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ぶっきらぼうでも
あったかく
家族のように、一緒に生きる

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毎日通って、長い時間を過ごす会社。

大変なことも楽しいこともみんなで共有するうちに、だんだんとそこが自分の居場所になっていくのかもしれません。

三島硝子建材を訪れて、そんなことを強く感じました。

三島硝子建材は、東大阪市でドアや窓に使われるアルミサッシをつくっている会社。建物の入り口部分に使われるフロントサッシでは、関西トップシェアを誇ります。

今回募集するのは、サッシの製作・加工をする人と、現場で実測をして図面に起こしたり、製作の段取りをしたりするサッシパタンナー。

身近なようで、あまり知らないサッシの仕事。まずは、三島硝子建材の雰囲気を知るところからはじめてみてください。


大阪随一の繁華街・難波から地下鉄で15分の北巽(きたたつみ)駅。ものづくりのまちと言われる東大阪市らしく、駅からの道のりには小さな工場がいくつもある。

10分ほど歩いて、三島硝子建材の事務所兼工場に到着した。中に入るとすぐにあるのが、2階の事務所に向かう階段。壁には可愛らしい絵が掛かっている。

「階段の絵は、社員の家族に描いてもらったんですよ。フレームは自分たちでつくって。この部屋のサッシも全部自分たちでつくりました」

うれしそうに教えてくれたのは、社長の三島圭四郎さん。

「現会長のうちの親父が『技術で日本一になろう』と掲げ、1970年にこの会社を立ち上げました。最初はガラスの加工をしていて、だんだんとアルミサッシの製作が中心になりました」

「実はサッシにもいろいろあってね。住宅やビルに取り付けるサッシには、大きく分けて3つの種類があるんですよ」

決まった色やサイズで量産する規格品と、必要に応じて寸法だけを調節するセミオーダー品、それぞれの建物に合わせて1からつくるフルオーダー品。

三島硝子建材が扱うのはフルオーダー品で、商業施設やマンションのエントランス部分に使われるフロントサッシを主につくっている。

フロントサッシは、どんなふうにつくられるんですか?

「まずは、お客さんからの色やサイズの指定に沿って、6メートルの細長いアルミの型材を切断します。それを機械や手作業で加工して、鍵や取っ手などの部品を取り付けてから、ビスを使って組み立てます」

フルオーダーなので、設計士や建築士がこだわりを持ってデザインしたサッシにも対応する。

そのため、依頼のなかにはかなり複雑なものもあるそう。

「たとえばこの格子は、サッシの枠に穴を空けて、竹を差し込んでいます。一本一本の竹の太さが微妙に違っていて。少しでも穴が大きいとカタカタしてしまうから、それぞれ太さを測って、ぴったり合う穴をあけるんです」

建物の顔となるエントランス部分は、デザインが決まるまでに時間がかかることが多い。

そのため、フロントサッシの納期は1週間ほどの短さでも当たり前なんだそう。

「手作業で早く正確に仕上げようとすると、かなり技術がいります。一人前になるまでに10年はかかるんじゃないかな」

10年、ですか?

「サッシって、身近だけど知られていないことだらけなんです。だってサッシの外枠に名前がついているなんて知らないでしょう?最初は全員が素人なので、素材の名前やビスの種類を覚えるところからなんです」

技術を身につけるのには時間がかかるし、納期前にはどうしても残業が続く。新入社員がギャップを感じて、短期間で辞めてしまうこともあった。

今回は、じっくりと技術を身につけて、一人前の職人になりたいという人に出会いたいと三島さんは話す。

「社内には、創業から働いてくれている、70歳を過ぎた職人さんもいます。その人は若いときにうちの親父と喧嘩して退職して、数年して戻ってきはったんですね。昔はよく喧嘩していたし、甘えは許さない職人気質。周りに人を寄せ付けないようなオーラがありました」

「でも最近僕に言ったんです。『会長には感謝しかない。普通だったら辞めさせられてもおかしくないのに、ずっと働かせてくれた』って」

今、一番の古株であるこの職人さんは、「あの人に聞けばなんでもわかる」と社内外から頼られる貴重な存在になっている。

「僕らはどんな人とも、どれだけ時間がかかっても、一緒に生きていくんです」

一緒に生きていく?

「働くみんなを家族のように思って、会社をやっていきたくて。家族の根底にあるのは、幸せになってほしいと願う気持ち。『一緒に幸せになろうぜ』って思いは、血はつながっていなくても同じやと思うんです」

三島さんが持つ、社員への深い思い。ただ、最初からそうだったわけではないそう。

「こんなふうに考えるようになったのは、奥さんと出会ってからですね。それまでは40歳過ぎのボンクラ息子って感じで。本を読んでは、『これやってみよう』って言うだけの社長でした」

結婚してこの会社で働きはじめた妻のあゆみさん。経理担当だったものの、工場に入ることを希望し、残業をしている人がいるときは、夜中になっても一緒に残って工場で掃除をしていたそう。

「その姿を見て、自分も変わらなきゃいけないと思いました。社員を幸せにするのは自分なんやって。今も社長としてはまだまだやと思います。でもみんなで喜びを感じて、泣いたり笑ったりしながら一緒に生きていけたらいいなあって思ってるんです」

あるときは話し合いの場で厳しい意見を交わす。あるときは全員一緒に昼ごはんを食べる。

そうやって、みんなで時間を共にしてきた。

その輪をアジアにも広げていきたいと、三島硝子建材ではベトナムからの技能実習生を毎年受け入れている。

初代の実習生たちが中心となり、3年前にはベトナムに現地法人も設立した。

日本だけでなくアジアでも「技術で一番」の会社になろうと動き出している。

「本物の技術を持つ人を、もっと増やしていきたくて。ベトナムですごい人材が育ったら、日本も負けてられないってなるでしょう。一緒に頑張ろうと思えることが、共に生きる実感を持つってこと。海は越えても、想いはつながっていると思っています」


三島社長によれば、働く人たちは、「ぶっきらぼうだけど、素直で優しい」んだとか。

日々の仕事の話を教えてもらったのは、松山さん。たしかに言葉数は少ないけど、一つひとつ丁寧に話してくれる。

この春入社する予定の新入社員とベトナム人の実習生を除けば、36歳の松山さんが一番の若手。

製作とパタンナーの両方の仕事に関わり、採寸から製作スケジュールの管理まで、マルチプレイヤーとして働いている。

「パタンナーの仕事は、お客さんから連絡をもらったら現場に行って、サッシを取り付ける場所を採寸して、図面に起こすこと。図面は外注してソフトでつくってもらうか、自分がフリーハンドで描いています」

図面には、サッシの長さや種類、部品の取り付け位置などを細かく記す。この指示をもとに、製作が行われる。

「0.5ミリでも間違ってしまったら納まらないので、寸法は何回も見直します。自分で測って起こした図面からものができて、最後にうまく取り付けられたときはやっぱりうれしいですね」

図面をもとに、工場で製作。

工程ごとに担当者がいて、流れ作業で進めていく。

アルミの型材を切断し、案件ごとに仕分けをする人。すべての案件に共通する基礎の加工を機械で行う人。そして手作業で最終的な製品を仕上げていく人。

松山さんは、現場実測や図面作成のほかに、機械での加工も担当している。

「最近は、一連の工程を効率よく回せるように段取りを考える役割をしていて。どの案件から製作を進めれば1日を効率よく使えるのか、自分なりに考えて、全体の製作スケジュールを組んでいます」

松山さんは、ここで働きはじめて15年ほど。実は、途中で一度退職している。

「もともとは親父がずっとここで働いていて、紹介で入ったんですけど、毎日仕事に追われるのに疲れてしまって。若かったんでしょうね(笑)。でも、可愛がってくれていた先輩が『戻ってこないか』って連絡をくれて」

戻ってきてよかったですね、と懐かしそうに話す松山さん。

「ここは、居続けられる会社だと思います。うちの親父なんて50年近く働いていますから。最初は何もわからなくても、おるだけでいいと思うんです」

「仕事は難しいけど、やればやるだけ身につきます。毎日目の前の仕事をするだけでも絶対、腕は上がっていくと思います」


サッシの製作をする立花さんにも、続けて話を聞く。

工場では各自の作業台が決まっていて、それぞれが黙々と作業を進めている。

立花さんが担当するのは、住宅の玄関などに使われる「フラッシュドア」。アルミの型材が表にでない特殊な製品で、ほかの製品とはつくり方も異なる。

すべてオーダーメイドの製品をつくっているからこその苦労も。

「とにかく、材料の種類が多いです。みんなで在庫管理を分担しているんですけど、板や部品の特徴や発注方法を覚えるのは結構大変でしたね」

部品置き場を見せてもらうと、きれいに仕分けられたネジや留め具が棚にぎっしりと詰まっている。

ここから必要な部品を見つけるだけでも、慣れるまではなかなか大変そう。

「あと、最初は働く時間に苦労するかもしれません。帰りが遅いときはほんまに遅いし、早いときは早い。状況によって毎日違うんで、生活リズムがうまく取れないって思う人もいるんかな」

立花さんは働きはじめてから16年間、ずっとサッシの製作をしてきた。

それでも、工場で働く人のなかでは社歴は浅いほう。

「正直、まだ半人前やと思っています。まだ先輩に頼ってしまう部分がある。仕事を受けてはじめてつくる製品だから、16 年経っても経験していないことも多いんです」

同じ製品はほとんどないから、過去の経験から応用したり、先輩にアドバイスをもらったりしながら、その都度ベストなつくり方を考えていく。

新しく入る人は、まずは簡単な作業の手伝いからはじめることになる。

「はじめて先輩の力を借りずに大きな案件をやり遂げたときのことは、よく覚えています。つくったサッシを取り付けたショッピングセンターまで見にいきました。時間はかかるけど、自分で考えて1から10までできたときは、やっぱり気持ちいいんですよ」

「僕は、毎日同じことをやるのって面白くないと思っています。今まで働き続けてこれたのも、常に新しいものをつくる仕事やったからかなって。毎日が違って、”毎日がSpecial”ですよ(笑)」

正直最初は、ちょっと怖いかな?と感じた松山さんと立花さん。

でも空気がほぐれると冗談混じりに話してくれる。一方で、作業をはじめた途端に真剣な眼差しに。

まずは焦らずじっくり、ここで時間を過ごすこと。働く人たちの温かさや、仕事への真剣さに触れること。

そうやって毎日を重ねるうちに、ここが自分にとってかけがえのない居場所になっていくような気がしました。

(2019/3/1取材 増田早紀)
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