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木や自然に関わる仕事のなかでも、林業は直接的にその未来を担う大事な仕事だと思う。
ただ、課題は山積しています。手入れの行き届かない人工林、安価な輸入材の流入、担い手不足…。
課題の意識に共感できても、自分が林業に関わるイメージはなかなか持てないという人もいるかもしれません。
今回募集するのは、そんな林業のあり方そのものを変えていく可能性もある仕事。
岡山県西粟倉村を拠点に森づくりに携わる、株式会社百森(ひゃくもり)の経営企画スタッフ、経理・事務スタッフを募集します。
百森がユニークなのは、民間企業ならではの柔軟さ。
山に入ってこれから伐採する森林の調査や事業計画を立案したり、ほかの林業会社や山の所有者、役場の担当者など、森林に関わる人たちが立場を超えて協働できるよう調整役として奔走したり。
見方を変えれば、森をひとつの会社と見立てて経営しているようでもある。
気になったら、一度従来の「林業」のイメージを脇に置いて読んでみてください。
西粟倉村内には、鉄道の駅が2つある。
そのうち北側に位置するのが「あわくら温泉」駅。すぐ隣に緑屋根の建物があり、なかに待合スペースが設けてある。
株式会社百森の事務所はこの建物のなかにあり、村の人がふらっと立ち寄ることも多いという。
到着からしばらくして、共同代表の中井照大郎さんがやってきた。
「すみません、お待たせしてしまって。昼まではちゃんと覚えてたんですけど、森に行ったらすっかり取材のことが抜けてました…」
飾らない方だなあ、というのが第一印象。「カルロス」というニックネームでみんなから親しまれている。
「どうぞ」といただいたトマトジュースを片手に、まずは中井さんがここに至るまでの話を聞いた。
「新卒で総合商社に入って電気やガスの元となる天然ガスの仕事に携わっていたものの、なかなかしっくりこなくて。会社の歯車になっている自分が好きじゃなかったんです。何か別の切り口でエネルギーと関わってみたいなと思って、興味を持ったのが自然エネルギーの世界でした」
退職後は再生可能エネルギーを扱う会社に入り、林業やバイオマス分野へと関心を寄せていく。
ちょうどそのころ、西粟倉村では「林業をとりまとめる新たな機関が必要だ」という声があがりはじめていた。
2008年に“百年の森林(もり)構想”を掲げ、山の管理や森林資源の流通・商品化の仕組みづくりなどに村ぐるみで取り組んできた西粟倉。
村役場主導で一定の成果をあげてきたものの、2〜3年で担当者が異動になってしまうことなどから、事業を継続的にブラッシュアップしていくためには民間主導へと移行していく必要があった。
Webの記事を通じてそのことを知った中井さん。村内での起業を支援する「ローカルベンチャースクール」の仕組みを活用し、西粟倉に飛び込むことに。
「あまりよく考えないまま3〜4回西粟倉を訪ねるうちに、気づいたら移住していました」
中井さん、フットワークが軽いですよね。
「ひとりだったら来ていないと思います。共同代表の田畑くんもいたし、実際に来てみて、ここの人や環境が自分にフィットしたというか。いろんなものがうまくマッチした感じです」
2016年末に移住し、2017年10月に百森を設立。現在は3名の正社員スタッフと2名のパートタイムスタッフが働いている。
「山のことは40年近く西粟倉の森に携わってきた晴夫さんっていうスタッフに教わりながらですし、自然への愛を語らせたらうちの永美さんはすごい。見た目はトトロ似の小坂田さんも、山の中をありえないスピードで駆ける。まだ林業に関わって2年ほどの共同代表ふたりが、一番森に詳しくないです(笑)」
とはいえ、根っからの専門家でないからこそ、柔軟に考えられることもある。
「日本の林業って、ヨーロッパや北欧に比べて3〜4倍のコストがかかっているんですね。なぜかというと、まとまった設備投資ができていないから。木を伐る人はいても、調整役がいないので、そこまで手が回っていないんです」
北欧やヨーロッパでは一般的な大型の林業機械が、日本ではほとんど導入されていない。その理由として、道の狭さや急な勾配が挙げられることが多い。
ただ、まとまった設備投資さえ実現できれば、日本の土地に合った機械を開発するところから考えることもできるはず。
じゃあ、どうやってその設備投資を得るか。
たとえば、事業計画を単年度ではなく10年先まで見通して作成できれば、林業会社もより大きな額を設備投資にかけられるようになる。
そのために百森としては、山の所有権を持っている山主さんを個別に回って契約を交わしたり、信託という仕組みを活用したりして、10年分の仕事につながる森林を確保する。こうした森林資源の集約化が大事な役割のひとつだという。
また、森林の調査・測量でのドローンの導入や、森林面積あたりのCO2吸収量の定量的な計算など、これまであまり手がつけられてこなかったことにも積極的に挑戦している。
「この分野って、誰も手を付けていない領域がたくさんあるという意味でブルーオーシャンだと思うんです」
「ここまで森林の経営に特化して取り組んでいる会社はおそらく全国でも僕たちだけ。百森の事業を通じて、日本における林業のあり方を変えていきたいと考えています」
今回募集するのは、こうした新しい価値を中井さんたちとともに生み出す経営企画スタッフ。
村内で役場や林業会社、山主さんのもとを巡るだけでなく、村外での打ち合わせやコンサルティング案件もあるとのこと。
経理や事務の仕事が今後増える見込みなので、新しく入る人の適性や経験に応じて具体的な仕事は相談していきたい、と中井さん。
「欲を言えば、新しいことを一緒に語り合いつつ、目の前の業務もテキパキこなしてくれるスーパーマンみたいな人に来てほしい。けど、同じように夢を追いかけてくれる人なら、今のスキルや能力にはこだわらないし、もちろん林業のことはわからなくてもいいと思います」
「あとはとにかくチャレンジ精神が旺盛で、大変な状況にもくじけないハートを持った人。まだ誰もやっていないことに挑戦していくので、失敗もトラブルもきっと多いです。めげずに、一緒に楽しんでやっていける人だといいですね」
100年の森を、次の世代へ。
課題と可能性に満ちた、面白い仕事だと思います。
(2019/2/6 取材 中川晃輔)
※株式会社百森も参加する、西粟倉村内の企業の合同説明会「小さな村のしごとフェス」が3/21に、大阪・心斎橋のW CAFEで開催されます。
日本仕事百貨では、イベントに参加する9つの企業を紹介しています。いろんな仕事があるので、西粟倉のことが気になったら、まずは読んでみてください。