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ここにしかないメソッド
新しい常識が
障がい者の働き方を変える

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

東京・葛飾区にあるビルの一室。

朝9時になると、電話の音が聞こえなくなるほど、大きな拍手が響きます。

これは、フォレストで毎日行われる朝礼の一場面。

フォレストは、障がい者のための就労移行支援施設。グループホームなどを運営している、社会福祉法人・原町成年寮の事業のひとつです。

一般的な職業訓練というと、パソコンなどの技能実習をカリキュラムとすることが多いものですが、フォレストが目指しているのは、職場に必要なコミュニケーション力などの社会性を身につけること。

良好な人間関係のなかで働くための出発点として、プログラムを通じて自分に自信を持てるように働きかけています。

今回はこのフォレストで、一緒にプログラムの運営に関わる人を募集します。


東京・葛飾区。

京成線「京成立石」の駅前には昔ながらの商店が残っている。住宅街や公園の間を通って、10分ほど行くと、「フォレスト」が入るあいおいニッセイビルに着く。

階段を2階へ上がっていくと、広いスペースの奥、机に向かい合い作業している利用者さんの姿が見えた。20代くらいの若い人が多い。

迎えてくれたのは所長の高橋さん。

「今、朝礼が終わって公文のワークをやっています」

勉強の時間ということですか?

「目的は問題を解くことではなくて、採点をしてもらうときのコミュニケーションなんです」

提出するときは「お願いします」と言いながら、両手で解答用紙を渡す。名前を呼ばれたら作業の手を止めて返事をし、間違ったところがあれば最優先で修正する、100点になるまで取り組む…。

たしかに、職場のコミュニケーションや、チームワークに通じるものがありますね。

「障がい者の離職理由で一番多いのは、人間関係や勤務態度の問題。たった一言『お願いします』が言えないことで、関係がこじれることもあるんです」

フォレストでは、職場で起こりやすいコミュニケーションをロールプレイングで実践してみたり、人から言葉で指示されたことを、動作でアウトプットする訓練として手話を習う講座があったり。

コミュニケーションに重きを置いたプログラムが組まれている。

「利用者に一番人気なのは、バリデーションサークルというプログラム。5〜6人のグループで輪になり、一人を囲んで座ります。それで、中心にいる人のいいところや「一緒に活動できて本当によかった」のような声かけをするんです」

うれしいけど、なんだかちょっと照れますね(笑)。

肯定的な声かけがあると意識も変わってくるのでしょうか。

「ここに来ている人たちは、今まで自分の失敗を周りから指摘され続けて、自分に自信がないまま育ってきている人が多い。自己肯定感が低いと、職場でちょっと注意されただけですごく落ち込んでしまうこともあって」

周りは親切のつもりで「こうやるといいよ」という言葉をかけても、「今のあなたは出来ていない」という別のメッセージを受け取ってしまう。

そのうち人に何か言われるのが嫌になって、また間違えてしまうという悪循環が生まれる。

「まずは『困ったことがあったら自分から手を挙げる』っていう習慣づけから、能動的に成功体験をしてもらうことを目標にしています」

だから作業中に利用者の手が止まっていても、スタッフから声をかけることはしない。

「私たちに必要なのは、やってあげたいという気持ちより、その人が自分でやろうと思えるような働きかけをすること。そういう意味では、福祉や教育分野の経験がない方のほうが向いているかもしれません」

「経験があると、つい習慣で手を貸してしまうんですけど、私たちはなるべく指示をしない環境をつくりたい。だから、最初はどう接していいかわからないっていう人のほうがいいんです。やり方はちゃんと入ってから教えますから、大丈夫です」

ほかの施設とはちょっと違うアプローチで、運営を続けてきたフォレスト。一般的な施設に比べると小規模ではあるけれど、利用者の就職定着率は87%と高水準。着実に成果を上げてきた。

今のスタイルにたどり着くまでには、試行錯誤があったという。

「最初は、どれだけ早く就職させるかっていうことばかり考えていたんですけど、就職した先で挫折して、また就労支援に戻ってくる人が多かった。やっぱり、就職を斡旋しているだけではダメだっていうことに気づいたんです」

そこで、就職先を探す支援ではなく、職場になじめるように時間をかけてコミュニケーションの練習を取り入れたプログラムを実施するようになった。

利用者の多くは、1年ほどかけてさまざまな企業の事務補助や清掃などの仕事に就く。

「人によっては、大きな声を出したり、うろうろ歩き回ったりすることもあります。そういう場合も、1年くらい訓練すれば自己コントロール力を身につけることができる。大切なのは他人からの指摘ではなく、『変わりたい』という自分の気持ちなんです」

高橋さんが話してくれたのは、自分の指を噛む癖があった利用者のこと。

親やスタッフが注意したときは直せるものの、習慣にならない。なんとか自分で「噛まないようにしよう」と思えるように関わり方を工夫したという。

荒れた指の写真を見せて、「ずっとやってるとこうなっちゃうよ」と説明したり、包帯を巻いて噛めない時間を設けたり。

「試行錯誤しながら、ご本人に一番ピンとくる方法を選んでいきました。2週間も噛まないでいるとだんだん指がきれいになってくるので、『がんばっていますね』っていう声かけをする。それを2〜3ヶ月続けていくと、声をかけなくても噛むことはまったくなくなりました」

「人が変わっていくのは、むちゃくちゃ楽しいですよ。最初は自分から何も言えなかった人が相談できるようになったり、引きこもっていた人が毎日通ってこれるようになったり。周りの人が関わり方を少し変えるだけで、自分で行動をコントロールできるようになる」

「いつも、できないことを人のせいにしていた人が、自分でできるようになりました!って生き生きして。今まで諦めていたことの可能性に気づいてもらえる。そういう楽しさを共有できる人と一緒に働きたいですね」


一緒に取り組みを支えてきたスタッフの方にも話を聞かせてもらった。

フォレストで働いて8年目になる福井さん。ご家庭の都合で7月には退職の予定。今回入る人は、福井さんの後任になる。

「フォレストは、福祉業界の常識やトレンドとは違うアプローチをしていると思うんです。“よかったことを言い合う”とか、最初は『え〜?』って思いました。“朝礼で肩もみ”とかも、ちょっとあやしい集団みたいだし(笑)」

受け入れにくかったですか?

「いや、『だまされたと思って食べてみる』じゃないんですけど、そうすることで新しいものを知れたっていう実感はあります。ここで身につけられる技術はたくさんあるし、勉強になりました。個人的には、今ここでやっていることが、これから新しい常識になるんじゃないかと思います」

フォレストでは、利用者が入所するとまず3ヶ月間はありのままの行動を観察して、職員全体で分析をする。

いきなり指導に入るのではなくそのままの行動を見ながら、どういう困りごとがあって、それにどう反応をするか様子を見る。

障がいの度合いだけでなく、一人ひとりの個性も把握することで、就職のときのサポートもしやすくなるという。

「就職が決まったら、スタッフが企業に行って接し方や指示の出し方についてのお願いをするんです。内容もその人によって違う、処方箋みたいな感じですかね」

就職後の定着支援も含めて、およそ4〜5年の間はアフターケアを続けていく。

「普段の生活がちゃんとしていないと、働く生活も安定しない。家庭や本人の生き方そのものに向き合っていくことになるので、責任が重いなと感じることはあります」

たしかに。向き合い方のコツのようなものってありますか。

「一般常識的な基準で関わっても成果が出ません。あくまでも専門知識を持った職員として、一つひとつのコミュニケーションにちゃんと狙いを持つのが大切かな」

「狙いを持った働きかけで、何かができるようになって、利用者さん自身も成果を実感してくれているのを見ると本当に元気をもらえます。利用者さんの頑張る姿にこっちが励まされていると感じることもありますね」


最後にもう一人、一緒に働くスタッフを紹介します。

今年の2月からフォレストで働きはじめた宮田さん。以前は同じ法人内の就労支援施設B型と呼ばれる施設で働いていた。

「異動してきて新鮮だったのは、ここの利用者さんの挨拶の仕方です。前の事業所では、友達みたいに『ねーねー』って声をかけられることが多かったんですが、ここでは『今よろしいですか』って言われて、びっくりしました」

宮田さんは法人で働きはじめるまで、あまり福祉には興味を持てなかったという。

障がい者というと、「電車で大声を出して走り回っている人」というような偏見もあったと振り返る。

「実際に接してみると、たしかに少し困りごとを抱えているけど、私たちとあんまり違いがないんだってわかってきました」

宮田さんは今、この新しい職場でレクチャーを受けながら、朝礼の司会や手話の講座を担当している。

「ファシリテーションをするとき、話し手が下を向いていると、利用者さんも集中が途切れてしまうので、前を向いて、一番後ろの席までしっかり声が届くように気をつけています。慣れるまでは少し緊張しましたが、最近は徐々に自分のペースでできるようになりました」

前職でも支援員として障がいのある人と接してきた宮田さんは、当初フォレストでのやり方に驚くことも多かったという。

「今までは、利用者さんがいきなり怒り出して席を立つようなことがあったら、『どうしたの』って声をかけていたんですが、それもやめてほしいって言われたんです」

気になって、思わず体が動いてしまいそうですね。

「はい。ただ、それだと『大きな声を出せば助けてもらえる』という意識が習慣化してしまうので、利用者さんにとっての学びにならなくて」

注意の必要があるときも、正解を指示するのではなく、自分で間違いに気づけるように促していく。

「利用者さん自身も、本当はわかっているんです。だから、自分から行動を修正できるように、きっかけをつくっていくというか」

異動して3ヶ月ほど。利用者のことを知ろうと、過去の記録を見ることもあるという。

「今すごく静かで落ち着いている人が、最初はいろんな事が気になって毎日イライラしていたって書いてあったりして。成長があるんだなって感じます。だから、今関わっている人たちがこれから先どう変わっていくのか、すごく楽しみなんです」

してあげるのではなく、見守る。成功はもちろん失敗も本人の糧として支える。

優しい人ほど、手を貸せないもどかしさを感じることもあるかもしれませんが、“自分でできた!”を体験することは、自信をつけるために欠かせないこと。

みんなと一緒に仕事をする仲間として送り出すために。前向きな一歩を見届ける仕事だと思います。

(2019/4/25 取材 高橋佑香子)
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