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丘のまちの1ページ

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

まだ涼しさが残る初夏の朝。

朝食を済ませたら、お世話になっている農家さんのハウスへ向かう。農家さんいわく、今日はトマトの苗の脇芽取りをする予定らしい。

日中は40度近くになる暑いハウスのなかの作業は、じっとしていても汗がしたたる。

日々大きくなる苗を感じながら黙々と脇芽を摘んでいると、あっという間に一日は終わった。明日の作業を確認して帰るころには、身体はへとへとだ。

こんな日は、寄り道をしていこう。車を走らせ向かった先は、お気に入りの丘の上。

そこからは、どこまでも美しい丘の風景が続いている。

ああ、よく働いた。深呼吸をすると、疲れた身体がほぐれていく。

これは、美瑛(びえい)で働く農作業ヘルパーの一日を想像して書いたもの。

今年もまた、北海道美瑛町で農業のお手伝いをする人を募集することになりました。

春からはじまり秋で終了する短期ヘルパー、雪深い冬も味わえる長期ヘルパーのどちらでも構いません。

食や農業に携わってみたい、環境を変えて新しいことをしてみたい。北海道でのお試し移住を考えている方にもおすすめしたい仕事です。


北海道のほぼ真ん中、旭川市の隣に美瑛町はあります。

旭川空港から美瑛へは、車で20分ほど。一面の白い雪に引き込まれて、しばらく寒いことも忘れて見入ってしまった。

雪が解け春が訪れると、美瑛は一気に彩り豊かな町へと変わる。

麦、馬鈴薯、玉ねぎ、トマト、アスパラ…さまざまな作物が育つ畑が、色とりどりの「パッチワークの丘」の景色をつくり出すからだ。

そんな景色を求めて、毎年約150万人もの観光客が国内外から訪れ、移住先としても人気の地域なのだそう。

この日、美瑛で働く農作業ヘルパーについて話してくれたのは、事業を担当するJAびえいの山田さんと、雇用主となる美瑛通運株式会社の山岸さん。

「美瑛の農業は、ゆるやかな丘陵地形を活かして、麦をはじめトマトや馬鈴薯などいろんな種類の野菜を大規模に育てているのが特徴です」

美瑛は1万1600ヘクタールにもなる耕作面積を持つ、北海道のなかでも有数の農業のまち。

一方で、高齢化や後継者不足が進み、専業農家たちだけでは広大な美瑛の農業を守りきれないというのが正直なところ。

そこでJAびえいと美瑛町は、町外から新規就農者を募ることに。農繁期に人を雇い入れる農作業ヘルパーもその取り組みのひとつだ。

「おかげさまで、美瑛の農作業ヘルパーは毎年たくさんの方にご応募いただいていて。用意する住まいが追いつかなくて、お断りすることもあるくらいなんですよ」

6年前に募集をはじめたという美瑛の農作業ヘルパーは、年々人気を集め、今期は全国から予想をはるかに越える80人以上もの応募があった。そのうち20人を採用したそう。

農作業ヘルパーを募集している地域は他にもある。そのなかで美瑛の農業に携わりたいという人が増えているのはなぜなのだろう。

山田さんはこう話す。

「ひとつ理由をあげるなら、美瑛は豊富なコンテンツがあるからでしょうね」

豊富なコンテンツ。

「四季がはっきりしていて1日の寒暖差があるおかげで、美味しい野菜ができるんです。野菜のポテンシャルが高いから、うちはさまざまな機会をいただけています」

たとえば、地元で採れる野菜をより広く知ってもらおうと、JAびえいは、10年以上前から「美瑛選果」というアンテナショップをオープン。

お店の中には、ミシュランの星付きシェフが腕を振るうフレンチレストラン「ASPERGES(アスペルジュ)」や、地元の小麦でつくるパン工房も入っている。

このほかにも、美瑛の小麦に惚れ込んだ渋谷VIRON代表の西川さんとのコラボパンが生まれたり、世界的パティシエのピエール・エルメさんが食材の研究をしに町を訪れたり。

町内でつくられる食材をきっかけに、最近は国内外から美瑛町そのものに注目が集まっているそう。

「ありがたいことに、観光で訪れた方たちもわざわざアンテナショップに来てくれたり、並んでまでパンを買ってくれる。みんな美瑛の野菜が良いと言ってくれるし、美瑛町を好きになってくれます。恵まれていますよね」

独自のポテンシャルを活かして、さまざまな挑戦を続けている美瑛の農業には、衰退している産業が持つ暗さは感じられない。この明るい雰囲気にみんな引き寄せられているのかもしれない。

各地で評価される美味しい野菜をつくり続けられているのは、やっぱり町内の農家さんの努力があってこそ。

農作業ヘルパーは期間限定のお手伝いとはいえ、農家さんたちからは大事な戦力として期待されています。

おもにアスパラやトマトをつくっている方の元へ行くことが多く、着任のタイミングによってはどちらも経験することができるそう。

この日は受け入れ農家さんを代表して、大玉トマトをつくっている寺口さんを紹介してもらいました。

「春に来たら、まずは苗の定植をしてもらいます。苗が育ってきたら実付きを良くするために脇芽を取ったり剪定をして。収穫が終わる10月にはうちの作業もおしまいです」

定植、収穫とひと口に言っても、その労力は計り知れません。

種から苗を育て、ポットに土を詰めて植え直す作業を成長段階に沿って何回か繰り返す。しばらくして大きくなった苗を今度はハウスの中の畝に定植。しっかり上に伸びるように、垂らした紐で縛って成長を待ちます。

収穫するときはハサミでヘタの上部を切り取る。荒い切り口だと出荷するときにほかのトマトを傷つけてしまうから、丁寧に慎重に作業するのだそう。

ご自宅の隣にいくつも並んでいるハウスは、すべてトマト用。栽培時期を終えて今は骨組みだけになっていても、1人では管理しきれないほどの広さだとわかる。

実際に、農作業ヘルパーを導入してみていかがですか?

「よく野菜を見てる勉強熱心な人が多くて、僕が気づいていなくても『ここのトマト病気になってるみたいだよ』って教えてくれることもあったりしてね。助かってます」

「みんな慣れるまでひと月くらいはかかるんだけど、慣れたら一人ひとりすすんで作業してくれますね」

美瑛の農作業ヘルパーの特徴は、野菜を育てて収穫するまでの一連の流れを同じ農家さんのところで体験できること。だから、ヘルパーには自然と責任感や愛着が生まれてくるそう。

「農業って自然と共にあるものだから、太陽が出ないと育たないし、手入れをしていても駄目になっちゃうこともある」

「スーパーに売られているトマトが大変な思いをしてつくられてるんだって知ってもらえるだけでもいい。食べ物へのありがたみを感じられるようになってくれたらいいなぁ」

にこにこと穏やかに話してくれる寺口さん。美瑛の農家さんは、どんなヘルパーがやってきてくれるのかとっても楽しみにしています。

期限つきのお手伝いと言うと、季節のリゾートバイトを想像する人もいるかもしれない。でも、毎日農家さんの想いに触れられる仕事は、都会にいては意識もしない食への感謝を教えてくれると思う。


美瑛の農作業ヘルパーに応募してくる人たちは、それまでの経歴も年齢層もさまざまです。

食材について学びに来た料理人や、風景写真を撮影するために来た人。卒業論文のための調査をしたいという学生や、一度は美瑛に住んでみたかったなんていう人も。

去年の春から参加して、長期のヘルパーとして活動している深澤さんにもお話を伺いました。

どうして美瑛でヘルパーをやろうと思ったのでしょうか。

「もともといろんな土地を旅することや、ご飯を食べることが好きで、いつか食に携わることをしたいなって思っていたんです」

新宿のオフィスでデスクワークをしながら、農作業のイベントに通う日々。そんなあるとき、日本仕事百貨の募集記事を見つけたそう。

「行って駄目だったら帰ればいいし、とにかくやってみようって」

GW明けに美瑛に到着して、2日後には農家さんのところで作業を開始した。

やってみてどうでした?

「私が派遣された農家さんは、美瑛で一番大きな大型農家さんで、想像をはるかに超える大変さでした」

「5月でもハウスの中はものすごく暑いし、一見簡単なようだけど土木現場かと錯覚するくらい体力が必要で。2日でめまいがしましたね(笑)」

そんなに。でも、辞めようとは思わなかったんですね。

「頑張って働いていると、日々目にしてる野菜の色やかたちが変わっていくんですよ。五感で変化を感じられるから飽きずにいられたのかな」

美瑛の農作業ヘルパーは、秋のトマトの収穫を終えると一区切りで、作業内容が変わる。そこから長期ヘルパーとして残った人たちは、冬の間は野菜の加工工場で働くことになる。

深澤さんは、今日は一日たまねぎの選別作業をしていたそうだ。

「マスクを3枚していても鼻の穴の中が土ぼこりで真っ黒になるんですよ。冬の間はずっと同じ作業をしています」

農作業自体は終わっていますけど、残ることを決めたのはどうしてですか?

「夏の間の農作業だけでも、きっと楽しかったって帰れたと思うんですけど。ここに住んでみて、もう少し美瑛のいろんなところを見てみたいと思うようになったんです」

ご近所さんが自家製のたくあんを持ってきてくれたり、雪かきを手伝ってくれたり。一緒に働く地元の人が夕ご飯をつくってくれることもある。美瑛で出会った人たちは、みんな優しくていい人たちばかりだった。

美瑛に特別な思い入れがあって来たわけではなかったけれど、今はもっとこの土地を知りたいと思っている。

「こういう土地で生きていくためには、本来仕事は選べない。春から秋は農作業で、冬は加工作業。そうしないとご飯は食べられないんです。四季をすべて体験してみて、やっと美瑛で生活してるなって思うようになりました」

「新宿で働いていたときは、生活のいろんなものが後回しでした。今は、毎日早起きをして朝ごはんをしっかり食べて、洗濯ものをしてしっかり働いて一日が終わる。ずっと求めていたふつうの生活ができていて、すごくうれしいんです」

深澤さんのように、ヘルパーを経て人生が思わぬ方向に進んでいく人はほかにもいる。

美瑛の若い農家さんと結婚を決めたヘルパーや、語学力を買われてJAびえいの新たなプロジェクトのメンバーに選ばれたという人も。

ここではご紹介しきれなかった人たちも、みなさん美瑛に飛び込んで、とても充実した生活を送っていると話してくれたのが印象的でした。


どんな目的であろうとも、新しい土地に飛び出してみようという意志があれば、きっと何かが動き出すように思います。

美瑛だからこそ生まれる出会いや感動を楽しんで。長い人生の1ページに、美瑛の農作業ヘルパーという選択肢もありかもしれません。

(2018/1/19 取材 遠藤沙紀)

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