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建築を、まじめに気持ちよく

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一つの建築ができあがる過程には、さまざまな人の仕事が積み重なっています。

お施主さん、設計図を書く建築家。実際につくりあげていく大工や左官などの職人さん。原材料を調達したり加工したりする人もいれば、構造計算の専門家もいる。

いろんな人たちの間に立って、建築を完成に導いていくのが施工管理を行う人たちです。

株式会社青は、建築家が設計する建築を専門に、施工を行っています。

施主や設計士の思いを汲み取りながら、どう建築をつくっていくか。

一つひとつのプロセスにおいて、関わる人たちとコミュニケーションしながら、適切な判断を積み重ねていくことを大事にしています。

真面目に、誠実に。そして自分たちが面白いと思える仕事をする。

そんな施工管理の仕事を紹介します。

 

初台駅を出て、緑道を通り商店街へ。

にぎやかな通りを過ぎると、住宅街に入る。5分ほど歩いたところに、株式会社青の文字を見つけた。

階段を上がって2階のオフィスにおじゃまする。白を基調とした空間に植物が添えられていて、清潔感が漂う。

この会社を2005年に立ち上げたのは、代表の片岡さんと取締役の田原さん。

もともと二人は地元が同じで、サーフィンやスノーボードをして遊んでいた仲だったそう。

片岡さんが建築に携わるようになったのは、大学時代。サッカー部で練習に明け暮れる生活をしつつ、工務店でアルバイトをしていたという。

将来のことを真剣に考えはじめたころ、田原さんから夜間の建築専門学校に行かないかと声をかけられる。

そのときのことを田原さんが話してくれた。

「僕は僕で工務店で働いていたとき、建築を仕事にするなら一度はちゃんと勉強しなきゃだめだよって大工さんに言われたことがあって。専門学校の説明会に行ったんです。それで彼にも資料を見せたら、一緒に通うことになった」

卒業してから、別々の職場で働きはじめた二人。その後、片岡さんが誘うかたちで田原さんも同じ工務店で働くことになった。

当時いた工務店は、とても厳しい職場だったという。

経験も少ないなかで、設計事務所の要望に応える日々。職人さんからは指示を迫られ、板挟みになりながら、朝早くから夜遅くまで働く。

同僚も皆同じような状況だから、助けを求めることもできない。

プレッシャーは大きかった。

それでも仕事は面白かったと、片岡さん。

「振り返ると、専門学校に入学を決めたころは、建築について学ぼうくらいの感覚でした。でも気がついたら、出会った先生方や周りの同級生たちとデザインについて真剣に話をするようになって」

「建築と言ってもいろいろで、収益を目的としたものもある。そのなかで、建築家の手によって息を吹き込まれた住宅に携わる仕事には、大きな魅力があったし。はじめて経験することも、工夫しながら仕事を積み上げることで、一つの建築が形になっていく。その満足感や充実感が、たまらなく面白かった」

一つひとつ仕事を積み重ねるうち、設計事務所から担当者である自分に直接依頼が届くように。

任せられる仕事の幅も広がっていった。

より裁量権を持って仕事をしたいと、二人で話し合い、28歳のときに独立。

必死になって目の前の仕事に取り組んでいくと、今度はその仕事を評価され、また次の仕事につながっていく。

今も営業はほぼしていないそう。

 

青の考えるいい仕事って、どういうものなのだろう。

「お施主さんの気持ちがあって、それを汲みとった設計者さんの図面があって。それが僕らにも伝わってくると、気持ちが乗っかっていく。そこが前提にあります。『こういうものがつくりたい!青さんにしかできないと思うんだよね』って来られると、弱いです(笑)」

施工図にも、青らしさが表れているという。

実際に見せてもらった。

 
「設計図をもとに、その建物がどういうものを目指しているのかということを読み取っていきます」

「そこから具体的に、一つひとつの金具の位置や留め方など、細部の納まりまですべて考えて、より詳細な寸法まで書き込む。それが施工図です」

設計図を見た時点で、10年先の安全性まで見越しているかどうか疑問を抱いたときには、正直に意見を伝えることもある。そのうえで、健全な状態を保てる方法を考え、施工図を書く。

「そういうことをディスカッションしていくのが、自分たちの仕事の領域だと思うので。そのなかで、どれだけまじめに誠実にやるかだと思っています」と田原さん。

大工や左官、水道など、職人さんごとに必要な情報も異なるので、それぞれに合わせた施工図を作成。

設計士と内容のすり合わせを行ない、現場を施工する職人さんに共有していく。

施工図を書き、工程をきちんと整理することで、職人さんたちの働きやすさにもつながる。「青の現場だったら行くよ」と言って協力してくれる職人さんも多いという。

施工図や工程、使う材料にしても、一つひとつ最適かどうか答えをクリアにして、設計士や職人さんたちと話し合う。一緒になって建築をつくり上げていくのが、青の仕事の進め方。

 

続いて話を聞いたのは、入社9年目の岡田さん。以前は設計事務所で働いていたという。

「当時、青と一緒に仕事をする機会があって。そのとき感じたのは、設計の意図を深い部分まで考えながら、互いに応答を繰り返してブラッシュアップしていく人たちだということ。できあがったものの精度も高かったんです」

「そのころ自分は、図面を書き終えてから建物が完成するまでのプロセスにおいて、クリアに見えていないまま仕事を進めていくことに違和感を覚えるようになっていて。施工の経験も身につけたいと片岡さんに伝え、入社することになりました」

ここではどんなふうに働いているのだろう。

「僕の場合、案件がはじまった序盤は、図面を描いたり、全体を組み立てていくことに集中するため、事務所で作業することが多いです」

実際に施工がはじまってからは、現場にいる時間を長く持つようにしているとのこと。

「というのも、職人さんの仕事を見ながら、密にコミュニケーションをとってつくっていきたいと考えているからで」

「たとえば僕が、絶対にこっちのほうがうまく納まるだろうと思ったら、お金も手間もちょっとずつ余計にかかってしまうとしても、それをちゃんと伝えます」

そうすることによって、職人さんの作業日数が1日増えてしまうケースもある。

それでも、これまで青と育んできた関係性のなかで、要望に応えようとしてくれる職人さんは多いという。

「だからこそ僕らも、正しい選択をすることに努めます。そういう積み重ねが、青では当たり前のものとしてみんなに根付いている」

「指示通りにこなしていきたい人には向かないかな。自発的に判断できる人は楽しめるんじゃないかと思います」

 

入社4年目の斉藤さんも、「自分なりの答えを持ったうえで、聞く能力があることが大事」だと話す。

以前担当した鉄筋コンクリート造の物件について話してくれた。

「設計士の方の意図は、壁全面を左官し終えた後、塗装して仕上げるというものでした」

「そのまま『はい、そうしましょう』と言うこともできたと思うけど、型枠大工さんが、とても腕のいい方で」

型枠大工とは、コンクリートを流し込む枠をつくるところからコンクリートが固まって型枠を外すまで、一連の流れを手がける職人さん。

一口に型枠といっても種類も規模もさまざま。熟練の技術が、いい建築をつくり上げるうえでは欠かせない。

「いい腕を持った職人さんの手仕事の風合いが残るように、打ちっ放しの状態のほうがかっこいいんじゃないかと考えて。そのことを設計士の方に伝えたんです」

塗装しないという選択肢を残しつつ、躯体が打ちあがった段階で、塗装するかどうか設計士に尋ねてみることに。

すると、設計士からは「かっこいいから塗装しないままでいきましょう」という答えが返ってきた。

「でしょ?って(笑)。無駄な手間をかけずにかっこよくできるなら、そのほうがいい。お客さんも、ほかの部分に予算を回せるようになると思うんです」

そう話す斉藤さんは、大学3年生のころ建築専門学校のことを知り、ダブルスクールをするようになったそう。

内装を手がける会社で現場監督見習いのアルバイトもはじめ、次第に施工の仕事を続けていきたいと思うように。

卒業後の進路を考えていくなかで、青に出会う。

「入社してみて感じたのは、それまで経験してきた建築現場の泥臭くさや荒っぽさとは違う雰囲気の会社だなということ」

「先輩方が職人さんたちと築いてきた関係性もあり、終始現場も和やかで。いい空気感があると思いました。自分にとって水が合ったというか」

現場だけでなく、社内も意見交換しやすい土壌があるという。

半年前からは、新しい試みとしてペアを組んで仕事を進めている。

一現場を1人が担当するのではなく、 二つの現場を2人で担当してフォローしあえるような体制だ。

「自分だけだと考えが凝り固まっちゃう場面でも、一緒に考えることで、自分になかった発想が得られる。そうやって、個人としても会社としても引き出しを増やしていけるといいなと思います」

それに、自分がメイン担当でない現場を第三者の目で見ることによって、改善点に気づけることもあるという。

 

ペアを組むようにした背景について、代表の片岡さんはこう話す。

「今、建築業界では、施工に携わる人の絶対数が足りていない状況があります。そのなかで、スタッフそれぞれがより成長していける過程をどうつくっていくか。若い世代をどう取り込んでいくかということについて、会社として取り組んでいく必要性を感じていて」

「担当者一人ひとりがすべての責任を負うのではなく、分散できるところは分散して、プライベートにかける時間をつくりやすくしたり、何かあったときにフォローしやすい環境をつくる。そういう健全な状況を整えることがすごく大事だと思っています」

実際、夜の7時には皆さんほとんど帰宅するのが日常とのこと。

もちろん現場に朝早くから行くことも、夜遅くまで残らなければならないこともある。ただそれは、無理してやっているというより、自分ごととしてものづくりに取り組んでいるからだと話す。

体力面で大変に感じることは、きっと多い。

それでもみなさんの話を聞いていると、気持ちよく働いている様子が想像できました。

それは、いい建築をつくりたいという誠実な思いがこの会社のなかで共有されているからだと思います。

(2018/6/19 取材 後藤響子)
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