された“からくり”家具もあるんですね。そうした場合は、カット数を増やして紹介をしていきます。」
素材によっても、写真映えが異なるという。
「欅(けやき)は人に例えると目鼻立ちのはっきりした美人なんですね。逆に木目があまり生きないものもあります。そうしたときは光のあて方やカメラの露出設定をがらりと変えて試します。」
撮影において心がけていることがあるそうです。
「ライジングプレナーは、家具を届けることで、お客さまによりよい生活を過ごしてもらえたらと考えています。わたしたちカメラマンも、売って終わりではありません。家具がお客さまのもとに届き、どう使われるのか。先々まで考えていきます。」
写真撮影に加えて、商品の最終検品や採寸を行うのもカメラマンの仕事。
「たとえば食器棚ならば、どれぐらい収納できるかがイメージできるように、棚板の奥行きも図ります。それから、棚板のガタツキを確かめるのも大切な仕事です。もしも不具合があれば、工房へ戻し、直してもらいます。」
続けて話をうかがったのが、2年目の川上さん。
川上さんはミリタリー好きが転じて、写真に興味を持った方。写真を仕事にしたのは、ライジングプレナーで働きはじめてからのこと。
「ネットショップで買いものをしたら、現物を見て『写真と全然違う』と思った経験はありませんか?画像を加工すれば、見栄えのよい写真はつくれます。けれどライジングプレナーでは、現物を伝えることを大切にしています。」
一昨年には、部屋のトータルコーディネートを提案する「ラフジュルーム」というWEBサイトも立ち上げました。
このサイトでは、インテリアコーディネーターが家具のレイアウトを考え、カメラマンが写真を撮影していきます。
川上さんは、インテリアコーディネーターの関口さんと仕事をすることが多いそう。
「まず関口さんが大まかなイメージは組み、細かい家具の配置や必要なカットは撮影を進めながら固めていきます。たとえば『イスの座面と肘掛けの距離感が伝わる写真がほしい』といったオーダーを受けるんですね。」
「まず一枚撮影してみる。それをもとに寄ってみたり、家具の配置を見直したり。別のスタッフがモデルになることもあります。そうしたやりとりを経て、WEBに掲載する写真が仕上がります。」
撮影は限られた時間の中で行われます。
カメラマンには、モデルの洋服のしわから指先まで、細かい部分にも気配りすることが求められるという。
「ムダ撮りは極力しないように、数カットで撮影を終わらせることを心がけています。」
もう一つ、ライジングプレナーで働く上で知っておいてほしいことがあります。
「工房、カスタマー、広報。みんなが近いことは大きいと思います。工房スタッフが一生懸命仕事に取り組む姿を見ているからこそ、下手な写真で台無しにしたくないんです。もし、実物と大きく違う写真を撮影したら、カスタマーにも迷惑をかけてしまいます。」
「色々な人の気持ちを背負っているので、撮影中は汗だくになります。気づかないうちにすごい態勢になっていたり、4時間ぶっ通しで撮影する日もあります。撮影が終わると、一気につかれが出ますね。」
ここで話をうかがったのが、インテリアコーディネーターの関口さん。
出身は群馬県。カナダで美術を学び、テキスタイル関係の仕事をしてきました。帰国して、昨年からライジングプレナーで働きはじめました。
「常陸太田市に来てから、季節を感じやすくなりました。さっき郵便局に行ったとき『ああ、オオイヌノフグリがもう咲いている』と思いました。すぐ近くには、そばの畑もあります。いいですよ、通勤路。」
「観光地ではないので、派手なものはありません。けれど、日常の暮らしが充実しています。スーパーの魚売り場に行くと『メヒカリあるよ』『新物のあおさが出たよ』一人感激しています(笑)。休日には近場に出歩くこともあります。一見これと言ってなさそうですが、本人が目を向ける気持ちがあれば、小さな喜びは、たくさん見つけられると思います。」
仕事にも同じことが言えるのかもしれません。
ふたたび瀧さん。
「ちゃんと仕事を頑張りたい。そう思える人であれば、経験を問わずぜひ一緒に働きたいです。カメラマンという職業や、ライジングプレナーの運営するサイトに、はなやかなイメージを持つ人もいるかもしれません。けれどスタジオで写真を撮影する毎日は、地道で単調で、ともすればルーティンワークとも言われかねません。撮影のセッティングにおいては、力仕事もあります。」
「働くときは働く。暮らすときは暮らす。シンプルな生活をしやすい環境の中で、小さな楽しみを見つけられる人がよいかもしれません。」
ここまで話をうかがい、印象的だったことがあります。
それは、ライジングプレナーがプロフェッショナルの集まりからはじまっていないこと。
アンティーク家具を現代の暮らしに取り入れてほしい。その思いに共感した人たちが集い、試行錯誤を重ねてきました。
働くみなさんからも、素朴な方が多い印象を受けます。
たとえば、撮影環境も少しずつ整えてきました。
現在のスタジオは2年前に建てられたもの。
「わたしが働きはじめた4年前は、100%自然光での撮影だったんです。雨の日は撮影がむずかしかったり、冬場は15時ごろまでしか撮れなかったり。色々な制約がありました。」
そこで、照明機材から見直していきました。ストロボを設置し、蛍光灯は自然光に近い発色のものを採用。写真の良し悪しを左右する光は、窓を設けることで改善してきた。
いまは、次のステップを目指しているそうだ。
「スタジオでの撮影に限界も感じつつあります。読者の中心層は30、40代の女性です。料理のあるシーンは喜ばれるんです。けれど、いまのスタジオには水回りがないので、料理ができません。それから、4m近くある高い天井に、真っ白な壁では、どうしてもスタジオ感が出てしまいます。」
お客さまに寄り添うには、どうしたらよいだろう?
そう考える中で、あることを決めたという。
「現在、スタジオ・事務所・そして住まいを兼ねたハウススタジオを建設中なんです。」
取材後、しばらく仕事の様子を見学させてもらいました。
ふと、瀧さんがイスに座りはじめました。
「自分が座ることで、クッション性、アームと背もたれの位置、足のつきかたを確かめる。これも大切な仕事なんです。」
どうしてですか?
「もしクッションがへたっていたら、そのことを写真で表現していきます。またキズ、色むら、焼けといった“味”を伝えることも大切です。『どうやってついたのだろう』『爪を引っかけたのかな』そうした想像もアンティークの楽しみの一つだと思います。」
いっぽうで、テープ跡などの汚れが見つかれば、工房へ戻していくという。
「味と汚れは別物です。落とせる汚れは、きれいにしていきます。そうしたことが楽しいと思える人は、きっとのめり込んでいくと思いますよ。」
最後に、瀧さんから。
「わたしがライジングプレナーで働きはじめたきっかけは、写真を仕事にしたかったからです。けれど、長い時間家具に接している中で、次第に面白いと思うようになりました。休日に、会社の仲間と出かけることがあります。出先でも、ついつい家具を見てしまうんです。気づくと目利きをはじめている。そして、あらためて自分たちの家具は誇りを持って人に届けたいものだと思える。どんどん好きになっていける仕事だと思います。」
(2015/4/20 大越元)