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関わりを編む
着地型観光のこれから

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

地域を知るには、その地域の人と仲良くなること。

おいしいものやはっとする景色との遭遇も、きっかけは人との出会いから。そういうことが本当に多いです。

きっと観光のあり方も、これからもっと多様化していくんじゃないかなと思います。大型バスで観光名所をめぐるだけでなく、その土地の日常を味わったり、人との交流が生まれたり。

1回きりで満足するものというよりは、何度もその土地を訪ねたくなるような、地域との関わりを編む観光の形が増えていきそうです。

「着地型観光」。旅先での出会いや体験を通じて地域を味わう観光スタイルはそう呼ばれます。

近年はインバウンドの急激な増加もあり、ツアーで著名な観光地を訪ね尽くした人たちが「さあ次はどこで何をしよう?」と考えるタイミングになってきていて、ますます注目されているそう。

そんな着地型観光の考え方にもとづき、地域資源を活かした観光プランを企画・実施する地域おこし協力隊を募集します。

舞台は福岡県宗像市。北九州市と福岡市という2大都市に挟まれ、国内トップレベルの来客数を誇る「道の駅むなかた」や、昨年世界遺産に登録された沖ノ島と7つの関連遺産群を抱える人口約10万人の町です。

端的に言ってしまうと、道の駅に買いものだけしに来る人や、宗像大社を参拝してからラーメンを食べに博多へと向かう観光客が多く、着地型観光の土台ができているとは言い難いのが現状。

でも、いろんな可能性を秘めていると思うんです。

日本海側の海女発祥の地で、海と山両方の食資源に恵まれた土地。大陸との交易の歴史がまだあちこちに眠っていて、あまりに身近なものだから、遺跡のうえに畑をつくってしまったというような話がザクザク出てくる。観光協会のみなさんも、市内全域で使える「宗像とくとくチケット」の発行を4年前からはじめ、観光客が地域内を周遊して楽しめるように工夫を重ねている。

この町の魅力を発掘し、体験プログラムやイベントなどの形で伝えていく観光プランナーが求められています。

 

福岡空港の滑走路は、沿岸部ではなく街の中にある。大丈夫だとわかっていても、建物との近さに緊張して身構えてしまう。

ただ、その立地のおかげで各所へのアクセスがいいのも特徴。電車に乗り込み40分ほどで宗像市の東郷駅に到着した。

駅の階段を降りたところで迎えてくれたのは、宗像市役所商工観光課の中村さん。

「わたし、商工観光課には移ってきたばかりなんです。至らないところもあると思いますが、今日はよろしくお願いします」

そう言いながら、行く手に現れた施設や建造物について丁寧に教えてくれる中村さん。

大学進学で一度宮崎へ出たものの、卒業後は生まれ育った宗像市に戻ってきた。

「わたしは宗像のなかでも田舎というか、山側の自然豊かなところで生まれ育ちました。カエルとかヘビではまず驚かないですね(笑)」

2003年に海側の旧玄海町と合併した宗像市。さらに2005年には離島の旧大島村とも合併し、海と山の魅力をもった現在の姿に。

ところが、もともとの行政区分の違いもあり、海側と山側の交流があまり生まれていないのだという。

「宗像大社が世界遺産に選ばれたことで、今は海側に注目が集まっていますよね。でもわたしはずっと山側に住んでいたから、海側のことはあまり知らなくて…」

唐津街道の宿場町として栄えた赤間宿や、自然体験や旬菜バイキングが楽しめるレジャー施設「正助ふるさと村」、天然温泉の「やまつばさ」など。

いいスポットは山側にもあるのに通り過ぎられてしまうか、どこかに立ち寄ってもすぐ市外へ出て行ってしまう観光客も多い。

「海や山、それに島もあるので、もっと宗像市全体で観光を盛り上げていけたらいいな、とは思います。どちらの人とも仲良くなって、架け橋になれるような人に来てもらいたいなあと」

 

海と山をつなぎ、市内を周遊して楽しんでほしい。

そのための取り組みも実はすでに存在している。

そのひとつが「宗像とくとくチケット」だ。

1枚1,080円で購入できるとくとくチケットは、決められた枚数と引き換えに「食べる」「買う」「泊まる」「遊ぶ・体験」などのプログラムが楽しめるというもの。

地域の飲食店の限定メニューや農業体験など、130を超えるメニューの中から選んで使うことができる。

このチケットの仕掛け人は、観光協会の山口さん。

とくとくチケットの体験プログラムが掲載された旅の情報誌「むなタビ」の企画・編集は、なんと山口さんがほぼひとりで行っている。

「編集やライティングの経験はないんです。素人ながら試行錯誤しつつやっています」

3年前に創刊したむなタビは、2018年秋号で7冊目。デザインは宗像市内の若手デザイナーに外注し、年に2回のペースで発行している。

市内の観光スポットやとくとくチケット掲載店に設置しているほか、地元紙「リビング福岡」のシティメール便で福岡市内の企業7500社にも配布。

最近はチケットだけで年間2000万円ほどの売り上げにつながっていて、追加の飲食や買いものまで含めれば、経済効果はより大きいという。

さらにとくとくチケット以外にも、ウォーキングイベントを主催して1日に200人もの人を集めたり、地域のお寺や団体とともに豆まきや菊花大会などといった地域行事を盛り上げたり。

観光協会の精力的な取り組みは、結果につながっているようにも見える。

「たしかに、継続的にやればどんどん周知されて観光の方も増えるんでしょうけど、ひとつネックなのはマンパワーが足りなくてですね」

観光協会は現在事務局4名という少人数で運営している。とはいえ簡単に人を増やせるような状況でもなく、新しい取り組みをはじめたり、継続的に運営したりするのが難しいのだそう。

「それから、若い感性を持った人に参画してほしいんです」

若い感性。

「普段われわれがなんとも思っていないことが、ある人には宝石みたいに見えるかもしれない。そこの気づきですよね。歳も歳ですし、できるだけ若い感性を取り入れて、新しい切り口で観光振興に取り組んでいただきたい」

「そのためには、物怖じせず人の懐に入っていける人。いろんなことにアンテナを立てて、見聞を広めていくのが好きな人がいいかもしれませんね」

今回募集する観光プランナーは、山口さんたちと一緒に観光協会で働くことになる。

とくとくチケットが使える体験プログラムを新たに企画・実施したり、町の中で周遊して楽しめるような仕組みを考えたり。

観光協会の拠点である「宗像観光おみやげ館」は年間170万人が訪れる道の駅の隣にあるので、広場でマルシェなどのイベントを定期的に開催するのもいいし、特産品を使ったお土産のテストマーケティングにも適した環境だと思う。

だんだんとイメージが膨む一方で、まだ輪郭が掴みきれない感じもする。

具体的にはどんな体験プログラムやイベントを企画・運営していけるだろうか。

 

今年の4月から活動している地域おこし協力隊の2人と一緒に、アイデアを出し合ってみる。

まずはこちらの林さん。

林さんは、日本仕事百貨で海女さんの募集記事を読んで飛び込んできた方。

地元の海女さんに教わりながら、海での仕事に向き合う日々を送っている。

「みんなが普通にやっていることが珍しかったりすると思うんです。ウニを自分で割って、洗って、丼にして食べられるとか。このあたりの人がバンバン捨てるワカメの茎も、佃煮にするとおいしいよとか」

たしかに。海女さんにとっての仕事は外の人にとって非日常の体験にもなりますね。

「そうそう。宗像大社と道の駅に行って帰ります、じゃなくて、来た人とわたしたちお互いにうれしい体験ができたら、それって価値になると思います」

今は休漁期間で、海には入らないそう。その代わりに町の歴史や市外の漁業の取り組みについて調べ、見聞を広めているところ。

「町の歴史も面白くて。至るところに古墳があって、掘ればいろいろ出てくるみたいなんです。でもその上にみかん畑つくっちゃったとか、家建てたとか。それいいの?って話もたくさん聞きます(笑)」

あまりに身近すぎて、地元の人にとっては当たり前のものになっているんですね。

「そうかもしれません。歴史好きな人からしたら、面白い町だと思いますよ」

漁業者の間では獲れた魚をお供えする文化が残っていたり、10月に開催される秋季大祭の「みあれ祭」では、漁師さんたちが仕事を休んで100隻を超える漁船で御神体を奉遷するなど、未だに海の神さまへの信奉はあつい。

地元の人たちが語り部となってめぐる歴史体験ツアーのようなものを企画しても面白いかもしれない。

 

続いて、林さんと同じく海女の協力隊として活動する本田さん。

おふたりとも地域の人から「あまちゃん」と呼ばれ親しまれている。

「海と山どちらもあるし、北九州と博多っていう都市部からのアクセスもいい。この間来てくれた友だちも、ええもんいっぱい持ってるなあ、ええ場所やなって言ってくれました」

滋賀出身で、大学時代は京都で過ごした本田さん。

生活面での変化を感じることはありますか?

「前職は高校の先生をやっていたんですけど、こっち来る直前に『先生、なんか老けましたね』って同僚の先生に言われて(笑)。それがこっちに来てから、シワが減ったんですよ」

「なんでやろうって思って、よう考えたらわたし体重増えたわって。魚とかようけもらうんですよ。近所の人とのつながりも強いというか、ちょっとおいでよって感じで声かけてくれはったりすることも多いし。生活は充実してますね」

地域のお祭りや行事で生まれた関わりが、仕事につながることも。

「休漁期間にいちご農家さんのところで仕事させてもらえることになったり、ジャズフェスの司会してくれへん?みたいな話が飛んできたりとか。暮らしていくうちに面白いつながりも少しずつ生まれてくると思います」

林さんと本田さんは、7月末から漁業組合の運営する活魚センターで「あまちゃん食堂」をオープン。今後は沿岸部を案内する観光ガイドもやりたいね、と話しているそう。

「役場の方もやりたいと言ったことは前向きに検討してもらえることが多いので。体験メニュー何かできひんかなとか、考えて形にしていくのが楽しいという人にはいいかもしれませんね」

 

これからの観光を考えるにあたっては、人との関わりをどうデザインするかがとても大切になってくる気がします。

町の人とどう出会うか。その場でどんな体験を共有できるのか。

宗像市にはまだいろんな資源があるし、観光協会のみなさんが地道に積み重ねてきたとくとくチケットのような取り組みもある。

関わりをひとつずつ編んでゆくことで、ここから新しい観光の形が見えてくるように思います。

(中川晃輔)

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