求人 NEW

伝統の前掛けを復活させた
日本で唯一の専門店
縁を紡ぎ、世界へ広める

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

たくさんの人と知り合うより、たとえ少なくても長くじっくり人と付き合いたい。

そのほうがお互いのことを深く知れるし、分かち合えることもあると思うから。

もしそんなふうに仕事をしたい人がいたら、この会社を知ってほしいです。

有限会社エニシング。日本で唯一の前掛け専門店です。

今回はここで営業と事務、デザインをそれぞれ担当する人を募集します。

はじめから前掛けが大好きだという人はあまりいないと思う。でも、夢中になれる環境があると思います。

 

エニシングは小金井を拠点に、赤坂にオフィス、愛知・豊橋に工場を持っている。

この日は、赤坂オフィスを訪ねる。赤坂見附駅から歩いて3分ほど。

扉を開けると代表の西村さんが迎えてくれた。

西村さんといえば、このキラっとした真っ直ぐな眼差し。3年ほど前、豊橋の工場でお会いしたときから変わらずお元気な様子。

一方でエニシングの前掛けは、以前とは見違えるほど広がりを見せているそう。

広島カープやスタジオジブリなど、西村さんの後ろには誰もが知っている企業やブランドとのコラボ商品が掛けられている。

「日本へ来てお土産として買っていく海外の人も増えてます。この前もフランスから来られた方が3枚買われて、帰りにまた寄ってもう2枚ほしいって。毎年日本へ来るイタリアのガルちゃんっていう男の子も、僕らの前掛けをよく買ってくれていますよ」

海外への販路も少しずつ増え、イタリアのおしゃれな雑貨屋で販売されることも。

前掛けといえば、身体を動かして働く人の仕事着として、昔は広く使われていたイメージ。それをまったく知らない海外の人たちにとっては「斬新」で「とてもクールなスタイル」なのだそう。

「伝統的なものづくりだから、というよりは純粋に見た目に反応してくれるんです。それと、日本のことをものすごくよく見ていて、期待してくれているなって感じますね」

期待してくれている?

「もう、グローバルな資本主義が行き着いちゃってるじゃないですか。その先に未来がないってことに、たとえばニューヨークの人たちは気づいているんですね。もっと人間らしい豊かな暮らしがあるんじゃないかって。で、日本ってそういう国なんでしょ?って言われる」

それは意外でした。

「きっと隣の芝生を青く見ている面もあると思うんです。日本は日本でそういうことを忘れて行き詰まっちゃっているし、いろんな悩みやストレスを抱える人もたくさんいる」

「けど、そうやって期待されている国で仕事をしていることだったり、生まれた地域やご先祖様のこと、自分のルーツのことまで客観的に見れるといいんじゃないかなって気がするんです」

社名のエニシングは「縁」と「ing」を合わせたもの。

創業当初から、こういった想いがあったのですか?

「いやぁ、まったく。もう早く楽にならないかなってやってました(笑)」

今から18年前、エニシングは漢字のプリントTシャツを企画販売する会社だった。

日韓ワールドカップの後押しもあり、売上は伸びていたそう。

「ずっと続けていこうとは考えていなかったです。答えははっきりしていて、誰にでもできる仕事だから」

たまたま新商品として前掛けを取り扱うようになった。いざ売りはじめると、意外にもカメラマンや美容師など個性的なお客さんがつくように。

より良い前掛けをつくろうと、日本で唯一の前掛け産地である豊橋を訪ねてみる。そこで伝統的な前掛けをつくる芳賀さんに出会うことができた。

「芳賀さんと出会ってはじめて、ものづくりっていうのがこんなにも大変で素敵な仕事だったんだって」

芳賀さんは品質にこだわり、微調整が可能な古いシャトル織機を使う熟練の職人さん。50年以上にわたって前掛けを織り続けてきた。

ただ、もう前掛け産業は立ち行かなくなり、豊橋で前掛けを織るのは芳賀さんのほか、わずか数名となっていた。

「芳賀さんはもうやめようと思っていると、はじめてお会いしたその日に仰っていて。これはぜひやりたいし、グローバルに展開できるチャンスだと思ったんです」

紀伊国屋のニューヨーク店に声をかけてもらったことをきっかけに、芳賀さんたちも誘って一緒に渡米して1ヶ月間出店することに。

「クールだね」「なんてステキなの」

予想もしていなかった反響の数々に、芳賀さんたちの目の色も変わっていった。

「芳賀さんとはずっと一緒にいたので、そこでいろんな話をして信頼関係ができました。それで僕がずっとお願いしたかった1号の前掛けをつくりたいですと言ったら、面倒くさいけどやるしかないなぁって」

1号前掛けとは、昭和30〜40年代につくられていた最高級の前掛け。一般のアパレルでは使われないような太い糸が使用され、厚くて丈夫ながら非常に柔らかい。

そんな1号前掛けを芳賀さんとともに復活し、国内外へ販売。今後も生産できるように芳賀さんの技術を継承する若手の育成もはじめた。

今では国内の約25店舗で販売され、アメリカやロンドン、イタリアなどでも取り扱いが増えている。

「正直、まだまだ数は少ないです。でも0だったものが、1、2、3になってきている。そういう意味では大きな変化だと思っています」

西村さんは、たとえ海外の小売店でも直接取引するようにしているという。

取引をはじめる前には必ず会って「長くお付き合いしましょう」と伝えている。

「この間も、突然とあるチェーン店さんから数十店舗に置きたいってご連絡いただいたんですけど、お断りしました。最初の1年間は売れるかもしれないけど、そのあと雑に扱われるのが目に見えていたので」

「やっぱり想いが通じ合える人と一緒にやったほうが、長い目で見たら絶対にいいんですよ。前掛けはまだまだ知られていないので、知ってくれる人がちゃんと増えていけば、売上も上がっていく。顔を見合わせてじっくりしゃべることがすごく大事だなって思います」

そんなスタイルだから、飛び込み営業は一切しない。今は営業をせずとも注文を受けるだけで回っている状態だという。

売上もここ3年ほどで約2.5倍に成長した。

「去年、スノーピークさんからキャンプグッズとして前掛けを注文いただいたんです。そうしたらキャンパーの人たちからもオリジナルの前掛けをつくりたいと連絡をもらえるようになって」

前掛けは、着けると骨盤を引き締め、腰を守る役割を果たしてくれる。ものを肩に乗せて運ぶときには、肩に前掛けを当てることで服を守ってくれたり、膝を地面につけるとき汚れを防いでくれたり。

アウトドア以外にもまだいろんな分野で活躍できるかもしれない。

「来年の4月に豊橋で新しい工場が建ちます。今までは芳賀さんの工場でつくっていたけど、機械を新しいほうに移設して、完全な自社工場になります。オフィスも今年度中には赤坂の新しい場所にまとめる予定です」

「東京のオフィスと豊橋のファクトリー、その二本柱ができるとこれからますますできることが増えていくと思うので。この募集でも会社の核となるような人に来てもらいたいですね」

 

続いて話を伺ったのは、営業担当の福田さん。

福田さんは元・機織り職人。3年前に取材したときは、豊橋の工場で芳賀さんに教わっていた。

「営業担当になって東京に来たのは去年の3月です。日本仕事百貨の募集で入ってくれた2人に工場を任せられるようになったので、自分はこっちに」

以前は和菓子メーカーに勤めたり、放送作家の勉強をしたり。営業経験はとくになかったそう。

「お客さんとは話が盛り上がって一緒にワーワー喋ってることが多いので、営業と言っても仕事らしい仕事しているのかなって感じですね(笑)」

話が盛り上がる?

「あんまりビジネス的な話はしないんですよ。当然、これだけは決めましょうかってことはあるんですけど」

「たとえば、今年の春につくったサッカー日本代表の前掛け。JFAの方と話したのは、これを着けた人でスタジアムが一杯になったら面白いねとか、それじゃあ売店の人にも使ってもらおうかとか」

ワクワクすることを一緒に考える感じ。

「そうそう、夢の広がるような話で盛り上がるというか。前掛けに興味を持ってくれた方たちから連絡をいただくので、営業というよりはご縁をつないでいくところがあって」

ご縁をつなぐ。

「結局は、人の想いが大事なんだと思います。豊橋の工場が今度テレビに出ますって連絡すると、みなさん喜んでくれるんですよ」

今後、福田さんは生産管理にシフトしていき、新たに入る営業担当の人とはいわばパートナーのような関係になる。

福田さんは、どんな人に来てほしいだろう?

「会社自体が成長途中というか、1年を経るごとに姿が変わっていくので、凝り固まっているよりは柔軟で、一緒に成長していけるような人がいいですね」

「あと、自分の強みを持っている人。個性が弱いとしんどいかもしれないです。うちはみんな自分の色を持っているので」

埋没しちゃう?

「そう。たとえば、意見を言い合う場で、さわりのいい言葉を言われると… 模範解答は誰も求めていないというか」

それって代表の西村さんの人との向き合い方に似ているかも。とても真っ直ぐに、その人自身をよく見ている。

「正解なんてないんですよ。みんなとんがってるから、ぶつかり合うことだってあるし。不器用でも、自分の色がある人なら大丈夫だと思います」

 

最後に話を聞いたデザイナーの小倉さんも、福田さんと同じことを話していた。

「スタッフ一人ひとりの個性が強いのは、この会社の面白さのひとつなんですよ」

エニシングでは法人との仕事に加え、個人のお客さんからオーダーメイドの注文も自社ホームページを通じて入ってくる。

個人のお客さんだけでも多いときには月100件を超えるため、事務作業や顧客対応、デザイン業務を任せられる人もこの募集で求めたいという。

「最近は日増しにオーダーが増えていて結構大変なんですけど、本当にいやなお客さんが全然いなくて、いい人ばかりなんですよ。プレゼントに買われる方も多いので、前掛けを着けた写真を送ってくれたりして」

「法人のほうでも担当者さんはいい方が多いし、ここで働いている人たちもいい人ばかりで」

それってどうしてでしょう?

「何ででしょうね?(笑)やっぱり人とのつながりとか、ご縁を大切にしているからかな」

「私はいろんな会社を転々としてきていて、6年前からここで働いていますけど、こんな会社はほかにないかなって。いいなと思うことがたくさんあります」

たとえ若かったり経験がなくても、その人のよさはエニシングの環境の中で出てくるんじゃないか。

縁とは、不思議とつながっていることもあれば、自ら紡いでいくものでもあると思いました。

(2018/8/24 取材 森田曜光)

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