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美しい花に心躍る
感性と、探究心と

「先日霜が降りて、花に雪が積もったように見える瞬間がありました。これって365日であの朝しかないんですよ。こういう、花を育てているからこそ伝えられる、美しさを追求していきたいんです」

YARI FLOWER FARM(ヤリフラワーファーム)は、長野・安曇野と沖縄で花を育てている花農家。

自然に近い露地栽培で花を育て、毎月花が届くことを楽しみに待っている人たちに直接届けています。

大切にしているのは、そのままの花の美しさを伝えること。

募集するのは、農園スタッフとして一緒に花を育てる人。最初はアルバイトとして農業に携わってもらいつつ、バックオフィスなど、運営のための仕事も分担していきたいそう。

目の前で育つ存在をよく見る探究心と、伝えることを諦めない美学を持ち続ける人たちに会ってきました。



11月の朝、新宿から特急あずさに乗って3時間。

最寄りの穂高駅には、代表の田中さんが迎えに来てくれた。

YARI FLOWER FARMの拠点に向かう道を進むと、北アルプスがどんどん近づいてくる。

「あの奥にある山の、先にちょっと見えてるのが槍ヶ岳なんですけど。あー、ちょっとわかりにくいかな」

気さくな雰囲気の田中さん。

選花場や直売所として活用しているという拠点では、ハウスのなかで育つ小さな苗について、うれしそうに紹介してくれた。

新卒で入社したのは素材メーカーの総合職。

働いてみたものの、肌に合わない感覚があった。

「そんな時期に本屋さんで、フラワーアートの特集をしている雑誌を開いたんです。定量的ではない、理屈じゃない世界に惹かれたのをよく覚えています」

会社を辞めたタイミングで、地元の高知に帰省した田中さん。

ふと足を運んだのが、朝ドラでも有名になった植物学者、牧野富太郎さんの業績を記念した植物園だった。

「牧野富太郎さんって、学歴は小学校を中退しているけど東大の先生になったと知って。めちゃめちゃかっこいいなと思って。富太郎さんの左脳的な生き様や学術的なアプローチ、フラワーアートの右脳的な感覚。その2つに人生をかけてもいいのかもって思ったんです」

やると決めたら即行動。

まずは手に職をつけようと、都内の生花店に就職した。

そこで目にしたのは、長い労働時間など、業界の社会課題だったそう。

仕組みを変えていかないと、働き続けられる状況にはできないと考えるようになった。

「地元で坂本龍馬のことを教えられていたからか、世の中のために働くのがかっこいんだっていう価値観が育ったんでしょうね。自分がいることで社会がよくなるとうれしいって感情が強いんです。できることをするために、自分の会社をつくるしかないって思いました」

独立して東京ではじめたお店では、店舗を複数出店したり、定期的に花農家の花を届けるサービスをつくったりと、これまでにない取り組みを続けた。

7年後には事業が大きくなって、田中さん自身は会社を離れることになる。

次になにをするかも決めず、とにかく山の近くに引っ越してみようとやってきたのが長野県松本市。

仕事のあてもなく漠然と不安を抱えながら過ごしていたとき、知り合いから、ハウス栽培をしている花農家さんを手伝わないかと声がかかった。

「やってみたら花づくりが楽しかったんです。いくつかの花農家さんでお手伝いさせてもらって、費用やエネルギーをかけて施設を立てなくてもできる方法がイメージできて。決めたら諦めないってことは取り柄なので、農業経験はほぼないものの、貸してもらえる農地を探しまくりました」

松本市の北、安曇野市で花農家として独立し、4年目を終えた今。

決まった品種をハウスで大量に育てる花農家が多いなか、田中さんは多品種の花を、自然に近い露地栽培で育てている。

育てた花は全国の花市場に出荷するだけでなく、「FARM MEMBER(ファームメンバー)」と呼ぶ人たちに向けて、毎月届ける仕組み。

ファームメンバーは、花を受け取るだけでなく、畑からのライブ配信をみたりすることで、花が育つ環境やその様子を知ることができる。

「雨や風、虫など環境の影響を受けるので、均一には育ちません。曲がったのがいたり、花弁が薄くなるものがあったりもするけれど、そういうことを含めて、花を育てているからこそ伝えられることがあると思っています」

さらに昨年からは、沖縄でも花を育て、本格的な栽培がはじまろうとしている。

安曇野の気温が下がりシーズンオフとなるあいだは沖縄に移り、そこでしか育てられない花の栽培をしていく予定。

「なんというか、世の中へのカウンターになるような提案をビジネスにしていくのが昔から好きで。農家は定住するものだっていう固定概念に対して、季節に応じて人が動きながら農業するビジネスモデルをつくろうと思っているんです」

「あとは僕、植物が好きなんです。いろいろな植物、花を見たいから、今たくさんの種類を育てているんですよ。気候が違う場所なら、もっといろいろと育てることができるなって。知的好奇心が高いんでしょうね。いつか、植物園をつくりたいなと思っているんです」

知らないものを知りたい。

良くも悪くも、関心を持ったことは突き詰めて調べたり、実際に試してみたくなるのが田中さん。

「学術的にやってきてないからかもしれないんですけど、植物って、わからないことが多いんです。それが心地よいっていうのがあって」

わからないことが、心地いい。

たとえば育てはじめて4年になるダリアは、過去3年、異なる症状が出ていたそう。

「天候や土、雨の質も毎年違うから、どれが変数で、どれが変わらない性質なのか、そのたびに仮説を立てて確かめていく。数学の問題に挑むようなむずかしさがあって、そこがおもしろいんです」

「一方で、変数が多すぎてどうにもならない瞬間がある。自然を前にすると、人間の力なんてたかが知れていて、諦めるしかない。なのに、不思議とその方が心地よかったりするんですよね」

現在、研修生やアルバイトとして働いているのは全部で10名。

花の栽培や出荷など農園での作業をお願いしているものの、事務や経理、広報など、事業を進めるための仕事は基本的に田中さんが担っている。

今回募集する人とは花を育てることに加え、農園の運営やこれからについて一緒に考えていきたい。

農園で一緒に働くことになるスタッフの1人が、アルバイトの千尋さん。

笑うとぱっと周りが明るくなるような方。

「社会人になってから花に興味を持ちはじめて、栃木の花屋さんに転職して3年半働きました。お花って誰かにあげるとか、なにかの節目とか。気持ちを表すものとして人生のそばにある、みたいな感じがしていて。すごく楽しかったです」

花束やアレンジをつくる仕事を続けるうちに興味が湧いてきたのは、花そのものを育てる環境。

そんなとき頭に浮かんだのが、SNSで見かけていたYARI FLOWER FARMだった。

「もっと自然のなかで働きたいと思うようになって。登山が好きで、長野に住むことには憧れがあったんです。なるべく自然に近い姿で育てる露地栽培に携わってみたいなと思いました」

働きはじめて3年。

花農家の仕事はどうですか。

「自然とともに生きるっていう感じが、楽しさでもむずかしさでもありますね。花は待ってくれないから。雨でも収獲しなきゃいけないし、自分が休んでいても花は咲くし。いくらでもやることがあるのは、やっぱり大変なところだなって思います」

ハイシーズンは朝5時から収獲して、長めの昼休みをとったあと、みんなで分担して出荷作業。

暑さがきびしい夏には、切った花の扱いにも気をつかう。

美しい花を届けるために、毎日ヘトヘトになるほど働く日々のことを「見えない水中で足を動かし続ける、シンクロナイズドスイミング」に例え、笑いながら話してくれた。

「だけどやっぱり、時期によって咲く花がどんどん変わっていくことがやりがいというか、喜びになっていて。この花が咲くと、もうこの時期だねとか。花が季節を教えてくれるんですよ。すごく心が踊ります。いそがしさの中に、楽しみが散りばめられているというかね」

「ちょっと変わった育ち方をするような子もいるんですよ。折れかかってるのに育とうとして、少しふざけたような形になっていたりとか。世の中的には規格外って言われるものでも、すごく生命力を感じるし、おもしろいんですよね」

もう1人、話を聞かせてくれたのは、花農家として独立することを目指す研修生として、一緒に花を育てている啓太さん。

地元新潟では、大学職員として働いていた。

休日には花を買いに行き、部屋に飾ることが好きだった。

「そこから、家でバラを育てるようになったんです。秋になったら枯れて、剪定して。春になったらまた蕾が出てくる。あたらしい芽が出はじめたときに、なんかすごい、幸せな気持ちになったんですね」

「時間にもお金にも余裕があって、旅行行ったり、毎週のように飲みに行ったりしていても、満たされないような感覚があって。花を育てたら、それがすごく自分にとっての満足の源泉だってことに気づいて。これを仕事にしてみたいなって思ったのが最初のきっかけです」

この春から働きはじめ、ちょうどはじめてのシーズンを終えたところ。

初心者とはいえさまざまな仕事を担い、必要なスキルを一通り学んでいる。

「農業って大変なんだろうと思ってはいたものの、やっぱり大変でしたね。花はどんどん咲いて、周りの草は伸びていくし。自然のペースに人間が合わせるっていうこと感じた1年でした」

「花をつくって終わりではなくて。花の繊細なところを、鮮度を落とさないまま、いいものをいい世界観をつくって届ける。それが大きな魅力の1つなんじゃないかと思っています」

印象に残っていることを尋ねると、不定期に開く直売所「FARM STAND(ファームスタンド)」のことを話してくれた。

「地元の方も、遠方から来てくださる方もいらっしゃって。実際に花を手にとって、喜んでくれた姿をよく覚えています」

「僕がYARI FLOWER FARMを選んだのは、先進的な花づくりをしていることもあるんですけど、エンドユーザー向けのサービスをしているのがすごく魅力的で。ファームスタンドの光景を見て、やっぱりこの仕事は間違っていないなって思えました」

美しい花の姿、そのものを伝える。

常識にとらわれず、自分たちがいいと思える花づくりを続けていく。

その裏で日々続く農業は、決して楽なものではないと思います。

それでも花々と季節を生きることに心が動いたならば、ぜひ一度、YARI FLOWER FARMを訪ねてみてください。

(2025/11/1 取材 中嶋希実)

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