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何かを手渡す人と受けとる人がいる。受けとる人だけでなく、手渡す人も気持ちよくいられたら、きっとお互いに心地いい。
床暮らしに合うようなソファをデザインし、空間を提案しているのがローソファ専門店「HAREM(ハーレム)」。

中目黒にあるショールームで、ローソファを通して暮らし方を提案していく人を募集します。
池尻大橋駅から商店街を進み、途中で左手に曲がって川沿いを歩いていく。
お店のある路地に入ると、HAREMの看板を見つけた。
階段を降りて地下にあるお店の扉を開け、お家におじゃまするみたいに靴を脱いで上がる。
ゆったりとした空間には、さまざまなデザインのローソファが並ぶ。

ソファに座っていながらこたつでごろごろしたり、ベッドのようにゆったり寝転がったり、背の低いテーブルに料理を並べたら、ピクニック気分で食事が楽しめる。小さなお子さんがソファに座っても、お父さんが床に座ったら同じ目線の高さで話すこともできる。
「HAREMが大切にしているのは、ローソファを通して、どんな暮らしができるか提案していくことです」
そう話すのは、取締役の岸宗さん。

人気が高いという『つみきソファ』を紹介してくれた。積み木を積み上げるようにサイズや置き方の組み合わせを自由にカスタマイズできるそう。

「家族と過ごす時間とか、自分と向き合える時間とか。つまりは生き方というものが、人にとっていちばん大切だと僕らは考えているんです」
岸宗さんは代表の息子さんで、デザインの仕事をしていたお父さんが立ち上げたインテリアショップを手伝うところから、一緒に働いてきた。
ローソファ専門店としてHAREMを立ち上げた当初は、もっと売上を伸ばそうと、夜遅くまで働くことがどこか当たり前になっていたという。
「それでも仕事が楽しかった。ただ、果たしてそういう働き方をしていて、お客さんが幸せに感じる暮らし方を一緒に考えていけるかどうか。ちょっと違うんじゃないかなって」
暮らしを考えることと働き方を考えること。ふたつがゆるやかに重なっていった。
ここで、最近あった出来事を話してくれた。
「すごくいい新茶を買ったんです。どうせなら味だけじゃなくて、お茶を淹れる時間そのものまでじっくり楽しみたい。前から気になっていたちょっと高価なやかんを買ってきて。お気に入りの器でゆっくり飲むんですよ」
「お茶と一緒に梅干しと塩こんぶをつまんだりしてね。それがめちゃくちゃ美味しくて、しかもほっとする。もう、なんて贅沢なんだろうって」
目を細めて話す岸宗さん。
なんてことのないような日々の習慣も、一つひとつ丁寧に感じ取っていったら、もっと豊かな時間になるのだろうな。
自然と肩の力が抜け、話に引き込まれていく。
「自分自身が家で過ごす時間を大切にしていると、きっとお客さんと同じ目線で考えられる。『18時半からサザエさんを見ながら、みんなでちゃぶ台を囲んで夕飯を食べるのって幸せですよね!』って会話も成り立つでしょう?(笑)」
「そのほうがお客さんも僕らも、お互い楽しくなれると思うんです」

「僕らの考え方をいいなと思ってくれる人たちとつながっていきたい。そういう環境をつくることも、モノを売る会社としての仕事のひとつなのかなと考えています」
たしかに働いている人がいきいきしていたら、心地よく感じるし、また訪れたくなる。
今年2月に入社した矢尾さんからも、そんな空気感が伝わってきた。

そこは、1分1秒を争う状況のなか、毎日ひとりで100人以上のお客さんに対応するような環境だった。
お客さんに寄り添ったサービスをしたいのに、人も時間も足りないからと割り切っていくことに悶々としていたという。
さらに、帰宅後も仕事のための勉強に追われるような、仕事中心の日々だった。
矢尾さんは、違う働き方を求めて転職を決める。
「インテリアの業界を選んだのは、自宅と職場を往復する日々のなかで、休みの日にウィンドウショッピングで家具を見るのが楽しみになっていたから。こんな空間をつくったらゆっくりくつろげるかなとか、将来こういうふうな部屋にしたいなと、よく想像していたんです」
今も接客していると、そのときの気持ちと重なることがあるという。
入社してから印象に残っているエピソードを教えてくれた。
「私が接客を担当して、はじめてその場でご購入を決めてくださったお客さまが新婚さんで。ホームページでつみきソファを見て、実際にお店に来てくれました」
「ライフステージに合わせて組み合わせを変えていけることをお話しすると、子どもができたらこうしようとか、子育てが落ち着いてきたら猫を飼おうとか、話がどんどん広がって。私まで想像が膨らんでいったんです」
おだやかな笑顔で話す矢尾さん。
普段どんなことを考えながら接客をしているのだろう。
「いきなりソファの説明には入りません。なんとなく見ているようだったら、座ってみてくださいと声をかけてみます」

まずは相手のことを知ろうとする。
たとえば「ソファはシンプルなものにしたい」という要望があったとしても、どういった理由でシンプルなものにしたいのかは、人それぞれ同じではない。
「小さなお子さまのいるご家庭では『おもちゃなどで乱雑になりがちなお部屋でも、ソファぐらいは落ち着いたものにしたい』という意図があるかもしれませんし、『お部屋のテイストがシンプルなもので統一されているから』という理由もあるかも」
「話を聞きながら、一人ひとりに合わせて提案していきます。ただ、踏み込みすぎずにちょっとずつ探っていくので、難しくもあり楽しいところでもありますね」
会話が弾んでいくにつれ、お客さんも自分から話してくれるようになり、次第にピントが合っていく。1〜2時間ほどじっくり話していくことがほとんどなんだとか。
そんな関わり方があるからこそ、納品後すぐに感想や写真を送ってくれるお客さんが多くいる。それがうれしいと矢尾さんは話してくれた。
喜んでもらえるからうれしい。さらに喜んでもらえるように、日々気づいたことを形にしていく。
現在ショールームの店長を務める森田さんからは、そんな働き方が伝わってきた。

そこで、ペットと一緒にローソファを試してもらえるようにイベントを企画。

「意見を出していけばいくほど、ものごとが進む会社ですし、自分がやってみたいことに対するトライ&エラーに対して寛容だと思います」
「自分は思っていることは率直に意見を言うタイプだけど、みんなにも、やりたいと思うことは形にしてもらいたい。もっと本音を言いやすいようなきっかけをつくろうと意識しています」
以前はインテリアショップに勤めていた森田さん。
入社したばかりの矢尾さんが、お客さんから渡された建築図面を読めずに困っていた姿を見て、図面講習会をひらいたこともあったそう。
店長だからというだけではないように思う。お客さんと接しているときと同じように、常に相手のことを考えているからこそ、必要なものをそっと差し出せるのかもしれない。
会社としても、スタッフ同士がコミュニケーションを重ねていける環境を積極的につくっている。
ショールームにはキッチンを設けて、ごはんをつくって一緒にランチを食べたり、隔週で大阪本社とチャットライブ会議を行ったり、「交換留学」と銘打って、大阪・東京ショールームの接客スタッフの職場を1週間ほど交換したりもしている。
日本仕事百貨での募集を機に今年3月に入社した阿部さんも、コミュニケーションすることで自分の仕事の幅を広げているようだった。

いま少しずつ形になっているというのが、親子向けに企画した照明づくりのワークショップ。
もともとは、阿部さん自身がものづくりの教室に通いたいと思って調べていたのをきっかけに、ライトや行灯づくりをしている先生と知り合った。
そこから、ショールームの空間で照明づくりをするアイデアが浮かび、先生に相談してみた。
すると、HAREMが提案する床暮らしに興味を持ってくれた様子で、「何か力になれることがあればいつでも呼んでください」と返事をくれたそう。
阿部さんはそれまで企画書を書いたことがなかったけれど、店長の森田さんと相談しながら企画を具体的に練っていった。
12月の開催に向け、現在も準備を進めているそう。
「つくった照明の灯りだけをともした空間で、“光”や“和み”というものについて考える時間がつくれるといいなと思って。来てくださった方が、ローソファを体感しながら、一つの暮らし方を発見する機会にしていきたいですね」
会社の目標としても、これから、床暮らしをテーマにしたゲストハウスやテーマパークもつくっていきたいとのこと。いろんな人やモノを取り込んでいくことで、面白いものにしていく可能性を感じる。

「まったく無個性の人だと、その人自身もやりづらいところがあるかもしれない。自分をさらけ出せるような人のほうが、働いている自分も周りの人もいきいきできる関係が生まれていくんじゃないかなと思います」
それから、お客さんのなかには建築に詳しい人も多いから、インテリアの知識が豊富だと、より活躍の場は広がるかもしれない。
いろんな発想を取り入れていく柔軟な環境があると思います。
ぜひ、お店に足を運んでみてください。
(2017/10/10取材 後藤響子)