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自然と生きる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「焚き火ってのは、自然の象徴なんです。煙いし、手をいれてやらなくちゃ火はおきないけれども、誰に遠慮することなく燃える。自然があることで、そこに素直な自分が出る余地があるんですよ」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 北軽井沢の森に、有限会社きたもっくという会社があります。

日本一のキャンプ場と言われるキャンプ場「北軽井沢スウィートグラス」や、人と森の関係をテーマとした「ルオムの森」。

また、間伐材を使った薪ストーブライフを提案する「あさまストーブ」、薪作りを通した地域森林資源の活用事業「あさまの薪」など。自然と調和した生き方を模索しています。

この森の中で、人と自然との関わりを表現するクリエイターと、ルオムの森で森の暮らしをおすそ分けするように働く人を募集します。

自然のそばで生きていきたい。

そう思う人にぜひ知ってほしい場所です。



軽井沢駅までは、東京から1時間半。そこから車を走らせること30分。峠を越えると、群馬県・北軽井沢に入った。

向かったのは、ルオムの森。

1万坪の森の中にはアスレチックアドベンチャー、カフェやギャラリーになっている築100年の洋館が佇みます。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 洋館に着いて、振り返ると正面には浅間山。つめたい空気に、陽も木々も山も際立って見える。

「ここは浅間高原の北麓です。雄大な景観が広がってるんですね」

話してくれたのは、きたもっくの創始者である福嶋さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA まるで物語のように、福嶋さんはこれまでのことをゆっくりと語り出す。

「ひたすらこの地域は寒いものですから、みんな寒さにやられるんですね。とくに住宅環境が悪くて、子どものころは朝起きたら頭の上に雪が積もっている。春まで生き延びられるかという漠然とした恐怖を、子どもたちはみんな持っていました」

「あんまりにも寒くて狭い世界なもんですから、わたしはこんなところにいたくないと、中学で東京へ飛び出しました。帰ってきたのが39歳のとき」

あらためて、浅間山を見た。

「ここの自然にとても感動しましてね。あらためて、こんな素晴らしい自然は見たことがないって。寒さも含めた、四季折々の美しさ。それをもうちょっと多くの人に見てもらいたいって思ったんです」

足元には、お父さんの残した約3万坪の土地があった。

100年前に浅間山が噴火してできた、吹きさらしの荒地。

「そこに、人が佇むのに心地よいと感じる空間と景観をつくってみたい。わたしは木を植えはじめました」

「木は木陰をつくり、風を防ぎ、地面に水を蓄えます。それに、樹木が隣にある感じというのは、人にとってとても懐かしい。あったかい感じがする。木はそういう場所を形成してくれるんです」

きたもっく - 1 10年以上かけて、1000本以上。一本ずつ、ほとんど一人で木を植えたそう。

「厳しく、痩せた土地です。植えた木の半分は枯れました。この辺りの人からは『おめえは何が面白くて生きてんだ』って言われました。途中からは木を植えることが楽しかったんですね」

夢中で木を植え続け、少しずつ森ができつつあった。

ところが、2004年の9月に浅間山が中規模の噴火を起こす。

「一生懸命植えてきた木が、一発の火山でだめになってしまう」

「わたしは木を植え、自然を育んできたけれど、それが自然によって壊される。木だけじゃない。火山が噴火したら、鳥も人も、あらゆる生命は生きていけないんです」

7、800年に一度噴火する浅間山と、どう付き合うか。

「考えたら、すごく単純なことがわかった。逃げればいいんだ。おさまったら帰ってきて、また一から始めればいい。そこに、人間の素晴らしさがあるんです」

ゆりかごのような大きな自然と、ちいさな人間。

この関係をぴったり表していた言葉が、フィンランド語の“LUOMU”(ルオム)。「自然に従う生き方」という意味をもちます。

「フィンランド人は、自然と人との関係を上手に理解して、生活に取り入れている。日本人も昔はそうだったんです。今こそ、見直されるときにきていると思います」

キャンプ場のスウィートグラスや、森を活かしたアスレチックのスウィートグラスアドベンチャー。雪遊びを楽しめるアスパラなど、フィールドを生かした事業のほかに、薪ストーブライフを提案するあさまストーブや、森の暮らしを表現するルオムの森など。

さまざまなかたちでLUOMUは表現されています。

直に森を感じるキャンプ場スウィートグラスは、口コミサイトで日本一のキャンプ場に選ばれることも。

きたもっく - 1 (3) ここは、浅間山の噴火がおきたときでも売り上げを落としたことがないそう。

でも、どうして人は森へ来るんだろう?

「最近、子どもたちを見ていて気づいたことがあります。森のなかに、人は未来を見に来るんです」

未来?

「うん。日常生活のなかには、さまざまな課題が発生するよね。恋人に振られるかもしれないし、会社に行けば売上げあげてこいって言われるかもしれない」

「一生懸命頑張るけれども、いったいどこへ向かっているのかわからなくなる。そんなとき、10年、20年先から今の自分を見つめてみる。そこではじめて、次のステップが見えるんだ」

森のなかで数千年、数万年の時間を生きる自然を想うと、人間の100年、まして目の前の悩みはとても小さく思える。

「だから普段の生活よりずっと不便でも、お金を払っても、自然が感じられる場所に来る。ここは未来をつくる場だよ」

自然を感じる。

そのアプローチや表現は、スタッフそれぞれの感性から生まれていました。



続けてお話を伺ったのは、クリエイティブ担当の木方(きほう)さん。

「なんとなく田舎って刺激が少ないイメージがあったんですけど、ここって、自然の中にすごく刺激があって。季節ごとの姿がとても鮮烈なんです」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 以前は、銀座のウェブ制作会社でウェディングのサイトをつくっていました。

「印象的だったのは、カラマツの紅葉。針のような細い緑が金色になって、高いところからいっせいにシャワーのように降ってくる。桜吹雪もきれいだけど、カラマツのほうが桜よりもずっと多くて、長く続くんです」

「こんなふうになるんだ!っていうのが毎日のようにあって。未だに飽きないです」

刺激の中で、ものづくりが育まれているんですね。

「そうですね。とくに、このあたりは標高も高いのでとても寒い。寒いと、ものをつくる上ですごく謙虚になれるというか。夏なら終電を逃しても平気だけど、冬は死活問題。どうにかせねば、っていう感覚がいいのかもしれません」

クリエイティブの仕事は、現在はキャンプ場のウェブサイト制作がメイン。ほかにも、イベントのDMをつくったり、撮影をしたり、メールマガジンを書いたり。今回は、とくにウェブの知識がある人にきてほしいといいます。

「今はわたし一人なので、ディレクション、デザイン、コーディングにライティングなど、ほとんどすべてを手がけています」

「たとえば」と昨年11月に開催された「アサマ狼煙(のろし)」という焚火イベントのサイトを見せてくれた。

きたもっく - 1 (5) 「これは丸太自体が燃えていて、みんなが持ち寄ったものを焼くんです。ほかにも焚き火ができる空間がいくつかあって、わたしも焚き火の空間作品をつつくりました」

もともと美大で空間制作をしていたときのリバイバルだそう。

「ウェブと場作り、どちらにも携わりたいと思っていたんです。だからわたしの場合は、企画することも仕事の一つというか。自分次第でどこでも関われるので、やれることがありすぎるのは大変なところかな」



次にお会いしたのは、ルオムの森を運営している日月(たちもり)さん(写真左)とその隣に座る桑田さん(写真右)。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA マネージャーの日月さんは、以前はバイクのデザインをしていた方。短いスパンでの消費のあり方に疑問を持ちはじめ、モノよりも場を育んでみたいと思うように。日本仕事百貨を通じて、ここを見つけます。

「自然に従う生き方って、噛み砕くと、“自然に寄り添いながらどういう暮らしを営んでいくか”ってことだと思うんです」

「ルオムの森では、森の暮らしをおすそわけできたらなと思っています」

薪をストーブにくべ、ゆっくり火をおこすこと。6月に雨が降った後、森がつやつやに光っているのを見ること。

「食事であれば、どんなごはんが出てきたら風景と一緒に思い出にのこるかな、とか。どういう時間をつくりたいかを、ここで一緒に考えたいです」

キャンプ場もルオムの森も、通年営業。

きたもっく - 1 (8) 季節とともに、森も、働き方も変わります。

新緑がいっせいに芽吹くころ、森はアドベンチャーで遊ぶ子どもで賑わう。いそがしい時期には1日700人ほどが訪れるから、へとへとになるそう。葉が落ちるとともに客足も落ち着き、冬場はとんと静かになる。

「夏の猛烈な慌ただしさを超えて、冬にほっと息をつく。冬の間は、来年の準備をしたり、これからのことをじっくり考えたりしています」

食事のメニュー開発や、ワークショップやイベントなども企画します。

ここで、桑田さん。昨年企画した「これきるわたしのくらし」というファッションショーのことを話してくれた。

「衣は、生活に根付いたものだと思います。この辺の気候ってものすごく特殊で、冬はマイナス何十度という世界。そういう中で生きている人たちが、どんな仕事や暮らしをしていて、どんな服を着ているのか。それが知りたかったし、お客さんにも見ていただきたかったんです」

ランウェイを歩いてくれたのは、ここに住む地域の人たち。

きたもっく - 1 (7) 酵素玄米のおにぎりやさんは、動きやすい割烹着。隣村の地域おこし協力隊員は、スーツ。オーガニックコットンを扱う会社に勤める方は、天然素材を身につけて。

一瞬、焚き火の煙が森の中にさーっと広がり、木々の間から陽が射した。

「すごく幻想的な光景でした。それはつくりだそうと思っても、つくりだせるものじゃなくて」

「その瞬間のお客さんたちの表情も、何かを想っているんだろうな、という顔をしていて。そんなふうに五感がふるえる瞬間って、ここでしか生まれないものだなと思います」

そういう時間をつくることはやりがいでもある一方、葛藤でもあるという。

「キャッチーなことを企画して盛り上げるっていうのは、ニーズに応えることだから、難しいことじゃないと思う。でも、ここでしかできないことや、自分にしか表現できない方法に価値をみいだしていく過程には、常に葛藤があります」

「ルオムはネイチャーに従うという意味もあるけれど、人がありのまま、ナチュラルでいられるという意味でもある。自分の個性を生かすことも、ルオムなんだと思います」

生きることが、働くことになる。

自然に合わせて、焦らず続けられる人に向いているのかもしれません。

ぜひ、ここへ来てみてください。

まずはこの森を感じるところから始まるんだと思います。

(2017/1/24 倉島友香)