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自分がグッとくるもののよさを、言葉で説明するのは難しい。それだけに、感覚を共有できる人と出会ったときは「そうそう、それだよ!」と、思わず握手したくなる。
もしかすると、そういうまだ名前のついていない価値観みたいなところから、新しい文化や流行は生まれるのかもしれない。
2020年6月、福岡から文具や雑貨のデザインを発信してきたハイタイドが、渋谷に新しい拠点をつくります。今回募集するのは、その準備段階からお店づくりに関わる人。グッとくるものと暮らす楽しさ。同じ感覚を共有できる人との出会い。
ものを売るだけにとどまらない仕事だと思います。
ハイタイドという名前を聞くのは初めてでも、その製品はきっとどこかで目にしていると思う。私が普段充電器を入れて持ち歩いているキャリングケースも、実はハイタイドの製品だったと、取材をすることになって知った。
オフィスは頑張れば天神駅から歩いて行ける距離。繁華街からオフィスビルや病院が並ぶ通りを抜けて道を進んでいく。
少し静かな住宅街の一角に、テーブルとベンチが並ぶテラスが現れた。
テラスはハイタイドストアと緩やかにつながっていて、ドリンク片手に道端で犬と戯れている人や、観光客らしいカップル、地元のおじさんらしき人も休憩している。なんだかとてもリラックスした雰囲気。お店の中に入ると、カラフルな文具がずらり。
ポーチやノートにペン。ちょっと大きめのコンテナなどもある。この独特のカラーバリエーションがどことなく輸入品っぽく、私はずっと海外メーカーの製品だと思っていた。取材の下見のつもりが、いつのまにか買い物目線に。会計を済ませて3階の事務所へ。
代表の竹野さんが迎えてくれた。
25年前に文具メーカーとして創業したハイタイド。創業者である前社長が引退するにあたり、会社を引き継いだのは4年前のこと。「ハイタイドは創業当初から手帳をつくっていたんですけど、その製作を請け負っていたのが私の父親の会社だったんです。その縁で声をかけてもらいました」
竹野さんの前職は文具やデザインとは交わらない業種。前社長も含めハイタイドのメンバーとの面識も十分にないまま、代表職を担うことになった。
着任してから、最初に取り掛かったのは社員一人ひとりとの面談。
「創業者はこだわりのある人だったので、その好みというかカルチャーのようなものがみんなのベースに染み付いていて。自分たちが扱うものに対する誇りは感じましたね」
「それとは別に、スタッフそれぞれに『こうしたらいいんじゃないか』っていう潜在的な思いがあることもわかってきて。アウトプットの仕方を工夫したら、もっとおもしろくなるっていう手応えも感じたんです」
そこで、自分たちの思いを直接伝える場として、本社一階に直営店をつくることにした。
倉庫として使っていたスペースを改装してオープン。外とつながるカウンターでは、ドリンクやホットサンドなども販売している。
お店の一部はギャラリーのようになっていて、アーティストの作品を展示したり、ワークショップを開いたりすることもあるのだそう。「ものを売るだけじゃなくて、人が集まったりつながったりして、何かが生まれるような場にしたかったんですよ。そういう仕掛けは、新しくできる渋谷のお店でもつくっていきたいですね」
「そこでもギャラリーやイベントを行うためのスペースをつくろうと考えています。商品以外でも、僕たちの感性に合うものを並べたり、一緒に面白がれる人とつないだり。そういう面でもハイタイドらしいアイデアを形にできたらいいなと思うんです」
商品や空間を見ていると、なんとなくわかる気もするけど、もう少し詳しくハイタイドらしいお店のあり方について聞いてみたい。
ブランドやお店のルーツのことも教えてもらえますか。
「以前うちのお店は、糸島市にあったんです」
「創業者は海が好きで、糸島の海辺にある8坪くらいの小屋でお店をやっていました。辺鄙な場所だったんですけど、海を見ながらものを売る、そこに人が来る。なんか、創業者の思いがうまく表現されているようなお店でしたね」創業4年目から働いているという梶原さん。「そういえば、ブランド名の『HIGHTIDE』も海にまつわる言葉ですね」というと、「昔の話ですよ」と笑っていた。
現在はリテール部店舗事業部のマネージャーとして、直営店の管理運営を担っている。新しく入る人にとっては、直属の上司。東京の店舗がオープンするまで、まずは福岡のオフィスで一緒に準備や計画を進めていく。
「今回渋谷につくるお店は今までのモールの価値観を変えてくれそうな場所になる。そんな予感がして、私たち自身、何が出来るか考えながらワクワクしています」
時代ごとにいろんなカルチャーやスタイルを発信してきた渋谷。
個性あるショップが集まると、買いものという機能を超えた何かが生まれそうですね。
「どんな雰囲気になるのか、僕らもまだわからない。そのなかでハイタイドらしさをどう打ち出すか。もちろん、大きな事業ではあるので売り上げを考えていく責任もあるんですが、僕らが持ってる感覚に共感して、それを自分でも楽しみながら発信できるイメージを持った人だといいですね」
「感覚を言葉にするのは難しいんですよね。ものすごい変なカテゴリを持ってきたとしても、仕上げ方が一緒ならハイタイドらしくなるっていうか」
変なカテゴリ、というと。
「最近開発のほうで、モナカを…。TABI-MONAKAっていう商品をつくったんですよ。コンパクトで持ちやすくて、和菓子なんだけど携帯食みたいな」
思っていたモナカのイメージと違った。文具メーカーがモナカというとすごく違和感があるけど、ハイタイドのほかの製品と並べれば、たしかに不思議と馴染みそうな気がする。
「マーケットインの視点も大切なんだけど、『あ、これ持ってきたんだ?』っていう発想も必要だと思うんです。売りに走っていない面も持ち合わせているというか。次はなにをやるんだろうって気になるようなお店が、僕も個人的に好きで」
ブランドの世界観と共鳴しながら提案できる面白いこと。
今回入る人は、VMDやイベントの企画を通して、それを表現していくことになる。
ハイタイドらしい感覚を踏襲することだけでなく、新しい人のカラーが加わることにも期待していると梶原さんは言う。
新しい仲間が加わるハイタイドという会社。長く勤めてきた梶原さんから見て、どんな組織だと思いますか。
「僕が最初にいいなと思ったのは、創業者が『好きなことでご飯を食べていく』っていう思いを体現していたことかな。そのためには常に正直にとか、諦めるなとか。そういう精神はすごく叩き込まれましたね」
商品だけみているとスタイリッシュなイメージが強かったんですが、真面目でちょっと熱血な感じだったんですね。
「チャラチャラしたやつがつくってると思いますよね。それが、わりと硬派なんですよ(笑)」
「まあ最初のころは特に、誰も正解がわからないなかでものをつくっていたし、人を動かしてかたちにしていくためには、とことん真剣に考えて、誠意を持って伝えるみたいなところが大切だったのかなと思います」
手帳づくりからスタートした創業当時は、オリジナル商品は全体の2割ほど。卸を中心に売り上げを伸ばし、今では扱う製品の8割以上が自社製のものになっている。
新しくできる渋谷のお店づくりを考えていくチームには、そんな製品デザインやVMDを手がけてきたディレクターの御厨(みくりや)さんもいる。
「梶原も僕も実務としての店舗経験がないので、これから一緒に渋谷の店舗づくりに関わるメンバーは、そういうノウハウを持っている方が来てくれるとうれしいですね」バイイングやMDの経験があれば、即戦力になる。
店舗責任者としての経歴が必ずしもなくても、販売などの経験があればその視点を役立てることができると思う。
「たとえばこれから入る人がインテリアやプロダクトに詳しい人だったら、そういうジャンルからセレクトして、ハイタイドの製品と並べても面白いお店ができるんじゃないかな」
御厨さんは学生時代のインターンでハイタイドに出会い、デザインの仕事を始めて今年で16年目。
ものづくりの面から、このブランドの特徴を挙げるとしたらどんなことがあると思いますか。
「あんまりマーケティングをしないんですよ。自問自答というか。自分たちが生活のなかで気づいたこと、これがあったらいいよねっていう気づきから商品が生まれている気がします」
「時代とともに働き方も変わって、手帳のような紙モノだけじゃなくてキャリングケースとかインテリアやアウトドア関連の製品とか。形がアップデートされた面もありますけど、やっぱり生活に根付くもの。定番になるものをつくりたいなと思います」
あらためてお店に並ぶ製品を見てみると、今の生活にフィットしているのに時代を感じさせない、不思議な存在感があるなあと思う。ずっと私が海外の製品だと思っていたのも、普段目にする市場の影響をあまり受けていないからだったのかな。
ハイタイドらしい独自の価値観。その魅力を感じるほど、仲間に加わる人にとっては、自分がそのなかに新しく入っていけるか不安に感じるかもしれない。
現在入社4年目で、このお店の立ち上げも経験してきた佐々木さんは、きっと近い視点で話せる仲間になると思う。
「社歴が長い方にとっては当たり前になっていることが結構あるので、わからないことは自分で抱えず積極的に聞いていいと思いますよ。私も、わからないままになんとなくでやっていたら、細かい運営面でつまずいてしまった時期もあって」「新店立ち上げのときは特にマニュアルがないし、仕入れの手続きとか値札を貼る作業とか、細かい確認が必要なこともあると思うので」
ショップには自社のオリジナル製品のほかに、セレクトされた文具や雑貨も並ぶ。メーカーからの仕入れも、店舗の業務の一部になる。
仕入れで扱うのは、日本のメーカーでも一般の小売店にはあまり卸していないような、クラシックモデルのペンなど。セレクトにもハイタイドらしい美意識や価値観が反映されていると思う。
「一緒に働いている人たちは、歴史やストーリーがあるようなお店に詳しくて、おすすめのお店を教えてもらったりしています」デザインやスタイルに共感しながら、ブランドをつくり届けている人たち。
お話を伺った4人のみなさんは、それぞれに「感覚を言葉にするのは難しいですね」と何度も悩みながら話をしてくれました。
言葉にできない理由はもしかすると、ハイタイドというブランドがまだ変化を続けている過程にあるからなのかもしれません。
渋谷にできる新しいお店では、どんな出会いが生まれるだろう。街へ出かける楽しみがまたひとつ増えそうです。
(2019/6/28 取材 高橋佑香子)


