求人 NEW

産業用ロボットから
宇宙ロケットの部品まで
夢を持ち、何でも削る

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たとえ目の前が真っ暗になるような出来事が起こっても、前を向いて進み続ければいつか道は開ける。

諦めない気持ちをお裾分けしてもらうような取材でした。

三重・四日市。

ここに金属を切削加工する株式会社中村製作所があります。

長年、下請けの町工場として精密機械の部品をつくっていたところ、ある日を境に売上が9割減に。そんな過酷な状態に陥りながらも、この会社は決して諦めませんでした。

自社商品開発など新たな取り組みをはじめ、今や宇宙ロケットや産業用ロボット、電気自動車のモーターなど、最先端の機械部品の製造に携わるようになっています。

今後はさらに新規開拓を行い、業界問わず様々なものづくりへ挑戦していくようです。

そこで今回、新たに営業担当を募集します。合わせて切削加工を担う製造職も募集するので、手に職を付けたい人もぜひ続けて読んでください。

 

近鉄名古屋駅から30分ほど電車に揺られ、富田駅へ。

ここから車を10分ほど走らせた場所に、中村製作所の事務所と工場がある。

中村製作所はここ四日市で大正3年からものづくりを続けてきた。

つくってきたものは漁網を製造する機械や石油コンビナートの部品など様々。近年は工作機械の部品を中心に製造している。

とくに削るのが難しい難削材と呼ばれる金属の切削加工に長け、誤差1000分の3ミリ以内という非常に高い技術力を持っている。

ところが2008年に、まさにどん底を味わうような出来事が起こってしまった。

その経緯を話してくれたのは4代目社長の山添さん。

「それまでは、ほとんどメーカーさん1社と取引していたような状態でした。直前まではすごく好調で、メーカーさんからは土地を買って工場を建てなさいと言われ、その通りにしていたんですね」

「けど、リーマンショックが起きた途端、トカゲのしっぽ切りにあって。うちがやっているほとんどの仕事をメーカーさんは内製化して、さらに残った我々の仕事に対して20%コストダウンという厳しい要求をしてきたんです。結局、売上の9割が失われました」

そのメーカーとは山添さんのお祖父さんの代から続く長年の付き合いだった。

過去にはお祖父さんやお父さんが取引に苦しむ姿を何度も目にしたことがあったそう。それでも親子3代に渡って真面目に、誠実に応えてきたのに。

山添さんは目の前が真っ暗になった。

「消耗品のように捨てられて、自分たちの存在意義って何なのだろうって。もう出口のないトンネルでした」

「それである日、病死した父の言葉を思い出したんですね。『うちは空気以外何でも削れるんだ』と」

中村製作所では昔から特殊な案件を受けることがままあった。

たとえばスナック菓子のポリンキー。三角形や網目を切り出すためのローラーは中村製作所がつくったものだ。

NASAから依頼を受け、ロケットの部品をつくることもあった。

もともと大正3年より続く老舗の会社。ほかには真似できない高い技術力が備わっていた。

「僕が大学から帰ってきてこの会社に入ったとき、父が『空気以外何でも削ります』という言葉を社是にしようと。当時、僕も含めみんなは恥ずかしくて仕方なかったんですよ」

「でも思い起こせば、これが僕らの強みだし、アイデンティティなんだなって」

今のままでは時代の変化やメーカーの都合に翻弄される状況から抜け出せない。

中村製作所は取引のあったメーカーと決別し、別の取引先を探すとともに、新たな道を探しはじめた。

中村製作所が最も多く製造してきたのは工作機械の部品。

その工作機械は中村製作所でも切削加工のために使っている。つまり自分たちでも使う機械を、その機械を使ってつくっていた。

「幼稚園児のころから誰がよろこぶ仕事なんだろうかとずっと不思議に思っていて。会社を継ぐときも、仕事に対してはとくにワクワクもせず、とにかく父親を助けたいという思いだったんですよ」

せっかくこれから新しい方向へ進むのなら、誰かをよろこばせて自分たちもやりがいを持てるような仕事がしたい。

そう考えた山添さんたちは自社商品の開発に乗り出した。

最初につくったのはアルミ製のワイングラス。ベテラン職人が「ワイングラスくらいなら簡単にできる」と試しにつくったものだ。

次いで印鑑をつくってみたものの、なかなかいいものがつくれない。展示会に出展しても反響はさっぱりだった。

「やっぱり他社にない付加価値を持った商品じゃないと勝負できないなと。いろいろ調べる中で、デザイナーの岡田心さんならうちの会社のいいところを引き出して、僕らが知らない世界へ導いてくれるんじゃないかと思いまして。それで岡田さんと組んで商品開発するようになりました」

何回も試作を繰り返し、チタン製の印鑑『SAMURA-IN』が誕生した。

凹と凸それぞれに膨らんだ2種類の印鑑を用意し、ふたつを隣合わせたときには寸分狂わずピッタリくっつく。中村製作所の加工技術を活かした新しい印鑑だ。

「会社を継いでから僕がまず何をやったかというと、ひたすら保証人の印鑑を押していたんです。この瞬間から全部の責任を担うのかと思ったら、なんて印鑑って重いのだろうと」

「人の覚悟を後押ししてくれるような印鑑があったらいいねと岡田さんに話したら、山添さんはまさに侍が鞘から刀を抜くように印鑑を押していますよねと。そのイメージで鞘のようなオリジナルケースも一緒につくりました」

2015年にはなんとグッドデザイン賞を受賞。その後も新聞やテレビなど、様々なメディアに取り上げられた。

印鑑の成功によって、地域の人たちや周りからの視線が変わっていったという。

SAMURA-INは毎月10本ほどしか売れていないが、本業においても様々な仕事を呼び寄せてくれた。

「印鑑を東京ビックサイトで出展していたら、とあるお客さんから『これができるなら、もっと大きなチタンも加工できる?』と質問されて。1個数百万円もする素材だったけど、リスクそっちのけで『できます!』と返事したら、それが防衛関係のモーター部品だったんですよ」

電気自動車のモーターや産業用ロボット、航空機、テーマパークのアトラクションなど、仕事は次々と広がっている。

山添さんはSAMURA-INをきっかけに、自分が大好きなサッカーチームのスポンサーになることができた。選手の中にはSAMURA-INを使ってくれたり、商品CMに出演してくれるような人もいる。

追い風は吹いている。

「自分たちは“待ち”工場だったんですよ。ずっと口開けて、放り込まれたものが不味かろうが何だろうが飲み込むしかなかった。それが今では自分たちで強みを打ち出せるようにまでなりました」

現在、営業チームでは新規開拓を進めている。今回募集する営業職も、まずは既存のお客さんを回って仕事を覚えたら、新規開拓に取り組んでほしいという。

切削という様々なものづくりに応用できる加工技術を用いれば、どんな業界でもチャンスはあるかもしれない。

最近は、愛知で民間ロケットを開発している会社からエンジン部品の製造に関する依頼があったそうだ。

その会社はJAXAから認定を受け、宇宙に打ち上げたロケットを帰ってくるようにする回収型ロケットの開発を進めている。全日空とHISがスポンサーに入り、宇宙旅行の実現に動き出しているという。

なんて夢のある仕事だろう。

「すごく楽しいですよね。ただ社内にはそう思わない人もいるのが正直なところです。給料のためだけに働いている社員さんも中にはいる」

「だから今回の募集では熱意を持ってやってくれる人を求めたいんです。まだ若くて真っ白な人でもいい。実力はなくても、こんなことをやりたいんだ!と言ってくれる人に来てもらいたいです」



山添さんに社内で最もワクワクしながら働いている人、と紹介してもらったのが、営業チームの石田さん。

もともとデザイナーの岡田心さんに師事していたことをきっかけに、自動車メーカーから転職。ここでは営業と新商品開発を担当している。

現在は岡田心さんとのコラボ商品第2弾となる土鍋『ベストポット』を売り出している最中。今年3月にクラウドファンディングで大成功した商品だ。

鍋は萬古焼で、蓋は鉄の鋳物。どちらも四日市の特産品だが、これまでは一緒にならなかった組み合わせ。

両方に中村製作所の切削加工が施され、隙間なくピタっとはまるので無水調理が可能となっている。

「実は、商品の形自体は昨年末に完成していたんですけど、萬古焼の口元をきれいに削るのがなかなかうまくいかなくて。来年発売なのに大丈夫かってみんなで言い合ってたんですよ(笑)」

焼物は個体それぞれに異なる歪みがある。それを均一に削るというのは無謀な挑戦だった。

「どれだけやったか覚えてないくらい、何度も焼いて試しました。これ無理でしょって思うこともあったんですけど、でもやらないことには何も進まないので、どんどん試してみて」

「それで結局、萬古焼に蓋の型を付けたまま焼くときれいな形になることが分かったんです。萬古焼にホーロー加工するときも業者さんから無理と言われてたんですけど、試してみたら意外とすんなりできて。何事もやってみないと分からないんだなっていうのは、ここで学んだことですね」

まずやってみよう。社長を筆頭に社内にはそんな空気感があるという。

「社長はチャレンジすること自体には何も言いません。だからすごくやりやすい」

「反対に『できないです』って言ったときには、すぐに『何ができないの?』という言葉が返ってきます(笑)やる前からダメだと決めるけるのはよくないよって、いつも言われますね」



新規開拓を担当している営業チームの森さんも、似たことを話していた。

「チャレンジ精神を持っている人に来てほしいなって思います。最初からできないとは言わず、できる方法を考えて動いてくれる人だといいな」

3年前までは鈴鹿で学習塾の塾長を務めていたという森さん。

もっと世の中のいろんな人の役に立つような仕事がしたい。ものづくりに興味があったこともあり、中村製作所に入社したのだという。

「僕は理系でもなかったので、ここに来たときの第一印象はめちゃくちゃ難しいなって(笑)専門用語も図面の見方もまったく分からない。入ってすぐの研修で少しずつ覚えていきました」

2ヶ月間の研修のうち1ヶ月間は現場に立ち、職人たちと一緒に加工する。ものづくりを体感して覚えることのできるよい機会だという。

今は新規の顧客リストを元にひたすらテレアポをしているところ。第2創業期さながらの現段階では、泥臭い仕事もときには必要なのだと思う。

これから、どんな業界で中村製作所の技術が応用できるだろう。

中村製作所の大躍進の影には、成果が出ない中それでも諦めずにコツコツ続けてきた努力があります。

まずは自分にできることから、一つずつ取り組んでいってください。いつしかもっともっと大きな夢が見られるかもしれません。

(2018/4/13 取材、2018/11/1 再掲載 森田曜光)

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