※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
温泉道場は、埼玉県にある3つの温浴施設「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」「白寿の湯」「おふろcafé utatane」を運営している会社です。『おふろから文化を発信する』という理念のもと、行ってきた事業はさまざま。
廃れた銭湯を今までにないサービスを提供する温浴施設に再生させたり、おふろがさまざまな交流を生む場であるという特性を活かして、まちの地域活性化にも取り組んできました。

大宮駅から車で10分ほど進んだところに、utataneはある。
平日の朝10時、取材にうかがったときはちょうどハロウィンの時期。館内に飾られたカボチャやオバケたちに、なんだかほっこりと癒される。

「こういう季節のイベントも、最初はお店をまわすことに手一杯で全然できなかったんです。年々レベルが上がってきていると感じますね」
そう嬉しそうに話してくれたのは、代表の山﨑さん。

もともと温泉が好きだったこと、施設の設計や改修も含め、幅広く経営を学べることに魅力を感じて、前職で携わっていた日帰り温泉のコンサルティング事業がきっかけとなり、温泉道場をはじめた。
この5年間を振り返ってどうですか。
「社員も5名からスタートして、今は3倍の15名に増えました。会社としての仕組みや働き方もつくっている最中なので、ようやく会社っぽくなってきたなぁと思います。使えるお金も増えて、できることも増えましたね」
「それでもやっぱりこの会社の強みは『人』で、個性あふれるメンバーがのびのびと働いている雰囲気は変わりません。人によって切り口が違ったりするので、おもしろい店づくりができていると思いますよ」
おもしろい店づくり。
「自分たちじゃないとつくれないお店を増やしていきたいんです。utataneもすでにただのおふろ屋さんじゃなくなっています。おもしろいことっていうのは必ずしもおふろじゃなくてもいい」
「おふろというハコを軸に、人の集まる場所、文化の発信基地となるような場所をつくっていきたいという思いがあって。地域に人を集めるための採用支援や場づくりも含めて、おふろ屋さんというより“暮らしを提案する”というかたちでやっていきたいですね」
今後は新しい店舗の出店も考えているそう。
山﨑さんのお話を聞いていると枠にとらわれずに、「あんなこともできるんじゃないか」と思ったら、迷わず挑戦していけるような懐の深さを感じる。
実際にこの会社で働くってどういうことなのだろう。
「この2人のようなモデルパターンで、成長してほしい」と山﨑さんが紹介してくれたのが、写真左から野澤さんと宮本さんです。

宮本さんは、首都圏で介護施設に入居している高齢者に、美容サービスを提供する会社で働いていた。温泉道場にやってきたのは1年半前。
「実家は和歌山県のすごい田舎で、ワンマン電車が1時間に1本しか走らないようなところなんです。もともと温泉や山登りも好きだし、地域の仕事に取り組んでみたくてここにきました」
温泉道場にやってきてすぐにutatane の支配人に抜擢される。前職では営業の仕事をしていた宮本さんにとって、お店づくりははじめての体験。しかも当時のutataneは赤字状態で、早急な改善が必要だった。
「最初は右も左もわからないし、全体像もまったく見えない状態でした。だからとにかくいろんなことを試してみよう、いろんな人に話を聞いてみようと思いましたね」
今は集客に力を入れる、次はコストを見直すというような、大枠の事業戦略は会社全体で立ててサポートしてくれる。その中で支配人として、お店に何が必要なのかを考えなくてはならない。
黒字に変えなくちゃというプレッシャーはありつつも、道筋を示してもらいながらシンプルにやるべきことをやってきたと話してくれた宮本さん。
とはいえ、まったく経験がないところから動き出すというのはとても難しいことだと思う。どんなことをとっかかりにしてはじめていったのだろう。
まず目についたのは、閑散とした館内。utataneはお客さまからどんなふうに見られているのか。宮本さんは街に出て、実際に話をきいてみるところからはじめたといいます。
「お店で働いたあとに大宮の居酒屋を2、3軒ハシゴして、『僕はこういうお店をやっています!』って話したりしていました。いろんなイベントに参加して宣伝したり、割引券を配って歩いたりもしていましたね」
反応はどうでした?
「『見たことあるけど行ったことないや』とか『ふーん、そんな場所あるんだ』みたいな声が9割でした」
あまりの認知度の低さに愕然としながらも、大学にも割引券を置いてもらって学生を呼び込んだり、webメディアに取材をしてもらったりと、地道な活動を続けることで少しずつ訪れる人が増えていったという。

心がけたのは現場に入って働くということ。フロントや清掃、ときには送迎バスの運転手まで一通りの役割を自分で体験したという。
「掃除機が1台しかないと、持ち運ぶのがすごく不便で。各フロアに1台置いたほうが、効率がいいかなと思ったり。現場で働いてみると、すごく細かいことにも気づく。そういうことを一つひとつ解決していったんです」

だけど目の前の壁を一つずつ乗り越えていったら、いつのまにか自分の守備範囲が広がっていたといいます。できることが増えていくと、「これもやってみなよ」と任される環境もある。
「この会社では、支配人として本当にゼロから組織や仕組みをつくっていける。今はどんなイベントを開催するか、どんなインテリアを置くかということも個人の裁量で決めています。直接お店をつくっているという実感が楽しいし、やりがいですね」
「もちろん大きな責任は伴いますけど、これなら自分でもできるかもしれないという手応えは、自然と持てるようになりました。最近は経験を積んだことで、将来は起業してみたいという思いも湧いてきています」

目の前にある環境を当たり前だと思わずに、自分には何ができるのか徹底的に見直していく。そうしていくうちに、自然と結果と自信がついてくる。
自分の頭で考え、行動するということは宮本さんのような働き方なのだと感じました。
同じくutataneで、現場のスタッフをまとめる野澤さんにもお話を聞いてみる。
山﨑さんからは『無礼な輩(笑)が多いうちの会社で、相手を思いやる心をもっている人』と評される野澤さん。やわらかい笑顔が印象的で、気さくで話しかけやすい人でもある。

働いてみてどうですか。
「もともと接客がすごく好きなんですけど、今はお店を良くしていきたいという思いが一番強くて。学生スタッフが多くて入れ替わりも激しいお店なので、いつ来ても変わらずいいよねって言われるような接客ができるようにしたいですね」
そのためには、「やっぱりスタッフと仲良くすることかな」と野澤さん。
「仕事だけじゃなくてプライベートの話もして。たとえばおとなしい感じのスタッフには、その人が好きなサッカーの話をふったりして、きっかけをつくっています」
「スタッフ同士で会話をしてから仕事にのぞむほうが、お客さまにいい声で挨拶ができたり、自然な笑顔が出るようになったんです」
話を聞いていると、本当に人と接することが好きなんだなと感じる。でも現場のリーダーという立場だからこそ、大変なこともあるんじゃないだろうか。
くだけた会話で心をほぐしたいと考えているけれど、ときには馴れ合いにつながってしまうこともあるという。
「私自身、指摘されるのもするのも苦手で。今の対応はちょっと間違っているなと思っても『まぁいいか』と流してしまうことが何度かあったんです」
和を大切にしたいからこそ、言えなくなってしまう。
「今はまぁいいかと思っても、『ちょっと待てよ』と立ち止まって考えるようにしています。まだまだ上手くできなくて試行錯誤ですけど、意識するだけでも変わってくると思うので」

隣で聞いていた山﨑さんが話を続ける。
「気づきのきっかけにつながるような研修や施設への視察などは、他の会社に比べてすごく多いと思います。いろんな文化や考えを体感することは、体験の幅が広がって豊かな発想につながると思うんです」
たとえば来週はサバイバルゲームの研修をやるんですよ、と言われて思わず驚く。
「普段は役職者じゃない人が役職者になることで、しっかりと目的をもって動くチームとそうでないチームにどんな差がでるのかというところを、楽しみながら体験できればいいなと。リーダーの戦略がしっかりしていないと撃たれますからね」

宮本さんのように組織全体を引っ張っていく統括リーダー、野澤さんのようにスタッフを支えながら自らの姿勢で見本を見せてくれる現場リーダー。
どちらのタイプを目指しても、幅広く取り組んでいける温泉道場の仕事は自分を豊かに成長させてくれると思います。

まずは、この環境に飛び込んでみてください。
(2015/11/25 並木仁美)