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車屋は夢を見る

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

新しいことを始めるには、いつだって勇気がいります。

成功する確証なんてどこにもないし、これまでの慣習と違うことをやろうとすれば批判されることもあるでしょう。失敗だってたくさんするかもしれない。

それでも、どうしたら目の前の相手に喜んでもらうことができるのか。考え続けて、小さなことから一歩一歩踏みしめていくことが、実は成功への一番の近道になる。

東愛知日産のみなさんと話をしていると、そんなふうに感じられて背中を押される気持ちになります。

2015年に社内改革を始めるまで、東愛知日産自動車株式会社はごく普通のカーディーラーでした。

「気軽には入りにくいな」「しつこく買うことを勧められそう」。

そんなカーディーラーのイメージや、そこで働く人たちの心がけを根本から変えて、より地域に住む人たちに寄り添った会社になろうとしている。今も地道な改革の真っ只中にいます。

なかでも軸となるのが2つのプロジェクトです。

1つ目はカーディーラーのショールームの中で運営している本屋。2つ目は子育てに悩みがちなママさんたちを地域から孤立させない「ママのための子育ておしゃべりcafe」。

両方の企画運営に関わる人を、今回は募集します。

これまでの経験は問いません。人が集まる場づくりに興味がある人や、将来起業を考えている人も。カーディーラーに興味がないという人にこそ、知ってほしい仕事です。



愛知県・豊橋駅。

新幹線を降りて、東愛知日産の本社までは車で10分ほど。外には新型モデルを宣伝するのぼりがはためき、ガラス越しに数台の車が見える。

一見すると、ごくごく普通のカーディーラーだ。

違いがわかるのは中に入ってから。

ショールームには手づくりのPOPやポスターで飾られた本棚が並ぶ。隣のソファではお客さんがコーヒーを飲みながら読書をしたり、車の相談をすることもできる。

本を眺めていると、代表取締役副社長の青木さんが声をかけてくれた。

青木さんがこの会社で働くまでの人生経験は、実にユニークだ。

大学生のころは映画監督を志すも、挫折。その後、大手広告代理店のアサツーディ・ケイ(ADK)に就職。営業として日本で開催されたW杯のテーマソングを手がけるなど、大きな仕事も多数経験した。ADKの先輩と起業もした。

ところが父親が病に倒れ、会社を継ぐことに。これまで経験のなかったカーディーラーで働くことになった。

普通ならこれまでと勝手が違う世界に、弱気になってしまうところ。けれども異業種を経験してきた青木さんだからこその気づきが、現在の取り組みを始めるきっかけになった。

「今日買ってくれるならあと何万円値引きしますよと、押し売りや即決を迫る。自分がお客さまだったら嫌だなと思うことが、この業界の常識でした。これをなんとか変えたいと思ったんです」

青木さんは、働く人の意識を変えるための取り組みをはじめる。

お客さんと一緒に考える提案型の販売スタイルに切り替え、販売台数や稼いだ利益だけでなく、どのように考えて提案を行ったのかというプロセスも評価対象にした。

「それでは手間もかかるし、利益が上がらないという声もありました。でも、車を買い換える機会も減っているなかで、信頼してもらえなければ永続性のある関係はつくれない。僕ら働く人の姿勢に共感して買ってもらう時代になっていくと思ったんです」

結果は少しずつ、目に見える形で現れてきた。たとえば、ある商談での出来事。

「ミニバンのセレナに乗っていたお客さまがいて。まだ4年半しか乗っていないけれど、自動運転機能のついた新型が出たので、買い換えるか迷っていました」

じっくりと話を聞いていくと、年に何度か家族でディズニーランドに行くとのこと。現地につくころには運転しているお父さんが疲れてしまい、小学3年生のお子さんと全力で遊べないことを残念がっていた。

車を買うか買わないかは別として、お客さんが一番に大切にしたいポイントは何だろう?

それはきっと、お子さんと過ごす時間じゃないか。

「あと数年の思い出づくりにどれくらいのお金を投資するか、考えてもらおうという話になって。そしたらお客さまはハッとして。あと3年ほどなら、今の車に乗り続けようっていうことになったんです」

話はそこで終わらない。その方は、本音で向き合った営業スタッフたちを信頼してくれるようになった。結果、体の具合が悪いおじいさんと同居しているため、将来の送迎を想定して車を買い換えることを決めた。

「僕らがやりたいのってそういうこと。お客さまの人生に寄り添って一緒に考えながら、最適な選択を考えたいんです」

本屋や、ママ向けのイベント開催も、根っこにあるのは、目の前の人を喜ばせたいという気持ちだと言います。

「これだけは転職しても、ずっと変わらないことなんです。だから地域で暮らす人たちがあったらいいな、面白いだろうなというものを考えて、ビジネスにする。さらに関わる自分たちも楽しめたら最高ですよね」



静かに、熱く語ってくれた青木さん。そんな青木さんの思いを、実際に形にしているのが森さんです。

本屋と子育ておしゃべりcafeの企画運営を一手に担っています。

実は家庭の事情で、今年6月末に退職予定。今回募集する人は、森さんの後任として同じ役割を担うことになる。

「日本仕事百貨の記事のなかでも、一つだけ異質でしたよね。カーディーラーで本屋?と思って。私も水族館から転職してきたから、びっくりされましたけど(笑)」

いつも明るく、笑顔を絶やさない。青木さんと同じように、新しいことへの挑戦を楽しむ方だと感じる。

本屋のコンセプトは「旅」。日々の移動時間、ひいては人生をひとつの『旅』ととらえて、移動手段である自動車を扱う会社だからこそ、訪れる人の人生を豊かにするような情報を発信したい。

そんな思いから、「旅の扉」と名付けられた。

「特集を考えるときは、季節感のように共感しやすい切り口から意外な視点を提案します。たとえば、外に出かけたくなる春には、野宿の仕方が載っている本を紹介したり」

青木さんと相談しながら企画の内容が決まると、そこからはすべて一人で行う。ポスターやPOPも手づくりで一つずつ考えて、売り場をつくっていくのが楽しいという。

印象に残っている出来事を尋ねると、本屋の一周年フェアの話をしてくれました。

「毎月新刊が入るわけではないので、何かテコ入れが必要だなと感じて。青木さんと、本文の中の一文だけを書き出して、タイトルも著者名もすべて隠してみようという話になったんです」

普段は手に取らない本に出会って、そこから新たなきっかけが生まれたら面白い。

とはいえ、青木さんは採用活動や他店の見回りなど、忙しく全国を飛び回る身。電話で指示を仰ぎながら、自分で考え企画を進めていったという。

「本をいくらで買って、どれだけの粗利をつけるかということから考えました。実際にやってみると、本を覆ってしまうとレジを通せないことに気づいて。200冊くらい、金額のシールを全て貼り直しました」

森さんの仕事は、自ら手を動かすことも多いけれど、一販売員というよりは本屋を切り盛りする店長のような役割だ。実際に本を売るのは、カーディーラーで働く店舗スタッフになるので、訪れるお客さんと店舗スタッフの橋渡し役もする。

普通の本屋さんとは、また違った働き方ですよね。

「そうですね。みんな専門は車で、本を売った経験もないので戸惑いも大きいんです。だから率直な意見を聞く場を、定期的に設けるようにしています」

スタッフを巻き込んだ接客の方法は、まだまだ良い方法を模索中。新しく入る人にも、一緒に考えてもらいたいという。

並行して開催している、子育ておしゃべりcafeの仕事はどうですか?

「こちらは、すでに3年以上実施しているプロジェクトなので、東愛知日産の運営する11の店舗でそれぞれ、だいぶ根付いてきましたね。講師の方も30人ほどいますし、毎回参加してくれる常連さんも多いんですよ」

子育ておしゃべりカフェは、自身も子育てを経験しているママ講師の方たちと一緒に、地域のママと子どもたちに手軽な料金で参加してもらえる講座を実施している。講座は体験教室と子育て教室の二本立てだ。

たとえば、5月は赤ちゃんにも優しいマッサージの方法を学んだり、おいしくて安全な離乳食がつくれるよう、だし昆布の使い方を学んだり。

ショールーム内のキッズスペースを解放して、地域のゆるやかなコミュニティができている。

森さんは講師の選定や講座のスケジュール調整、イベント当日の運営も行う。特に気を使うのは、人との関わり方だという。

「講師の方たちは、ご自身も子育てや家事で忙しい合間を縫って講座を開催してくれます。だから、スケジュール管理や告知の方法など、伝え方などはすごく気をつけています」

ときには、自治体とやりとりをすることや新たに講座の内容を企画することもある。

こうして聞いていると、どちらも楽しそうだけど、必要とされる力はまったく違う気がする。同時並行では混乱してしまいそうです。

「確かに。おしゃべりcafeは人と深く関わる、どちらかというと外交的な仕事。本屋は一人で思考を巡らせて、特集や仕入れと利益のバランスを考えたり。自己を深めていく感じかな」

「だから “楽しい”と“大変”が、交差する感じですね。余裕がないと、しんどいときもあります」

それでも、自分なりに考えることをやめなければ、大丈夫だと森さん。

「青木さんは、コンセプトから外れなければたとえ失敗してもやってみたらと言ってくれます。私も伝えられることは伝えていくので、こんなことをやってみたい!って意思を持つ人にきてもらえたらいいですね」

とはいえ、いきなり一人で任されるわけではないので安心してほしい。

おしゃべりcafeの運営は、入社5年目の坂﨑さんも一緒に進めていきます。

当日の運営と、チラシづくりやSNSでの広報活動を担当している方です。

「お母さんが作業に集中しているときには、赤ちゃんをあやすこともあるんですが、私は抱っこの仕方もわからなくて。運営を始めたばかりの頃には、戸惑いも大きかったです」

それでも続けられたのは、直接お母さんたちの声を聞けることだという。

「私はこの地域の出身ですが、地域にいる人たちの顔が実際に思い浮かぶようになったんです。その人たちに喜んでもらうことがやりがいになっていますね」

最近では、スマホで講座の予約が簡単にできるよう、システムも導入した。より良い仕組みづくりに向けて少しずつ進めているところだという。



記事を読んで、自分にできるかな?と不安に思ったとしても。ここで働く人たちは、一歩踏み出して自分なりに仕事をつくってきました。

なんだかいいなぁ、と思ったらまずはぜひ直接話をしてみてください。

(2018/4/13 取材 並木仁美)

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