求人 NEW

地方で暮らすためには

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

これまで17名の人たちが徳島県美波町に移り住み、地域ブランドの発信やウェブ技術などを学んだ「美波クリエイターズスクール」

3度目となる今回は、さらにバージョンアップした内容で募集します。

awae0001 前回の募集では地域ブランド発信アドバイザーとWEB技術者を募集しましたが、今回はその2つをさらに細分化。

WEBクリエイターコースやWEBマーケターコース、ビジネスプランナーコースなどから選ぶことができます。

必要な知識をプロから学び、実践しながら美波町で暮らす4〜5ヶ月間。得た経験をもとにほかの地域でチャレンジしてもいいし、地元の人とのつながりが増えて美波町で暮らし続けてもいいかもしれない。

地方で暮らすことを考えている人にとっては、またとない機会だと思います。

 
徳島駅から美波町へは電車で1時間半。

海も山も近くて、明るい雰囲気の町。漁師町だけれど、農家さんも多いのだそう。

お遍路の順路だから、昔から接待文化が盛ん。外からの人に抵抗感がないのもこの町の魅力だと思う。

そんな美波町の町中にある「初音湯」。明治時代に建てられた銭湯をリノベーションしてつくられた交流施設です。

awae03 この町で地域活性に関わるプロデュース事業を展開する株式会社あわえが手がけました。

今回募集するクリエイターズスクールもあわえが運営しています。

初音湯の中にあわえのオフィスが設けられている。

もともとあったタイル張りの浴槽を活かして、掘りごたつに入るようなテーブルが真ん中に置かれている面白い空間。

「『お風呂屋さん』と呼ばれることもあります(笑)。僕らはまだまだ3年目だし、仕事づくりとか人材育成とかいろいろやっていて、何の会社か町の人に認知されていない部分はあると思う。けど、やっていることのテーマは変わらないんですよ」

あわえの取締役、山下さんです。

awae04 「美波町から日本を元気に」

地域産品の開発から産直レストラン「odori」のプロデュース・運営、人材育成など、あわえは地域課題を解決するさまざまな取り組みを行っています。

「うちの目標は、都市部にある課題を解決する能力が地方にあるということを可視化すること。そのひとつの指標が仕事です。地方では仕事の能力が地域還元に活かされるし、個人のキャリアアップにもつながる。間違いなく地方のほうがいろんな仕事ができるので、成長できると思ってます」

昨年末から今年3月にかけて行われた、第2期クリエイターズスクール。地域ブランド発信アドバイザーに8名、ウェブ技術者に5名が集まりました。

どの人も経験のない状態からのスタート。それぞれライティング・写真・編集・ブランディング・ウェブなどを学びました。

「ウェブ技術者のチームはプログラマー育成になるので、地域課題をやるにはなかなか難しい。そこで美波町にサテライトオフィスを開設している鈴木商店さんが持っている悩みを解決しようってことで案を出して、面白いのをつくったんですよ」

そう言いながら、山下さんが「エンジニア診断モンスター」というウェブページを見せてくれた。

なんだか昔のゲームによく似たデザイン。軽快なBGMとともに「テンションの上がるオフィスの環境は?」「この中で好きな食べ物は?」といった質問が出されてくる。

awae05 「鈴木商店さんの社員がキャラクター化されていて、心理テストが裏で組まれているんです。答えてきた診断結果で自分の適性を見ることができる。求人情報を面白く見せて、会社を発信しようというものなんですね」

5人いるチームの中で、絵が得意な人がキャラクターをデザインしたり、それぞれの長所を生かしてつくったのだそう。

何度も企画を練り直し、開発まで2ヶ月ほどかかったといいます。

「実際の開発の現場だと、すでに企画が決まっていて1タスクだけが振られるんです。でも、キャラクターをつくれとだけ振られてもワーカーは理解できない。重要なことって、なぜこの仕事が生まれたのかを理解することだと思うんですよね」

「今回スクール生に体験してもらったのは、問題を探すヒアリングから、その問題を解決するソリューションを組み立て、実現するアイディア出しまで。費用対効果を考えたり、自分たちの技術力や時間の制限があるなかで、何ができるか拾ったり捨てたりする作業がある。その生み出すつらさ、形にするつらさを抜けて世に出たわけです」

初心者の開発者ではまず経験できないことかもしれない。反響もあり、アクセス数もものすごく伸びたそう。

4ヶ月の経験を通じてスキルやきっかけを得たウェブ技術者チーム。卒業生のひとりは鈴木商店に、2人は大阪と徳島のウェブ会社に、ひとりはあわえに就職しました。

地域ブランド発信アドバイザーも合わせて第2期生全体では約7割が企業に就職、あわえには2名入社しました。

多くの人が着実に次の道へ進んでいる。

今回も、ここで習得したスキルを地元に帰って活かしたいという人も、そのまま美波町で暮らしたいという人も大歓迎だそうです。

「ここに住み続けなくてもいいんじゃないかなって思うんですよ。人って住む場所は1箇所しか選べないから、ひとりの人がいろんな地域とご縁を持って生きていけると、みんなが幸せになれると思う」

「それでいろんな地域にいる人が橋渡し役になってくれればいいなって。だから卒業生にも、早く雇用者になってくれと伝えているんですよ。仕事をちゃんと教える立場になって、ここで与えられたものを誰かに返してほしい。卒業生がどんどん頑張って現役のクリエイターズスクール生に教える立場になったり、うちの会社に入りなよって言えるようになったり。そういう人のつながりが生まれたら、面白いネットワークができそうじゃないですか。僕はそれを目指しています」

awae06 これまでもクリエイターズスクールにやってくる人の思いはさまざまでした。そのなかでも、山下さんは「大人な遊び人」に来てほしいといいます。

仕事も生活もちゃんとできて、教養のある方。字で書かれてはいないけど、田舎にはいろんな作法がある。

「ちゃんと笑顔で挨拶できるかとか、下座から座るとか。毎年あわえは人を呼ぶので、まとめて見られがち。だから、ちゃんと一般常識のある方を増やしたいなと」

「それに、いたずら心がないとできないかもしれないですね。真面目でガチガチすぎちゃうとアイディアは出ない。物事を楽しくしていかないと。エンジニア診断モンスターも、楽しい方向に持って行こうとしている努力がありましたから」

 
こんどは第2期の卒業生に話をうかがってみます。

写真左から、小川さんと村松さんです。

awae07 給料をもらい、働きながらスキルを身につけることができる。そう聞くとなんていい環境なんだと思うけれど、実際はなかなか大変な毎日だったそう。

ウェブ技術者チームにいた村松さんはこう話します。

「早く作業に移りたいけど、まず企画を通すまでのハードルがすごく高くて。途中で嫌になって、みんなで気分転換に海を見に行くほどなんですよ。どうすればいいんだと追い込まれて最後の最後に出てきたのがあの案でしたね」

ふたりは卒業後、あわえに入社して美波町で暮らし続けています。

村松さんは東京出身。東京以外の場所での求人を探していたら、クリエイターズスクールの募集にたどり着いたといいます。

来た当初は、あわえに残ることは考えていなかったそう。

「せっかくのご縁だし、すごく知り合いも増えて。街を歩いていると知っている人だらけなんですよ。100歩くごとに2人くらい知り合いがいる。その環境がただただ好きで」

awae08 小川さんは地域ブランド発信アドバイザーの卒業生。将来に地元の奈良で本屋を開くため、クリエイターズスクールに参加したといいます。

けど、美波町へ来てみると、意外なつながりがあった。

「大阪の会社を辞めて、しばらく海外へ行ってからここへ来たんですけど。アメリカで出会った人が山下さんの知り合いだったりとか、フィリピンで英語を勉強していたときのルームメイトが、あわえがすごくお世話になっている美波町の方の息子さんで。そういう縁があって、スクールが終わっても残らざるを得ないというか(笑)」

小川さんは地域ブランド発信アドバイザーのときに行っていた産直レストランodoriの企画・運営を引き続き担当。人が集まる本屋づくりのために必要なことがここで経験できているといいます。

「それに、土地のことも人のことも、4ヶ月住むだけじゃ何もわからないなと思って。せっかく面白い町だから、もっと深掘りしたいなと思ったんですよね」

小川さんが美波町で面白いというのは『人』。外から集まってくる人もいろんな人がいて面白いし、とくに地元の人は濃くて面白いのだとか。

「このまえ仕事で関わっている地元の人に急にトラックに乗せられて、山奥に入っていったんです。着いた先で家を一軒取り壊していて、そのまわりに家電が転がっていて『全部持って帰れ!』って」

「僕が家を探しているのを知って、家電を用意してくれたみたいなんですけど、めっちゃ腐食してるんですよ。シュールだけど、ほんと面白いですね。パワフルな人がいっぱい。人に興味ある人はすごく楽しめると思います」

 
最後に話をうかがったのは、ウェブ技術者チームの講師を務める、鈴木商店・美雲屋の小林さん。

awae09 小林さんはもともとサーフィンが大好きで、会社の本社がある大阪で働いているころからよく徳島に来ていたそう。

鈴木商店のサテライトオフィス進出が決まり、美波町に移住。消防団などいろんな組織に入って、週末は行事や会合という名の飲み会で忙しいらしい。

「本社のある大阪へ出張に行くと、仕事して寝るって感じ。でも、こっちではまず地元の漁師さんと挨拶をするところからはじまる(笑)。会社の定時は9〜18時なんで、18時頃に仕事を切り上げて帰って寝て、0時半に起きる。そこから5時くらいまで漁の手伝いさせてもらって、出勤する」

「眠たくはあるんですけど、すごく充実していて。都市部に比べたら非日常的な毎日です。スキルアップだけでなく、都市部では体験できないこともスクール生の方は楽しんでもらえたらいいですね」

小林さんは、アグレッシブな人でなくても、ちょっとでも興味があれば応募してほしいとのこと。とくに都会でジレンマを抱える人に来てほしいといいます。

というのも、笑顔いっぱいのいまの小林さんからは想像できないけれど、一度会社を離れた時期があったといいます。

「いろいろ疲れて、人とも喋りたくなくて。でも、こっちにきて自然と笑えるようにもなったし、つながりがたくさん増えた」

「都市部で何かしらのストレスを感じながら働いている人っていると思う。なんとなくでも、地方で働きたいとか、サーフィンや阿波踊りをやってみたいなとか。そう思いながら電車に揺られて働いている人。もしかしたらあなたがめちゃくちゃマッチするかもしれないので、1回飛び込んでみなよって言いたいですね。その『何かしたい』って気持ちを諦めずに、ここに来てほしいなと思います」

awae10 漁師町で暮らしながら、仕事の力をつけるクリエイターズスクール。

ただスキルを学ぶだけでなく、美波町に住む人たちとのつながりも生まれるのも大きな実りだと思う。もしかしたら、小川さんや村松さんのようにこの町で暮らし続ける自分がいるかもしれない。

ここでの経験やつながりを糧に、次の自分の可能性を広げていってください。

(2016/6/27 森田曜光)