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のどかな島での暮らし、土に触れる畑仕事、情緒ある温泉街の営み…。

都市部を離れる生き方に少しでも興味があるなら、まずは旅するような感覚で訪れてみるのはどうだろう。

今回紹介するのは、3年前からスタートした「ふるさとワーキングホリデー」という取り組みです。

ワーキングホリデーというと、海外に滞在して行うものというイメージがあるかもしれませんが、これはその国内版。

北は北海道から、南は沖縄まで。日本のさまざまな地域で働きながら、地域の人と触れ合い、その土地の気候や暮らしを体験できる制度です。

携わることができる仕事は、その地域の気候を生かした一次産業や食材加工の現場、旅館でのおもてなしや接客、観光業などかなり幅広い。

夏季の本格的な募集を前に、これから東京・大阪で合同説明会がはじまります。今回はそのプロローグとして、過去に体験したことのある人たちに話を聞いてきました。


まずは「ふるさとワーキングホリデー」の概要について聞いてみたい。

電話でインタビューに応じてくれたのは、平成29年度からこの取り組みに携わる、熊本県地域振興課の濱嶋さん。熊本県はこの取り組みがスタートした28年度から、継続して参加者の受け入れを続けている。

「ふるさとワーキングホリデーというのは総務省と各自治体が連携して行う取り組みで、地域の受け入れ先と参加者をつなぐ役割は、我々のような各自治体の担当者が担っています」

2週間〜1ヶ月ほどの体験を通じて、都市圏からの参加者はふるさとと呼べる地域での学びを、受け入れる地域にとっては関係人口を得るチャンスになる。

主に夏と冬の2期に開催されてきたこの取り組み。

比較的時間を自由に使える大学生の参加が多いものの、全国さまざまなケースのなかには、将来の起業を目指してご夫婦でワインづくりに取り組むといった例もあるという。

濱嶋さんの担当されたときは、どんな人が参加していたんですか。

「熊本県の場合は参加者の多くが学生さんでした。最初はみんな『自分の将来のためになる経験をしたい』と言っていたんですが、地域の方と一緒に活動していくうちに、『自分が地域のために何かできることはないですか』っていう意識に変わってきていましたね」

「地域のほうも、普段はいない若い人が来てくれたっていうことで、すごく歓迎してくれます。一緒にご飯を食べたり、お祭りに参加したり。そういった温かい交流を通じて、参加者の気持ちが和らいでいったんじゃないかと思います」

訪れる地域が違えば、もちろん出会う人も違う。こんな仕事をしてみたい、という希望を叶えるだけでなく、地域の人との交流から学びを得ることも、この取り組みの大切なポイントだと思う。

「終わったあとも継続してつながるのが熊本版の特徴。まずは、小さくてもいいので、自分なりの目標、例えば地域の人と出会いたい、仲良くなりたいという思いを持ってきてもらえるとうれしいですね」

取り組みがはじまって、今年で4年目。全国で延べ2,300人が参加している。

現地で働いた分の手当が支給されるほか、現地の交通費や宿泊費の一部助成もあるので、コストの負担も少ない。地域によっては空港や主要駅からの送迎もあるため、運転のできない人でも気軽に知らない土地へ飛び込むことができると思う。


実際に、ワーキングホリデーに参加した方にも話を聞く。

都内の大学に通う須佐まな花さんは昨年、熊本県菊池市で酪農などの仕事を体験した。

首都圏で育ち、大学では国際経営を学ぶ須佐さん。地域での仕事も暮らしも、それまで自分には縁のないものに感じていたという。

「普段自分では行かない場所だからこそ行ってみたい、っていう思いもありましたね」

菊池市では酪農をはじめ、じゃがいもや花の栽培に携わる仕事を経験。

酪農の仕事は朝4時半にはじまる。牛舎に入った瞬間、目に飛び込んでくる牛の存在感に圧倒されたという。

「並んでいる牛に、搾乳器で乳搾りをしていく。頭ではわかっていたんですけど、ああ、牛乳って本当に牛から出ているんだって。自分の手足を動かして酪農に携わったことで、命をいただいているんだなって実感が湧いてきました」

とれたばかりの牛乳でつくったヨーグルトを食べ、素直に「美味しい!」と感想を伝えたら、農家の方は泣いて喜んでくれたのだそう。

「それだけ、大切に育てている牛なんだと思います。酪農という仕事に対するやりがいとか誇りのようなものを感じることができました」

ふるさとワーキングホリデーでは、仕事が休みの日は旅行のように地域を観光できる。

須佐さんも、阿蘇の山に登ったり、地域の人とご飯を食べたりした思い出を話してくれた。

「ご飯を食べながらいろんな話をして、本当のおばあちゃんみたいでした。自分の夢とか、頑張っていることとか、自分の田舎だったら話したことが親に伝わっちゃうんですけど、ここではその心配もなくて」

はじめて行く場所だったのに、今では第二のふるさとのように感じるという。

「今まで文章とかで『人の温かさ』っていう言葉を見ても、なんだか薄っぺらい表現に感じてしまっていたんですけど、本当にそれ以外に言い表しようがないことってあるんだなって、今は思います」

熊本から帰ってきて、もうすぐ一年。

須佐さんにとって、都市部で働きたいという目標は変わらずあるけれど、学校やインターンなどの課題で事業立案をしていくときに、農業や食に関わるテーマをよりリアルに感じられるようになったという。

「やっぱりその土地の人と直接会って話したからこそ、地域で暮らす人の価値観とか、仕事に対する誇りが少しわかるようになったというのはあると思います」


一方、ふるさとワーキングホリデーが、自身の進路に直接影響を与えているという人もいる。

都内の大学に通う山登(やまと)有輝子さんは、これまですでに4回ワーキングホリデーに参加している。

昨年から大学の都市政策系のゼミに所属し、今年は「ふるさとワーキングホリデー」をテーマにした論文を書いているという。

「最初から地方創生のようなことに興味があったわけではなくて、『お金を稼ぎながら旅行できるの、おもしろそう!』くらいの感じだったんです」

兵庫の温泉宿や、北海道での観光まちづくりなど、さまざまな場所での仕事を経験してきた山登さん。なかでも転機になったのは、岐阜へ行ったときのこと。

「私は以前から、ワーホリでの経験をイラストに描いてインスタグラムに投稿していたんです。岐阜にワーホリで行ったとき、勤務先の方がそれを見て『これはもっと続けたほうがいいよ』って応援してくれて」

「地域の人への『ありがとう!』っていう気持ちとか、楽しくて心を揺さぶられることとか。自分にとっては、言葉で伝えられないことを表現する手段がイラストだったんですが、褒めてもらえたことで、自信がついて『絵日記を書いているんです』って、自分から言うようになりました」

イラストを見たという人から声がかかり、山登さんは岐阜の移住定住支援イベントにライターとして関わることになった。

そのイベントを通じてローカルメディアの編集長と出会い、別の媒体でライティングの仕事に挑戦することに。

「さらにそこから、日大芸術学部の写真学科の子と知り合いになって、一緒に岩村町っていう地域を紹介するインスタグラムをやったり、写真展を開いたりしてきました。あとは、農家さんのつくった野菜をモチーフにイラストTシャツをつくったり、町のイラストマップを描いたり」

すごい…。どんどんきっかけがつながっていますね。

「そう、本当に。誘われるたびに『行きます!』って言っていたらどんどん連鎖して。小さくても、何かやってみるということは本当に大切だなって思いました」

複数地域でのワーホリを経験した山登さん曰く、勤務先によっては1日の仕事が細かく指示されない場合もあるという。

だからこそ、指示を待つだけでなく自分から人や地域に関わろうとすることが大切なのかもしれない。

「この制度って、誰でもすぐに参加できるし、入り口は広いと思うんです。ただ、その先の経験は自分でつくるものだと思っていて」

誰でも気軽に参加できるけど、「楽しかった」という思い出以上の実りを得られるかどうかは、自分次第なのかもしれない。

「やっぱり田舎に行くと、不便なこともあるし、はじめての場所で慣れないことも多いんです。そういうときはツッコミというか、おもしろがる気持ちがすごく大切だと思います」

ツッコミですか。

「そう。地元の人にとっては当たり前のことも、『ちょっと、なんですかそれ』って見に行ったりして。雪が大変とか、家のドアが開けっ放しとか、お店の休みがバラバラとか、都市部とは違う感覚に不安を感じるんじゃなくて、おもしろがるほうが楽しいから」

自分の興味に素直に。それでいて、地元の人の営みに対する敬意も忘れない。

話を聞いていると、この取り組みをうまく活用していくヒントがたくさん感じられる。

ところで、山登さんにとっては転機となった場所、岐阜を選んだのはどうしてだったんですか。

「合同説明会に行ったとき、岐阜の担当者の人がすごく気さくでおもしろかったから。直感で決めたんです」

総務省の主催する合同説明会では、全体説明のあと、各自治体のブースで担当者と直接話をすることができる。

交通の便や宿泊先、費用のことなど、気になることは聞いてみるといいと思う。

説明会には、過去にふるさとワーキングホリデーを体験した学生スタッフも参加するので、OB・OGから生の声を聞くこともできる。

「私は本当に、おもしろそうっていう好奇心から入っているんです。地方創生とかまちづくりのことを具体的に考えるようになった今でも、地方は知らないことがいっぱいでワクワクするっていう気持ちは変わらないですね」

「こうやって長期間地方で仕事を体験できるのは、大学生の特権だと思うんです。だから、東京で『地方に興味があるけど、ちょっとこわい』とか、言っている場合じゃない(笑)。楽しいから早く行けばいいのにって、本当に思います」

山登さんは今年の夏も岐阜に行く。

去年仲良くなった地元の人に誘われて、お祭りに出店するのだという。

「わたしは今までワーホリに行くたびに、自分の将来を決定づける何かが起こっているんです。最近はそのチャンス探しに行っているようなところもあります」

「この夏、また何か変化が起こるかもしれない」と、話す山登さんはとても楽しそう。

最初は旅するように気軽に、「ちょっと行ってみる」くらいでもいい。地方への入り口は、思っているより身近にあるのかもしれません。

(2019/6/14 取材 高橋佑香子)

※東京・大阪で合同説明会を開催します。気になったら、まずは説明会に参加してみてください。

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