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変化する感覚、時間

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

いつも見ている風景、毎日使う道具、会話する相手。

その印象が、ふとした瞬間に少し変わって見えることがあります。

ちょっとしたきっかけで、日常に新しい発見があるとなんだかうれしい気持ちになる。

食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」や、ネクタイ専門ブランド「giraffe」など、身近な日常にあるものから題材を見つけ、これまで見たことのない景色をつくってきた株式会社スマイルズ。

今回募集するのは、スマイルズが京都祇園新橋で運営する現代のセレクトリサイクルショップ、PASS THE BATON(パスザバトン)に併設されている飲食店「お茶と酒 たすき」で働くスタッフです。

この場所で働くと、新しい風景が見えてくるように思います。

祇園四条駅を降り、鴨川沿いを歩いていく。途中で脇道に入っていくと、町家造りの店舗が軒を連ねる一角に、パスザバトン京都祇園店を見つけた。

この地域は、国から重要伝統的建造物群保存地区の指定を受けている。古いのにどこか新しいお店の佇まいに、オープン前にも関わらず多くの人が足を止め、写真を撮っていた。

「この建物は、築120年以上のものなんです。伝統的建造物の良いところは生かしながら、 “新しい価値”を創造し提案する。パスザバトンのコンセプトを体現した店舗です」

そう紹介してくれたのは、店長の近江さん。まずは「たすき」のことを知る前に、パスザバトンがどんなお店なのか教えてもらう。

パスザバトンは、『NEW RECYCLE=新しいリサイクル』をコンセプトに、品物に“持ち主のストーリー”や“新しい視点”を添えることで新たな価値を生み出している。

具体的には、持ち主から預かったものを、3ヶ月間委託販売をする。その際、品物には持ち主の顔写真とプロフィール、品物にまつわるストーリーが添えられる。

たとえば、アメリカのアンティークショップで一目惚れした陶器の壁掛けや、少し奮発して大事にかぶっていたけれど、また違う形の物を買ったので手放すことにした麦わら帽子など。

「どんなふうに愛用していて、なぜ手放すのか」という背景がわかり、購入者の声もまた、はがきを通して出品者に届けられる「思いのバトン」という仕組みもある。

ものを通じたやり取りが生まれるのが特徴だ。

品物の魅力を伝えるため、店内のディスプレイにもさまざまな工夫が凝らされています。

「たとえば、わざと和と洋を組み合わせたりするんですよ。オブジェも動物系のものを配置して、ちょっとした異空間をつくる。それが“パスザバトンらしさ”です」

店内をまわりながら見せてくれた一角には、和の小皿をコースターにして、アイスクリームのカップが飾られていた。

普通なら、小皿をこんなふうには使わないだろうし、なんだか違和感を感じる。

だけどパスザバトンでは、雑多な価値観が同居していて、既存の使い方にとらわれず自由に発想を膨らませることができる気がする。

「私たちが言葉にしなくても、今あるものをこんなふうに活用できるんだと、この一角を見て発見していただけるかもしれない。自分の暮らしに取り入れてみてもいい。そうすればものを捨てずに、循環していくこともできると思います」

品物をセンスとアイデアで“魅力的なモノ”へと生まれ変わらせる。パスザバトンはそんな取り組みだと思う。

すると「ものを通じて豊かな生活ができるということを表現したいと、私たちは考えています」と近江さん。

豊かさ、と一口に言っても、そのものさしもいろいろありますよね。

「そうですね。きっと、日々の小さなことだと思います。たとえば、少し視点を変えた食器の使い方をすることでほっこりするとか、自分にとってすごくいい時間だと感じられるとか。それだけで普通の時間が、全然違って見えるんですよね」

新しい視点に触れるきっかけが、ここにはたくさんある。

ではそこに、たすきというお店が併設されていることは、どんな意味を持つのでしょうか?

「我々は、何かを組み合わせてお客様にプレゼンテーションするということを随所で行っています。それはたすきも同じで、食を通じてパスザバトンらしさを表現しているんです」

食を通じてパスザバトンらしさを表現する。具体的にはどういうことなのか、たすき担当の垣内(かいと)さんが話してくれた。

「たすきでは、お客様が入ってきた瞬間から服装などで雰囲気を感じ取って、お茶や甘味をお出しするときに、その方が好みそうな食器を組み合わせてご提供します。お客様それぞれに志向が違うと思うので、一番合うものは何か想像を巡らせるんです」

カトラリーも食器も、一つとして同じ組み合わせはない。パスザバトンの店内のように、和と洋が巧みに組み合わさって食卓が構成される。

「食器の新しい組み合わせで、会話が弾んでいく。そういうシーンを何度も見ているから、私たちもみんなで話しながら考えていくことが、楽しみの一つになっています」

実際に使って気に入った食器は、購入することもできるのだとか。

働く人にとっても、他にはない組み合わせを自分で考えて表現する。そうして生まれるコミュニケーションは、他の飲食店ではきっと味わえないもの。

一方で、このおもてなしはとても手間がかかることでもある。

食器は、骨董であるため食洗機が使えず、すべて手洗いをしているそうだ。どうしてそこまでやるのだろう。

「どんなに観光地で賑わっている場所であっても、特別感を持ってサービスをしてくれるとうれしいなと私は思うんですよね。なので、ちゃんとお客様を大切にしたいという思いがあります」

今では、東京から毎月通ってくれる方もいれば、海外から毎年同じメニューを注文することを楽しみに、立ち寄ってくれる方もいる。

「この前、すごくにぎやかな日があったんです。そしたら常連のお客様が、隣のお客様にかき氷の説明をしてくださって。最後にはお客様同士がSNSでつながっていました」

「まだまだ、理想のサービスには届いていないんですけれども。お客様に育ててもらっているなと、感じています」とうれしそうに話してくれた。

垣内さんたちの心遣いに、自然とお客さんは惹かれていく。そうしてだんだん、お店の味方になっていくのだろうな。

とはいえ、この空間は最初から出来上がっていたわけじゃない。

たとえば、今では多くの人がお目当てにやってくる、純度の高い純氷を使ったかき氷。

最初はふわふわした食感がうまく出せず、シロップづくりにも苦戦したという。

「代表の遠山に最初に試食してもらったときに、『まぁ20点だね』って。本当は0点なのに気を遣ってくださったことが、今でも忘れられないですね(笑)」

そのときの思いを糧に、かき氷はお茶に合うよう、シロップやクリームをすべて自分たちで手づくりしている。旬のフルーツを必ず使うように心がけているそうだ。

この日いただいたのは、11月限定の紅玉りんごのシブースト。見た目の美しさはもちろん、優しい甘さでとてもおいしい。漆のお盆に鮮やかな器にも、気持ちが華やぐ。

「普通の時間がまったく違うものになる」という近江さんの言葉を思い出して、ストンと胸に落ちた。

これまでものづくりが好きで、洋菓子店や医薬品の商品開発などにも関わってきたという垣内さん。将来は独立も視野に入れて働いている。

試行錯誤を繰り返す毎日の中で、やりがいと大変さは紙一重だと思う。疲れてしまうことはないのでしょうか。

「確かに、大変なことも多いです。でも、与えられた仕事だけをこなしていくほうが、私はしんどいと思うから」

「食器ひとつにしても、自分たちで選んで、どれくらいのお金がかかっているかも知っていると、関わり方も仕事の質も変わってくると思うんです」

ここまででいい、というサービスの枠組みはありません。だから仕事は、自分なりにつくっていってほしい。

興味があれば、食器の買い付けにも同行できるそう。

「買い付けで、いろんな人の価値観に触れると自分の好きな食器の方向性もわかってくるんです。それを暮らしに取り入れると楽しいし、器から新しいメニューが生まれることもあるので、すごく刺激的ですね」

垣内さんのように何事にも興味を広げて、自分ごととして取り組む姿勢が求められています。

最後にお話を伺ったのは、アルバイトスタッフとして働く市川さんです。

働き始めて、ようやく2ヶ月が経ったところ。もともとはテキスタイルのデザインの仕事をしていて、出産を機に新しい仕事を探していた。

「骨董の食器を使っていることや、アートに興味のある人を募集していたことに惹かれて。飲食店だけど、普通のお店とは違った切り口の求人だなと思ったんです」

実際に働いてみてどうですか?

「サイトには、主婦のお仕事の延長でやっていただけますと書いてありましたが、そんなことはまったくなく…(笑)本当に覚えることがたくさんあって、びっくりしました」

心地よい空間を維持するために、行われている努力は大変なものがあるはず。

お茶も、決められた温度や作法で、一人分ずつ丁寧に淹れていく。日々の清掃はもちろんのこと、あらゆる勉強もしなくてはいけない。

「ここで教わること以外にも、興味を持つ必要はあると思います。最近は、家でお茶のお作法の動画を見たり、器のことも少しずつ調べたりしているところです」

「お客様は、期待感いっぱいでこのお店にいらっしゃるので、粗相がないようにしなければと思うと、プレッシャーは大きいですね」

目の前の人を思いやる気持ちは、お客様だけでなく一緒に働くスタッフにも向いている。

たすきでは、ホールやキッチンといった役割分担が明確には決まっていないのだそう。

なぜなら、スタッフとコミュニケーションをとるときにも細かいところに気づく人でないと、良いサービスはできないと考えているからだ。

「あの人はあっちで手を取られているから私がやろう、とまわりを見て動くようになりました。それにホールとキッチンどちらも経験していると、きっと2つ一緒に写真を撮りたいだろうからかき氷を同時にお出ししよう、とキッチンにいたとしても想像できるんですよね」

そんな市川さんは、自らの暮らしにも変化が生まれてきたといいます。

「家でお茶を淹れるときも、温度を測るようになりました。正しい温度で淹れると、お茶って甘くなるんだなと知って。ここではそういう発見がたくさんあります」

お店で発見したことが、自分の暮らしにもいい変化をもたらしてくれる。そんな職場だと思いました。

小さな発見や気づきを積み重ねて、自然と自分にとって大切なものや、暮らしについて考えられるようになっていく。

心の豊かさは、そうやって育まれていくような気がします。

興味を持ったら、まずは祇園のお店を訪ねてみてください。

(2017/11/21 取材 並木仁美)

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