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「ウエディングプランナーって、毎週のように感動や達成感を味わうことができるんです。これって、すごく稀な仕事だと思いませんか?」そう話すのは、株式会社b.noteの代表、新井達夫さん。
b.noteが運営するのは、1916年に建てられた歴史ある洋館「古我邸」。普段はレストランとして親しまれつつ、晴れの日には館内を貸し切っての結婚式も行われる場所です。
今回は、新郎新婦とともに結婚式をつくりあげていく、ウエディングプランナーを募集します。
それぞれの新郎新婦に合わせた、オリジナルのウエディングを大切にする古我邸。プランナーには柔軟な発想で企画してほしいので、未経験の人も歓迎します。
鎌倉駅から歩いて5分ほど。観光客でにぎわう駅前から少し離れただけで、あたりは閑静な住宅街へと移り変わる。
そのなかに突然現れたのが、立派な門構えと広い庭のあるお屋敷。ここが古我邸。
少し緊張しながら、門から長い坂道を上がっていく。建物に入ると、館内には木造のレトロな雰囲気が漂っている。
出迎えてくれたのが、代表の新井さん。ウエディングの打ち合わせスペースで話を聞いた。
「b.noteという会社は2009年に設立しました。この古我邸に出会ったのが、会社を立ち上げようと思ったきっかけなんですよ」
もともとはホテルや結婚式場を運営する企業で、新規施設の開発を担当していた新井さん。
鎌倉にある別の物件を視察した帰りに、偶然古我邸を訪れた。
「そのときは雑草が生い茂っていたんですけど、本来の目的だった物件よりも遥かによかったんです。ただ当時は持ち主の方が住んでいたので、将来借りられませんかってお話をするに留まりました」
「僕が勝手に『どうしてもここを人のにぎわいのある場所にしたい』と使命感を持ってしまって。それにはきっと時間がかかるだろうと思って、鎌倉に会社をつくりました」
ほかの式場のプランニングを請け負いながら会社を経営して数年、ついに古我邸を借りられることに。
改修を行い、2015年にフレンチレストランとしてオープン。建物を貸し切っての結婚式も行うようになった。
「今は、高いお金をかけてまで式を挙げる必要はないと考える人が多い時代です。でも僕はそんな人たちにこそ、結婚式を挙げてほしい」
親しい友人や親族が一堂に会する結婚式。最近は大人数で集まりにくくなったけれど、大切な人たちと一緒に食事の席を囲むことに価値があると、新井さんは考える。
「あの人はこの食材が食べられないとか、あの人は脚が悪いから席を工夫しようとか、普段会わない親戚にまで想いを巡らせて準備する。当日はみんなで美味しい料理を食べながら会話を楽しむ」
「一生に一度そういう機会を持つことって、とてもいい経験だと思います。それがどれほど素敵な時間なのか、多くの人に知ってほしいんです」
大切な人たちと同じ感動を分かち合う、特別な一日。
プランナーの仕事は、新郎新婦とともにそんな晴れの日をつくりあげていくこと。
式全体のコンセプトから、ドレスや装飾、料理など。責任者として式に関わるすべてを取りまとめ、新郎新婦の想いを形にしていく。
「100%の準備をして、滞りなく進めるのは当たり前です。その先にある感動や、ここで式を挙げてよかったと心から思ってもらうためには、120%まで準備する必要があるんです」
当日雨が降るかもしれないし、だれかが遅刻したり体調が悪くなったりするかもしれない。あらゆる可能性を想定して事前に対応を確認しておく。
たとえ何も起きなくても、そこまで準備しておくからこそ心おきなく式を迎えられる。
そんなふうに、裏では細かい部分まで気を配りつつ、晴れの舞台の主役である新郎新婦と真摯に向き合っていくことが大切な仕事だ。
「プランナーになる人は、目の前の人を喜ばせたいと思って、そのために動けることが大切です」
「それはどんな希望も叶えてあげるということではなくて。前例や決まった考えに固執せず、目の前の新郎新婦としっかり向き合ってほしい。ふたりが結婚式を通してどんなことを実現したいのか、表面的にではなく核心を見てほしいと思います」
核心を見るって、どういうことなんだろう。
現場を統括する事業部長の竹下さんの話を聞いていると、だんだんとその問いに対する答えが見えてくる。
「古我邸で結婚式を挙げるお客さまは、『普通の結婚式はいやだ』と思っている方が多いです。流れやプランの決まった“The結婚式”ではなくて、オリジナリティのある式を挙げたいという理由で選んでいただいています」
古我邸での結婚式は1日に2組まで。
料理や装飾、演出も含めて、新郎新婦と一から結婚式をつくり上げていく。
プランナーは、内覧対応・成約から、引き続き担当を受け持つことが多い。式に向けてのさまざまな打ち合わせから当日の運営まで一貫して行うので、新郎新婦との関係は自然と深まっていく。
「式の4ヶ月前に行う初回の打ち合わせで、どんなパーティーにしたいのかしっかりと話し合って、軸となるテーマを決めます。それをもとに装飾や装花、演出など、3回ほど打ち合わせを重ねて細かい部分を決めていきます」
共通の趣味や思い出の場所など、式のテーマはさまざま。
たとえば、ある新郎新婦は“LIFE”をテーマに掲げた。
幼いころからのふたりの写真や、それぞれの家族写真を館内のさまざまな場所に展示。ゲストはマップにしたがって館内を歩き、ふたりのこれまでの歩みを辿っていくという演出を行った。
「パーティーでは、デザートでおはぎを出したんです。新婦の亡くなったおばあさまが毎年つくってくれていたものを再現して。親族の方たちがすごく懐かしいって喜んでくださったのが印象的でした」
こういったオリジナリティ溢れるアイデアは、ふたりの話をもとにプランナーから提案する場合がほとんど。
「担当プランナーが変われば、パーティーは違うものになると思っています。それくらい、プランナーはどんどん自分を出していいんです」
あまり自分を出さない仕事かと思っていたので、少し意外に感じます。
「もちろん、自分がやりたいことを主張するのではありません。でも『ふたりの結婚式なら“わたしは”これがいいと思う』という提案なら、どんどん出していいんです」
「もしおふたりが希望した演出がテーマから大きく外れていたり、ちょっと雰囲気と違うと感じたりしたら、別のご提案をすることもあります。それが本当の意味で、ふたりのために考えるってことだと思うんです」
そんなふうに言い切れるのは、常に新郎新婦と真剣に向き合っているからだと思う。もちろん、そのぶん大変さもある。
「自宅でもインターネットでおふたりに合いそうな装飾を探したり、美術館や芸術祭、話題のレストランやホテルに行ってインプットしたり。自分が好きでやっている部分もありますけど、下調べとアイデア出しは、勤務時間内だけでやりきれないことも多いです」
アイデアを実現するために、提携できそうな会社を調べて見積もりを手配する必要もある。
一からつくるということは、それに伴う地道な業務もすべて担うということ。日々のお客さんとの打ち合わせの合間をぬって準備を進めていく。
「手間はすごくかかります。でも、だからこそ楽しくて。自分のアイデアが実際に形になって、新郎新婦が喜んでくれる。それがすごく大きなやりがいなんです。同じことの繰り返しはつまらないと思える人のほうが合っているかもしれませんね」
いつもお客さんのことを考えている感じ、と竹下さん。
仕事とプライベートをきっちり分けたい、という人だと難しいかもしれない。それも含めてポジティブに向き合える人なら、この仕事で得られるやりがいはとても大きいものだと思う。
「これはただ言いたいだけなんですけど…。実はわたしが結婚式当日で一番重視しているのは、親族紹介なんです」
挙式の前に、両家が集まりそれぞれの親族を紹介し合う時間。一連の流れのなかでは、決してメインとは言えない部分だと思う。
「それまで赤の他人だった人たちが、今日を境に親族になるって、すごく不思議で、素敵なことだと思っていて。『これからあなたたちは親族なんですよ』って、魂を込めるように口上を述べているので、涙が出そうになったと言っていただけることもあります」
「結婚式は、会社の方や友人を中心に考えることが多いです。でも親族の方々は、新郎新婦を小さいころから見てきたからこそ、すごく喜んでいると思うので。親族のみなさんのことも大切に考えた式にしたいという気持ちで常にやっています」
古我邸で働くプランナーは、ウエディング業界未経験から転職してくる人も多いという。
最後に話を聞いた浅田さんも、以前は大手のIT企業に勤めていた。
「どんな仕事をしているときが自分は楽しいのかと考えたときに、お客さまと深く関わって、二人三脚で案件を進めているときだなと気づきました。自分の手で誰かの喜びをつくる仕事がしたいと思ったんです」
プライベートではダンスサークルでイベントを企画したり、学生時代には体育祭の応援団として団員をまとめたり。人が集まる場をつくることも昔から好きだった。
プランナーの仕事なら、自分の特性を活かして働けると感じたそう。
「ただ、大きなキャリアチェンジになることが不安で。土日勤務になることや、大企業とは待遇面の違いもあったので、正直ずっと迷う気持ちはありました」
そんな気持ちに変化が起きたのは、内定後の研修中のこと。
「早く仕事を覚えられるように、前職と並行して週末だけ研修に通っていました。スタッフのみなさんが最初から温かく迎えてくれて、同席した打ち合わせもすごく楽しくて。ここで働くのが楽しみだなという気持ちが、どんどん大きくなっていったんです」
入社直後から担当を持ち、積極的にアイデアを提案してきた。
たとえば、新郎新婦の思い出の映画をテーマにした式では、劇中に出てくるビールを取り寄せて、ウェルカムドリンクにしようとひらめいた。
ところが、そのビールはすでに生産終了。だったら同じようなラベルを再現できないかと、メーカーに問い合わせまで行った。
「残念ながら、結局そのラベルは実現できなかったんです。でもウェルカムドリンクって、正直こだわらなくても問題ない部分。『そこまでやるの!?』ってところまでこだわりきれるかどうかで、お客さまの満足度も変わってくると思っています」
「どのプランナーも、お客さまに言われたからじゃなくて、一緒にいいものをつくりたいと心から思っています。ふたりに喜んでもらうために、自分も楽しみながら奔走できる人だといいですね」
一生に一度の特別な晴れの日。
大変なことも、その先にある喜びも含めて、新郎新婦の想いと本気で向き合うからこそ、オリジナリティにあふれた結婚式ができる。
ここでつくりあげる一つひとつの結婚式は、プランナー自身にとってもどれも忘れられないものになるんだろうなと思いました。
(2019/3/22、2020/1/20 取材、2021/4/15 再募集 増田早紀)