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99.7%。日本の総企業数のうち、中小企業が占める割合です。大企業のような設備や資金がなくとも、オリジナリティあるモノやサービスを提供したり、小回りを利かせて細かなニーズに応えたり。中小企業は、まさに日本経済を支える縁の下の力持ちと言えるかもしれません。
今回紹介するのは、そんな中小企業を全力で応援する人たちです。
舞台は瀬戸内。備後地方の中心都市、広島県福山市にある産業支援機関「福山ビジネスサポートセンターFuku-Biz(フクビズ)」で、チームメンバーを募集します。
2016年12月、「行列のできる経営相談所」と言われる静岡県富士市のf-Bizをモデルに福山市が開設したフクビズ。
専任のアドバイザーがとことん耳を傾け、企業の売上アップのための具体的な提案をするのが特徴。相談は何度でも無料です。
今回は、フクビズのバックオフィスを束ねるオフィスマネージャーと、企画広報を担うPRコーディネーター、そしてWEBマーケティングアドバイザーを募集します。
東京から福山までは、新幹線を使うのが便利。広島か博多行きののぞみ号に乗れば、3時間半で到着できる。
福山に着いてまず感じたのは、街のひらけた雰囲気。
駅前はショッピングモールやデパート、ホテルが立ち並んでいて、大きい通りから少し脇道に入ると個人店が軒を連ねている。
フクビズのオフィスがあるのは、駅前の商業施設の1階。春休み中の学生や子連れのお母さん、年配のご夫婦などでにぎわう館内を歩いていくと、すぐにたどり着いた。
中に入って挨拶をすると、すぐに席を立ってこちらに歩み寄る男性が。センター長の高村さんです。
取材前の電話で感じていた通り、穏やかで物腰のやわらかい方。
「よければコーヒーでも飲みながら話しませんか?」と、打ち合わせスペースに案内してくれた。
「2年半前の立ち上げから、相談に来てくれる方の数は順調に伸びています。今は、ぼくを含めて7名のアドバイザーで月におよそ230件の相談をお受けしていて。だいたい3週間先までご予約で埋まっている状況です」
2016年12月、福山市主導のもとオープンしたフクビズ。
その目的は、中小企業や創業希望者をしっかりとサポートすることで、今後見込まれる人口減少や高齢化などにも対応できる経済基盤をつくること。
瀬戸内・備後圏域の中心拠点として、フクビズでは6市2町をカバーしている。
「元気な地域なんですよ。とくに福山は人口47万人と規模が大きくて、新幹線も停まるから交通網も発達している。上場企業やトップシェア企業の本社が人口に比べてかなり多いのも特徴です」
広島市や岡山市といったまわりの都市からの影響を受けず、独自の文化圏を築いてきたことから、“起業家精神が高い街”とも言われているのだそう。
「そんな街だから、地域のど真ん中に立って頑張る事業者さんやこれから創業したいという方など、熱い方が多くて」
「ぼくらの仕事は、そんな方たちを全力でサポートして、人と事業、ひいては街を元気にしていくことだと思っています」
オープンしてからの2年間で、フクビズを訪れた人の数はおよそ1,000事業者。
2年目を迎えた昨年は年間で2,720件もの相談が舞い込み、そのうち65.9%の相談者から売り上げが向上したと報告を受けているという。
相談者の多くは、潤沢な資金もなく、知名度も決して高くない中小企業の経営者たち。
ここまで着実に実績を積み重ねることができた理由は、どこにあるんだろう。
「ぼくらは、時間とお金をなるべくかけずに、状況を変えられる提案をすることを大切にしています」
「そのために、まずは相談者さんの話をとことん聞いて、相手を徹底的にリスペクトします。相談者さんが必ず持っている真のセールスポイントを見つけて、具体的な提案に落とし込むんです」
「たとえば」と教えてくれたのが、市内の惣菜店『自然食房きむら』さんの話。
ご主人の木村さんは、手づくりの家庭料理やおやつを手頃な価格で販売する80歳。さらなる集客を図りたいものの、これ以上どうしたらいいのか分からない、とやってきた。
「まず、80歳の今でも現役でいらっしゃることがすごい。素材にもこだわっていて、砂糖や小麦の卸会社からは『こんなにいい素材を使うのはここだけだ』と言われたそうなんです」
「さらに聞いていくと、なんと過去にはVIP御用達になった商品もあると。木村さんの素材へのこだわりと高い技術、実績は明確な強みになると考えました」
提案のヒントとなったのは、木村さんが持ってきた一枚のパンフレット。福山出身の童謡詩人、葛原しげるを紹介するものだった。
「『高村さん、この人知ってる? 同じ福山出身なのに、あまり知られていなくてもったいないんだ』と。パンフレットを見たら、歌詞とともに夕日のイラストが載っていて。すごく素朴であたたかい感じがしたんですよね」
そこで高村さんは、こんな提案をしてみる。
「木村さん、豆腐を使ったドーナツをつくられていますよね。この葛原さんの世界観をモチーフにして、昔ながらのドーナツをつくって発信してみたらどうでしょう?」
材料は小麦粉、砂糖、卵、牛乳のみ。シンプルな材料だからこそ、木村さんの高い技術力も十分に活かせるし、ほかのドーナツとも差別化できると考えた。
「調べてみたら、数ヶ月後に葛原さんの生誕祭も開かれるとわかって。『その日にお披露目したいですね』と話すと、木村さんはすぐに主催者に掛け合って、あっという間に出店を決めてこられたんです。しかも、公認商品まで取りつけてきました」
木村さんはギアが入ったようにレシピを一から開発。2ヶ月後、新商品の「夕日ドーナツ」が出来上がった。
噛めば噛むほど、素材の味がじんわり広がる素朴なドーナツ。
完成後はフクビズもPRを後押しして、発売前に新聞や雑誌、テレビでも紹介された。
迎えた生誕祭当日は、用意した150個がすぐに完売。リピーターもつき、県外の百貨店に出品して完売したり、メーカーから仕入れ希望の連絡がきたりと、お店の看板商品となっている。
「木村さんには『高村さん、希望が湧いてきたよ』と言っていただけて。本人のモチベーションが高くなってはじめて、事業が元気になって売上も伸びていくんだなと強く感じました」
「ぼくらは税金をもとに活動している以上、相談に来てくれた皆さんの売上にいかに貢献できるかを常に問われています。そこで何よりも大事になってくるのが、チームの団結力だと思うんです」
3年目を迎えるにあたって、より精度の高いチームにしていきたい。そんな強い思いがあって、今回の募集に至ったという。
募集職種の一つであるオフィスマネージャーの役割は、高村さんたちアドバイザーをサポートすること。相談以外のほとんどの業務を担当すると言っても過言ではない。
具体的には、相談内容をまとめてデータベース化したり、アドバイザーのスケジュールを管理したり。受付対応や電話対応などもある。
現在、この業務を行なっているのはパートさんや入社したばかりの方。高村さんたちも相談業務で手が回っていないものの、改善の余地はまだまだあると感じている。
バックオフィスとアドバイザーのコミュニケーションが緊密にとれていれば、相談者さんにもより効果的なフォローができるはず。
そのため今回募集する人はバックオフィスのリーダーとして、オフィス環境をどんどん改善していってほしい。
「事務という言葉で片付けてしまえばそれまでです。でもぼくらの目的は、相談者さんの満足度を高めること。相談者さんの人生を預かる仕事なんだという意識を持っていなければ、改善案も見つからないと思います」
「それぞれの守備範囲で全力を尽くすチームをつくりたい。相談者さんの成果へと最短距離で走っていけるメンバーが必要なんです」
高村さんの隣で楽しそうに話を聞いていたのは、プロジェクトマネージャーの池内さん。
「ちょうど昨日、大きな記者会見を開いたばかりなんですよ」と、手元のパソコンの画面を見せてくれる。
映し出されたのは、ローカルテレビ局の番組で、新作デニムを紹介するニュース。
「これはFFG、福山ファクトリーギルドという福山のデニムファクトリーブランドで。昨日、新作をお披露目したんです」
実は福山地区は、国産デニムの約7割を供給する一大生産地。10km圏内に糸染めから縫製、エイジング加工まで各社が揃う、世界でも類を見ない地域だそう。
「ただ、福山がデニム産地だということは市民にもなかなか知られていません。というのも、ずっとOEMでブランドに提供してきた歴史があるからです」
各社はそれぞれ世界的な高級ブランドと直接取引をしていたものの、業界の不振によりだんだんと経営が悪化。フクビズに相談が寄せられるようになった。
「みなさんすごく高い技術をお持ちで、もし連携すればかなり品質の高いデニムがつくれると以前から思っていたんです。そんななか、ある縫製会社の社長さんが『福山の繊維産業をなんとかしたい』とおっしゃって」
「そしてもう一人、『福山発のブランドをつくりたい』と話すセレクトショップの店長さんがいらっしゃった。このお二人を結びつけたら、製造から販売までつながるんじゃないかと思ってマッチングさせていただいて、結果的にFFGが生まれました」
織り、デザイン、縫製に洗い、エイジングと製造工程と販売に関わる7社が集まって、100%メイドイン福山のジーンズが完成した。
「ぼくたちのミッションのひとつは、事業者さんを最大限PRして認知度をあげること。PR活動の企画も大事な仕事です」
昨年のメディア掲載数はフクビズ全体で353件。広告費に換算すると1.5億円にも相当する。
今回は新作発表会も兼ねて、7社の代表を集めた記者会見を企画。市内のメディアにプレスリリースを送付したところ、新聞と経済誌が14社、ローカルテレビ局も4局が来訪した。
当日は、池内さん自身が司会者として場を取り仕切ったそう。
「今後は、専門の企画・広報スタッフにPR活動を担ってもらいたいんです。プレスリリースもどんどん書いてほしいし、SNSやホームページの発信も毎日していきたいですね」
加えてフクビズでは2ヶ月に1度、大小さまざまなワークショップやセミナーを開催している。講師やテーマの選定なども一緒に考えてブラッシュアップしていきたい。
ただ、お二人とも日中は相談業務で忙しく、広報や企画運営のいろはから教えられる時間はなさそう。ある程度、企画・広報経験のある人がいいと思う。
「しっかりPRすることで、事業者さんは次のステップへと進化していく。ぼくはそこに、情熱や使命感を持っているんです」
「日々挑戦する事業者さんのために、自分には何ができるだろう?と本気でお考えいただける方がいらっしゃったら。ぜひ、一緒に働きたいです」
職種は違えど、進むべき方向は同じ。今回募集する人も、高村さんたちのような本気の姿勢が求められていると思います。
目指すは、瀬戸内の99.7%にとって最も頼りになるチーム。
この二人と一緒なら、そんなチームをつくりあげていけるように感じました。
(2019/03/19 取材 遠藤真利奈)