※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
今まで知らなかったものごとに触れると、考え方やものの見方が深まっていくように思います。自分から見つけていくのも楽しいけれど、人から教えてもらったときもまた、うれしいもの。
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今回募集するのは、三菱一号館美術館でEastが運営する『Store1894』のアルバイトスタッフ。
つくり手の想いに触れ、お客さんへと伝えることで対話につながる。Eastの運営するミュージアムショップには、そんな時間が生まれているように感じました。
企画展での短期アルバイトスタッフも募集しているので、興味のある方は読み進めてください。
日が暮れはじめた午後6時前。
東京駅から有楽町方面に向かって丸の内のオフィス街を歩いていく。
程なくして趣ある赤煉瓦の建物が見えてきた。
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入り口がある中庭は、さっきまでいた通りのにぎやかさから一転、静かでゆったりとした空気感が漂う。
美術館が閉館した後、迎えてくれた店長の大井田さんにお店を案内してもらう。
『Store1894』は、年に3回開催する企画展に合わせた特設ショップと常設ショップとで構成されている。
展覧会を鑑賞し終えたお客さんがまず足を踏み入れることになるのは特設ショップ。
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「ミュージアムグッズも毎回、展覧会のイメージや作家の雰囲気を伝えられるように、私たちが一から企画しているんです」
現在開催しているのは、『ルドン−秘密の花園』という展覧会。
「今回は植物や花がテーマとなっているので、ふわふわっとした植物を感じていただけるように、ハンカチをおつくりしました。全部で21種類あって、全種類購入された方もいたんですよ」
特設ショップの奥へ進むと、常設ショップがある。
主にヨーロッパから開催中の展覧会に合った商品を一つひとつセレクトし、紹介しているそう。Eastがつくった三菱一号館美術館オリジナル商品も並ぶ。
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直前まで短期アルバイトスタッフの面接を行っていたそう。
同じ方向を向いていける人に出会いたいから、毎回、開さんが直接会って話をしているという。
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お客さんは展示を一通り観て回ったあと、その余韻とともにお店にやってくる。だからこそミュージアムグッズは、作家の存在を引き立て、再び感動を呼び起こすようなものにしたい。
今回製作したハンカチは、ルドンの描くカラフルで美しい植物たちの魅力を表現したいという想いが出発点になっているそう。
どの絵のどの部分をトリミングすると柔らかさや儚さまで感じてもらえるか。作品の色彩感が損なわれないように布に美しく印刷するにはどういう技術が必要か。いろいろなことを考えて、21種類それぞれをデザイン・製作していった。
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そう話す開さんは、もともと職人さんや加工業者さんと一緒に、ミュージアムグッズを含むものづくりに携わってきた。
2008年に独立しEastを立ち上げた当初は、製作した商品の卸しを専門に行っていたという。
次第に、手がけた商品を自分たちの手で届けたいと、お店の運営までトータルでプロデュースするように。
ここで、2014年に開催された『バルテュス展』について話してくれた。
ミュージアムグッズを製作するにあたってハードルとなったのは、作品の著作権保護期間が切れていないことだった。
著作権を管理している節子夫人と娘さんから許可を得ることができれば、ミュージアムグッズを製作できるかもしれない。
開さんは、なんと二人が暮らすスイス・ロシニエールへと向かう。
迎えてくれた節子さんに、どういう想いでミュージアムショップをつくっているかを伝えると、快く協力してくれることに。
展覧会に訪れるお客さんに、作品だけでなく、バルテュスがどんな人物だったかということまで知ってほしい。そう考えた開さんは、作家にまつわるいろいろなことを節子夫人に尋ねたそう。
会話をもとに、グッズのイメージを膨らませていった。
バルテュスは画家になる以前、“ミツ”と名付けた拾い猫と過ごした日々を絵本に描いていた。タイトルは『MITSOU(ミツ)』。実はその絵本が、画家への一歩を踏み出すきっかけだった。
「それから節子さんは、バルテュスは白くて食感がじゃりじゃりしたはちみつが好きだったことも話してくれて」
「『…MITSOUのはちみつね』って節子さんがだじゃれをおっしゃったんです。それを聞いて、『今のいいですね、つくりましょう!』という話になって」
はちみつを食べきった後も容器を長く使ってもらえるように、シールを貼るのではなく、ガラス瓶に絵柄を焼きつけることにした。
ミリ単位の細かな文字まで焼きつけする技術を培ってきた、東京の下町にあるものづくり会社と協力して製作。筆のタッチまで再現した商品をつくりあげた。
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商品がつくられる背景を伝えることで、少し贅沢だけれど昔ながらのものづくりを応援しようと買ってくれる人がいるかもしれない。
そうでなくとも、話を聞いて誰かに伝えたくなったり、より良い選択を考えていくきっかけになる。
「ここには、知的好奇心を持った方が多くいらっしゃいます。だから対話が生まれていく」
「働く人たちにとっても同じことで。自分たちが新たに知ることで得た発見をお客さんとお話しすることで共有する。そういう仕事だと思っています」
続いて、お店で働く人たちにもお話を聞いていく。
先ほどお店を案内してくれた店長の大井田さんは、昨年春に入社した方。5年前と4年前に、愛知県でEastの短期アルバイトをしていたそう。
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「私がそれまで抱いていたミュージアムショップのイメージは、店員さんはレジに立っていて、お客さんは選んだ商品をレジに持っていって…というものでした」
「ところが、開も現場責任者も『とにかくお客さんと話そう!』と言うんです。それで『そうなんだ!レジの中に立つの、やめよう!』と思って (笑)」
そのとき開催していた『プーシキン美術館展』では、マトリョーシカがセレクト商品の一つだった。
いろいろな種類があるなかでもどうしてこのマトリョーシカを選んだのか、大井田さんは自分で興味をもって調べていったという。
「一つ発見があると次の発見につながっていく。自分が知ったことをお客さまに『これってご存知ですか?』とご紹介していくのが楽しくて」
「その商品をセレクトした理由や、どんな想いでつくられたグッズなのかということを私たちは開やデザイナーから直接聞くことができます。それを、想いの伝言ゲームといいますか、お客さまに伝わるようにするのが私たちの大きな役割だと思っています」
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「Eastの社員は一現場に1人配属されます。いかに私たちがアルバイトさんたちにショップに対する想いを伝えて、実際にお店を運営してもらうかが大切だと思っています」
「そのうえで、アルバイトの皆さんにも楽しみながらお店を良くしていってほしい。たとえばディスプレイなど、自由な発想で提案してもらって、ここは狙いから外れてしまうなと思うところはこう変えてみようかと話しながら形にしています」
ここで、一緒に話を聞いていた西口さんが、『怖い絵展』でのエピソードを紹介してくれた。
西口さんは明日から入社される方で、店長の大井田さんと同じように、もともと短期アルバイトとして働いていたそう。
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「ただ並んで待っているだけだと、お客さまは手持ち無沙汰だし疲れてしまう。その時間をちょっとでも楽しいものに変えられたらと思って、廊下にも商品を展示するのはどうかなと考えました」
東京にいる開さんや担当者の方に相談すると、提案を受け入れてもらえた。
「翌日から実践すると、お客さまも展示した商品を眺めながら並んでいらしたので、少しは退屈な気持ちを軽くできたかなと思っています」
西口さんは、もともと神戸に住んでいて、『怖い絵展』でのアルバイトを機に、東京での巡回展でも働きたいとEastに連絡したんだそう。
熱が冷めないまま、その後も2つの企画展でアルバイトスタッフを務め、今に至るという。
一体何がそこまでさせたんでしょう。
「最初のきっかけは、面接で開のショップに対する想いを聞いたことです。私は自分が手にとってうれしいものを大切にしたいと考えていることもあり、ものをつくる人たちの熱い想いに触れられて、満足感を味わいました」
働いてみてからも変わりなかったですか。
「そうですね。Eastのショップはお客さまとのお話をすごく大切にしていて、とても楽しい仕事だと感じています」
最近、『仁和寺と御室派のみほとけ』という展示で、ポストカードを手に取っていた男性のお客さんに西口さんが話しかけたところ、若いころに訪れたお寺なんだと話してくれたそう。
「実は一緒に行った友だちもいたんだけど、今は入院していて、展覧会には来られないから彼の分も一緒に買うんだ、とおっしゃって。お客さまのストーリーを聞くことでさらに自分の世界が広がるのを感じます」
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立ち仕事だし、図録のような重い荷物を運ぶことも多い。会期終盤は慌しく過ごすこともあると思う。
基本的には日々、コツコツと働く仕事。
ここで働くならどんな人が向いているか尋ねると、答えてくれたのは店長の大井田さん。
「新しい発見が好きな方、お話することがお好きな方はすごく向いていると思います」
「あとは、つくり手がなかなかなの情熱をもってやっているので、温度感そのままに伝えられる方だといいですね」
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自分の知らないことに出会う一歩になるかもしれません。
(2018/03/15 取材 後藤響子)