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いくらでも楽しくできる

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グループホームを知っていますか。

グループホームとは、認知症の症状をもつ高齢者の方が住み慣れた地域で生活を続けられるようにすることを目的とした介護福祉施設です。

5〜9人という少人数のユニットで、365日を過ごします。

東京・目黒のグループホーム「鷹番あやめ」では、入居者の方が生活するなかで難しくなっていることを補うだけでなく、どうしたら入居者のみなさんが自分でできることをより長く継続していけるかを大事にしています。

そのために、介護職員の方たちが日々いろんな工夫をしているようです。

「何もしなければ何もしないで終わってしまう。そのなかでいかに楽しく過ごしてもらえるか。決められた枠はないので、こんなことできるんじゃない?というアイデアを、どんどんカタチにしていけるんです」

取材で印象的だったのは、そんな言葉でした。

今回は、株式会社ソラストが運営するグループホーム「鷹番あやめ」で、認知症の方たちの暮らしをサポートするケアワーカーを募集します。

 

東京・目黒。

学芸大学駅から歩いて5分ほど。住宅街のなかに鷹番あやめはあった。

外観は、街中でよく見かけるアパートという感じ。

3階建ての1・2階がグループホームとなっている。

1階のリビングで話を聞かせてもらったのが、ここの管理者の新美(にいみ)さん。

新卒から8年間グループホームの仕事に携わってきて、ソラストには2年前に入社。1年半ほど世田谷にあるグループホームで管理者を務め、鷹番あやめには昨年10月にやってきた。

まずはここがどんな場所なのかを教えてもらう。

「そもそもグループホームは、認知症の進行の緩和・自立支援を目的に、できることはなるべくやっていただくという方針の元で運営しています」

1階と2階でそれぞれ9人ずつの入居者さんが暮らしており、各フロアに7人のスタッフがついている。

日中は2〜3人のスタッフが、食事の準備をしたり、フロアにいる入居者の方とコミュニケーションをとったり、体操やレクリエーション、外出をしたり、あとは入浴介助など、いろいろな役割を交代しながら働いている。

1日の流れは、6時ごろに起床し、7時過ぎに朝食。10時になるとティータイムで、そのあとは散歩に出かけたり、塗り絵などのレクリエーションをして過ごす。

食前に体操をしてからお昼ご飯を食べ、午後からまたレクリエーションをしたり、お風呂に入ったり。15時になるとおやつの時間で、17時に夕食。19時から21時ごろになると消灯して眠りにつく。

「自分の家族より入居者さまといる時間のほうがたぶん長いです。一人ひとりとの関わりがすごく密ですね」

認知症の症状も、性格も異なる入居者の方たちが暮らしを営む場所。

管理者の考え方によって、施設ごとに運営の仕方はまったく異なるという。

新美さんはどんなことを大事にしているのだろう。

「ぼくがずっと意識しているのは、できることはなるべくやっていただくということ。時間がかかってもスタッフは手を出さない。今できる行為を継続できるようなケアが必要であり、そのためのサポートに力を入れています」

たとえば、食事ひとつとっても、盛り付けやお皿洗いなども入居者の方が行っている。

「できそうなことはスタッフがしっかり観察して、継続的なサポートをすることで“できる”に変わっていく。そうすると、その人の日常生活が少しずつ回復したり維持できる。そんなふうにして、入居者さまたちの居場所をつくっていければと思っています」

できることの幅が少しずつ広がっていく、というのは具体的にどういうことなのでしょう。

「たとえば、ふだん車椅子で過ごしている方でも、トイレでは自分で立って便座まで移動して座ることができていたんですね。それを見て、足は多少動かせるんだなと気づきました」

そこで、食事のときなど、車椅子から別の椅子に座り直す動作を自分で行ってもらい、少しでも足の筋力が維持できるように意識しているという。

「本当に少しずつ少しずつではあるんですけど。のちのちはスタッフが手を持ちながら、1日5歩、歩いてみようという感じで進めていこうと思っています」

根気強く向き合っていくんですね。

「そうですね。スタッフみんなで協力して、できるようになったときは“やってよかった”という達成感を一緒に味わえる。それが楽しさに変わっていくんじゃないかな」

少人数に対して近い距離感で関わっていくからこそ、すぐそばで感じられることがあるんだと思う。

さらに、グループホームは自由度が高いと新美さんは話す。

「たとえば以前の職場では、映画や落語を一緒に観に行ったり、鬼怒川へ旅行に行ったこともありました。そういうときには、普段なかなか言葉が出ないような人たちもすごく喜んでくださって」

鷹番あやめでは、重度の症状をもつ入居者の方も多く、これまでは外に出る機会が少なかったそう。

そこで新美さんは、外に出る機会を少しずつつくっていこうと、今は1ヶ月に1回みんなで外出する企画を立てている。

「一緒に外食に出かけたり、1月は車に乗ってみんなで初詣に行きました」

「外に行かずとも、何を食べたいかアンケートをとって、出前のお寿司をここで食べたりもしていて。入居者さまが何を望んでいるか、本人や家族からも情報を汲み取って、最適なケアを提供していくことがいいのかなと思っています」

何か企画をしてみても、入居者の方たちは次の日には忘れてしまっていることも多いそう。

「行事から帰ってきた夕方ぐらいに話を聞いても、すでに、『どこか行ってきたっけ?行っていないわよ』って(笑)」

少し切ない気もします。

「そうですね。でも、そのとき楽しんでくださっているのがいいのかなと思います。記憶はなくなったとしても、心象は残っていますから」

一緒に時間をつくっていくような感覚なのでしょうか。

「そんな感じです。入居者の皆さまにとっては第2の家みたいなものなので」

「逆に言えば、何もしなければ何もしないで終わっちゃうのがここの生活。いかに楽しんでもらうのか。それを考えていくことを大事にしたいですね」

新美さんからは、入居者の方たちと丁寧に向き合う姿勢が伝わってくる。

この仕事をはじめた経緯を尋ねると、やりたくてはじめたわけではなかったという。

「就職活動に行き詰まっているときに、友人からやってみたら?と声をかけられたのがきっかけでして。知識も経験も無いなかで就職を決めました。」

新美さんがまず大事にしたことは、相手を知ろうとすることだった。

どんな人生を辿ってきたのか、どんな人柄なのか。病気のことや服用している薬も含めて、どんなことに気をつけたらいいのか考えながら、いつも入居者の方たちに接しているそう。

今では冗談を言い合えるような関係なのだとか。

一方で、それだけ距離感が近くなっていくからこそ、新しい壁にぶつかることもある。

「認知症によって、たとえば手が出ちゃったり、きつい口調になったり、いろんな症状が引き起こされるんです。真に受けるとスタッフも精神的に楽ではないと思う」

「そこが、今のスタッフが悩んでいるところのように感じていて。認知症の理解がしっかり身についてくると、もっとゆったりした気持ちでその人に接していけるのかなと思います」

たとえば新美さんだったら、どう反応を返しているのでしょう。

「うーん…。入居者さまの状況にもよりますけど。ぼくは人として接するうえで、たとえばスタッフやほかの入居者さまに手を挙げたりしたら、疑問をなげかけます」

「認知症だから感情が出やすくなる部分はもちろんある。でも、だからと言って感情のままに振る舞うのがOKかと言えば、絶対にそうではと思う。共同生活に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。ちゃんと理由や根拠を探ったうえで伝えるべきことは伝えるべきなんじゃないかなと、今までやってきて思っています」

それが正解なのかは分からないと、新美さんは続ける。

「でも正解がないことも、この仕事の楽しさの一つなのかなと思いますね」

新美さんたちは、月に一度、カンファレンスという会議を開いているそう。ケアの方法をその都度見直し、改善に向けて意見を出し合っているという。

たとえば、入浴拒否されるときにはどうしたらいいか?というスタッフからの相談に対して、新美さんはこんなふうに考えた。

「ごまかしかもしれないけど、お薬を塗らせてほしいから体を洗ってから塗らせてくださいと声掛けをしたり、音楽の好きな入居者さまであれば、お風呂で曲を流して気分良く入ってもらおうとか提案してみるんです」

入居者さんのことを知っているからこそ、こうしたアイデアも浮かんでくる。

「10個やって1個うまくいけばいいかなという感じですけど、その方にとって良いと思う方法をまずやってみる。良い方法が見つかれば、みんなで共有して実践していきます」

 

ここで、隣で話を聞いていたエリア統括責任者の落合さんが反応する。

「毎日9人の入居者さまと、職員を合わせてだいたい11人と会って過ごす。それが1週間で40時間あって、その連続なわけです。そのなかで、どうモチベーションを保つかということがすごく難しい。違った表現で言えば、分かった気になっちゃうというか」

分かった気になる。

「たとえばさっきの入浴拒否の話なら、『はいはい、またですね』ってあたかも分かったような感じになってしまう。そのとき、目の前で起きていることや言葉に出てきたことでその方を判断するのではなくて、なぜそう思うのだろう?と、問いを繰り返す」

以前、落合さんが問いを掘り下げていったら、自宅のお風呂で旦那さんを亡くした方がいたという。

「そういうところまで知ったら、お風呂を拒否するというより、潜在的にお風呂が怖いんだって気づくじゃないですか」

「介護の仕事ってこうだとか、早めに見切っちゃう人も多いんです。でも、自分の振る舞いが目の前の人にどのような影響を与えるんだろう?って、真剣に悩んで、人生まで深く考えて。こんなにのめり込める仕事は、ぼくにとってはほかにないですね」

取材を終えてリビングを後にする際、ある入居者の方が「ご苦労さまでした」と声をかけてくれた。

体力面も精神面も楽な仕事ではないと思う。知らない世界に飛び込むのは躊躇してしまうかもしれない。

それでも、ここでしか出会うことのできない一瞬一瞬がきっとある。

チャレンジしてみたいと思えたら、ぜひ応募してみてください。

(2018/02/13 取材 後藤響子)

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