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空き家のストーリー
自分の人生
重ねて生まれる新たな価値

自分の人生に影響を与えたものはありますか?

子どものころに憧れていた仕事。思春期を支えてくれた映画やアーティスト。災害など、困難から立ちあがる人々の姿。

人生の転機には、思いがけない出会いや、衝動に突き動かされる瞬間があると思います。

今回紹介するのは、一人ひとりの人生がつまった「空き家」を扱う仕事。

人生を変えてしまうほどの出会いに溢れた空き家を、次世代につないでいる場所があります。

岩手・陸前高田。

東日本大震災で甚大な被害を受けたこのまちは、この経験を未来の教訓として伝える場所として、年間20万人が訪れるほどに。

震災から15年目を迎えるいま、人口減少の課題に直面しながらも、新しいまちづくりに力を入れています。

この場所で、移住者に向けた住居や仕事、住まいの情報を発信しているのが、特定非営利活動法人高田暮舎(たかたくらししゃ)です。

今回募集するのは、「空き家バンク」の担当者。地域にある空き家を残し、新たな住み手とつないでいく仕事です。

地域おこし協力隊の制度を活用するため、任期は3年。空き家管理に取り組みながら、空き家を活用した事業づくりにも挑戦できます。

多くの空き家に出会うなかで、自分の人生も変わってしまう。そんな可能性を秘めた仕事だと思います。

 

岩手の一ノ関駅から、JR大船渡線を乗り継いで東へ進む。

山あいを抜けてパッと視界が開けると、三陸のリアス式海岸が広がる。その先に見える「奇跡の一本松」が陸前高田への到着を知らせてくれる。

今回空き家バンクの担当者になる人へ、将来のモデルの一つとしてぜひ紹介したいと案内してもらったのが、泊まれる古本屋「山猫堂」。

築180年の古民家を改装したお店で、森の入り口のような場所にひっそりと佇んでいる。

中に入ると、広々とした空間には書籍や古着、アンティーク品にレコードなどが所狭しに並べられている。

目線を変えるたびに発見があって、気づいたら時間が過ぎてしまう。

店名は、宮沢賢治の「注文の多い料理店」から取ったのかな。

気になったので聞いてみると「名前は来る人の感覚に委ねているんです」と店主の越戸(こえと)さんが教えてくれた。

古いレコードをソーサー代わりに、温かいお茶を出してもらう。

高田暮舎の理事をつとめるかたわら、山猫堂を主宰している越戸さん。

空き家バンクの立ち上げを経て、現在は別の事業を担当している。今回加わる人と直接の関わりは少ないものの、仕事や空き家の利活用について相談に乗ってくれる存在。

「震災から5年が経って、ボランティア支援の終わりが見えてきたとき。これからは復興ではなく、移住定住を見据えたまちづくりに移行する動きがあって」

「そのためには、住居や移住支援の情報が必要だよねと。そこで高田暮舎が移住ポータルサイトや空き家バンクの運営をはじめました」

開始から9年で、登録された空き家は83件。そのうち7割が成約まで至り、空き家バンクを利用して移住した人は50名以上にのぼる。

「陸前高田には空き家が800軒以上あると言われていて。実際に活用できている物件は、まだ氷山の一角に過ぎないんです」

相続の手続きや家財整理の負担、あるいは家族ごとの事情など。さまざまな理由から、活用したくてもできていない物件が残っている。

そうした困りごとを聞いて、地域の専門業者や行政へ適切につなぎ、活用できる物件を一つずつ増やしていくことが、空き家バンクの役割。

もともとはデザインの仕事をしていた越戸さん。空き家活用はまったくの未経験だった。

「陸前高田は津波で流された建物が多かったので、活用できる空き家が少なくて。まずは一軒ずつお家を訪ねて、話を聞かせてもらうことからはじめました」

聞くなかで感じたのは、所有者が複雑な気持ちを抱えていること。

「両親が明日なくなったとして、明後日から空き家だとは思えないですよね。そんなふうに空き家といっても、所有者さんは割り切れない気持ちを抱えていて。自分はそこに向き合いたいと思ったんです」

「新しく家族ができたり、子どもが大きくなったり。どんな家でも人生の楽しい時期を支えている。それが空き家になって暗いイメージになるのは寂しい感じがして。なにか別の光の当て方ができないかなって」

そんな想いから、空き家バンクの紹介ページでは、その家で営まれていた暮らしに焦点を当てた記事を作成している。

「津波で流されてしまった家も多いなかで、残っている古い家。そのストーリーをきちんと残して、共感してくれた人が家を住み継いでくれる。とても意義のある仕事だと思っています」

そんななか、ある空き家との出会いが転機になる。

「1000冊くらい蔵書のある部屋で、自分が好きな映画監督のタルコフスキーや溝口健二の本を見つけたんです。うれしかった反面、自分が見つけなければ、ただのゴミとして捨てられていたのかなと思って」

「本屋なんてやったこともないし、できる気もしなかったけど。これは残さないといけないと思って、許可をもらい貯めておくことにしました」

その後、現在の山猫堂につながる物件と出会い、2023年に店舗をオープン。

空き家から出てきたものだけで空間を構成し、建物の奥には、ゆっくり本を読みながら泊まれる個室やドミトリーが設けられている。

イベントも定期的に開催され、焚き火を囲んでレコードを流したり、空き家にあった杵と臼で餅つきをしたり。地域交流の場所としても親しまれている。

ほかにも、映画の上映会や朗読劇、国内外のアーティストを招き、滞在中の創作活動を支援する「アーティストインレジデンス」を開催。文化活動の拠点として、県外からも人が集まる場所になった。

「ぼくは芸術や音楽が好きだったので、山猫堂をつくりましたけど、ほかにもいろんな形があると思うんです。リサイクルショップにしても良いし、好きなようにDIYして暮らしても良い」

「初期投資が少なく、新しく何かをはじめやすい。偶然の出会いから人生が広がっていくのが、空き家の面白さだと思います」

 

山猫堂を後にして、市街地にある高田暮舎のオフィスへ。

ここで話を聞いたのが、空き家バンクの運営を担当している柴崎さん。新しく入る人は柴崎さんから業務を引き継ぐことになる。

もともとは東京で救急救命士として働いていた柴崎さん。

「4年ほど前に移住担当の方と知り合ったことがきっかけでした。地域おこし協力隊として移住してきて、いま2年目ですね」

空き家バンクの仕事は大きくわけて3つ。

一つは、空き家の受け入れ。売りたい・貸したいなど、家を手放したい所有者の相談に対応しつつ、必要に応じて専門の業者につなぐ。すぐに活用ができる状態であれば、空き家バンクへの登録手続きを進める。

その後は所有者の立会いのもと現地調査へ。不動産の担当者もいるので、専門的な領域は任せつつ、住み手の目線で気になるポイントを確認していく。

二つ目は、物件の発信や開拓。どんな暮らしがあったのか、どのように暮らしていけそうか。間取りや撮影した写真をもとに、物件の魅力が伝わるページを作成する。

「前任の方は動画を作成していましたが、いまは兼任のためそこまで手が回っていなくて。物件の開拓も含め、新しい視点で進めていってほしいです」

より多くの空き家を活用できるよう、今後は空き家を利活用した事例の発信にも力をいれたいとのこと。

まずは、現場で所有者さんの話を聞くことから、利活用のアイデアを膨らませていけるといい。

三つ目は、問い合わせ対応。希望者からの連絡が来たら要望を聞き取り、希望に沿った物件を提案、必要に応じて現地案内も行う。

「空き家を介して、地域の人と話す機会がたくさんあります。だから移住に不安があっても、思っている以上に馴染みやすいというか。ぼく自身も立場は重なるので、なんでも相談してもらえたらと思います」

柴崎さん自身、地域で暮らして感じるのは、地域住民の存在の大きさ。

引っ越した初日に、地域の集まりに顔を出したとき。地域で900年続く、「七夕けんか祭り」というお祭りの保存会に、所属することになったそう。

「装飾が華やかな巨大な山車(だし)に丸太をくくりつけて、2台の山車をおもいきりぶつけ合う祭りです。激しいお祭りなので、物好きだねって言われるんですけど」

「何より、地域に馴染めるか不安だった自分にとって、気にかけてもらったことが本当にありがたくて。ここで頑張ろうと思えました」

 

最後に話を聞いたのが、まちづくりNPO法人の代表をつとめる三浦さん。

陸前高田の出身で、高田暮舎の理事も兼任している。

チーム内の進捗報告や毎月の1on1など、個別のサポートに入ってくれる。卒業後に空き家を活用した起業・独立を目指す際は、助成金の取得に向けた書類作成など、いろんな場面で頼りになる存在。

「空き家バンクの仕事では、いろんなつながりができます。物件を見て、話を聞くなかで、自分が将来やりたいことも見えてくるかもしれません」

昔から続く喫茶店やりんご農家など。事業承継を考えている人もいるので、思わぬところから相談が入ることもあると思う。

「まずは山猫堂で1週間くらい研修をしてもおもしろそうですよね。いろんなつながりが生まれるかもしれないし」

協力隊のチャレンジを応援したいという想いから、陸前高田の地域おこし協力隊では2、3年目に業務時間を減らして、挑戦したいことに時間を使える制度を設けている。

1年目は空き家管理をしっかり学び、2年目からは業務量を調整しながら、空き家を活用した新たな事業の立ち上げにチャレンジする、といった道も用意されている。

入る人の関心に合わせて柔軟に調整できるので、安心して飛び込んできてほしい。

「震災前には24,000人ほどいた人口が、いまは17,000人ほど。地域によっては空き家がかなりの割合を占めている場所もあります」

「地域の担い手が減るなかで、途絶えてしまうものもあるとは思います。でも、無くなってしまうのはやっぱり寂しい。新しい人と一緒に、これまでの伝統や生活文化を次につなげていたらと思っています」

 

これから先の日本において、空き家は大きな課題の一つ。

だからこそ、空き家を生かして新たな価値を生むことには、とても意義があると感じました。

興味を持った方は、ぜひ気軽に話を聞いてみてください。

その一歩が、自分の人生を大きく変えてしまうかもしれません。

(2026/01/08 取材 櫻井上総)

2/12(木)に、山猫堂の越戸さんをゲストに迎え、しごとバーを開催します。陸前高田は遠いなと感じた方も、まずはこちらへどうぞ。山猫堂や空き家を活用したお店づくりについて、一緒に考えましょう。

「空き家で人生が変わる?小さなお店の始め方」

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