求人 NEW

光、明るさ、照明
デザイナーの隣で
世界をのぞく

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

今回は、ちょっと変わった切り口の求人です。

照明デザイナーの岡安泉(おかやす・いずみ)さんのもとで働く人を募集します。

岡安さんの第一印象は、飾らない人。「吸いながらでいいですか?」と言ってタバコを取り出し、口元に少し笑みを浮かべながら、いろいろな話をしてくれました。

そしてとてもストイックな人でもある。青木淳さんや隈研吾さんなど名だたる建築家と協働したり、ミラノサローネのインスタレーションを展開したりと、常に30〜40もの案件を一人で進めています。

岡安さんは、自分の仕事についてこう話していました。

「照明器具を並べていく。必要であれば日常使いのダウンライトから特注のシャンデリアまでなんでも設計する。ぼくは、空間が一つできるまでの、照明にまつわるすべてをやろうと思っているんですよね」

今回は、岡安さんの秘書としてスケジュール管理や調整、メールや電話の応対をするスタッフと、岡安さんのもとで照明デザインについて学んでいくアシスタントを募集します。

どちらも、岡安さんと深く関係を築くことになる仕事だと思います。



月曜日の朝10時、JR神田駅前。

取材日時が決まったのは先週末の夜のこと。電話口の岡安さんからは、忙しそうな雰囲気が伝わってきたものの、話し声は落ち着いていたのが印象的だった。

地図を見ると、事務所は駅から5分ほどのところにある。飲食店でにぎわう通りを進んでいくと、年季の入ったビルがあらわれた。

このビルの3階の一室が、岡安さんの事務所。

ドアをノックすると、ちょうど事務所にいた方が上の階の打ち合わせスペースに案内してくれた。

待つこと5分ほど。岡安さんが部屋に入ってきた。

「すいませんね、急に来てもらっちゃって」

華やかな経歴に緊張していたけど、実際に会ってみると話しやすい方。飾らない姿勢が心地よくて、こちらも思ったことを素直に伝えられる。

「まあ、お茶を飲んでください。あと、ぼくタバコ吸います」

しばらくの間、他愛ないことをぽつぽつと話したあと、話題は少しずつ岡安さん自身のことに移っていく。

「ぼく、もともとこの職業をやりたかったわけじゃなくて」

「自分の意思というよりも、気づいたら照明デザイナーになっていたって感じなんですよね」

30年前、大学の附属高校に通っていた岡安さん。文系科目で大学進学を目指したものの、自分の成績で進学できる学部がなかったそう。

思わぬ形で農業工学科に進むことに。

図面を引いてみたら、思いのほか楽しかった。そして卒業後は農林水産省の研究所に就職する。

「研究所では機械開発の仕事をしていました。6〜7年ほど経って、転職しようと思って。たまたま就職情報誌で見つけたのが、照明メーカーの求人でした」

“創業します。一人目の社員になりませんか?”

そんな謳い文句に惹かれて連絡したところ、すぐに採用が決まった。

「だからスタートから照明に興味はなかったんです(笑) それで社長と設計者とぼくの三人で会社を始めて」

そこは美術館や博物館などの照明器具の設計・組み立てを手がける町工場のような会社だった。

岡安さんは、照明器具の設計を任されることになる。

「ちゃんと教わる時間もなかったから、社長の仕事をなんとなく横で見て、照明器具の図面の引き方を覚えていって」

「今はLEDだからあまり関係ないんだけど、当時は電球やレンズ、反射鏡なんかも設計していましたね。結構珍しかったと思います」

ただ、創業したての後発メーカー。この会社でこの先もずっと食べていけるとは限らない。

そこで岡安さんは、同世代の建築家に向けて、独自に照明プランを提供するようになる。

「同世代の建築家は、若くして独立した人が多くて。まだ1、2棟しか手がけていないから、照明についてわからないという人も結構いたんです」

「だから、彼らが大成したときに仕事をくれるといいなという期待もあって(笑)。相談に乗って照明プランをプレゼントするってことを始めました」

日中は会社で照明器具の設計や組み立てをしながら、夜は自分なりの照明プランを考える。

そうして3〜4年ほどで、自然と建築家から仕事が舞い込むようになった。

「だんだんと片手間ではできないくらいの仕事量になって。それである日突然会社を辞めて『今日から照明デザイナーです!』って名乗りはじめたんですね」

「結局、照明プランの図面の書き方も教わらないままだったのだけど(笑)」

岡安さんの肩書きである“照明デザイナー”。

具体的には、どんな仕事なんでしょう?

「そうだね…照明デザインってとても新しい業態で。ぼくが思うに、まだ明確な定義が存在してないんですよね」

照明デザイナーという肩書きの人は、都内だけでも200人から300人ほどいるのだそう。

そこには照明メーカーの下請けで器具を設計している人も、市販のライトを扱い照明プランをする人も含まれている。

「要は、自分の仕事の範囲をどこまでにするかっていう話なんですけど。ただ照明を並べ替えるだけでお客さんは満足できるのか?とも思う」

「ぼくは、器具を並べていく行為も、器具の設計も、全体のプランニングも、照明にまつわるすべてを包括しないといけないと思っています」

岡安さんの仕事は、個人宅から大型施設の照明デザイン、ときにはインスタレーションなど幅広い。

過去に手がけた新宿駅直結のショッピング施設『NEWoMan(ニュウマン)』を例に、仕事の進め方を教えてもらった。

依頼主は、ビルの建築を手がける設計事務所。

まずは設計者やクライアントの思い描くコンセプト、実現したい空間のイメージをヒアリングしていく。

「プロジェクトを前に進めていくのは、図面を引く行為じゃなくて。相手はどんな立ち位置で、誰のためにどんな目的の空間をつくりたいのかを知るためのコミュニケーションが必要です。相手の立場でちゃんと考えるってことですね」

NEWoManのターゲットは、30〜40代の女性。同じ新宿駅直結のビルでも、10〜30代をターゲットにしたLUMINEとは一線を画したい、というものだった。

「ただ、あまりヒアリングし過ぎてもよくないんですよ。ただの御用聞きになってしまうと、デザインフィーの発生理由が危うくなってしまうんです。相手の要望を頭に入れつつ、これならこういう可能性があるよねって先回りして考えていく感じでしょうかね」

そうして照明が必要な場所、照明があったらより良くなる場所について、建物の設計者とともに一つひとつ考えて当てはめていく。

意外にも、使用する照明器具の7割ほどはメーカーのカタログから決めて並べていくのだそう。自ら器具を設計する割合は、2割に満たない。

「今って建築に回せるお金も少ないし、照明にそこまでお金はかけられないんですよ。場合によっては、JISの照度基準を満たせればいいです、と言われてしまうこともある」

「でもそのまま終わるのは悔しいし面白くないから、『じゃあそこはいいけど、ここはこうするぞ』みたいな、絶対に外せない提案を持っていく。ちょっと他では経験できない空間を考えていくわけです」

ときには、建物の設計に大きな影響を及ぼすこともあるのだとか。

たとえば、まっさらな天井に線状のライトを新たに入れ込もうと、建物の設計者に変更を求めたこともある。

「幸いにしてぼくは器具の図面が引ける。ほしい光がつくれるから『天井にこれくらいの幅の光るラインが通ったら素敵じゃないか』って言えるんです」

「これで必要な明るさにならなかったらただのバカなんだけどね(笑)声がかかったからには、建築家とも徹底的に話し合って、より良い空間にしていきたいと思っています」

照明プランが決まればいよいよ施工へ。最終的な確認と調整を経て、引き渡しとなる。

「ただね、ぼくはしょっちゅうドジっていて。大枠を決めていくのはすごく楽しいんだけど、ふつうに器具を並べていくところではプツッと気力が切れちゃって。変な場所に器具がついていたりするわけです」

「どうやら照明デザイン業界には、色や配置など正しい作法があるらしくて、そんなミスはありえないと。ただ、ぼくは何も学んでいないから…だから、業界じゃちょっと嫌われ者なんですよね」

苦笑しながら話す岡安さん。

そんな常識にとらわれない姿勢こそ、岡安さんの強みなんだと思います。

「どうなんですかね…でも、今まで『あの建物と同じようにしておけばいいや』って思ったことはまったくなくて。だから作法はつくれないし、無限の答えと道筋が存在していそうな気がするんですよ」

「自分のやり方がどこまで社会にフィットしているのかも、実はよくわかっていないんです。ただ、お客さんは増えているし、そんなに悪いやり方じゃないのかな」

その言葉の通り、岡安さんは常に30〜40の案件を同時進行で手がけている。

今回は岡安さんを事務の面からサポートする秘書を募集したい。

「ぼく、打ち合わせや出張で3分の2は事務所の外にいるんですよ。なので事務所の電話番とぼくのスケジュール管理、あと簡単な図面チェックをお願いしたくて」

電話はお客さんや現場、メーカーなどから毎日相当の数がかかってくるそう。

「どう対応すればいいかわからなければ、ぼくにつないでもらえればいいので。ただすぐに返事できないことも多いし、メールも嫌いだから… 少しずつぼくの仕事を理解していって、自分で答えられる幅を広げてもらえるとうれしいです」

スケジュール管理の目的は、岡安さんが仕事をスムーズに進められるような状況をつくること。

たとえば案件Aと案件Bについて同じ日にミーティングをしたいと要望があったとき、納期や状況を考えて優先順位を考えたり、代わりの日程を提案したり。

あわせて、岡安さんが事務所で集中して仕事ができる時間もつくっていく。

「あとは、簡単な図面チェック。ぼくが書いた図面と、メーカーから上がってきた図面に差がないか確かめるだけなので、建築の経験は不要です」

「まあ、報連相ができる方であれば問題ないかなと。ぼくの代わりに会社の目になってくれる方に来てほしいですね」

そして今回は、照明デザイナー志望の人も募集する。

最低限の知識やスキルを身につけたあとは、岡安さんの打ち合わせなどにも同行してもらう予定。

つまり、岡安さんとは師匠と弟子のような関係になる。

「そうですね。一応、ぼくの中に、若者を育てる責任があるんじゃないかという気持ちがあって。やりたい人を拒むのは罪が重いなと思って、これまで希望者は全員入れてきました」

「ただ、そこそこ厳しいので。相手のことを考えていない提案をするとぼくも怒るし。中途半端な気持ちではやっていけないと思うので、覚悟してほしいって強く書いておいてください(笑)」

岡安さんが歩んできた道は、まさに “岡安流”。

その隣で仕事をしていく毎日は、きっと刺激的だと思います。

(2019/03/11 取材 遠藤真利奈)

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