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正直につながる

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着ている服のラベルをみると、行ったこともない国の名前が生産地として記されている。

さっき飲んだコーヒーも、お昼に食べたパンも、今手にしているスマートフォンも。日本で暮らすわたしたちのまわりには、どこかの国の誰かがつくったもので溢れている。

いっぽう先進国と呼ばれる国で売るものをつくるために、遠く離れた国や地域ではさまざまな問題が起きていることがある。

正当な賃金が払われず搾取されてしまう労働力、抜け出せない貧困、児童労働、生産の効率を上げるために使われる農薬による環境破壊など。

世界中でものが流通するようになった今、わたしたちがなにを、どんな値段で購入するのか。それは遠く離れた場所で働く人の生活につながっていると思う。

ものが溢れる中でなにを買えばいいのかわからなくなりそうだけれど、そんなとき1つの指標になるのが「フェアトレード」や「オーガニック」という言葉。

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今回はオーガニックコットンの原糸の輸入・販売、生地の企画、製造などを行う株式会社パノコトレーディングで、営業アシスタントを募集します。

お話を聞いたみなさんは、とても健やかに働いているように感じました。

  

神田駅から歩いて5分ほど。山手線の線路沿いにあるビルに、パノコトレーディングの事務所がある。

みなさん集中しているのか、とても静かなオフィスのなかで、まずは代表の野倉さんに会社のことを伺う。

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「前職で知り合った仲間と独立して、船舶用の燃料を取り扱うことからスタートしました。新しい仕事もつくりたいと思っているなかで、オーガニックという単語を耳にすることもあって。20年も前だから、まだ知らない人がほとんどでしたけど」

興味を持ちはじめたころ、アメリカでオーガニックコットンの取引をしている人に出会い、仲間に加わってもらうかたちで事業がはじまった。

オーガニックコットンとは、栽培から製品になるところまで、環境に負荷をかけずに、公正なものづくりをしていることが認証された綿花のこと。

「農業ですから。1年に1回種を植えて、収穫して、紡績して糸にします。その糸を日本で生地にして、服などの製品にして。種を植えてから最終的な製品になるまで2年以上かかるけれど、その間にたくさんの人が関わっているんです」

繊維を扱うのははじめてだったこともあり、事業はなかなかスムーズには進まなかった。

「糸を売るだけで済むかと思っていたんですけど、たとえば服をつくっているところは、糸は買わない。生地を買うんです。だから一旦生地にしないと、売れなかったんです。一時期は手さぐりで製品づくりもやっていました」

糸を売るために試行錯誤を重ねる期間が続いたけれど、少しずつオーガニックコットンをつかった製品が増えはじめ、糸や生地が売れるようになってきた。

「今、ようやく生地屋さんになってきた、というところです」

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「紡績会社って日本でもありますけど、工業的な規格でつくっているところがほとんどです。インドの綿と、アメリカの綿と。いろんな特色のある原料を集めて、できるだけぶれのない均一品をつくるんです。けれどわたしたちは、それぞれの特色をいかしてものづくりをしています」

事業が軌道にのるまでに、大量に生産できるものをつくろうと考えたことはないんですか。

「それは大手がやってますから。原料にこだわりを持って服をつくる方も増えてきたので、わたしたちの糸や生地も需要が出てきたんですよ」

いろんな苦労をしてきたけれど、オーガニックコットンというキーワードからは逸れなかった。

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今はスイスにあるリーメイ社のプロジェクトに参加し、綿糸を輸入している。リーメイ社はインドとタンザニアの農家と直接契約する現地法人をつくり、原料を栽培しているそうだ。

コットンをつくっている現場では、認証をクリアするためにさまざまな取り決めをしている。農薬や化学肥料をつかわない有機農法を行うこと、綿農家や生地工場で働く人たちに適切な労働環境を提供することなど、多くの条件を守ってもらう必要がある。

普通の農法よりも手間のかかることが多い分、現地でもたくさんの問題が起きるそうだ。それを1つ1つクリアしながら、糸がつくられていく。

  

主に営業を担当している三保さんは昨年、実際に綿花をつくっているインドに視察へ行ったそうだ。

「収穫祭の時期に、現地に放り出される感じでしたね(笑)」

1つ1つの言葉を考えながら話す雰囲気が、野倉さんとすこし似ているような気がする。

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三保さんはここで働きはじめて8年目。美術系の大学でファッションを学び、ブランドの立ち上げや空間をつかったパフォーマンスなどを行っていたそうだ。

「子どもができたことをきっかけに、本物に近い原料を扱いたいということに行き着きました。未来を見据えたときに、意味のあるものづくりをしたい。サステイナブルなことをしたいと思うようになったんです。」

そんなときにパノコトレーディングで営業スタッフを募集していると聞き、入社をすることになった。

それまでやっていた活動とはまったく違う仕事を選んだように感じます。

「そうですね。けれどより多角的にものづくりに関わることになったという感覚なので、それほど違和感はありませんでした。」

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具体的には、どんな仕事をしているんだろう。

「小さな組織なのでなんでもやります。テキスタイルの企画や営業。在庫を確認して協力工場さんに発注をする生産管理に使う時間も多いです。生地の見本を切って送るとか、地道な仕事もたくさんありますよ。」

飛び込み営業をするというより、展示会に出展して生地を知ってもらうことから関係をはじめることが多いそう。国内に限らず、最近は海外ブランドから声がかかることも増えてきた。より積極的に海外のブランドにアプローチしていくことも検討している。

「ぼくたちが積み重ねてきたことが、方向性として間違っていなかったという自信がついてきました。オーガニックコットンって高いとか、質が悪いというイメージを持たれることも多かったんですが、クオリティを維持できるようになりましたね。興味を持つデザイナーさんもかなり増えてきました」

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経験を活かし、2年前からはSOIL&RAINというアパレルのブランドを社内で立ち上げたそうだ。今後はこのブランドに力を入れていくことになるので、三保さんが今やっている仕事を担ってくれる人を募集したいと考えている。

「ぼくらはオーガニックコットンしか扱っていません。原料の種類が少ない分、いろんな手法で広めていかなきゃいけない。魅力ややっていることの意味など、ぼくらしか伝えられないものがきっとあると思うんです」

オーガニックコットンの製品が選ばれ、取扱量が増えれば、綿花をつくるための有機農業の農地が増えることになる。それは搾取の問題だったり、農薬を使うことによる土壌へのダメージを減らしていくことにつながって、いい循環が続いていくことにつながる。

「かかわる人の暮らしがよくなったり、希望を持てることに直結していく仕事だと思っています。つくっている工程はすべて把握しているので、扱っているものが本物だと自信を持って言える。ぼくらが正しいと思っているものを、正しいやり方で売っているんです。」

扱っている商品やサービスに、素直にこう言える人は実は多くないかもしれない。

  

「生産者にも、地球にも、着ていただく人にも。極力だれにも迷惑をかけない仕事をしたくて」

そう話してくれたのは、三保さんと同じく営業を担当している池上さん。まわりの空気まであかるくするような笑顔が印象的な方です。

以前は作家としてものづくりをしながら、工業製品のデザインに携わる仕事をしていたそう。

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「自分のデザインが最終的に地球のためになっていないという違和感があって。たとえば自分たちがつくった製品が売れると、その製品が売れれば売れるほど電力が消費される。自分のつくったものが、環境にどんな影響を与えるのか。なかなかそこまで考えてつくることができなかったんです」

仕事をやめて、ニューヨークやロンドンで時間を過ごした。たくさんの価値に触れることで、日本が恵まれている国だということをあらためて認識したそうだ。

「自分ができる範囲のことをやれたらと考えるようになりました。作家としてやっていたこともつながって、辿り着いたのがオーガニックコットンだったんです。扱うもののバックグラウンドも納得した上でできる仕事を探して、この会社に出会いました」

普段の仕事の中で、生産者と直接やり取りをすることはない。けれど日本にいる自分だからこそできる「伝える」という役割で仕事がつながっている。

「自分たちがつくっているものにうそがない。そこは自信を持って言えるんです」

オーガニックという言葉は広がってきてはいけるけれど、人によって認識や、求めることが違ったりもする。相手にちゃんとバックグラウンドを伝えていくことは、難しいことの1つだそう。

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池上さんは入社してから1年が経ったところ。原料のこと、生地のこと、染色のことなど、学ぶことがとても多い。

「奥が深いですね。たとえば、この色にしてくださいってお客さんからお話いただくのですが、その色に行き着いたり、行き着かなかったり。難しいです。まだまだ、長い道のりだなって思います」

生地づくりは国内のテキスタイルメーカーにお願いしている。職人さんと、日々学びながらものづくりをしているそうだ。

  

どんな人と働きたいですか。

「わたしは衣食住に関わることに関心があるので、日々の生活でふと仕事のことを考えるのも苦ではありません。仕事としての区切りというよりは、生きることの一部として考えることが好きであれば、いろんな可能性がある会社です」

営業やアパレルに関わった経験などはとくに必要ないそうだ。自分たちの扱う商品に関心を持って、意味を見出せることが大切だと思う。

「お客さんに対して、安くするから買ってもらうようなやり方ではないんです。自分たちのやり方に誠実に、しっかりと考えを持っていられる人がいいですね」

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みなさんの話を聞きながら、なにかを買うということは、人やものとのつながりを選択していることなんだとあらためて考えました。

地道なことは多いかもしれないけれど、まっすぐ誠実に働ける仕事だと思います。

(2015/5/30 取材 中嶋希実)

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