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人もお米も健やかに
日々積み重ねる暮らしと仕事

自分が普段食べるものは、どんな人たちが、どんなふうにつくっているのだろう。そこに、どんな思いが込められているのだろう。

生産者の思いやつくられた背景を知ると、日々食べるものもよりおいしく感じられるような気がします。

石川県に拠点を構える農事組合法人北辰農産は、無農薬・減農薬の安心安全なお米づくりを行ってきました。

3年前からは「稲ほ舎」というブランド名で、自分たちの育てたお米や、そのお米を使った無添加の加工品を販売しています。

今回募集するのは、お米づくりをする人と、お店で販売を行う人。

農業や販売の経験はいらないし、むしろ型を知らない未経験の人のほうがよいそうです。

食べる人たちの身体に優しく、おいしいものをつくることを大切にしながら、日々丁寧に働く人たちに出会いました。



東京から新幹線に乗り、3時間で金沢駅に到着。在来線に乗り換えて、お隣の白山市を目指す。

だんだんと、あたりには田んぼが見えてくるように。最寄りの松任駅まで迎えにきてくれた、代表の舘さんの車に乗せてもらい、15分ほどで稲ほ舎のお店に到着した。

「このあたりはもう寒くなってきて、昨日はストーブを点けたんですよ。店の前の稲もそろそろ刈らないとね」

明るい笑顔が印象的な舘さん。

次から次へと思いが溢れてくるように、会社のことを教えてくれた。

「北辰農産は、僕の父が創業しました。父は兼業農家さんの作業を請け負ったり、地域のみんなで機械を共同利用する仕組みをつくったりして、自分のところだけに力を注ぐのではなく、地域みんなで農業をやろうとしていました」

高齢化によって田んぼを手放す人が増えると、北辰農産は土地の管理を丸ごと任されるようになり、会社の規模もだんだんと大きくなっていった。

転機は、舘さんが大学4年生のとき。突然お父さんが亡くなり、大学卒業後すぐに跡を継ぐことに。

若いうちから農業法人の集まりや、中小企業の経営者の会合に参加し、さまざまなことを勉強したそう。

「時代の流れもあって、米の価格がだんだん下がっていました。入って何年か経つと、米だけをつくっていたら苦しい状態になって。このままではいけないと思って、お餅などの加工品をつくりはじめたんです」

そのうち、農業の6次産業化がうたわれはじめる。石川県には、すでに小売業に本格的に取り組んでいる農家も多く、自分たちもチャレンジすることにした。

「それまで細々とやっていた加工品の販売に力を入れていこうと、パッケージなどデザイン面も見直していきました。そうして3年前にできたブランドが『稲ほ舎』です」

思わず手に取りたくなる、可愛らしいシンプルなデザイン。

今までお米に興味のなかった人や、若い人たちが購入してくれるようになったこともあり、年々販売数も伸びている。生協や雑貨屋さんへの卸しや、レストランとのコラボ商品の製造、県内のイベントへの出店などにも幅広く取り組んできた。

「加工品のほうが注目されやすいんですけど、うちが一番大切にしているのはやっぱり米づくり。その考えは変わらず伝えていきたいんです」

舘さんが幼いころは、通学途中に田んぼで虫を捕まえることがよくあったそう。それが今は、管理上の理由や農薬の危険性から、田んぼに入ることがよしとされなくなってきた。

「それに農業をする人が減って、田んぼを気にする人も少なくなった。地域に田んぼはあるけれど、それは単なる風景で、生活の一部ではないんです」

「うちの田んぼは、地域の人たちから預かっているもの。もう一回、子どもたちや近所に住む人が、田んぼを身近なもんやって感じられる地域にしたいなって」

人が気軽に触れられる田んぼにしたい。地域に、虫や生き物が増えていってほしい。そんな思いから農薬を控え、子どもたちの田植え体験なども積極的に行ってきた。

お米を買う人たちにも、取り組みや思いを知ったうえで自分たちのお米を選んでほしいと思っている。

北辰農産では、働く環境を整えることも大切にしている。

「父が亡くなったあと、休みなく働いてきて。自分たちが大変だったから、今働く人には無理せず働いてほしいんです」

農業部門では、一般企業と同じように定時制を導入。加工品も、無理なくつくれる生産体制を整えた。

売り上げを無理に追い求めず、みんなに健康な状態で働き続けてほしい、というのが館さんの考え。

「100年200年続く企業をつくっていきたいって考えたときに、会社をどんどん大きくすることが、本当に自分たちに必要なんかなって考えて。上を求めたらキリがないじゃないですか。それよりも、自分らが身の丈に合った状態で生きられることのほうが大事やなと思うんで」

「しっかり会社は運営しながら、みんなが生き生きと、いい状態で働ける環境をつくるっていうのが大事なんかなって思います。農業で、そんなふうにできたら素敵やなって思うんです。まあ、田植えとか稲刈りの忙しい時期は『気合いやで』って言ってますけどね(笑)」

スタッフみんなで協力しながら、日々、効率よく働くことを心がけている。その甲斐あってか、会社は毎年少しずつ成長しているそう。

みんなが健やかに働くことが、長く会社を続けることにつながるのかもしれない。

「うちで働くなら、未経験がいいと思います」

経験がないほうがいいんですか?

「農業は地域や会社によってやり方が結構違うんです。そこで、前のほうがやりやすいからって、うちのやり方を取り入れてくれないのはちょっと困るというか…」

舘さんたちが長年かけてつくり上げてきたやり方。まずはそこにすんなりと入ってきてほしい。



それは農業だけではなくて、お店でも同じ。舘さんのお姉さんで、店舗を管理している久美さんも、こんなふうに話していた。

「うち、仕事にマニュアルがなくて。ただただ、お客さんに喜んでもらうにはどうしたらいいかっていうのをみんなが考えながら働いているんです」

「その考えが同じ方向を向いているから、前に進める。うちのやり方や雰囲気に、100%は難しくても、合わせてほしいなと思います」

商品開発の場面でも、部署関係なく会社の全員で話し合う。

たとえば、石川県で伝統的に食べられているかきもち。稲ほ舎では、一般的なものよりも厚く仕上げている。

何種類もつくり、食べてみて、自分たちが一番おいしいと思ったものを採用したんだそう。

「こんなふうにしたい、これがおいしい、っていう希望を出しあって、いつもみんなで仲良く決めるんです。自分の意見を押し通そうとするんじゃなくて、お客さんにおいしいと思ってもらえるベストなものを、みんなで考えていく」

みんなでつくるという感覚は、稲ほ舎では大切になる。家族全員で考えて、つくってきた会社だからだと思う。

「誰が偉いとかはないから、みんな自由に、生き生きと働けるんだと思います」

「家族経営だよっていうのは、わかって入ってきてもらったほうがいいかな。入社するってことは、家族の一員になること。なんなら嫁に来るみたいな感覚かもしれません」

舘さんと久美さんの家族・親戚を中心に、ご近所さんや知り合いが多く働く会社。良くも悪くも、とてもアットホームなんだそう。

「はじめて来た人は、ちょっと入りにくいと思っちゃうんじゃないかな…。近所の常連さんもよく来るし。だからこそ、ほっこりした雰囲気が出せるっていうのはあるんですけどね」

「でも、素直であれば大丈夫やと思います。苦手なことがあっても、素直でやる気があるのが一番ですね」



スタッフとして働く人たちにも話を聞いてみる。

今年の3月に入社した新保(しんぼ)さん。以前は、金沢市の百貨店内にあるお米屋さんで働いていた。

「前の職場は街中だったので、毎日ざわざわしていて、すごく忙しくて。とにかく数をこなさなきゃいけなかった。ここでは、数よりも丁寧さがよしとされます。それに、仕事中でもずっと笑い声が響いているんですよ」

実は正社員として働く女性スタッフは、家族以外では新保さんがはじめて。最初はどんな立場で働いたらいいか、難しさを感じたこともあるという。

「私より長年働いているパートさんもいらっしゃるし、難しい部分もありました。それでも家族のように迎え入れてくれたので、ありがたいなと思います」

これから新しく入る人には、新保さんがいることは心強いかもしれない。

仕事で大変さを感じるのは、ギフトづくり。希望の値段や商品を聞きながら、お客さんに最適な組み合わせの一箱を仕上げていく。

「お客さまの話を聞きながら、こんなふうにつくったらいいんじゃないかなって提案して。会話しながら組み合わせを考えていくのは大変なんですけど、少しずつできるようになっていけたらと思っているところです」

「あとは30キロのお米を運ぶこともあるので、働くなら力持ちな人がいいと思います(笑)」



農業部門で働く入社8年目の本殿(ほんど)さんは、未経験から農業をはじめた一人。

「以前は工場で働いていたんですけど、ずっとこのまま同じ空間にいるのかなって疑問に思ってしまって。外でのびのび働きたくて、農業をやってみようと思いました」

実家は、同じ石川県でも車で1時間かかる能登のあたり。北辰農産で働く人のなかでは、一番遠いところの出身なんだそう。

会社で農業の仕事をしている人は、本殿さんと社長の舘さんを入れて4人。みんなで分担して作業を行っている。

「地域の人の土地を借りているので、車で10分くらいの範囲の、いろいろな場所に田んぼがあります。田植えや肥料をあげる作業は何人かで協力するけれど、普段の管理や草刈りは個人でやっていきます」

最初は先輩にやり方を教わりながら、数枚の田んぼの世話をするところから。今では、40枚ほどの田んぼを担当するようになったという本殿さん。

「毎年気候も違うので、田んぼの管理は今でも難しいですね。一番大変なのは、やっぱり夏の暑い時期の作業。運ぶ肥料も重いですし。…けど、自分の稲が育つのを見るのはうれしいです」

冬の農作業のない時期は、本殿さんたちも加工場に入り、お餅の製造を手伝う。それ以外の時期でも納品などを任されることもあるので、いろいろな仕事に関わると思っていたほうがいいそう。

「あとは、僕たちは田んぼを預かって世話しているので。土地の持ち主のお年寄りから『ありがとう』って声をかけてもらえたりすると、励みになりますね」



一つひとつ心をこめて、お米づくりや加工・販売に向き合う北辰農産のみなさん。

都会で働くようなたくさんの刺激はないかもしれないけれど、小さな喜びを積み上げていくような仕事と暮らしがここにはあるような気がします。

そんな健やかな人たちから生まれる食べものは、手に取る人の心も健やかにしてくれるのかもしれません。

(2018/10/18取材 増田早紀)

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