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創造の最前線

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

取材で全国を巡っていると、様々な業界の先駆者たちに出会うことがあります。

その人たちの話に共通していると感じるのは、新しいモノやコトはいきなりは生まれないということ。試行錯誤を繰り返し、100のチャレンジの中から1の成功を生み出している。

新たな道を切り拓くためには、思い立ったらすぐにやってみるというチャレンジの姿勢が大切なのかもしれません。

認定NPO法人『ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)』の國田さんも、こう話します。

「たしかに行動が先になると、後から修正が必要になったりして手間は増えたりします。けど、誰よりも先に一歩動くことによって見えてくることがあるというか。世の中にあるいろんな課題は、悠長にしている僕らを待ってくれないんですよね」

PWJは世界中で人道支援を展開している民間の団体です。

たとえばイラクや南スーダンなどの紛争地域で緊急支援を行い、その後も学校の建設や井戸の掘削といった継続的な支援をしたり、大規模な自然災害に見舞われた地域に災害救助犬とレスキューチームを派遣し、救助活動や被災者支援をしたり。

まだ日本に大規模な緊急支援をするNGOがほとんど存在しなかった時代から活動を続けてきた、業界のパイオニアでもあります。

そんなPWJはこれまでの様々な支援の経験を活かして、日本の社会課題に向けた新たな取り組みをはじめています。

そのひとつが、広島県神石高原(じんせきこうげん)町にあるショップ&カフェ『マルクトプラッツ』。今年3月には隣町の国営備北丘陵公園内にも新たな店舗をオープンします。

今回はその新しいお店とマルクトプラッツそれぞれで働く店長候補や料理人、パティシエ、接客、販売、調理、事務スタッフを募集します。

また、その2つのお店に限らず、PWJが手がける国内事業の広報やデザイン、ブランディング、ティアガルテンでのアウトドア用品の販売などを担当できる人も募集します。

たとえものすごく秀でたスキルや能力を持っていなくても、まずやってみるという姿勢でチャレンジしていく人を求めています。



広島空港から車で約1時間。福山駅からはバスに乗って1時間半ほどで神石高原町に到着する。

市街地とは打って変わって、あたり一面は雪で真っ白。神石高原町は標高500m前後にある中山間地域だ。ここにPWJが運営するショップ&カフェ『マルクトプラッツ』がある。

店内に入ると、国内事業部長の國田さんが迎えてくれた。

まずはストーブの前に座ってホッと一息。「よかったら飲んでください」と、温かいコーヒーをいただく。

このコーヒー豆はPWJが支援している東ティモールのフェアトレードコーヒー。加工技術がないために安く買い叩かれていたコーヒー農家にPWJが技術者を導入し、質の高いコーヒーの生産を実現。さらに見合った対価がきちんと支払われる流通の仕組みをつくり、PWJが販売も行っているのだという。

そういった支援活動を世界中の国々で行ってきたPWJ。どうして今、日本の中山間地域でショップ&カフェを運営しているのだろう。

「なんでそんなことまでやってるの?って聞かれることは、よくあるんです。我々も正直、いろいろやり過ぎているかなと思っていて(笑)だけど、PWJは世の中に新しい仕組みをつくっていくっていう考えを持った団体で。常にチャレンジし続けるというDNAがあるんです」

PWJが設立されたのは1996年。当時はまだ日本にNGOやNPOが浸透していなかった時代。

代表の大西さんは、各国政府や国連を凌ぐような活動をしている海外NGOに追いつこうと、質の高い支援活動を行うほかに、日本のNGOに助成金を供給する団体『ジャパン・プラットフォーム』を立ち上げるなど、日本のNGO業界の底上げをしてきた。

「僕は前職、政治部の新聞記者をやっていまして、日本のNGOを取材する中で代表の大西と話すことがあったんですね。そのとき彼は、目の前の難民支援をやることだけが自分の目的ではない、自分たちのような民間団体が社会の中でより広く役割を果たしていくようになりたいんだ、と言っていて」

「その言葉は、政治家や官僚の一言をとるために日夜頑張りながら、これで世の中変わるのかな?と思っていた当時の自分に刺さりまして。それで2003年にここの一員になったわけですけど、まだ日本において私たちのような民間団体の存在感ってちっぽけなものなんです」

もっと日本の社会に貢献していくために、PWJにできることは何だろう。

そこでPWJが新たにはじめたのが、日本を取り巻く様々な社会課題を解決するような仕組みやビジネスモデルをつくることだった。

たとえば、2010年にはじめた『ピースワンコ・ジャパン』というプロジェクトでは犬の殺処分ゼロを目指し、犬を保護して新しい里親へ届けたり、捨て犬から災害救助犬を育てたり。全国の団体とも連携をとって活動を活発化させようと、他団体へ助成金を供給する仕組みもつくった。

ピースワンコ・ジャパンの本拠地として選んだのが、豊かな自然と広い敷地のある神石高原町だった。

ただこの町も、過疎化・高齢化が深刻なほど進んでいた。

「人口が9300人ほどで、その半数近くが65歳以上。これから日本全国の地方地域が神石高原町のようになっていくわけです。そんな一番厳しいところで地域づくりのモデルをつくれたら、日本の各地にそのノウハウを活かせるんじゃないかと考えたんです」

一方で、地域の団体によって管理されていた公園を、”命”をテーマにリニューアルする構想が発足。ここにPWJも加わり、神石高原町の活気を取り戻すために自然体験型の観光公園『ティアガルテン』とショップ&カフェ『マルクトプラッツ』を2015年から順次立ち上げた。

マルクトプラッツのショップスペースでは、町内や周辺地域の特産品や加工品、そして東ティモールのフェアトレードコーヒーなどPWJが関わるプロジェクトの商品も販売。

カフェスペースでは地元食材を使った料理を提供し、マルクトプラッツは地域の魅力を発信する場として機能している。

オープンから約2年。『有機栽培農業塾』というセミナー形式のイベントや、子どもたちに人気の『真夏の雪まつり』など、幅広い世代に向けた企画も実施したりすることで集客は年々増しているものの、やはり立地による難しさがあるという。

まだまだ整備できていないことややりたいことはたくさんある。そんななか人手も足りていないので、今回の募集で加わる人に知恵を出してもらいながら、一緒にお店づくりをしていきたいという。

「町内の魅力や生産者さんの声を伝えるPOPをつくったり、神石高原町には手土産にちょうどいいお菓子が少ないので開発したり。地元の方にも来てほしいので、地元の方に喜んでもらえるサービスやメニューも開発したいです」

「やることはいっぱいですけど、逆を言えば何でもやれるというか。このお店を目的に観光客が集まるくらい、魅力ある店づくりをしていけたらと思っています」



昨年9月に入社した高嶋さんは、飲食業界で長年勤めてきた経験をマルクトプラッツの運営に活かしている。

「お店は2年目だけど、ずっと飲食業をやってきた者からすると、え?って思うくらいできていないことがあって(笑)本当に掃除のやり方ひとつから、まず基礎を固めることからはじめました」

アルバイトスタッフも含めて、PWJには飲食業の経験者はほとんどいないのだそう。なぜ掃除が大切なのか、どうしてきめ細やかなサービスが必要なのか、高嶋さんは自主的にスタッフ教育も行ってきた。

「もちろんこれまでの努力があってこその今だと思うので、頑張ってきたスタッフさんたちを否定することはしないんですけど。自分発信でいろいろ提案できるのがPWJのいいところだと感じていて」

「それで提案したことを実際にやるとなったら、本当にゼロからはじまるんですね。誰かが教えてくれるわけでもなく、そこが不安でもあり逆に楽しい部分でもあって。やりたければ何でもできる。責任もかかるけど、任せてもらえることがすごく多いです」

高嶋さんは現在、神石高原町のお隣、庄原市にある国営備北丘陵公園の中で今年3月にリニューアルオープンする店舗の立ち上げに携わっている。

このプロジェクトはもともと、庄原市や観光協会、商工会、そして地元の方々が地域を盛り上げようと、市が国営備北丘陵公園の一部の管理を国から受託し、そのスペースを活用して地域の魅力発信をしていこうという社会実験的なプロジェクト。

そのパートナーとしてPWJが選ばれ、レストラン・カフェ・ショップを運営することになった。

公園の中にある大きな2階建てをリノベーションし、1階をショップ&カフェ、2階をレストランにする予定で、なんと高嶋さんはカフェの計画を任されているという。

「任せます!って言われたので、後日どのくらい任されるのか確認したら、全部まるごとだって(笑)人手が足りていないからっていうのもありますけど、今までの経験をもって発信してくれと國田は言ってくれていて。コンセプトづくりから内装のことまで、今は急ピッチで進めています」

高嶋さんは将来自分のお店を開くことがずっと夢だったそう。今回のプロジェクトにゼロから携わることで、夢の実現に大きく近づくのだと思う。

「PWJのプロジェクトってどれもスピード感があって。この施設の立ち上げもすごく短いスパンで仕上げなくちゃいけなくて、あるものの中から知恵を絞って立ち向かっていくしかない」

「私も言い訳をしたくなるときがあるんですけど。でも、できないじゃなくて、やるっきゃないんですよね」

限られた人員・リソース・時間の中で、メンバーがそれぞれの経験や能力を活かし、知恵を絞ってできる範囲のことからまず取り組んでいく。

そのプロジェクトの進め方というのは、災害などの緊急支援の現場と似ているところがあるかもしれない、と國田さんは言う。

「できることから一生懸命に考えてやってみて、結果がついてこなくてもそれを責めることはないです。逆に何もやらないことに対してはすごく厳しい。まずやってみればいいじゃないかと。PWJはチャレンジを恐れるなっていう精神ですね」



最後に話を伺ったのは、マルクトプラッツで調理を担当している重光さん。

彼はまさにチャレンジを恐れず、むしろ楽しんでいる人だと思う。

重光さんは、これまでずっと料理人として様々な職場で調理を経験してきた。

前回の募集では料理人を募集していなかったにも関わらず、PWJの取り組みや神石高原での暮らしに興味を持って飛び込んできたのだそう。

「毎朝、道の駅に行って野菜の買い出しをしているんです。神石高原町にどんな野菜があるのか、その時期の気候によっても出てくるものは全然違うので、業務時間外ですけどそれを知るために必要なことだと思って」

最近は、地元の人や生産者さんと話をすることが目的になっているそう。菊芋の育て方を教わったり、地域のお祭りに誘ってもらったり。帰り際、道の駅で働くおばちゃんがポケットの中に缶コーヒー入れてくれたりするのだという。

「そういうのもあってか、クリスマスに特別ランチをつくったときには、道の駅の方々がお店に来てくれて。都会みたいにお金さえ稼げればいいというんじゃなく、人と人が交流していく間に何かが生まれるっていうのがこういう地域での商売のあり方なのかなって思います。だから1日ですぐに成果が上がるような場所ではないんですよね」

「地道にやっていかなきゃいけないことも多いですけど、そういうことも含めて楽しめる人に来てくれたらいいなと思います」

重光さんは暮らしも伸び伸びと楽しんでいる様子。

家の前には沢が流れていて、夏はそこに椅子を置いてビールを飲みながら、一面の星空やホタルを眺めるのだという。

これが絶対という正解はなくリソースも限られた中、知恵を絞ってチャレンジする。

より大きく変動していくであろうこれからの時代に、求められる力だと思います。

(2018/1/10 取材 森田曜光)

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