求人 NEW

太陽と土と野菜と
仲よくなる
この夏、初めての農業

北海道・美瑛町(びえいちょう)。

パッチワークのように広がる丘陵、色とりどりの畑を渡る風、遠くに連なる雄大な山々。

このまちで、農家さんのお手伝いをする農業ヘルパーを募集します。

期間は、今年の春から秋にかけて。緑が芽吹くころから収穫期まで、トマトを中心にさまざまな農作物の収穫や手入れを手伝います。

日本仕事百貨での募集は、6回目。

毎年、10〜20名の参加者がいて、そのほとんどが未経験。作業は、農家さんに教えてもらいながら、一つずつ覚えていくことができます。

全国から集まる、年齢も経歴もさまざまな仲間たち。思いがけない出会いと発見も待っているはず。

食や農がすぐそばにある、美瑛の風景に包まれる毎日。そんな暮らしに興味が向く人にとっては、よいチャンスだと思います。

 

羽田空港を飛び立っておよそ1時間半。

旭川空港に近づくと、窓から広がるのは、どこまでも続く北海道の大地。

美瑛町は、空港から車で15分ほどの場所にある。道路沿いには、黄金色の麦や、青々とした野菜の葉など、のどかな丘の風景がどこまでも続く。

「1万1600ヘクタールの農地で、トマト、アスパラ、ジャガイモ、麦、米、なんでも育つ。野菜はもちろん、畜産や酪農も盛んで、北海道をぎゅっとまとめたみたいなまちなんですよ(笑)」

道中教えてくれたのは、JAびえいの職員・菅さん。

「大分生まれで、農学部を出てから、北海道に憧れて美瑛に来ました。あれよあれよと、気がついたら13年が経ちました。スーパーも病院もあって、札幌や旭川も近い。自然がすぐそこにある、ちょうどいい田舎なんですよ」

「観光で訪れても素敵だけど、畑で汗を流す農家さんとお話すると、もっと深い美瑛が見えてくる。作業の裏にある工夫やこだわりに驚かされますし、お裾分けもいただけるんですよ。この前も、採れたてのアスパラをいただきました」

美瑛の農作物は全国的にも高く評価されていて、レストランやパン屋さん、食品メーカーなどさまざま引き合いがあるそう。

そんな美瑛の農業を支える、約400軒の農家さん。毎年、収穫期の人手不足が悩みの種。

そこで、JAびえいと、その関連会社である美瑛通運株式会社が手をとり、2013年から農作業ヘルパー事業をスタート。

最小限の荷物で農作業をすぐに始められる環境で、毎年全国から応募があるそう。

都会の生活をリセットしようとやってきた人、憧れの北海道で農業とアウトドアを楽しむ人、セカンドライフを求める人、元パティシエや編集者など、さまざまな背景の人が集まる。

「ヘルパーさんは、美瑛の農作業において命綱のような存在。それに、いろんな背景を持った人がやって来るので、農家さんにとっても出会いが新鮮みたいで。毎回、『この子、面白い!』って目を輝かせている方もいらっしゃいますよ」

今年は12人が参加。なかには農業ヘルパーを生業として、全国の農家を渡り歩く人もいる。毎年美瑛での農作業をリピートするのが、たのしみなんだそう。

「とくに印象的だったのは、デンマークからキャリーケース3つだけで来た22歳の女の子。『なんでも挑戦したい!』ってキラキラした目で即答して、農家さんも笑顔になっていました」

家具家電つきのアパートも用意済みで、暮らしのサポートも手厚い。

JAびえいや美瑛通運が定期的に話を聞きに来てくれ、作業中に体を痛めた場合は病院の相談もサポートしてくれる。

「仕事というと、どうしても10年後20年後のことを想像してしまいますよね。けれど参加してくださる方を見ていると、そんなに考え込まず、興味のある生き方働き方にポンポンっと挑戦したり、変えてみたりしてもいいんだなって感じるんです」

どんな人でも受け入れてくれる雰囲気は、聞いていて安心できる。

「ただ、一つだけお願いがあって。農家さんはヘルパーさんを頼りに作付けを計画するから、途中で辞められると困るんです」

「昨日も急に『今月末で辞めたい』って連絡があって、8、9月の収穫ピークを前にバタバタで。軽い気持ちで『とりあえずやってみよう』じゃなく、ちゃんと期間の最後までやり抜く覚悟を持ってきてほしい。それさえあれば、未経験でも大歓迎ですよ」

 

「ヘルパーさんのリアルな声は、農場で聞くのが一番」と菅さん。さっそく、トマト農家の坂田さんのハウスに向かうことに。

広い敷地に、ビニールハウスがずらっと並ぶ。ハウスに着くと、坂田さんが作業の手を止めて迎えてくれた。

奥から持ってきてくれたのは、カゴいっぱいの真っ赤なトマト。

「これ、プチぷよって品種。昨日防除したからよく拭いて、じゃんじゃん食べてください」

ひと口かじると、甘さと酸味が口いっぱいに広がる。おいしい。

美瑛生まれの坂田さんは、農業大学校を卒業後、十勝で2年経験を積み、帰郷して農家を継いだ。

「昔は畑と田んぼだけだったけど、今はハウスを増やしてトマトにも力を入れている。忙しくて手が回らないから、ヘルパーさんはとても頼りになるんですよ」

トマトの木はハウスの天井までびっしり伸びている。機械を入れることができないため、栽培から収穫まで、ほぼすべて手作業で行われているという。

坂田さんの農場では、5月からヘルパーさんと一緒に葉や余分な芽を切る管理作業と収穫をしている。

「余分な芽を摘まないと葉っぱだらけになっちゃうし、紐で固定して木をまっすぐ育てたり、収穫しやすい高さに調整したり。管理作業を並行して進めると、実の付きもよくなるし、収穫もしやすくなるんです」

「ひとりの働きで、収穫量もハウスの雰囲気も全然ちがう。ヘルパーさんの存在は、ほんとに大きいんです」

坂田さんは「わからないことがあれば、いつでも聞いて」と気軽に声をかけ、実際に経験しながら覚えてもらうスタイル。

「同じ農作物でも、行く先の農家さんのやり方や、その年の天候によって、担う作業も違う。最初は戸惑うかもしれないけど、1ヶ月もすればほとんどの作業ができるようになる」

「トマトが好きとか、農業に興味があるとか、やってみたい気持ちがあれば十分。せっかく美瑛に来たんだから、トマトの成長を最後まで見て、暮らしも楽しんでほしいな」

 

「ハウスの奥で作業している小黒さんに、話を聞いてみてください」と坂田さん。

作業を見せてもらおうとハウスのなかへ入ると、ムンっとした水蒸気が顔にまとわりつく。ミストサウナに入ったような感覚。

「暑いですよね…!北海道とはいえ、真夏のハウスは40℃近くまで気温が上がるんですよ」そう教えてくれたのが、ヘルパーの小黒さん。

トマトの木の間を進みながら、作業について教えてくれる。

「まず、緑の葉っぱをかき分けて、赤く熟した実を探します。緑の実はまだ置いといて、色づいたものだけ。葉に隠れている実も見逃さないよう、しゃがんだり上を見たり、振り返ったりしながら、いろんな角度でじっくり探します」

「見つけたら、ハサミで根元をそっと切るんです。トマトは繊細で、ちょっと触るとポロッと落ちちゃうし、雑に切ると切り口でほかの実を傷つけてしまう。ひとつずつ丁寧に、慎重に。赤い実を見つけるのは、宝探しみたいで楽しいんですよ」

小黒さんが美瑛に来たきっかけを聞いてみる。

「福岡の出身で、いまは大学を休学しています。ずっと都会で、消費するだけの生活に違和感があったんです。食べ物や服、いろんなものがどこから来て、どんな人が関わっているのか知らずに選ぶことに、モヤモヤしていました」

「いつか自分でつくる側に立って、ちゃんとものづくりに向き合いたいと思っていたところ、日本仕事百貨の『大地の上で働いてみませんか』って見出しに、ドン!と心を掴まれて。直感で、応募を決めました」

ヘルパーの仕事は、基本的に週6日。朝8時ごろから収穫作業をはじめて、お昼の休憩をはさみ、午後から管理作業に取りかかる。

午前と午後に1回ずつ休憩をいれ、夕方5時ごろには1日の仕事が終わる。

農業は未経験だった小黒さんも、2ヶ月でトマトの世話にすっかり夢中。

「ふだんは坂田さんに、わからないことがあったらすぐに聞いています。丁寧に教えていただいて、だんだんコツが掴めてきました」

同じ作業の繰り返しのようだけれど、植物は日々成長し、変わっていく。手をかけたぶん、作物への愛着や仕事の手応えも感じられると思う。

「暑さや細かい作業で大変だから、精神力は大事ですね」

「かがみ姿勢や中腰になりながら、手入れや収穫をおこなうので、最初の1ヶ月は腰が悲鳴を上げていました」

収穫したトマトを入れる1ケースはおよそ10kg。多いときは、20ケースほど運ぶんだそう。

「最近、朝起きると手がピリピリして動かないことがあって。いまは通院をして、適宜お休みをとりながら、がんばって続けています」

それでも、自然と向き合う日々にやりがいを感じている。

「朝早く起きて、夜9時に寝る、そんな太陽と一緒に動くリズムが気持ちいいんです。それに植物相手だと気疲れしないし、日々汗をかいて体が軽くなりました。自然のリズムに合わせるのが心身に合っていて、すごく元気なんですよね」

「アライグマが畑に来たり、天候に振りまわされたり。大学の講義や読書じゃわからない、毎日変わる自然を肌で感じています。思い通りにならないからこそ、手を動かしてみるしかない。その中で、うまくいくことも、いかないこともある。学びが多い日々ですね」

小黒さんの言葉には、畑での時間が生き方を変えた、そんな実感がこもっている。

「ヘルパー期間終了後のことは、いまはまだ漠然と考えていて。海外にも興味があるから、短期でどこかに行って生活してみるのもいいかなって思ったり。けれど今は、美瑛での目の前の日々に集中したい。これからのことは、焦らずゆっくり考えていきたいです」

「何か新しいことを始めたい人、コツコツ作業を楽しめる人にはおすすめ。やってみないとわからないことだらけだから、気負わず飛び込んでみたらいいと思います」

ハウスを出ると、あたり一面の大自然。涼しい風が、気持ちいい。

朝早く起きて、土を触って、野菜に向き合う。そして、季節の移ろいを肌で感じる。

人間らしい、まっすぐな生き方ができそうです。

(2025/07/10 取材 田辺宏太)

問い合わせ・応募する

おすすめの記事