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地球に、自分に、正直に

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

仕事に追われているとき、ふと入った公園の緑にほっとした。田舎から送られてきた野菜のみずみずしさに、心が休まった。

そんな経験は、きっと誰にでもあると思います。

人や自然にやさしいものを心地よいと感じるのは、当然のことかもしれません。

株式会社グリーンオーナーズ会議は、衣料品を中心に生活雑貨・リビンググッズなど、天然素材でつくられた製品の卸しをしている会社です。

取り扱う製品は「人にも環境にもやさしい」とうたわれるエコ商材のなかでも、とくに厳しい評価基準を満たしたもの。

生活雑貨などの展示会場や、ときには全国各地にあるものづくりの現場へ足を運んで探し、自分たちが納得できるようなものだけを選んでいます。

そうして探し出した製品は、自然食品やエコ製品を扱う会員制宅配サービスの広告チラシを通してお客さんへと届けられる。

今回は、こちらで主にチラシ製作を担当する人を募集します。

ただ商品を紙面に収めるのではなく、ものの背景や使ってみた実感を、正直に伝える仕事です。

今は知識がなくても、自然や健康に興味を持つ人なら、理解を深めていくことができる仕事だと思います。



地下鉄・九段下駅を降りて、靖国神社に沿ってゆっくり歩くことおよそ10分。鎮守の森を見下ろすビルの8階に、グリーンオーナーズ会議のオフィスはある。

扉を開けると、代表の山下さんが迎えてくれた。優しいまなじりが印象的な方で、ニコニコとテンポよく話す姿はまるで噺家のよう。

もともと、繊維業界で働いていたという山下さん。

働きはじめたのは高度経済成長の真っ只中で、華やかなブランド商品が隆盛を誇ったころ。ところがものが溢れるようになるにつれ、今度はより安く、より効率的に生産できる商品がもてはやされるようになった。

「安さや効率ばかりを追い求めるようになった業界に、僕は限界を感じてしまって。だんだんと、次の時代に本当に必要とされるような仕事はなんだろうと考えるようになりました」

ちょうどそのころ、知り合いの方からエコの考えを紹介してもらう。

当時はまだ「エコ」という言葉は市民権を得ておらず、山下さんもはじめはイメージが湧かなかったそう。

ためしにエコ文化が進んでいるアメリカからオーガニックコットンの生地を取り寄せてみたものの、灰色がかった汚い生地は水も吸わないほど硬く、それでいて高額だった。

「ただ、それには理由があったんです。農薬や化学肥料を使わずに育てた綿花は、植物自身が害虫や悪天候から身を守ろうと、自然と硬くなる」

「商品としてはまだ未熟だったけれど、すごく理にかなっていたんですね。ひょっとすると次の時代は、安心で安全、そして健康でいられるエコのライフスタイルが求められるだろうなと思うようになりました」

そうしてエコビジネスの世界への転職を経て、グリーンオーナーズ会議を立ち上げたのは今からおよそ20年前のこと。

当初はエコ製品自体が少なかったものの、自然志向のライフスタイルが少しずつ広がりを見せるにつれ、市場も大きくなってきた。

グリーンオーナーズ会議が扱っている商品の多くは、自然の力を活かした、人と環境に配慮したもの。さらに実際に手に取ってみたくなるようなデザインのものが多い。

それは、展示会などを通してよさそうな商品と出会ったら、社員の皆さんが自らメーカーのいる現地へ直接話を聞きに行き、納得感を持って紹介できるかを判断しているためだ。

たとえば、徳島県内の藍農家が営む工房。

ここでは、藍の染料を化粧品や石鹸などにも応用してさまざまな製品をつくっている。

「古くから、日本では藍は紅と並ぶ染料でした。けれども日本でも産業革命が起こり、非効率的だとして多くの藍農家が廃れてしまった。藍は古くから薬の原料に使われているほど、高い抗菌効果を持っているのに、もったいないでしょう。この工房では、そんな研究も続けながらさまざまな商品をつくってらっしゃった」

「正直につくられた商品を、我々が間に入って仕入れ、チラシという媒体を通して消費者に紹介する。そうして『藍なら健康にいいから安心だね』というライフスタイルをつくるきっかけになれたらいいですよね」

また、エコ商品を仕入れるだけでなく、仕入先の協力を得ながらオリジナル商品を手がけることも増えてきた。

「最近では、炭の脱臭剤を手がけました。これはもともとあった商品で、ベテランの炭焼き職人がつくる炭を、特殊な通気性のある紙で包んだものでした。ところがなかなか売れない、と相談を受けた。試しに僕も使ってみると、これはすごいぞ、面白い、と取り組んでみたくなった」

そこでグリーンオーナーズ会議では、スタッフの意見を取り入れ、商品の機能はそのままに、手に取りやすいようパッケージをオリジナルデザインにしてリニューアル。チラシに載せたところ、お客さんからもいい反応があったそう。

オリジナル商品は、増やすこと自体が目的ではない。どれも『これをつくってみたらどうだろう』というスタッフの声から生まれているのだそうだ。

「扱っている商品は、自然という大きなテーマの中のものです。美しい風景を見て気持ちよく感じるとか、植物の香りに癒されるとか、そうした感性がこのテーマの入り口になるはず。自然や健康への興味が大きくなるにつれて、どんどん面白くなる仕事なんですよ」



隣で山下さんの話を聞いていた、常務取締役のバイデュラスさんもうなずく。

「私の場合は、『毎日の暮らしを健康で心地のよいものにしたい』という意識が、チラシという媒体で製品を紹介するという仕事につながっていますね」

現在、女性4名・男性3名の7名が働くグリーンオーナーズ会議。

少人数のため、基本的に皆さんマルチタスクだ。バイデュラスさんも営業や仕入管理を担いながら、チラシ製作に関わっている。

ここでチラシを見せてもらうと、製品の生まれた背景や裏付けのデータ、さらには実際に使ってみた感想が、素直な言葉で書かれている。

数字や効能が大きくカラフルに書かれているものを想像していたけれど、落ち着いたトーンで、読み手と同じ目線のコメントが記されているのが印象的だ。

「テクニカルな文章は書こうと思っていないし、書けません(笑)チラシという特性上、どうしても一方的に説明することになりますよね。だからメーカーさんの言葉は鵜呑みにせず、実際に私たちが使ってみた感想を大事にしていているんです」

商品はすべて自信を持って送り出せるものだからこそ、手前味噌にならないよう説明は解説までにとどめる。情報もあれこれ載せるのではなく、製品を求めている人が必要とするものを選び抜く。

扱っている商品はどれも生活に馴染みのあるものばかりだから、等身大の感想こそ、消費者にとっていちばんの判断材料となるのかもしれない。

「商品を身近に感じてもらいたいので、できるだけ使ってみた感想やどんなシーンにおすすめかを、言葉だけでなく写真で見せる事にもこだわっています」

「誰もが消費者なわけですから、買う側の立場を売る側に反映するということは可能だと思います。ここで働くスタッフには、売るものとして『なぜエコ製品がいいのか』を一歩踏み込んで理解しようとする方が理想です」



最後にご紹介したいのが、日本仕事百貨を通じて入社し、そろそろ1年になる山田さん。こちらの質問に気持ちよく答えてくれる、軽やかな雰囲気をまとった方だ。

「2年前に体調を崩してしまって。体のことをこれまでより考えるようになったタイミングで、ここの求人に出会いました。募集要項に『健康に興味がある方』とあったところに、すっと惹かれて応募したのを覚えています」

「実は、記事を読むまでこんな仕事があること自体知らなくて。でも、人にも環境にもよい製品を扱う仕事なら、体と心、どちらの健康も大切にできるかなと思いました」

入社後は、チラシの校正や打ち合わせに立ち会いながら、仕事の流れや商品知識を覚えていったそう。

「特別な技術は要らなかったけれど、思っていたより多くの知識が必要になる仕事でしたね。世の中で一般的に使われている原材料でも、ここでは取り扱いません、というケースもあって。まずは『どうして使ってはいけないのか』を理解するところからはじまりました。私はもともと興味があったので、自然と覚えていけた気がします」

今では、主にチラシの製作やスケジュール管理の中核となっている山田さん。新しく入る人も、山田さんたちと一緒にチラシをつくることになる。

月に制作するチラシの数は17本から20本。販売製品が決まったら、文章や写真イメージをレイアウトしていく。紙面案を固めたのち、外注先のデザイナーやカメラマンに依頼し、校正を経て完成。

毎週新しいチラシの制作に取りかかりながら、複数のチラシの進行具合も管理する。例えるなら、ディレクターの役割に近いかもしれない。

「正直、忙しい仕事ではあります。チラシ原稿は、社内だけでなくクライアントや仕入れ先にもチェックしてもらうのでスケジュール管理が大切になる。複数の人が関わってつくられるものなので、コミュニケーションは欠かせません」

チラシで紹介する商品もまた、社内全員で決めていく。そのため、山田さんの「これを紹介したい」という意見も反映されることがあるのだそう。

「誰か一人だけでは完成しない仕事ですね。時にはメーカーに『このパジャマは着心地が良かったけれど、襟が気になる』など、いい点だけではなく、改善点を伝えることもある。自分の実感が、そのまま仕事に活きている感じがしています」

山田さんの話からは、つくり手、卸先、お客さん、そして会社にいる全員が同じ方向を向いているように感じる。

「この仕事の面白さは、1人より2人、2人より3人と、多くの人で分け合えるほど楽しくなるところにあると思うんです」



ひと通り取材を終えたところで社内を見学させてもらっていると、皆さん「この商品の面白いところはね」と楽しそうに話しかけてくれた。そんな姿が印象的な取材でした。

もちろん知識がなければ補う努力が必要だと思うし、それが自然にできる人だといいと思います。

何より、自分たちが自信を持って「いい」と言える製品を紹介する皆さんの表情は、とても健やかでした。

自分の興味や関心がきっかけとなって、やがて仕事につながっていく。そんな働き方が、ここにはあると思います。

(2017/12/18 取材 遠藤真利奈)