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木でつくる
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※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「木はカナヅチやノコギリを使えば、子どもが自分で加工できるものです。まずは触ってもらって、自分でものがつくれる、楽しいっていう経験をさせてあげたいんですよね」

そう話してくれたのは、木を使ったワークショップの企画や運営を仕事にしている伊藤さん。

伊藤さんが働く株式会社Tree to Greenは、木を使った家具製作や空間づくり、ワークショップなどを通じて「木育」を伝えている会社です。

今回募集するのはワークショップを担当する人と、木を使った空間づくりをする人。ものづくりの経験があればうれしいものの、アシスタントからはじめることもできるそう。

さらに建築士やインテリアデザイナーも合わせて募集中。

木に触れる機会をつくり、森や環境に関心を持つ人を増やしたい。

そんな木に対する想いに共感できる仲間を探しています。

  

日本仕事百貨でTree to Greenの取材をするのは、これで3回目。

7年前にスタートした会社は順調に仲間が増えて、この冬にオフィスを代々木上原に移したそう。

駅から3分ほど歩いたところにある小さなビルの2階に上がると、取締役の小瀬木さんが迎えてくれた。

Tree to Greenは、長野県木曽町の木工職人を父に持つ小瀬木さんと、日本の林業再生に関心のあった代表の青野さんが出会い生まれた会社。

「日本の森林再生をテーマに、生業づくりをしよう」と会社を立ち上げたものの、生活のためにアルバイトをしながら模索していた時期もあったそう。

最初につくったのは木曽の木を使った照明器具。それが木製品ブランド「木曽生活研究所」というプロジェクトにつながっていった。

木曽生活研究所では、檜を使った風呂椅子や檜風呂などを企画から製作、販売までを行っている。今では高級ホテルや有名なセレクトショップでも取り扱われる看板商品になった。

その後、国産の木を使った仕事が広がって、特注の家具制作や木を使った空間づくり、自分たちでカフェの運営に挑戦したこともある。

「地域活性」や「木育」をキーワードに、時代や状況に応じて、柔軟に仕事をつくってきた。

「テレアポして、木を使ってくれませんかって話しては断られていた時期もありました。そのなかで、木を使ったワークショップからはじめてみませんかっていう提案が、少しずつ受け入れてもらえるようになって」

こうしてはじまった木に触れるワークショップは今、会社の事業のひとつの柱になっている。

イベントに出展することもあれば、企業や幼稚園、保育園から依頼を受けて開催することも増えてきた。

  

1年に100回ほど開催するワークショップのほぼすべてを担当しているのが、伊藤さん。

ハキハキとした話し方で、楽しそうに仕事の話をしてくれる。

「工作が好きなのは父親の影響です。素人なんですけど、平日の夜、仕事から帰ってきたあとに、ハイエースの後部座席をとっぱらってベッドをつくっていて」

毎日コツコツ1時間。お父さんが楽しそうにつくる姿を見ている時間が好きだった。

「終わるころにおふくろがお茶を持ってきて。車のなかで一緒にお茶を飲む時間があって。あれが最初の、ものづくりに触れる体験だったんじゃないかな」

高校生になった伊藤青年は、映画に興味を持つように。好きなことを仕事にしようと、25歳くらいまで映写技師として働いていた。

「時代の流れでフィルムを使うことがだんだん減ってきて。次のことを考えないといけなくなったんです。手に職をつけたいと思って、職業訓練校で家具づくりを学びました」

そのまま家具屋に就職し、10年ほど職人として働いた。

仕事は楽しかったものの、不況のあおりを受けて続けることが難しくなってしまったそう。

次の仕事はオフィスの引っ越し業。夜や土日に働くことが多く、お子さんと会う時間が減ってしまったのが悩みの種だった。

「子どもが通っていたのがちょっと変わった保育園で、通園にかかる費用の一部をまかなうために、父母会で年間100万稼ぐっていう目標があったんです。バザーをやったり地域のイベントに出たりして」

伊藤さんの役割はゲームや工作など、子どもたちが楽しめるコーナーづくり。

そんな姿を見ていた別のお父さんから「知り合いが、木を扱ったことのある人を探しているらしいんだけど」という話が舞い込んだ。

家具職人の経験が活かせて、子ども相手のワークショップができる。Tree to Greenへ転職することに迷いはなかったそうだ。

  

入社したのは3年ほど前のこと。当時行なわれていた箸づくりや丸太を切るワークショップのほかに、これまでの経験を活かしてさまざまな体験づくりを行なってきた。

そのひとつが、「たまごカー」。パーツを組み立ててスタンプを押すことで、オリジナルの小さな車が出来上がる。

「ワークショップでつくるものって、家に持ち帰るとゴミになったりホコリをかぶったりするものが多いんですよね。なるべくそうならないように、おもちゃ箱に入れて遊べるようなものを考えています」

ワークショップの開催場所はまちづくりを目的としたイベントや保育園、幼稚園など。ときにはツリーハウスをつくったり、伐り倒した木の活用方法の相談が舞い込むこともあるそうだ。

なかでも楽しかった仕事のひとつとして紹介してくれたのが「どうぞのいす」。

「『どうぞのいす』っていう絵本があるんです。最初はある幼稚園さんから、その絵本を題材にした劇で使いたいから椅子をつくってくれないかっていう相談があって。僕はどうせなら、子どもたちと一緒につくりませんかって提案したんです」

とはいえ、見た目を似せるだけでは座ることはむずかしい。家具屋での経験を活かして、座っても壊れない構造の組み立て方や、子どもがつくりやすい方法を試行錯誤したそうだ。

「年長さんだったら背の部分はノコギリで切れるだろうとか、ビスじゃなくって釘なら打てるとか。実は最近、出版社と作者の了解も得て、正式に『どうぞのいす』としてつくれるようになったんです」

「せっかくだから楽しんでほしいんですよね。どうしたらいいか、いつも考えています。ワークショップ前日の寝る前にアイディアを思いついて、準備をはじめちゃうこともあって。つい、やりすぎちゃうんですよね」

伊藤さんは仕事のことをとても楽しそうに話してくれる。ワークショップのあいだはどんなことを考えているんですか。

「危険な道具を使うこともあるので、気はつかいますよ」

「それに僕も子どもの親なので、子どもにはこうしてほしいなっていう気持ちがあって。それが必ずしも保育園の教育方針と合うわけではないんですよね」

ある日のワークショップで、子どもが残った木の破片を勝手に持って行ったことがわかった。

その子は先生に言われて「ごめんなさい」と返しに来たそうだ。

「僕はついつい、いいよって言っちゃいがちなんですけど。後ろで先生がダメだっていう顔をしてるんです。そこではちゃんと、イベントのおじさんなりに怒りました。保育園ごとに対応を切り替える必要はありますね」

「木ってカナヅチやノコギリを使えば、子どもが自分で加工できるものです。まずは触ってもらって、自分でものがつくれる、楽しいっていう経験をさせてあげたいんですよね」

これからは、より子どもの発育に沿ったワークショップを企画してみたいと考えているそう。

「やっぱり保育士さんってすごいんですよ。これくらいの月齢になってくると指がこう動いてくるとか、ここまでできるようになるとか。子どもの発育の状況を知っているから、それに合わせて声をかけるんです」

「たとえばカナヅチで釘を打っていると、この子はコツをつかんだなっていう瞬間があるんです。道具を使ってバランスを取れるようになったというかね。そんな経験をたくさんさせてあげたいし、その瞬間に立ち会えるようなプロジェクトを企画していきたいです」

ワークショップを担当する人は、最初は伊藤さんと一緒に動きつつ、お互いの経験やアイディアを活かし合い、あたらしいことにも挑戦していきたい。

「子どもに木に触れる体験をさせてあげたい、木と最初にふれあうきっかけをつくってあげたい。大工さんや家具職人の経験のある方だとうれしいですね」

  

最後に紹介するのは、空間制作の仕事をしている安定(あんじょう)さん。

伊藤さんと同じく、安定さんの前職は家具職人。前の会社でTree to Greenから依頼を受けて家具をつくっていたのが縁で、ここで働くことになったそう。

「会社のコンセプトがおもしろいなと思っていて。特注家具をつくったり、空間の施工に立ち会ったり、修理の段取りをしたり。いろいろなことをしています」

なかでも多いのが、保育園の施工や公共空間などにキッズスペースをつくる仕事。

その地域の木材を使って子どもが遊べる場所をつくっている。

「地方で仕事をするときには、その地域の大工さんにお願いしています。はじめて一緒に仕事をする相手と調整して進めていくのは、正直気をつかいます。すべり台をつくりたいとか、相手も不慣れなことをお願いすることが多いんです」

「それでも現場ができていくのはおもしろいですよ。人間の知恵を集めてものをつくっていく感じがするんですよね」

すでにプランが決まっていて形にするところから関わることもあれば、どんな空間をつくるのか、企画からはじまる仕事もある。

先日長野県でつくったキッズスペースは、広さを活かして動きまわれるところ、ままごとができるところなど、子どもが楽しく過ごせるいくつもの工夫を重ねたそうだ。

「北アルプスの風景や近くに流れる千曲川、長野でとれるりんごをモチーフにデザインしたんです。そうしたら大人にも喜んでもらえて。こうやって頭を使って、自分で考えていくのは楽しいですね」

設計の都合や予算によっては、すべてを木でつくれるないこともある。

木を使うことをコンセプトにしているからこそ、どこまでこだわるのか、スタッフ同士で議論をすることもあるそうだ。

「たしかにTree to Greenは木の会社なので、なるべく木を使ったほうがいい。でも絶対、全部木じゃないといけないとは思いません。柔軟にできたほうが、結果として木に触れる人を増やすことにもつながりますよね」

取材を終えて挨拶をすると、最後に小瀬木さんがこんな話をしてくれた。

「スタッフには自然が好きだったり、環境問題に関心のある人が多いんです。好きだからこそいろんなことを考えるし、自分のことのように動いていく。そんな仲間に出会えるとうれしいです」

(2019/3/5 取材 中嶋希実)

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