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胸を打たれるようなデザイン。行動を促すコミュニケーションツール。クリエイティブによって生み出されるモノ・コトには、人の心に働きかけ、動かす力があると思う。
それだけに、表面上の良し悪しや商業的な側面だけに目が向けられるのは、その可能性を狭めているのではないだろうか。
社会に価値をもたらすものとして、クリエイティブの可能性を広げていく。
そんな考えで自分たちの仕事を追求している人たちがいます。

企業や社会が抱える課題に対して、クライアントと一緒に根本から考え、本質的な解決を導く提案を常に考えている。
だからこそ大事にしているのは、仕事の枠をつくらないこと。
会社が新しいフェーズに向かおうとする今、これからのAMDをともにつくる仲間を求めています。
AMDのオフィスは、東京と石川・金沢にある。代表の千布(ちふ)さんに話を伺うため、この日は金沢へと向かった。
商品や企業のプロモーションだけでなく、地域創生という領域にも取り組んでいくために、2014年からここにもオフィスを構えているそう。

デザイン制作だけでなく、市民の人たちがガイドになって金沢の街を紹介する企画も行った。
「金沢に来て、人脈づくりも仕事づくりも意識的にやっていくなかで、いろいろなタイプの仕事を手がけるようになりました。仕事のあり方さえも自分たちでつくっていける環境だと感じています」

千布さんがクリエイティブの道を志すようになったのは、10代後半のころの経験がきっかけだった。
「自分は将来どうしようかと本気で考えはじめたときに、日本を飛び出して海外を放浪することにしたんです」
ニューヨークのSOHOというエリアでは、まちなかでグラフィティアートを描いたり、家具をつくったり、広告制作を仕事にする人たちに出会った。
「アイデアやクリエイションを強みに生計を立てている彼らはみんな、エネルギッシュでした。そういう人たちを間近で目にして、自分のなかで“仕事”というものに対するイメージが広がっていったんですね」
自分も、クリエイティブを生業にしたい。
帰国後、千布さんが広告クリエイティブの仕事の足がかりとしてはじめたのが、カフェバーの運営。
お店を構えたのは東京のベッドタウン。昼間働いている職場周辺ではなく、暮らしている街のなかに仕事帰りに遊べる場所をつくろう。そうコンセプトを決め、お店を立ち上げた。
DJブースをつくり選曲テーマやドレスコードを設定した音楽イベントをひらいたり、作家さんの展示兼販売をしてみたり。
「ただ飲食店を営んでお金を払ってもらうのではなく、どう価値を添えたプロセスをつくるか。それを考えるのがアイデアだと思うんです」
千布さんが仕掛けたコンセプトは人々のニーズとマッチして、賑わいができ、人脈も生まれた。
カフェバーは1年で軌道に乗り、千布さんはAMDを立ち上げ、広告制作に挑戦する。
赤字を覚悟で制作したあるビューティー案件のクリエイティブワークが高く評価されたのを機に、仕事が増えるようになる。10年たった今、100社以上のクライアントとやり取りがあるそうだ。
次第に、ブランディングや経営面の課題について解決策を提案してほしいという声が届くようになり、今ではブランディングを軸としたクリエイティブ・プロモーションを提案することが多いそう。

「それは、必ず社会との関連性を捉えながら、本質的な課題解決に結びつくような提案をするということです。クライアントの商品や会社自体が社会にとってどう必要なのかというところを追求して考えます」
「だからこそ、仕事の枠をつくらないようにはしていますね」
仕事の枠をつくらない。
「たとえば一般的な広告プロダクションは、広告を制作する行為を確実に行えばお金をもらえる。けれど、クリエイティブのプロフェッショナルとして、僕らのスキルはもっといろいろなところに活かせると思っています」
「広告というのはあくまで一つのアプローチでしかない。自分たちの可能性を自分たちで狭めず、広げていきたいですね」
AMDは今、ソーシャルクリエイティブグループへと進化するべく、新しい取り組みを行っているという。
新しい仕事づくりを担っている方がいるということで、翌日、東京の表参道にあるオフィスを訪ねた。
表参道オフィスでは、WEBクリエイティブに特化したグループ会社『WOWTTO(ワオット)』と、子育てするママクリエイターによるプロダクション『mom.ent(モーメント)』のスタッフが働いている。
ここで話を伺ったのが、AMDプランナーの金山大輝さん。以前はソフトバンクに6年間勤め、電力事業やロボット事業など、新規事業の企画からマーケティングまで携わっていた方。

ときにはプロデューサーのように仕組みづくりに走り回ったり、コピーライティングをしたり。案件ごとに、柔軟な役割が求められるそう。
具体的にどんな仕事をしているのか尋ねると、現在進行中だという、創業90年の椿油製品老舗メーカー「大島椿」との地域貢献プロジェクトについて話してくれた。
きっかけは、大島椿3代目社長から相談を受けたこと。
大島椿の創業の地である伊豆大島では、近年土砂災害が起きたほか、椿の生育規模そのものが縮小している。さらに、島民との関係も疎遠なものになっていた。
「このままでは、かつての島の風景や椿を取り巻く文化が消えてしまう。なんとかして後世に残していく活動を、リーディングカンパニーとしてやっていくべきなんじゃないかと検討されていたみたいで」
背景にある様々な想いを汲み取りながら、課題を整理し、企画を練っていくところからプロジェクトは動きだした。
島のリサーチや島民へのヒアリングの過程では、大島椿の経営陣やAMDのメンバー、それに島の人たちが一緒になって車に乗り合わせて島中を回った。

雑木林を整備し直して、椿の植樹からはじめよう。その場所で、椿と、椿にまつわる文化を守り、次の時代へと継承していこう。
半年間をかけて、『伊豆大島つばき座』というプロジェクトが導き出された。
「プロジェクト名にある『つばき座』という言葉には、歌舞伎座やオペラ座のように、志が同じ人が集って活動を発信し、文化を継承し続けていくこと。そして、星座の点と点を結ぶように、時間も人もつなげていくことで、新しい椿の物語を生んでいくような場所にしたい。そんなメッセージを込めて名づけさせていただきました」

「パートナーとして同じ目標を見据えながら、お互いの得意とすることをやって、プロジェクトをつくっていく。そういう関係性がこれからのクリエイティブと事業会社との間に必要な関係性なんだろうなと感じています」
一方で、それだけ密に連携して仕事をしていく分、信頼に応えないといけないとプレッシャーを感じることもあるかもしれない。
「会社の経営責任を全部背負っている人の想いに応えられるぐらい、自分ごととして突き詰めて考えないといけません」
「決められた枠にとらわれずに、どれだけはみ出せるか。はみ出していける人にとっては、やりたいことを仕事にしていける環境だと思います」
とはいえ、プロジェクトが多様化していくと、さまざまな想いを持つ人と関わることになる。多様な想いを受けとめていくのは、ブランディングやデザイン制作をする以上に大変なことも増えるように思う。
「人と出会って、その人が抱える問題を解決して、喜んでもらう。その過程にこそ、デザインの真髄があるんじゃないかなと思っています」
そう話してくれたのは、アートディレクターの朴なおみさん。

「コミュニケーションを重ねたうえで方向性が見えてきたら、スタッフィングをして。アイデア出しから、グラフィックなどの制作を手がけ、提案、実行、定着というところまで一気通貫してやっています」
仕事をしていて難しいと感じるところを尋ねると、「人に伝えること」と答えた朴さん。
「世の中に対して伝えていくうえで、どう伝わったら響くだろう、心地いいものになるだろうかと、日々考えていても、本当に難しいなと思います」
一緒に働く人とも細かなニュアンスまで共有することを諦めない。相手の意向を尊重しつつ、良いものをつくるために、正直な意見をぶつけあうこともあるという。

「AMDの特徴として、プロデューサー陣やプランナーの個性が強いような気がします。案件を創出する人たちが面白いと、おのずとクリエイティブも面白くなるというか。それがすごくいいなと思っています」
最近は、社会課題の解決や国連で採択された『持続可能な開発目標(SDGs)』に関連したプロジェクトにも力を入れているそう。これまでの広告という領域を超えて、企画やデザインのスキルを発揮してみたい人にとっては、挑戦しがいのある環境だと思う。
ここで働く人たちからは、肩書きにも働き方にもしばられない、柔軟さと想いの強さを感じました。
そのエネルギーが、クリエイティブという言葉の意味をさらに広げていくのかもしれません。
(2017/10/31取材 後藤響子)