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エコ、オーガニック、ロハス、スローライフ…。
暮らしと環境にまつわる言葉を、よく耳にするようになったと思います。
たとえば、天然素材の洋服は、触れて心地よいから。
木の香りに癒されるから。
人や自然にやさしいものが選ばれるのは、環境負荷が少ないということのほかに、感覚的に「いい」と感じるからかもしれません。
東京・九段下にあるグリーンオーナーズ会議は、生活雑貨を中心としたホームウェアやリビンググッズなど、天然素材でつくられた製品の卸しをしている会社です。
安全で、ものによっては天然効果もあるエコ製品は、生活雑貨などの展示会場や、ときには全国各地にあるものづくりの現場へ足を運んで探しています。
見つけたエコ製品は、ものの背景や使ってみた実感ごと、エコ製品を扱う会員制宅配サービスの広告(チラシ)を通してお客さんへ届ける。
そんなつくり手と消費者をつなぐ人を募集します。
大切なのは「どうなっているんだろう?面白い!」という好奇心。
自然由来のものに興味のある人は、ぜひ続けて読んでみてください。
地下鉄の九段下駅を降りて、靖国神社に向かって歩くこと10分。
通り沿いのビルの8階にグリーンオーナーズ会議のオフィスがあります。
さまざまなエコ製品とともに迎えてくれたのは、代表の山下さん。
山下さんが働き始めたのは、高度経済成長の真っ只中だったといいます。
「戦後のものがない時代からどんどん増えていく過渡期で、みんなが珍しい文化に飢えていたんですね。デザインされたブランド品など、楽しくておしゃれな商品が盛んになりました」
「僕も働くなら意味のある仕事がしたくて、はじめは洋服感覚で生活雑貨をコーディネイトする繊維業界に入りました」
経済が成長するにつれ、どんどん洋服や雑貨も増えてきたそう。
「華やかな文化の次は、値段の安さが求められていくだろうと想像がつきました。でも、それじゃあおもしろくない」
「さらにその次はなんだろう、と考えたとき、ひょっとして、と思ったのがオーガニックやエコだったんです」
当時、化学物質の弊害が健康被害として出始めていたころ。
「最近でもアトピーや花粉症といった症状が問題になりますね。あれは、特定の物質自体がわるさをするのではなくて、排気ガスなどの大気に含まれる有害成分とくっつくことで発症します」
「そう考えると、個人の健康って、環境や社会の健康とイコールなんですよね。言い換えれば、持続可能な環境をつくることで、人は健やかに生きられる。社会的な意義というより、ただ健康に暮らしたくてエコなものに携わろうと思ったんです」
そこで会社を離れ、エコな観点からつくられている生活雑貨の取り扱いをはじめます。
すると、こんな発見が。
「たとえば、オーガニックコットンって今でこそ柔らかな素材感だれど、昔はタオルをつくってもゴワゴワとして水も吸わず、グレイッシュな色味。硬い・汚い・高額、の3Kと呼ばれる素材だったんです」
「それには理由があって、農薬や化学肥料を使わず育てた綿花というのは、虫や風雨から身を守るために、植物自身がすごく丈夫になるからなんです」
ちょっと目をきらきらさせて話す山下さん。
こういった自然科学に魅了されて、どんどんオーガニックやエコ製品に興味をもつように。
つくり手を訪ねるうち、伝統の中に植物の特性を生かしたものが多いことに気がついた。
「化学物質が生まれたのは、産業革命以降のことです。ですから、古くからあるものは、食品にしても雑貨にしても、基本的にナチュラルなものでつくっている可能性が高いんです」
藍で染めた石けんもそのひとつ。
ふつう、藍染めは藍を育てる農家や染める工房など、工程ごとの分業制が多い。
けれど、この石けんをつくっている工房では一貫した技術をもち、独自で開発していた。
「そこのご主人の肌が弱く、洗剤か何かが合わなかったんでしょうね、ひどくただれてしまって。藍農家でもある実家で藍の抗菌効果について書いてある本を見つけ、試行錯誤で始めたのがきっかけだったんです」
安全で天然効果もあるいいものだけど、つくり手はつくることに集中しているから世の中の人に知ってもらう機会はつくりづらい。
「そういったところに我々が間に入って仕入れ、チラシという媒体を通して消費者に紹介しているんです」
また、仕入れるだけでなく、自分たちも開発に関わることも。
「この工房では、藍を研究しいろんな効果もわかってきています。それをもっと生かせないかと考えたんです」
そこで自分たちで糸から選び、デザインも考えたインナーを染めてもらい「藍染インナーシリーズ」をつくった。
「ぼくらが紹介することで売上げが出れば、メーカーさんへの貢献になる。それは彼らのためでもあるけれど、天然効果のあるものを売りたいと思う僕らの想いでもある」
「だから僕の感覚としては、共生というのがぴったりなんです」
共生ですか。
「そうです。もともとは、植物学の中でよく使われる言葉なんです。たとえば、森の中の樹はきのこに寄生されるけど、きのこの菌に土の中の栄養を分解して吸いやすくしてもらっている。お互いが一緒に生きる理屈があるんですよね」
社会の中でお金を生むことも、自然の中で生きて行くことも。きっとどちらにも言えることかもしれない。
「そういう考え方の中に、みんなが生き残っていく方法があるんじゃないかな」
グリーンオーナーズ会議は卸し先もまた、オーガニックの食材やエコ製品を会員制で紹介・販売する会社や協同組合。
つくり手、卸し、お客さん。
みんなが天然素材のものを求めているからこそ、間に入ってきちんと伝えることはやりがいのあること。
常務取締役のバイデュラス未菜子さんにも話を聞いてみました。
「こういった商品って、社会や環境にいいことをしているからという正義感のようなものじゃなくて、『これは面白い』とか『素敵』って思えないと、選ぶ人は増えないと思うんです。そのためにも、つくり手の背景や素材自体の効能、そのものの価値を伝えなくちゃという使命感はありますね」
そう話すバイデュラスさんは、頼れるお姉さんという感じ。自然体だけれど、伝えたいことはきちんと話してくれる方です。
現在、女性4名男性3名の7名が働くグリーンオーナーズ会議。
社長と経理以外のスタッフがそれぞれのクライアントを担当し、チラシづくりや自分たちがいいと思う商品の取り扱いの提案、担当メーカーの窓口などをしている。
あたらしく入る人も、ゆくゆくは一人で担当をもつことになるそう。
広告の知識や経験は、なくてもできるのでしょうか?
「オーガニックやエコということをまったく知らない人にチラシをつくるわけではないので、どう売り込むかというようなテクニカルな伝え方はしなくていいです。まずは、エコなものを知って、いいところも気になるところも、正直にお伝えできるといいかもしれませんね」
現時点では、エコや環境問題の知識も問わないそう。
「最近はオーガニックという言葉が一般的になり、天然素材に触れるとなんとなく心が癒される、というように直感的に『いい』と思う方が増えたように感じます」
「それはいいことだと思います。ただ、私たちは仕事でエコなものを扱う以上、メーカーさんに聞いたり、ときには歴史を紐解いたりして、『エコがなぜいいのか』という理屈を知っておかないといけません」
ここで、入って半年になる高島さんにも話を聞いてみます。
高島さんは、これまで服飾資材や洋服の生産管理の仕事をしてきた方。
だんだんと、人や環境にいいものづくりをしているところに携わりたいと思うようになった。
「オーガニックなものを特別意識しているわけじゃなかったんです。でも、体にいいだろうなという想像はついたし、なんとなく、ここは面白そうだなと思ったんです」
「単にわたしが好奇心旺盛なので、なんでも知りたいほうなんです(笑)。昔の知恵なんかは、自分の生活にも役立ちますよ」
今は小売店舗を担当し、商品に対するお客さんの反応を見たり、チラシの校正や撮影などに立ち会いながら、商品について覚えているところ。
「お客さんにオーガニック系の認証マークについて尋ねられたときさっと答えられないこともあります。けれど、どうなっているんだろうと調べていくと把握できる。興味があれば、覚えることはそんなに大変じゃないです」
扱う商品は、洋服、クッションやシェード、キッチン用品など。
暮らしにまつわるものだから、スタッフは自分の生活の中で日常的に使っているのだとか。
「チラシをつくるときに『どう思う?』って聞かれるんですけど、そんなときは何か言わなきゃっていうより、自分の生活で実際に使ってみた感想を伝えています。たとえば、エプロンだったら『濡れてもすぐ乾くから、エプロンにはぴったり』とか」
「商品を理解しようと思わなくても、実感できる。自分が素直にいいと思えるものをお客さんにおすすめできるので、無理がないんです」
チラシづくりのほかにも、クライアントさんの対応や営業、メーカーさんとのやりとりなど、細かな仕事がいろいろと出てくる。
基本はデスクワークだけれど、「個人の得意なところを伸ばしてほしい」と話すバイデュラスさん。
高島さんの場合は、前職のスキルを活かし、あたらしい商品づくりに携わっています。
「これは、ひばの木を糸状にしたものを土佐和紙で包んだ香り袋です。ひばの消臭、防虫、湿気の効果を生かしています。ひばは展示会場で、土佐和紙は生産地を訪ねたときに出会ったメーカーさんで、使い道を考えるうちに商品化しよう!ということになって。色々と試みているところです」
メーカーさんに、クライアントさん、消費者となるお客さん。
たくさんの人をつなぐ役割には、どんなことが求められるだろう。
ふたたび、バイデュラスさん。
「やさしさは必要かもしれませんね。お客さんに対しても、どんなチラシだったらいいだろうと考えるし、メーカーさんに対しても、つくってくれる人なので『安くして』などと言って困らせてはいけないし…。言いなりになるのとは違うけれど、人の気持ちに寄り添ってやっていくことは、大事にしています」
知恵や伝統をつないだり、環境によかったり、健康になれたり。
エコには、これからを生きていくヒントがまだまだ沢山隠されていそうです。
「なんだか面白そう」。そう思えたら、ぜひ応募してみてください。
(2016/10/3 倉島友香)