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手で触れて、言葉で伝える
良理道具のつなぎ手たち

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

日々の食卓にのぼるご飯から、レストランでの特別な一皿まで。

どんなおいしい料理をつくるにも欠かすことができないのが、鍋やフライパン、庖丁などの料理道具。

せっかく道具を買うのならば、自分に合った、長く使い続けられるものを選んでほしい。そんな思いで料理道具を販売してきたのが、浅草の合羽橋に店を構える釜浅商店です。

株式会社釜浅商店は、明治41年創業の老舗料理道具店。

プロの料理人から外国人観光客まで、幅広いお客さんが質のいい料理道具を求めて訪れます。

釜浅商店が大切にしているのは「良い道具には良い理がある」という考え方。

今回募集するのは、そんなこだわりを持ってつくられた“良”理道具をお客さんに案内する販売スタッフです。


地下鉄田原町駅から10分ほど歩いたところにある、かっぱ橋道具街。食器や調味料、大きな鍋などを販売するお店が軒を連ねている。

そんな通りの一角に、黒い暖簾を掲げた、釜浅商店を見つけた。

以前は、通りを挟んだ隣のビルも含めた3フロアで営業していた。

もともと料理道具売り場が入っていた隣のビルは、現在建て直し中なので、しばらくはこのビルの2階で料理道具を販売している。

開店直後のお店にお邪魔すると、4代目店主の熊澤大介さんが出迎えてくれた。

お店のなかには、庖丁をはじめ鍋やフライパン、大きな釜などがきれいに陳列されている。

「並んでいる商品は、見たことのあるものが多いでしょう。ほとんどの人は説明しなくても、なんとなく使い方がわかると思うんだよね。だけど、なんとなくで使っていると、壊れたり錆びたりして捨てられちゃうことがある」

どうすればより良い状態で長く使うことができるのか、きちんと最初に伝えた上で買ってもらうのが、釜浅商店の販売の仕事。

「どの道具にも理由があって、今の形や素材になっているわけだし、自信を持って売れるものだからここに並べている。僕らの役割はその一つひとつの良さが生きるような使い方を、お客さんにきちんと説明することだと思うんだよね」

鉄のフライパンは重いけれど、そのぶん丈夫で長く使えるし蓄熱性も高い。庖丁は、扱う食材や調理法によって、最適な刃渡りや厚みが異なる。

商品の背景にまで興味を持って、どんな理のある道具なのか、どんな使い方をしたらいいのかをお客さんに伝えていく。一方で、お客さんからの意見も職人さんやメーカーに率直に伝え、道具を改良してもらうこともある。

「職人さんは、長年ものをつくってはいても、その使い勝手はあまりわからない。お客さんからの意見や要望を、うまく伝えていくのも僕らの役割なのかなって」

「ものをつくる人がいて、それを使う人がいて、間に僕たちがいる。僕らは唯一、お互いのことをわかってる存在だと思っていて。ただ右から左に商品を流すだけじゃなくて、つくる人と使う人をつなぐ、重要な仕事をしていると思うんだよね」

つくる人と使う人をつなぐ。

「そのためには商品に興味を持って、真剣に勉強をしていかなきゃいけない。だから大前提として、料理や食べることが好きとか、料理はしなくても興味はあるとか、そういうことはとても大事になる。逆に、そこに興味がある人ならすごく楽しい環境だと思うんだよね」

釜浅商店のスタッフの仕事は多岐にわたる。

すべての基礎になる販売の力が身についたら、それぞれのスキルや適正に合わせて徐々に幅広い仕事を任されるようになっていく。

「たとえば料理道具の実演や庖丁研ぎのワークショップを担当する人がいたり、取材対応とか広報的な仕事をやっている人がいたり。商品開発と貿易実務を同時に担当している人もいる。きちんと販売をやりながらも、それだけをやればいいって訳にはいかないから、大変なことも多いと思うよ」

新商品の販売や国内外で行っているイベントなど、さまざまな情報がホームページやSNSでも発信されている。

ただそれは仕事の中でも華やかな部分。それらを支えるのが販売をはじめとする日常の業務だ。

「雑貨屋さんの延長みたいな感じで捉えられると、仕事にはギャップがあるかもしれない。そもそもは料理のプロ向けの商売だし、仕入先の職人さんにも気難しい人はいる。それに大きな釜とか何十本も庖丁が入った箱とか、100キロ近い重さのものを運ぶこともあるし。きれいな仕事ばっかりじゃないよね」

「それでも、料理が好きな人なら、乗り越えられるんじゃないかと思っていて。プロから学べることもたくさんあるし、興味のあるものを売るのはやっぱり楽しい。仕事をしている時間ってすごく長いわけだから、それを楽しい時間にしていくのは大事なことだよね」

料理の楽しさを伝える相手は、日本の中だけでなく海外にも。

2018年、釜浅商店はパリに直営店をオープンした。

食の本場であるパリにはもともとお客さんが多く、庖丁を取り寄せる人や日本の知り合いに頼んで購入する人もいたそう。

「それももちろんありがたいけど、本当は自分で見て触れて選んでほしいんだよね。料理道具って、実際に手に持たないと感覚や重さがわからないものだから」

「わざわざ店舗を出さなくても、代理店に販売を委託するという方法もあるんだよね。でも、それは自分たちが本当にやりたい伝え方じゃないから」

お客さんにはきちんと丁寧に説明して、納得して買ってもらいたい。その思いを一番に考え、店舗を構える選択をした。

「手間もお金もかかるし大変だけど、やっぱり自分たちが行って、自分たちの言葉で説明しなきゃいけないって思ったんだよね」


合羽橋の店舗にも、海外からのお客さんが増えてきている。

外国人のお客さんへの対応を主に担当しているのが、庖丁フロアで働く小峰さん。

取材の日に庖丁の名入れを案内していたのは、インドから訪れたお客さん。「せっかくだから日本語がいい」との希望を受けて、カタカナで名前を入れることになったそう。

「僕は1年半くらい前に入社しました。ワーキングホリデーや空港勤務の経験があったので、英語を話せる仕事がしたいなと思っていたら、友人が釜浅商店を紹介してくれて。自分はまったくアンテナを張っていなかった業界だったんですけど、料理も好きだしいいなと思って」

普段はお店に来てくれたお客さんの案内が主な仕事。それに加えて、海外からの電話やメールでの問い合わせや発送手配にも対応している。

小峰さんは、料理道具フロアで半年ほど販売を経験したのち、庖丁フロアに異動した。これから入る人も、まずは料理道具の売り場で経験を積むことになる。

鍋やフライパンをはじめ、業務用の厨房機器からたわしまで幅広く扱うことで、料理道具を売る基礎を身につけられる。加えて、庖丁を販売する場合は、庖丁研ぎや銘入れなど販売以外のスキルも身につけていく。

「お客さんによってニーズはさまざまです。買いたい商品の目星をつけてご来店される方もいれば、まず相談からという方もいます」

お客さん一人ひとりに合った道具を、一緒に話しながら提案をしていく。ときにはオーダーメイドで一からつくることもあるそう。

「今はネットショッピングでなんでも買えるじゃないですか。でも僕らは、そこではわからないことを紹介するのが仕事だと思うんです」

「インターネットは情報に限りがあるので、本当に自分に合うものなのかはわからないと思います。釜浅商店では商品のメリットだけでなく、デメリットも含めてお客さんと話し合うことで、納得して買ってもらいたいと思っています」

ひとつのフライパンを買うにも、お店に置いてあるものは素材や形状、サイズまでさまざま。それぞれの特徴を丁寧に説明しながら、お客さんに合うものを一緒に選んでいく。

「それに、プラスアルファの提案をしたいなと思っています。フライパンを買ってくださったなら、『キャンプで使うこともできますよ』『こんな料理にも使えますよ』っていうような、面白いストーリーを共有できたらいいなって」

インターネットや量販店ではなく、「釜浅商店で買いたい」「この人から買いたい」とお客さんに感じてもらえるように。

釜浅商店のみなさんは、使う人の視点に立って考えることを大事にしているのだと思う。


7年前に入社し、料理道具フロアのマネージャーとして働くのが河野さん。もともと飲食店に勤めていた経験が接客に活きることも多いそう。

「お客さんの抱えている悩みもわかるし、『自分はこんなふうに使っていました』『こんな使い方をしていたらダメにしてしまいました』とか、自分の体験をそのままお客さんに話して、共感してもらえることも多いですね」

「一般の家庭でも飲食店でも、道具の正しい使い方を知ることができる機会ってあんまりないんじゃないのかなって。自分も知らなかったことが多いので、答え合わせをしているような気分で日々学んでいます」

釜浅商店で扱う商品は数千点にのぼる。飲食店での経験があったとはいえ、使ったことのない道具も多かった。

「お客さんはプロの料理人はもちろん、一般のお客さんでも料理好きな方が多いから、みなさん詳しいし、自分なりのこだわりを持って道具を探しています」

「そういう人たちに信頼してもらうには、質問に対してきちんと答えたり、詳しく説明したりするための知識がとても大切なんです」

自分の知識不足から悔しい思いをしたこともあったそう。

「最初のころはお客さんの質問にうまく答えられないし、購入にも結びつかなくて。しばらくしてようやく大きな商品を売ることができたときに、先輩が『よくやった、でもまだまだ70点だな』って言ってくれたことをすごく覚えているんです。次もがんばろうという気持ちにつながりました」

ひとつ知識が身について、ひとつ商品が売れる。その経験が張り合いになって、もっと覚えていきたいと思うようになる。

「やっぱり料理とか食べることが好きだから、覚えることが苦にならないんですよ。逆に知らないほうが悔しいというか、どんどん知識がつくことが喜びになっているなと感じます」

釜浅商店はチャンスを与えてくれる会社だと話す河野さん。

「できる仕事は無限にあるんじゃないかなと思います。もちろん、料理道具に対する知識をしっかり持った上で、接客を極めたいでもいいですし、商品開発をしたいとか、人事に携わりたいとかでもいい。結構なんでもチャンスがあって、それをやらせてくれる会社だと思います」

「こんなことをやってみたい、っていう思いのある人が来てくれたらいいなと思います」


つくり手と使い手の間に立って、良理道具を伝えていく釜浅商店のみなさん。

もっと道具のことを知って、もっと多くの人に伝えていきたい。そんな一人ひとりの真剣な思いが集まって、お店がつくられているんだなと感じました。

(2018/12/3取材 増田早紀)
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