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そろそろ髪を短くしてみようかな。髪色を変えてリフレッシュしたい。前髪はどうしよう…。あれこれ相談しながら、なりたいヘアスタイルにしてもらい、お店を出るころには気持ちが軽やかになっている。
美容室で、そんな経験をした人は多いと思います。
「『明日からも頑張ろう!』と、気持ちよく帰ってもらう。それを毎月積み重ねていくと、お互いの存在が支えのように感じられてくるんです」
お客さんの人生とともに、歳を重ねるサロンでありたい。bond hair&style(以下、bond)の代表・白井澄絵さんは、そう話します。
bondは、東京・吉祥寺に2つのお店を構えるヘアサロンです。
スタッフは女性のみで、子育てしながら時短勤務で働いている人も多い。
お客さんとも一緒に働く人とも。相手の思いを汲み取りながら、気持ちのいい関係性を築いているように感じました。
今回は、bondで働くスタイリストを募集します。
雑貨店やカフェ、ギャラリーなど個性的なお店でにぎわいつつ、少し歩けば生活の匂いがする。吉祥寺にはそんな空気感があると思う。
駅北口を出て、高架下沿いを5分ほど歩いていったところに、bond本店はあった。
最初に話を聞かせてもらったのが、代表の澄絵さん。
先頭に立ってbondを引っ張っていく存在であり、二人のお子さんを持つお母さんでもある。
美容師に憧れるようになったのは、中学生のころ。
「高校を卒業して新潟から上京し、専門学校に通いました。その後Uターンして美容室で働いたんですけど、なんかちがうなと感じて」
ふたたび東京へやってきて、就職したのは大型サロン。勤めていた6年間で会社は急成長し、社員数は100人を超えた。
ただ、年上の女性スタッフは一人しかいなかった。
「後輩を教える立場にはなれても、そのお店でずっとスタイリストとして活躍していけるのか、想像できなくて」
「私は、40、50、60歳になっても、お客さま一人ひとりと一生関わっていくような美容師でありたいなという気持ちを持っていたんです」
どうしてそう考えるように?
「本で、ある格言を知ったんですね。『いい弁護士、いい医者、いい美容師に出会えると幸せな人生が送れる』というもの。それを読んで、いいなと思って」
髪がきれいになれば、雰囲気も印象も変わってワクワクする。マッサージをしてもらうと心身ともにリラックスできる。
「お医者さんが病気を治せる人なら、私たち美容師は、その手前を助けてあげられるというか」
「悩みを聞くことも含めて、お客さんに気持ちよく帰ってもらう。そうやって毎月一緒に過ごしていくと、お互い支えられているように感じられて。そのつながりを一生大切にして、働きたいと思うようになりました」
2004年、29歳で独立。
専門学校に通っていたころから好きだったという吉祥寺の街で、8坪2席のお店からはじめた。
「bond」というサロンの名前には、絆やつながりという意味が込められている。
お客さんとの関わり方にも、その思いは表れているよう。
「お客さまとの距離を縮められるようなコミュニケーションを心がけています」
たとえば健康に関する話が好きな人なら、きれいな髪や肌のために心がけられることを話題に取り入れながら、会話していく。
「そうすると『そういえば、髪の毛が細くなっていない?実は最近、嫌なことがあったの』と、悩みを打ち明けてくれることもあって。お話を聞きながら、たとえばヘッドスパを追加で提案してみたり、少しでも気持ちが晴れるように施術しています」
一人ひとりのお客さんに寄り添うことを大切にするbond。常連さんや、家族・友人からの紹介で訪れる人が多いそう。
年齢層も、30〜40代の主婦や働く女性を中心に、大学生から80代の方までと幅広い。また男性のお客さんも多く、夫婦での来店もよくあること。
なかには、結婚を機に関西へ引越してからも定期的に来店してくれたり、産休に入るスタッフに向けてプレゼントや励ましの言葉を贈ってくれたりする人もいる。
いい関係性は、お客さんだけではなくスタッフとも築いていきたいと、澄絵さん。
「私自身が出産・子育てを経験して、より一層、周囲の人の支えがあってはじめて今の自分があると実感しました。だからこそ、スタッフにとっても働きやすい環境をつくりたい」
一般的に日曜も営業するヘアサロンがほとんどのなか、bondでは、第2・第3日曜日は定休日にしている。それは、お客さんに迷惑をかけない範囲で、自分たちも家族とゆっくり過ごせる休日をつくろうと考えたから。
練習するときも、朝早く来たり、営業時間の合間を縫って時間をつくったり。柔軟な働き方ができるよう工夫している。
現在スタッフは女性13名。産休から復帰して長く勤めてくれる人も多い。今も5名ほどが時短勤務をしている。
「スタッフが妊娠したら心から祝福したいし、戻ってこられる環境もつくりたい。もっと言えば、今いるスタッフを一生幸せにしてあげたくて」
「だからこそ、一人ひとりを良い美容師に育てたいと思っています。やむをえない事情でほかの土地に行くことになっても、自分で食べていけるだけの実力を身につけておけば、幸せを掴めると思うんです」
母のような眼差しで見守る澄絵さんの気持ちに、スタッフの方も応えている。
「このあと話を聞いてもらうスタッフは、『私たちがお店を開けるので、週に1回平日の夜の営業時間を伸ばしませんか?』と提案してくれたんです」
「遅くまで働くのは楽ではないはずなのに、そんな提案を自らしてくれるのは、お店をよくしようと、一緒になって考えてくれている証拠。それってすごいことだなと思って」
そう言って紹介してくれたのが、トップスタイリストの美佳さん。
入社12年目で、現在は2店舗のマネジメントをしつつ、広告やWeb関連の作業まで幅広い仕事を任されている。
先ほど澄絵さんが話してくれた提案について、美佳さんはどんなことを考えていたのだろう。
「土日にいらっしゃるお客さまが多いものの、うちは少人数体制で予約人数が限られていて。お断りせざるをえないときがあるんですね。代わりに平日に来たくても最終の受付時間に間に合わない、という声も聞いていました」
「そういう状況がずっと気になっていて。私をはじめフルタイムスタッフの出勤時間を遅くして、そのぶん営業時間を延ばせば、お客さまの要望に応えられるんじゃないか。そう考えてはじめてみました」
お客さんをかならず笑顔で帰したい。その気持ちをいちばん大事にしているという美佳さん。
普段どんなふうにヘアスタイルを提案しているのだろう。
「最初に、カットやパーマ、カラーリングなど、お客さまがなりたいテーマをしっかりと聞いていきます」
また、その日のファッションや雰囲気もヒントに、今どんな気分だろうかと想像しながら、お客さんに好みのスタイルを確認していく。
「何度も来てくださる方には、同じような提案が続かないように。前回のヒアリング内容や施術方法を細かく書き残しておいて、今日はプラスαでこういう提案をしてみようとか、アレンジしていく感じです」
まずはお客さんと会話しながら、相手の思い描くイメージを受けとめること。
そのうえで、顔の形や髪質なども含めたトータルバランスを見ながら、今の気持ちに寄り添ったヘアスタイルを提案し、具体的に落とし込んでいく。
そのためには、常に自分の中の引き出しを増やし、成長していくことが必要になると思う。
美佳さんにも、壁にぶつかった時期があったという。
「入社して1年半後にスタイリストデビューして、5~6年くらい経ったころ、売り上げと指名数が伸び悩んで。そこから自分の接客と技術をあらためて見直すようになりました」
bondの先輩スタイリストはもちろん、いろんなサロンで接客や施術の仕方を見て学んだ。同じ悩みを持っている友人とも話してみた。
飲食店やアパレルショップにもよく足を運び、店員さんと会話しながら、どんなテンポや間合いが心地いいだろうかと考えていった。
「そうしたら自分に足りない部分がわかってきて。そこから、自分が見聞きしたものごとのいいところを吸収して、実践してみるようになりました」
自分の不得意な施術方法について澄絵さんから教わったり、掃除もお客さん目線で細部まで気を配ったり。そして、自分の気づきをまわりに共有していった。
日々自分にできることをとことん積み重ね、30歳を前に、トップスタイリストに。
2号店の店長を経てマネージャーとなった今は、スタッフそれぞれの考えを共有しやすい環境づくりを心がけている。
さらに、お店の外にも意識が向いているとのこと。
「私は学生のころから吉祥寺の街が好きで。吉祥寺から、美容師という仕事の価値を高めたり、若い人たちに憧れを持ってもらったり。そんな存在になれたらなと思って、近隣の14サロンと一緒に行うヘアショーの取りまとめも務めさせてもらっています」
美佳さんは、どんな人と働きたいですか?
「今を楽しみながら、夢や目標を持って、将来も楽しみにしている人ですね」
「私は10年後も20年後も、美容師として、お客さまと一緒に笑っていられたらいいなというのが、いちばんの目標です」
最後に話を伺ったアシスントの朋花さんも、自分なりに目標を考え、できることから実践している方。
「自分でその日のコーディネートを撮っておいて、同じ服装にならないようにしています。それは、直接施術できる機会は少ない私でも、ちょっとしたところでお客さまに顔や名前を覚えてもらいたいなと思っているからです」
服装に縛りがある美容室もあるなかで、bondは自由度がある。自分らしさを保ちながら工夫できると、朋花さん。
年上の先輩に囲まれているものの、話しやすい環境だという。
「私は最初、お客さんとしてこのお店に来ました。そのとき、これから美容師として社会に出て働くことへの漠然とした不安を背伸びせず話せて。安心できたというか。そういう人のいるお店で働けたらいいなと思いました」
「働くようになってからも、たとえばお店に置く雑貨はどれがいいかと、私の意見も聞いてもらったり、自分からも発信できたりしています」
入社2年目。お客さんの前に立つときは、どんな話題がよさそうか迷うこともある。それでも、まずは明るい表情で話しかけてみるそう。
そろそろカラーリングデビューが近いんだとか。
「カラーやパーマでは薬品を扱うので、緊張します。そういうときでも、笑顔でできるか。難しいですが、気持ちよく過ごしてもらえるようになりたいと思います」
目の前にいる人、一人ひとりとの関わりを大切に、気持ちのいい仕事をする。
そんな姿勢が共有されているからこそ、このお店には心地いい空気感が生まれているのだと思います。
(2018/11/13 取材 後藤響子)