求人 NEW

弱さや生きづらさに
水平な共感を
新しいケアのあり方を考える

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

老いることや、死ぬこと。

なんだか暗く重苦しいイメージがあって、なかなか日常では口にしづらい話題かもしれません。

でも、あらゆる人が共有できる唯一の経験とも言えます。生まれたら時とともに老いるし、いつか死ぬのは当たり前。

ほかにも、病や障害、弱さや生きづらさなど。なんとなく触れちゃいけないことのようで、自分のなかに溜め込んでいるものってあると思います。

そういったものたちを、隠したり触れないでおいたりせずに共有していく。一人ひとりの存在を認め、ありたい暮らしや社会を実現するために、“ともに”生きていく。

そんな未来をつくっていくために、「Compassionate Community Lab(コンパッショネート・コミュニティ・ラボ)」という団体が新たに生まれました。

今回は、その一員に加わるリサーチャー、バックオフィス、アシスタントスタッフを募集します。

発起人は、慶應義塾大学大学院教授の堀田聰子さんとissue+design代表の筧裕介さん。

なぜこのおふたりだったのか。どんな未来を思い描いて立ち上がったのか。たっぷりとお話を聞きました。

 

東京・神保町。

この日向かったのはissue+designのオフィス。過去にも何度か取材で訪れている場所だ。

ビルの3階の扉を開けると、代表の筧裕介さんが迎えてくれた。

「市民の創造力で、社会的課題を解決する。」というスローガンを掲げ、issue+designを立ち上げた筧さん。

震災時にボランティアのスキルを可視化するツール「できますゼッケン」や、地域の人との出会いを楽しむためのガイドブック「Community Travel Guide」、お父さんお母さんの声をもとにした「母子手帳のリデザイン」など。

過去10年間でさまざまなプロジェクトに取り組んできた。

日本仕事百貨でも紹介してきた高知県佐川町の「さかわ発明ラボ」をはじめ、全国各地と関わりを紡いでいる。

設立から10年目。ここをひとつの区切りと考えているそう。

「とくに直近5年ほど力を入れて取り組んできた『ローカル』分野で潮目の変化を感じていて。今は、この5年間で蓄積したノウハウを一冊の本にまとめたうえで、次の役割を模索しているところなんです」

そんなタイミングで、あるプロジェクトの食事会があった。

「たまたま隣に座ったのが、今回の新しい取り組みを一緒にはじめる堀田さんでした。もう、フレンチのコースにまったく手がつけられないぐらいのマシンガントークを浴びて(笑)」

 

そんな話を笑いながら聞いているのが、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授の堀田聰子さん。

「筧さんの書かれた本をいくつか読んでいて、以前からいつか押しかけるか、お会いするんじゃないかと勝手に思っていたんですよ。だから今だ!と思って(笑)」

その食事会がおよそ半年前の出来事。そこから急速に話が進み、今回のプロジェクトがもう動きはじめている。

具体的にはどんなことを話したんですか。

「大きく3つあります。『認知症未来共創ハブ』と『地域共生社会』、そして『コンパッショネート・コミュニティ』です」

耳慣れない言葉が多いので、ひとつずつ聞いていく。

「まずひとつめ。認知症のある方々は、社会がまだまだ追いついていないために、生活の中でいろいろな不便を感じたり、やりたいことを諦めたりしています」

「そこで、今構想しているのが『認知症未来共創ハブ』です。認知症のある方々の希望や知恵、体験を中心に、認知症とともによりよく生きるいまと未来をみんなでつくりだすための活動体といえます」

認知症と一口に言っても、人によって生活のしづらさやその背景はさまざまだ。

たとえば「料理」を取り上げてみても、献立を立てる、その材料を思い浮かべる、買い物に行く、必要な材料を選んで精算して袋詰めする、適当な時間茹でる、味付けするなど…。“難しさ”に直面する場面も、それを乗り越えるための知恵も、人それぞれ異なる。

こうした生活上の体験や知恵をひとつずつ拾い上げて社会に還元していくため、まずは認知症のある方とともに、当事者インタビューやその分析を進めているそう。

一人ひとりのリアルな生活や希望が見えてくれば、具体的な形で社会に落とし込みやすくなる。

「先ほどの料理の例をとっても、献立づくりのためのアプリ開発や、食品売り場における表記やオペレーションの改善、調理をサポートする道具の企画など。商品やサービスという形で活かせる場面はたくさんありますよね」

「あるいは、国や自治体の視点で考えれば、仕組みや制度を変えることにつながるかもしれません」

その点、民間企業や地域とのネットワークを築いている筧さん、認知症に関わる団体や専門職、自治体、国の関係者との協働経験も多い堀田さんが運営の中心にいることの意味は大きい。

多様な立場の人を巻き込みながら、大きな循環をつくっていける可能性があると思う。

ふたつめの『地域共生社会』は、誰一人取り残されないまちづくりを実現していくための取り組み。

たとえば介護の国家資格を持っている人でも、看護師資格を取ろうと思うとまったく0からのスタートになってしまう。

一人ひとりのいのち、生活・人生を支えるという目標は同じなのに、共通言語がないことで最適なケアがなされないのでは意味がない。

そこで今、堀田さんたちは、ケアに関わる専門職に共通して求められる力やその教育の見直しに取り組んでいる。

「この話は、一見、専門職を志す人でなければ他人ごとのように聞こえるかもしれません。でも、人口減少も進むなかで、ふつうの暮らしの幸せは誰がつくるのか、という問いとつながっています」

「その地に暮らす人たちが、立場を越えて未来の地域の姿を共有しながら、新しい健康やケアのあり方、みんなが学ぶべきこと、専門職に期待することを主体的に考える。そして、それぞれがよりよく生きるためのアクションを起こしていける。そのための基盤づくりにできないかと思っていて」

issue+designには、過去に同じような発想で取り組んだプロジェクトがあった。

それが「人口減少×デザイン」をテーマにしたWebサイト。2010年から2060年にかけての人口推移を、地方自治体ごとの単位でシミュレーションできるというものだ。

ただ危機感をあおるのではなく、どんな対策をすれば結果がどう変わるかまで見ることができるため、そこに未来を考えるきっかけが生まれる。

このWebサイトを活用しながら、地域住民の方々と一緒に自分たちの暮らす地域の未来を考え、その課題解決のためのワークショップを展開していった筧さん。

「ローカル」で培ったノウハウが「ケア」の領域に活かせると考えているそう。

「ローカルとの違いで言えば、10年後の自分たちが暮らす地域のケアの仕組みや活動を、地域で暮らす住民や行政、ケア人材がみんなで考えることって、今まで誰もやってこなかった。だからこそ、まったくの0からその方法論や仕組みをつくることの意義を感じています」

テクノロジーやデザインを活用できる余白がまだまだある。それもまた、この領域の面白い部分でもあると筧さんは話してくれた。

そして3つめの『コンパッショネート・コミュニティ』について。堀田さんが続ける。

「これまた分かりにくいんですが…。生老病死、人が生まれてから死ぬまでにまつわることを、地域住民の手に取り戻そうという考え方で」

生老病死を、地域住民の手に。

「医療が発展していくと、“健康は医師や専門職がつくってくれる”という幻想が生まれがちです。ときに専門職が最善を尽くそうとすることで、本人の力が奪われ、燃え尽きてしまうという事態も起きています。これは果たして幸せなことなんでしょうか」

だからこそコンパッショネート・コミュニティでは、コンパッション=“痛みを分かち合う”という感覚を大事にしているそう。

「死にゆくこと、死、喪失。そういったみんなに等しくやってくることを手がかりに、誰もが持つ弱さや生きづらさに水平な共感を持ち、自分たちごととして分かち合う。そんな学びあいと社会づくりのムーブメントを、地域と教育の場でじわっと展開していけないかと模索しています」

世界的には広まりつつあるものの、日本においてはまだほとんど知られていない考え方。

ただ、最期を病院ではなく自宅で迎えたいという声も増えているような気がするし、同じような方向を目指す活動も少しずつ現れはじめている。

認知症に限らず、病気や障害を忌み嫌ったり、かわいそうだとか、危険だから予防しようという風潮はいまだに根強い。人に弱さを見せたら負け、という考え方も近いものかもしれない。

認知症や生きづらさと、ともに生きる。そんなふうに発想を転換して、誰もがよりよく生きられる社会を一緒につくっていく。

今回の募集では、そのための仲間を新たに見つけたい。

具体的にはどんな仕事になるんでしょうか。

「リサーチャーについては、認知症をはじめ、さまざまな生きづらさを感じている当事者やその周囲の方々へのインタビューが中心になると思います。必要に応じてアンケート調査や、文献のサーベイも行ってもらいます」

「バックオフィスは、会員組織の運営やWeb上での情報発信、イベントの企画運営などを幅広く担ってもらいたいです。今は限られたメンバーでやっているので、そろそろ限界で(笑)」

働く場所は基本的に自由。顔を合わせてのミーティングは神保町や虎ノ門の事務所で行うことが多い。

雇用形態も含め、柔軟に考えていくことができそうだ。

実務経験があるに越したことはないけれど、なくても大丈夫とのこと。

では、おふたりはどんな人と一緒に働きたいですか。

まずは筧さん。

「人に対する強い関心がある方。人の気持ちや行動に興味があって、それを深く理解し、動かすために何をすべきか、とことん考えられる方。さらにいえば、具体的なアクションを起こせる方が理想です。あとはタフさというか、やりきる力も極めて大切だと思います」

堀田さんはどうでしょう。

「一人ひとりがやらずにいられないことが、響き合うといいなと思っていて。この船の向かっていく方向、何をどうやっていくかも正解がないので、一緒に問いながら形にしていくことを面白がってくださる方に加わってもらいたいです」

新たなステップへと踏み出した筧さんと、尽きることない情熱をもってケアのあり方を問い続ける堀田さん。

おふたりのペースについていくのはなかなか大変そうですが、立ち上げ期ならではのワクワクや自由さにあふれた、面白いタイミングだと思います。

目指す未来のために自分の力を活かせそうだと思ったら、一緒にこの船を漕ぎ出してください。

(2018/12/19 取材 中川晃輔)

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