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求め続ける生きもの

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「僕が望むのは、たとえば50年後も、この会社がちゃんと世の中で活躍していること。活躍というのは、働く一人ひとりが、どうしたらお客さまによろこんでもらえるかを自分の頭で考えて行動し、自分の足で立っていることです」

「会社がちゃんと生きものとしてあればいいなと思っています」

会社を“生きもの”という言葉を使って話してくれたのは、株式会社庫や(くらや)の代表・手塚さん。

庫やは、栃木県・那須地域でチーズケーキをはじめとしたお菓子づくりから、流通・販売まで一貫して手がけている会社です。

今日よりも明日、もっと違う何かがあるんじゃないか。

そんなふうにお客さんに求められるかたちを考え続け、わさび漬けづくりからはじまった会社は、30年の間に「チーズガーデン」「ピュアココ」「エヌカカオチョコレート」など自社のお菓子ブランドを展開したり、レストランを運営したり、いろんなかたちをつくりあげています。

ここで、店頭のPOPやポスターのデザイン、広告制作、新店舗の立ち上げなど、幅広い仕事を手がける販売促進部のメンバーを募集します。

 

東京駅から那須塩原駅までは新幹線に乗って1時間10分ほど。

駅から車を走らせると、ひらけた牧草地が視界に広がった。放牧された馬や牛を見かけることも、那須では日常なんだとか。

15分ほどで本社に到着。

ここは、人気商品「御用邸チーズケーキ」を焼く製造工場と、「THE OVEN」というお店も併設している。

案内してもらったのは、キッチンのあるスペース。隣り合うのが、オフィスだ。

「手茶(てっさ)」というチーズガーデンオリジナルのブレンドティーをいただきながら、代表の手塚さんに話を伺う。写真を撮られるのは苦手だそう。

前回の記事では、何も無いところから有るという状態を生むことを「ゼロワン」と表現し、0から仕事をつくりあげていくプロセスが苦しくもあり快感だと話してくれた。それから、常に変わり続ける老舗を目指す、とも。

あらためて、庫やがどんな会社なのか、いまの手塚さんの言葉で話してくれた。

「そうですね。止まっていないという感じですかね。止まらずに、常に何かを求める」

「『欲する』という言葉だと、手当たり次第のような感じがするし、『探求』というと掘り下げる感じがする。『求める』という言葉がいちばん好きかな」

その違いは何なのでしょう。

「求めるというのは、今以上に何かもっと違うものがあるんじゃないか、今よりも明日何かないかなとか。そういう感じですかね」

手塚さんが使う「求める」という言葉のニュアンスについては、庫やのこれまでを見ていくと、少しつかめてくるかもしれない。

創業したのは33年前。

当時は手塚さんとパートさんたちでわさび漬けをつくって販売していた。それも経験があったわけではなかったそう。

10年間試行錯誤をつづけるも、売り上げは伸び悩んだ。

新たな事業としてはじめたのが、チーズケーキ。

パティシエでもチーズの専門家でもない手塚さん。初期の商品は食感がパサパサしていて、「美味しくない」と言われることもあったそう。

何とかして美味しいものをつくろうと、ときには焼き上げ用の窯のメーカーにつくり方を教わりながら、パティシエと協力して改良を重ねていった。

商品を販売していく直営店の数も少なかったから、百貨店の催事には毎回参加。

枕元には常にメモを置いて、寝る前に新しい商品開発のアイデアが思いつけば、どんな小さなことでもすぐに書き留める。

すべてが手探り状態のなか、とにかくできることをやっていった。

そうしてつくりあげてきたチーズケーキは、いまでは那須のお土産の代表格となった。東京や大阪にも店舗を展開し、人気を集めている。

それでも、もっと美味しくできないか、いままでとは違う商品をつくってみるのもいいんじゃないかと考え続ける。

手塚さんの、もっとこうしたらいいんじゃないか?という考えはどこからやってくるのだろう。

「それは、いつもこのままうまくいくはずがない、このままじゃいけないと思うから、何か生み出すことを続けているだけです」

「考えは変えないんです。お客さんによろこばれる仕事をすること。その目的を果たすために、僕は33年のあいだ、時代を読みながら自分の体を変えてきた。体というのは、会社のあり方のようなものかな」

商品もお店の空間も、接客も。すべてお客さんを笑顔にするためにあるもの。

ずっと同じことを繰り返すのではなく、新商品の開発にも、新しいお店づくりにも力を入れて、そこからまた改良していく。

販売促進部は、どうしたらお客さんによろこんでもらえて、なおかつ購入につなげられるかというアイデアを手塚さんと意見を交えながら編み出し、かたちにしていく。

「話しているうちに、ピッとひらめくことがある。それはね、儲けたいから出てくるんじゃない。よろこんでもらうことが快感なんですよ。やっている自分が楽しくなるようにしないと」

 

そんなふうに考える手塚さんの発想は、仕事の枠も軽々飛び越える。3年前には、若い人向けに栃木の特徴ある企業を紹介する雑誌を制作したらどうかと、出版社に提案してつくった。いまは他県からも反響があるみたい。

「こんなことやったらどう?って、ひょんなところからはじまって、それから3年続いているんですよ (笑)。面白いなと思って」

そう話すのは、販売促進部の課長・鈴木洋平さん。

庫やに入社して2年半ほど経つ。以前は東京で編集の仕事をしていた。

自然に近いところで子育てがしたいと転職を考えていたとき、庫やを見つけた。いまは1歳のお子さんがいて、休みの日には一緒に朝の散歩を楽しんでいるとか。

そんな鈴木さんが、メインで携わったという雑誌「from NASU 那須とチーズケーキをむすぶ本」を紹介してくれた。こちらは、那須やチーズガーデンのことをもっと知ってもらおうということで制作している。

3部構成になっていて、那須・チーズケーキ・チーズガーデンについて紹介している。栃木県内の書店や、チーズガーデンの店頭で販売中。

鈴木さんは、月2回編集会議を開催し、すべての記事の取材にも同行したそう。そのときのことを話してくれた。

「那須についての章で、酪農家の方や、デザイン会社の方、マルシェやカフェレストランなど総合施設を運営する方など、那須で活躍する方たちとここでクロストークしてもらったんです」

「牧場を経営し、乳牛や山羊のチーズをつくる今牧場の髙橋さんは、那須を盛り上げるための取り組みも盛んにされていて、お話を聞くなかで、力強さや行動力を肌で感じました」

益子にある「外池(とのいけ)酒造」とは、長いお付き合いがあるなか、新しい試みとして、それぞれがつくる日本酒とチーズケーキのペアリングをした。雑誌ではその様子を紹介している。

「外池酒造さんの日本酒がすっきりした味わいだから、濃厚なチーズケーキと相性がぴったり。意外といけるんですよ。お客さんもそれを知ったら、新しいチーズケーキの楽しみ方を見つけられるんじゃないかな」

最後のチーズガーデンの章では、製造や物流、店舗スタッフの仕事について紹介している。

できあがった雑誌を庫やの社員さんたちに配ったら、家族が「お父さんがんばってね」と応援してくれた、というエピソードも聞こえてきたそう。

この仕事をきっかけに新しいつながりが生まれたり、あらためて一緒に働く人たちのことを知る機会になったのが印象的だったと、鈴木さん。

関わる人やつくっている人も楽しんでいる。そんな感じがする。

ほかにも、新店舗をオープンさせたり、PRイベントを企画・運営することも販売促進部の仕事。

「昨年は1年の間に、本店をリニューアルしたり大阪にお店を出したりして、一大行事が多いなと思ったんです。でも長く勤めている人からしたら、20、30年間こんな感じだよって」

鈴木さんも異業種からやってきて、パッケージづくりなど、経験がない仕事も多かった。販売促進部自体、まだまだ構築段階だという。

まずは行動してみる。それからまた考える。そんなスピードと質のバランス感覚が求められるという。

「エヌカカオチョコレートのパッケージも、まだオープンから1年経っていないんですけど、デザインを刷新しようという話になって、箱の形から見直しました。結果的に売り上げの向上にもつながってきています」

スピード感をもって幅広い仕事をしていくことは、やりがいを感じられる一方で、大変じゃないのだろうか。

「そうですね。でも、全部一人でやろうと思わないで、まわりを巻き込むことができれば楽しめると思います。商品開発であれば、販売スタッフにお客さまの声を聞いて、製造スタッフに試作をお願いする」

「長く勤めているスタッフの中には、今の販売促進部のような仕事を過去にしていた人たちもいますから、わからないことを聞けば、自分の経験を踏まえて教えてくれます」

 

取材後、その場ではじまった打ち合わせの様子を少し覗かせてもらうことに。

議論の的は商品の見せ方について。切り出すのは手塚さん。

「チーズガーデンの那須本店はリニューアルで洗練されたと思う。でも、品性は保ちつつPOPに手書きの要素も加えてみたりして、スタッフが自分の言葉で書くのはどう?お菓子づくりの背景とか、どんなシーンにぴったりのお菓子なのかとか。思わず読んでしまうようなPOPが随所にあったら親切なんじゃないかな」

会話しながらスケッチをして、まず何からやってみようと話が膨らんでいく。

実際にその場にいると、刷新していこうとする熱が伝わってきた。

「自分の頭を使って考えること。ただ無難なやり方を真似するのでは、一過性で終わっちゃう。それではつまんない。自分が考えるやり方でいいから、お客さまが楽しかったと思えるようなシーンをつくってほしい」

手塚さんは鈴木さんに、「どんなPOPが“伝わる”か、探し求めてくれる?」と言って、会議を終えました。

この会話の続きを一緒に考えたい。そう思えたら、まずは応募してみてください。


(2017/11/17取材 後藤響子)

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