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「日本にも世界中にも店を出したいです。着物が、洋服と同じように毎日のおしゃれの選択肢の一つになればいい。日本から海外に行くときにも、スーツケースには一枚くらい着物を入れる。そんな文化をつくっていきたいですね」だからまだまだやりたいことがあるんだ、と目を輝かせながら話してくれたのは、株式会社和想代表の池田さん。
株式会社和想は、着物ファッションの提案販売を通じて、和の心を世界に発信していこうと考えている会社です。

その運営スタイルは、いわゆる呉服屋さんとは大きく異なる。着物をもっと気軽に着られる機会をつくったり、着物に込められた精神や文化も伝えていきます。
今回募集するのは、そんな和想の想いを一緒に実現していく仲間。
年齢や経験は問いません。新しいことや知らないことにワクワクしながら取り組んでいけるような、好奇心と行動力のある人を求めています。
鳥取空港からもほど近い鳥取本店を訪ねた。国内は、ほかにも鳥取の米子、島根の出雲、松江、浜田にお店がある。
中に入ると、まず目に入るのは広々とした店内。そして隣には、本がずらりと並ぶブックカフェ。

「すべての店舗でカフェを併設していて、着物の販売をするスタッフがコーヒーも淹れます。普通の呉服屋さんとは全然違う雰囲気になっているでしょう?着物でお出かけする楽しさを、館内でも体感してもらいたくて」
気さくに話しかけてくれたのは、代表の池田さん。

意外にも、最初から着物に関心があったわけではないという。
大学は法学部卒。インド独立の父、ガンジーに憧れ弁護士を志すも、司法試験に10回失敗し挫折。
「1から出直そうと思って、32歳で就活を始めたんですね。自分では生まれ変わったつもりだけど、履歴書には書くものがない。みんな断られて、唯一見つかったのが、学生時代の友人が継いだ着物屋だったんです」
「嫌々やっても仕方ないんで勉強したんですよ。 “日本”とか “和”、“着物”っていうタイトルの本をかたっぱしから集めて読みふけった」
すると学んでいくほどに、着物の形や構造にはすべてに意味があることがわかってきた。
たとえば、着物の袖が長いのはなぜか。「袖振り合うも多生の縁」ということわざを知る人も多いと思う。
「あれは、『道で袖が触れる程度のことも、前世からのご縁のつながり。今世でもその縁を思い出してよろしくお願いします』っていう意味なんです。そうしていい縁が入ると、とどめるために留袖にする。若いうちは振袖で、お母さんくらいの年代になると留袖を着るでしょう?」
まるで噺家のように、なめらかに言葉をつなぐ池田さん。思わずなるほど!と頷いてしまう。
「おはしょりがあるのも、妊婦になっても一つの着物で都合がつくように考えられたもの。糸を解けば1本の反物に戻ってまた仕立て直しができる。まさに人の一生とつながっていて、調和を大事にするっていう和の結晶なんですよ」

着物を通じて社会の役に立とう。がむしゃらに仕事に打ち込み、店長を任されるまでになった池田さん。気づけば分社化し、4つの店舗を自ら運営するまでに。その後ついに“和想”として独立を果たす。
ところが創業して3年ほど経つと、突然向かい風が吹きはじめる。大手の着物屋が一気に倒産したそう。高額な着物の押し売りなどを続けていたことが原因だった。
その出来事をきっかけに、あらためて自分たちの店のあり方を問い直したという。
「着物って40万、50万するものです。普通その単価ってヴィトンとかエルメスみたいなブランド品でしょう。そのバッグを買うときにはブランドイメージもすべて含めて買うんやけど、着物屋はいつまでも必要性で売っていたなと思うんですよ」
必要性で売る。
「そう。20歳になったら成人式で振袖がいります、結婚前には訪問着がいりますというように必要性で口説いて。でも時代はもうそうじゃないんだと思ってね」

おしゃれの一環として楽しんでもらえるようなデザインの着物を仕入れ、ただ物を売るのではなく体験や背景にある文化まで提供する独自のスタイルを展開した。
たとえば、各店で展開している着付け教室は、自分たちでカリキュラムをまとめたもの。通常の着付け教室なら1年以上通わなければいけないところ、6回で基本の着付けをマスターできる。
一方で、「着る機会がない」という声に応えて毎月1回お出かけ会を開催。日帰りで石見銀山を訪ねたり、東京や鎌倉まで遠出したり。なんとウィーンやロンドンまで着物で出かけたこともあるのだとか。

その甲斐あってか、業績は右肩上がり。
ついには自社のオリジナルブランドを立ち上げ、ロンドンへの出店も果たすまでに。

「私は着物を通じて和の心を世界に広めたいし、それは世界が求めていることやと思うんです」
世界が求めていること、ですか。
「これまで欧米の開拓精神が豊かで便利な生活をもたらしてきたけど、一方で貧富の差や自然破壊が拡大している。だから足るを知って欲も少し抑えなあかんっていう時代になっていると思います。人や自然との調和を重んじる日本のような生き方を求めはじめている」

「これから入社する人も、こんなふうに成長していってほしいんです」と紹介してもらったのは、入社6年目の河村さん。
「初めて社長の話を聞いたときは、着物っていろんな知識もいるし、着ている人も少ないので、どうやって販売していくのかわからなかったんです。でも逆にそういうものを販売する仕事ってどんな楽しさがあるんだろうと興味を持って」

たとえば、とあるお客さんとのエピソードを話してくれた。
振り袖用の小物を買って以来、来店がなかった20代の方。年齢も近いし、仲良くなりたいと電話で催事へのご案内をしたそう。
「来てくださっていろいろと着付けもしたんですが、やはり価格にびっくりされていて。その時はお話だけして帰っていかれたんですけど、その後も何回か展示会に呼びかけをさせてもらったんです」

「会うたびに少しずつ本音を話してくださるようになって。興味はあるけれど、値段はもちろんネックだし、買ってもこれから着ていけるかわからない、とおっしゃっていたんです」
それなら、まずは実際に着物で出かける楽しさを体験してみてほしい。月1回のお出かけ会に誘うと、お母さんの着物を借りて参加してくれることになった。
「お母さまと着丈が合わなかったので、いろいろと工夫をしながら着付けて。最初は不安そうだったんですけど、すごく楽しかったと言ってくださったんです」

「そのお客さまは今もお出かけ会に頻繁に参加してくださっていて。違う年齢層のお知り合いも増えて、まわりから『明るくなったね』と言われているそうなんです。そのきっかけになれたなら私もすごくうれしいです」
河村さん自身も新卒で入社し、着物業界未経験からのスタート。
「入社してから、着物は古典的な柄だけでなくモダンな柄もあると知って。着物業界は日々進化しているんだなと感じています。それをお客さんにもたくさん見てもらいたい、伝えてみたいなと思いました」
和想では、入社前の研修に始まり、毎朝の朝礼での研修、さらに京都をはじめ全国の染色工房に出向いて着物の知識を深める研修などもある。もちろん、店頭でも空き時間には接客や着付けの練習を欠かさない。

普段は50代以上のお客さんが多いので、ときに母や祖母のようにアドバイスをもらいながら、育ててもらった面も大きいそう。
河村さんは、店頭での販売の仕事を経て、2年半前からは経理や人事を担当している。仕事内容は変わっても、働き方に大きな違いはないという。
「着物の販売と同じように、経理や人事も経験はなかったんです。自分なりに勉強をして、人前で話すときには学生たちの反応を見ながら。相手の反応を見ながら柔軟にやっていく姿勢は販売と変わらないかもしれないですね」
ここでは、スタッフそれぞれが自分の力を活かしながら働いている。たとえば趣味を活かして毎月店舗で行われる習字教室を企画したり、おでかけ会の企画・アテンドもスタッフが持ち回りで行ったり。
ロンドン店へも自ら志願して異動したスタッフがいるし、今後はさらに出店を考えているから、お店の立ち上げから関わりたいという意思がある人も大歓迎だそう。
お客さんに喜びや楽しさを感じてもらえるなら、ここまでという枠はない。だからこそやれることは無限にあるし、自ら考えることが求められる職場だと思います。

和の心と共に新しい未来に向けて。ここから一緒に歩んでいく方をお待ちしています。
(2018/7/6 取材 並木仁美)