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自信をもつことは、次のステージへいってみようという勇気になると思う。たとえば、「ありがとう」「たすかったよ」という言葉をもらったとき。自分で稼いだお金ではじめてアパートを借りたとき。
仕事って、自分を成長させるひとつの手段かもしれません。

支援というと“助けてあげる/もらう”という関係を想像するけれど、ここでは障がいのある利用者さんとスタッフが「きちんと稼ぐ」という同じ目標をもって、一緒になって働いていました。
だからでしょうか。働くスタッフたちは「関わりの中でお互いに変わっていく感じがある」と話します。
今回は、そんな関わり方をしてみたい人を募集します。

障がいがあってもなくても、しっかり稼いで自信をつける。そんな働き方に興味のある人は、ぜひ続けて読んでみてください。
木更津へは、東京から電車で1時間半。電車のほかにもアクアラインを通るバスが走っていて、こちらは1時間ほどで着くそう。
あいにくの雨。
駅につくと、代表の筒井さんが迎えてくれました。

「もともと木更津でまちづくりをしていて、はじめから福祉に興味があったわけじゃなかったんです」
きっかけは、まちづくりを通してとてもお世話になった方にあるお願いをされたことだと言います。
「その方の息子さんが障がいのある方で、仕事を探していました。『お給料はなくてもいい、筒井くんのところで仕事を手伝わせてほしい』と頼まれて。親ですから子どもが可愛くないわけがない。それでも福祉の知識もない僕に頼むくらい、地域に働く場所がないんだと知りました」
行政から出る障がい者の職業訓練に対する謝金を給料として渡しながら働いてもらううち、自分も働きたいと申し出る障がいのある方や家族からの連絡が増えてきた。
そこで「これは本腰を入れて取り組まないとできないことだな」と思い、8年前に特定非営利活動法人コミュニティワークスを立ち上げます。
はじめにつくったのは、製菓や縫製、制作などものづくりをする「地域作業所hana」。hanaはハワイ語で“仕事”という意味なんだそう。
ちょうどhanaに到着。障がい者施設というと、もっと無機質な建物を想像していたけれど、木の壁とたくさんの窓があって開放的な雰囲気。

1階の厨房で製造していたのは、パティシエ監修のもとにつくられたという本格的な焼き菓子。マザー牧場さんに卸しているもので、パッケージは絵本作家さんが描いているのだそう。
2階では雑貨の組み立てやパッキング、縫製など、様々なものづくりをしています。この日縫っていたのは、ミュージアムショップなどで扱われているというバッグ。
見ていると、hanaでつくるものはデザイン性や商品としてのクオリティが高いような気がする。
すると、筒井さん。
「障がい者施設がつくったということで売るのではなくて、きちんと世の中に流通するものをつくって売っていきたいんです」

「就労支援施設で働く障がいのある方の工賃(給料)って、すごく安いんです。障がい者の就労支援施設は全国に9,000箇所以上あって、月給の平均は14,838円、時給平均は187円(平成26年度)です」
「丁寧な仕事をして、フルタイムで働いてその金額です。でも、障がいがあるから正当な給料をもらえないというのは、ちょっと違う気がしていて。ぼくは、労働して正当な対価をもらうというのは基本的人権のなかに含まれると思うんです」
コミュニティワークスが目指しているのは、最低賃金を支払う就労支援施設であること。
だからこそ世の中に流通できる商品を意識し、デザインやクオリティも大切にしています。
ふと、英字新聞の紙バッグを折る利用者さんの手元を見る。
慣れた様子で、けれど一つひとつ角を合わせて丁寧に折り、針をつかって糊付けしていく。

平均時給もhanaは325円、hanahacoは407円(平成27年度)まで上がってきたという。
「できることを増やそう、丁寧にやろうっていう利用者さんの努力はもちろんあります。でも、スタッフの支援の仕方も同じくらい大きいと思いますよ」
どんなふうに支援しているんだろう。
スタッフの方に会いに、hanaから車で15分ほどのところにある「カフェ&雑貨店hanahaco」へ向かいました。
里山カフェとして雑誌やメディアに紹介されるhanahaco は、田んぼの見渡せる丘の上にある。
もともとは、野菜づくりやカフェとショップの経営を通して、自分たちで障がい者の仕事を生み出したいという思いからはじまった場所だから、訪れるお客さんの多くはここが障がい者支援施設だとは知らないそう。

ショップから中庭を挟んだ奥のテーブルで、スタッフの三浦さんと高梨さんにお会いしました。ふたりとも日本仕事百貨を通して入社し、丸3年が経ったところ。
はじめにお話を伺ったのは、hanaでお菓子製造全般を担当している三浦さん。

「福祉という言葉があまり好きではなかったんです。母がピアノの先生をしていて、生徒さんに障がいのある方が3、4人いらしていたので小さいころから交流があったんですよね」
「みなさん作業所に通っていたんですけど、そこでの話を聞くと『たのしくないんだよね』って。仲のいい支援員さんもいなくて、なんだか囲われているような、閉鎖的な感じが伝わってきたんです」
福祉のイメージがよくなかったんですね。
「でも、ここの求人記事を読んだとき、心惹かれるものがありました。支援する人とされる人っていう明確な線引きがないように感じたんです」
入ってみて、どうでしたか?
「もちろん最低限の支援はしないといけません。けれどやっぱり、線引きしている感じはなくて。忙しいときはみんなで一緒にバタバタするし、ときには利用者さんと『なんでこれやっておいてくれなかったの?!』『だってこう言ってたじゃないですか』って、兄弟みたいな言い合いをすることもあります(笑)」
えっ!
「でも、それでいいんだと思うんです。なんでもかんでも『大丈夫だよ、大丈夫だよ』と言って守りすぎるのも、その人のためにならないのかなって」

今、主に三浦さんがやっているのは、お菓子の製造と利用者さんへの作業支援、それから納期に向けた生産スケジュールづくり。
利用者さんとスタッフが一緒になって進めていくのだけど、以前こんなことがあったそう。
「ある利用者さんにお菓子の製造作業をお願いするとき、焼菓子の粉付けや袋のシーリングはその方にとって難しいだろうし、ミスをしたら利用者さんが傷ついてしまうと思って、その作業はわたしが全てやって、その方には淡々とできる生地の丸め作業をお願いしたんです」
よかれと思ってしたことだったけれど、後になって、その利用者さんが「自分は頼りにされていないと感じた」と話してくれたそう。
「わたしが勝手にその人の能力の限界を決めつけて、できるようになるチャンスすら奪ってしまっていたんですよね。支援に限らず、人と一緒に何かをするときは相手を決めつけないように気をつけないといけないなって、すごく反省しました」
それからは少し時間がかかっても、「できそう?」と聞いて一緒にやってみるのだそう。

すると、隣で話を聞いていた高梨さんも「そうだね」と頷く。
高梨さんも、まったくの未経験から福祉の世界へ飛び込んだ方。今はhanahacoでカフェとショップの接客をしつつ、運営や支援にも携わっています。

「とは言っても、好き嫌いの感情だけで関わるんじゃない、同じ目的を持った仲間という感じなんです」
同じ目的、というと?
「そもそも、利用者さんそれぞれに『こういうふうに変わりたい、こういうふうに暮らしたい』という希望があって、わたしも今の自分からもっと変わりたいという思いがある。それを叶える大きな要素の一つが、稼ぐことなんです」
「私たちは、利用者さんの工賃も上げたいし、もっと言えば、自分の給料だって上げたい。目的をちゃんと共有して意見を言い合える環境があるので、やりがいがありますよ」
hanahacoでは、お店側で調理補助などの仕事する利用者さんのほかに、障がいの重い利用者さんもお店の裏方役として通っています。
障がいの重い利用者さんに対しては、その人に合った仕事を発見することも支援の一つ。
例えば、ある全盲の方には、自社でつくっている青竹踏みの竹のヤスリがけの仕事がぴったりだそう。目でなく手の感触で確かめるから、触り心地がとてもよい。
一方、お店側のスタッフは、調理補助や店内清掃、農園での畑仕事など、利用者さんのできることを一つでも増やすような支援をしています。

「でも、ばたばたするときは利用者さんもスタッフも一緒にばたばたしてくれるので。お互いに大変だけど、しっかり稼ぐことも大切ですからね」
障がいがあるから、とか、障がい者施設だから、というのではなく、ふつうに働いて、稼ぐ。
ここは、人との関わり方だけでなく、社会との関わり方にも線引きがないのだろうな。
だからどこか開放的な雰囲気があるのだと思います。
最後に、高梨さんにどんな人に来てほしいか聞いてみました。
「生活とか、家族とか、多様なバックグラウンドをもったスタッフたちが言いたいことを言い合っているのがhanaやhanahacoらしさかもしれない(笑)。利用者さんにとっても、そういった”人のバラエティ”がプラスにはたらくことが多いと思います。だからぜひ、年代も性別も様々な人に応募してほしいです」
(2016/9/13 倉島友香)