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劇場やホールは、ただハコをつくればいいというわけではない。イベントに参加して今まで知らなかった新しい世界にふれたり、訪れた人たちがアートや音楽を通じて互いにつながることもあるかもしれない。
そこに集う人たちのことを考えた運営は、場を活性化しコミュニティや文化を生み出すきっかけにもなる。
シアターワークショップのみなさんのお話を聞いて、そんなふうに思いました。
株式会社シアターワークショップは、劇場をつくるところから管理運営や改修まで、劇場のすべてをプロデュースしている会社です。
今回は、ここでイベントスペースの運営を行うスタッフを募集します。
主に担当することになるのは、来春渋谷に新しく誕生する「渋谷キャスト」。クリエイター向けの新しい施設で、イベントの企画などさまざまなことに関われそうです。
経験は問いません。より良い関係性を生み出していくことに興味がある人や、おもしろいモノやコトに出会って刺激を受けながら働きたい人。
そんな人に、ぜひ続きを読んでみてほしいです。
渋谷キャストは現在建設中のため、同じく渋谷でシアターショップが管理運営をしているヒカリエホールを訪ねた。
まずは施設運営部門の統括マネージャーである丸山さんに、会社について教えてもらう。新しく入る人の上司になる方です。
「創業は今から33年前です。劇場ホールのことならなんでもやりますっていうのがうちのスタンスで、主に劇場やホールのコンサルティングをしています」
北海道から沖縄まで、全国で200館を超える劇場ホールを手がけてきた。
「代表の伊東は、もともとお芝居が大好きで。大学では建築学科を出て、劇場をつくりたいと思っていたそうです。文化庁が新国立劇場をつくることになり、準備室で仕事をさせてもらったことがきっかけで、シアターワークショップを設立しました」
もともとは設計・施工のコンサルティング事業からはじまった会社だけれども、建物は建てたあとにどう使うかが重要となる。ハード面に加えて、管理運営などソフト面のコンサルティングや実際の運営もやっていくことになった。
「劇場ホールにはいろいろな人が関わります。お金を払って興行を観に来るお客さま、演技をする役者さんやダンサー、公演をつくる制作会社、そして音響や照明などのテクニカルチームもいる。もちろん劇場がある地域や住民にも深く関わっていきます」
「いろんな人の間に入って、いい劇場ってなんだろうと一緒に考えていく。生活に根付いて、日常的に楽しんでもらえる場をつくってきたんです」
今回募集するイベントスペース運営スタッフは、ホールの内覧や予約、事前打ち合わせ、そして本番立会いから最後の精算まで。イベントの企画時から撤収、すべてをサポートしていくのが仕事だ。
ヒカリエホールでは過去に、ファッションショーやTEDxTokyo、展示会などさまざまなイベントが開催されてきた。
日々の運営で大切なのは、同じ価値を維持し続けるということ。
「ホールには毎日違うお客さまがいらっしゃいますが、いつも同じ価値、同じ品質のサービスを提供し続けなければいけません。一つのイベントさえ成功すればいいというわけではないんです」
「施設の保全や安全管理を考えて、スタッフは常にどこか冷静な目線を持っているんです。ときには無理を言ってくるお客さまに、注意や説得をすることもあります」
次のお客さまにホールを引き継ぐときに何か不具合がある場合は、自分たちで掃除をすることもある。
「お察しの通り、僕らの仕事って基本的には雑用なんです。イベントをつくる人たちをさらに支える仕事だから『縁の下の“下の”力持ち』だと僕はよくスタッフに話すんですけど」
きっと細かな調整ごとの連続で、毎日大変なんでしょうね。
「設営が間に合わないとか、開場前にお客さまがごった返しているとか、昼間は本当にてんやわんやです。でも関わる人たちとアイディアを出し合い、なんとか本番をのりきる」
「すべて無事に終わって、最後にまっさらな平土間の状態に戻ったホールをみると、すべて浄化されるというか。またやろうと思えるんです」
渋谷キャストについても聞いてみます。
渋谷キャストは、都市再生プロジェクトの一環として、渋谷エリアにさらなる賑わいを創出すること、そして多くのクリエイターにとって新たな事業につながる出会いやアイディアが生まれるような活動拠点になることを目的に開発された施設だ。
上層階には、国内外のクリエイターたちがコミュニケーションを深められるような共同住宅やシェアオフィスが入り、低層階にはカフェや展示会・ギャラリーなど、さまざまな用途で利用できる多目的スペース。建物の前面は緑に囲まれた広場となる。
「その中で僕らは、多目的スペースと広場の運営・貸し出しをしていきます」
「もちろん毎日空きがないようにブッキングしていくことも大切ですが、いかに面白いイベントをやるかが重要で。はじまりの方々を支援するような場所なので、クリエイターが楽しめたり、発信できるようなイベントをたくさんやっていきたいと思っています」
なかでも、広場の運営が楽しみだと丸山さん。
「渋谷の駅前に、まとまった広場って今のところないんですよ。マルシェやガーデンヨガなんかができるとおもしろいですね。僕らも広場を運営するのははじめてなので、固定観念にとらわれずにいろんなことができると思います」
キャットストリートの入り口で、ここに来るとなにか面白いものに出会えるような、新しいカルチャーが生まれる場所になっていくと思う。
どんなことを大切にしながら、運営していくのだろう。
「ヒカリエもそうですが、キャストも複合施設の中にあるので。商業施設の上にオフィスや住居がある、縦積みの施設ならではの難しさはあると思います」
ホールを出たらそこで終わりではなく、施設全体のことに気を配りながら運営していく必要があるといいます。
「僕らだけがこの施設を使っているわけではなく、飲食フロアのテナントさん、オフィスワーカーさんなどいろんな人がいます。その中でうまく共存していくのが、難しいポイントであり、やりがいかな」
続いて紹介したいのが、渋谷キャスト運営スタッフの丹野さんです。
入社3年目。これまで本屋さんやIT企業、動物病院などさまざまな場所で働いてきた。
「私はいろんなものに興味を持ちたいタイプなんですが、お客さまとの対面での接客がとても好きなんです。だからサービス業もありつつ、事務仕事もあるという基準でここを選びましたね」
入社後は、ヒカリエホールカンファレンスの運営に関わってきた。
実際に働いてみてどうですか?
「たとえば新商品の発表会でも、決算報告会でも。そこを目指して準備してきたことの、アウトプットの場なんです。そのお手伝いができて『いい会になりました』とか『こういう出会いがありました』って言ってもらったときに、すごくいい仕事だなって思います」
お客さまに場所を貸すだけでなく、ときには自分たちでイベントを企画する場合もある。丹野さんはネコの写真展を開催したことが、強く印象に残っているそうだ。
25日間で9万6千人もの人を動員したこの企画では、会場の設営から運営まですべて自分たちで行った。
「たとえば来場者を誘導するときは、どうすれば安全なのか。自分で考えて実践してみると、イベントを開催しているお客さまの気持ちをすごく理解できた。仕事にぐっと身が入るきっかけになりました」
大変なこともあれば、伺いたいです。
「土日休みではないですし、勤務時間もイベントに合わせて変則的になります。そのぶんいろんなジャンルの人に出会えるのですが、決まった時間で働きたい人には難しいかもしれません」
今回、丹野さんは渋谷キャストの運営スタッフに自ら手を挙げ、抜擢されたそう。そこには出身地である渋谷の街への強い想いがあった。
「私が子どものころの渋谷は、アートが根付いている街。若者が自分のやっていることを、自発的に発表できる環境があったように思います」
確かに。昔は渋谷系と呼ばれる音楽やファッションが生まれて、文化の発信地のような印象がありました。
「今は、ただの観光地みたい。とりあえず渋谷ってみんな言うけど、はたして今の渋谷になにがあるのかな、なにもないんじゃないかってずっと思っていたんです」
「でもキャストの話を聞いていたら、そんな渋谷を変えていきたいという強い想いを感じて。想いがかたちになろうとしている現場に関わりたいと思いました」
隣で聞いていた丸山さんが「うちはこんなふうに、やる気重視なんですよね」と笑う。
「やりたいと思っているやつが一番頑張ってやるだろうから。想いがあれば挑戦しやすい環境だと思いますよ」
丹野さんは現在、開館にむけた打ち合わせで毎日飛び回っている。
取材に伺った日は、朝オープニングイベントについての話し合いをしたのち、施主さんと備品などハード面の打ち合わせをする設計定例に参加。そのあと私の取材に応えてくれた。
ほかにも、営業に出たり運営規約を考えたりと仕事は尽きない。
新しく入る人は、まず丹野さんのサポートをしながら働くことになりそうです。なかでもオープニングイベントには積極的に関わってもらいたいとのこと。
「この場所を起点に地域の人たちやオーナー、館の人たちなどさまざまな人がつながっていく。場所や予算などの制約はありつつも、キャストでどんなことができるのか、楽しみながら柔軟に考えていきたいですね」
ヒカリエともまた違う、渋谷キャストならではの個性を丹野さんと打ち出していく。だからこそ、経験に関わらず自分なりに考えて、イベントの企画をどんどん発信してほしい。
なにより少数精鋭で開館前の施設に携わることは、自身にとっても大きな成長につながると思います。
最後に、丸山さんのこんな言葉が印象的でした。
「お客さまにホールを貸し出すとき、僕らの最初の仕事は鍵開けなんです。鍵を開ける行為自体は、誰でもできるただの雑用じゃないですか。つまらない仕事だと思う人もいるかもしれない」
「でも僕らがその鍵を開けないと、その日のイベントははじまらないんです。自分はこのイベントに関わっているんだという主体性を持って、うまくモチベーションに変えられる人がいいですね」
華やかな舞台の裏側は、地道な業務の積み重ね。
それでも、地域やその先にいる人々のことを想像しながら、運営していけたら。やがて街の未来や文化を創り出す、そんな大きな流れに関わっていける仕事です。
自分自身もいろいろな人や出来事に出会いながら、場に新たないのちを吹き込んでいく。
渋谷キャストやシアターワークショップのことを、もっと知りたいと感じたらぜひ応募してください。
(2016/12/22 並木仁美)