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たまには自分の好きなタイミングで1ヶ月くらい休みを取って、家族でゆっくり過ごしたい。
都心ではなく自然豊かな場所で、大切な人のために楽しくのびのびと自由に働きたい。
忙しなく働きながら、ふとそんなふうに感じることはないでしょうか。
今回紹介する仕事では、しっかりと目の前の仕事に打ち込む時間と、自分の自由な時間をうまく両立していけるかもしれません。
訪れたのは都心からも近い栃木県は日光市。
株式会社ユミィはペンションや旅館などの運営をしている会社です。それぞれのペンションは「いつか独立して自分の宿をつくりたい」と考えている人たちが運営を任されています。
経験は問いません。ご夫婦やパートナーと一緒でも、一人でペンションを始めたいという人も歓迎です。
JR日光駅で電車を降りると、平日にもかかわらず、街にはたくさんの観光客の姿が。
新緑が気持ちのいい季節。日差しが強くて、今日は夏みたいな気候だ。
バスに乗り換えて10分ほど。別荘らしき建物が並んでいる地区で降りる。
看板に従って木でつくられた階段をのぼっていくと、小高い丘の上に「ペンションユミィ」が現れた。
「独立して悠々自適にやっていこうと考えたとき、ペンションという選択肢は、おいしい仕事だと思いますよ。なかなかつぶれる業態じゃないですし」
そう話すのは、株式会社ユミィ代表の山口さん。
ユミィの創業は1995年。
山口さんはそれまで、日立製作所でエンジニアとして働いていた。当初はそのまま定年を迎えるまで働くつもりだったけれど、だんだんと「先が見えてしまった」そう。
「配属された部署や上司との相性によって、どこまで出世するかが決まっているように見えてしまって。人におべっかを使ってまで続けたくはないなと思って」
「学生のころ、バイクに乗って旅行に行くのが好きだったんです。ふらっとユースホステルに飛び込んで。そこで出会うオーナーって、のんきなおやじさんっていう感じの人が多くて。自分も、自然の中でマイペースに旅館をやっていけたらいいなと思ったけど、お金がないから諦めていました」
ところが、会社員として働きはじめて5年が経った29歳のとき、ふとある物件の情報が目に入ってきた。
1ヶ月の賃料が40万円のペンション。これなら、準備費用を考えても300万円あれば始められる。それがこの「ペンションユミィ」の始まりだった。
「親父から無理矢理300万円貸してもらって。そのまま会社にいたら昇進もできたかもしれないけれど、自然豊かなところで悠々自適に、自分の考えでやってみたいという思いが強くなったんです」
「試しに近くのペンションを泊まり歩いてみて、これなら俺もできる!と思ってこの道に踏み込みました」
経営は、1年目から順調だった。その実績で銀行から融資を受け、開業から2年で日光に新築のペンションをつくった。
その後は1年に1軒のペースで、伊豆や那須など観光地の中古物件を探し出しては、ペンションやプチホテルとして運営をはじめていった。今では旅館も含め、全15施設を運営している。
途中、子育てと宿の経営を両立するなど大変なことはあったものの、自分の思い描く宿をプロデュースしたり、マネジメントしたりしていくことは楽しかったと山口さんは振り返る。
これまで30組以上は独立しているのだとか。
「調理や接客の経験はなく、ゼロからはじめた人も多いですよ。慣れてくるとみんな自分ではじめるんですよね」
どうしてそんなに独立していけるのでしょう。
「その辺のペンションを見ていてもわかりますが、週末や年末年始、ゴールデンウイーク、夏休み、繁忙期さえがんばれば食っていけるんですよ。2月はお客さまもこないから、1ヶ月まるまるハワイで過ごすなんて人もいます」
そんな生活ができる人もいるんですね。
「うちにいる間はそういうわけにいかないですよ。個人ではなくて会社としてやっているので」
「通常ペンションは家族経営ですから、会社としてやっているところってほとんどないと思います。大変だけど、うちにいるのはそんなに長い期間じゃないですから。銀行から融資を得て自分で物件を買ってはじめるために、運営ノウハウを学びながらかつ銀行融資を得るための実績を積むにはいいと思います」
最初から自分で宿をはじめようと思ったら、物件を借りて、改修をして、備品を揃えて。数百万円のお金が必要になってくる。
けれどここでなら、資金がなくても設備が揃ったところからはじめることができる。ユミィでは経験を積めば独り立ちできるよう、研修やサポート制度の整備に力を入れているという。
たとえば、宿を始めるときに一番苦労するのが、集客と予約の受付。最初は日々の運営を少ない人数でまわすだけでも手一杯で、そこまで手が回らない。
ユミィでは、集客と予約受付を本部が担当。まずは現場の仕事を覚えることで、ペンション支配人としてのスタートを無理なく切ることができる。
「繁忙期の忙しさをこなしながら、徐々にできることを増やしていける。それだけでも、だいぶ気持ちに余裕ができると思いますよ」
経験も必要ないから、まずやってみるにはとてもいい機会だと思う。
今まさに、ユミィで修行中なのが、野口さんご夫婦。
ペンションユミィを二人で運営して、1年ほどになる。以前は、夫婦一緒に海外で働いていたという。
「僕はペルーの日本大使館で公邸料理人をしていました。去年の1月に任期が終わって日本に帰ってきたときに、これからどうしようかなと。自分でレストランは開けるけれど、それよりも宿泊施設付きのオーベルジュみたいなものができればいいなと思って」
なぜ、オーベルジュがいいなと?
「旅行にもたくさん行ったんですが、海外だとこういう家族経営の小さな宿がたくさんあって。泊まる間にいろんな話をして、すごく仲良くなれる。そういう関係性を築けるのが楽しかったし、自分たちでもやってみたいなと思って」
入社するとまずは2週間、指導員がつく実務研修期間がある。ノウハウがなくても、その間に料理なども教えてもらえるそう。効率よくベッドメイクするためのコツ、片付けの順番なども細やかに学ぶことができる。
実際に働いてみてどうですか?
「入ってすぐにゴールデンウィークを経験して。乗り切れたと思ったけど、夏休みは想像以上で…正直本当にしんどかったです。とにかく暑くて、ベッドメイキングしているときに汗を垂らさないようにするのが大変でした」
繁忙期は満室が続く。宿泊していたお客さんが10時にチェックアウトしてから、15時に次のお客さんがやってくるまでは5時間しかない。
その間に2人で分担して9部屋すべてを掃除し、18時からの夕食の仕込みへ。最大で約30人分。
20時くらいまでコース料理を楽しんでもらいつつ、並行してお皿を洗ったり朝食の準備にもとりかかる。食材の発注や宿泊予約をまとめ、10時半には消灯。ようやく自分たちの時間だ。
「なんだか、自然と痩せたよね。すぐ戻ったけど」と笑い合うご夫婦。
これは1番の繁忙期の流れで、繁忙期にはアルバイトを1名入れた3名体制で運営するそう。それ以外の時期、特に平日はお客さんの数も多くないので、時間にゆとりをもって働けるそうだ。
お二人は、ホテルとも旅館とも違う、ペンションならではの近しいコミュニケーションがとても楽しいと話す。
「この前は、ここを出て戦場ヶ原に行くっていうご家族がいて。雨だから気をつけてくださいねって話して見送ったんです。そしたら後日、写真を送ってくれて。すごくうれしかったです」
奥さんのなみさんは、先日サプライズでお客さんの誕生日をお祝いしたという。
「ご家族で到着されたとき、入口の階段をお子さんが一番に駆け上がってきて。ご両親が階段を上がってこられるまで少し時間があったので、一緒に待っていたんです。そしたら、ちょうどその日がお父さんのお誕生日だと教えてくれました」
「もともと、海外にいたときにお菓子をつくっていたので、クッキープレートを常備していて。メッセージを書いて、デザートプレートをつくってお出ししました。みんなで歌を歌ったら、まわりのお客さんも一緒に歌ってお祝いしてくれて」
お父さんはびっくりしながらも、とても喜んでくれたそう。
当初は2年で独立することを目標にしていた野口夫妻。1年を通して経験を積み、折り返し地点に差しかかったところ。
「まだまだ、これからだと思いますね。この1年は現場に慣れるっていうことだけで終わっちゃったので、2年目はもうちょっと工夫していけたらと思います」
「たとえばチェックインのときのご案内も、満室だと9回やるんですけど。つい、いろいろ喋ってものすごく疲れちゃっていたので。お客さんにもわかりやすくこちらも時間短縮できるように話そうと考えています」
1年経験すると、準備の初動が変わってくるのだそう。2年、3年と積み重ねるうちに動きはどんどん加速して、綿密に、効率の良いものになっていく。
「効率を良くすれば、余った時間でいつもできないところを掃除したり、お客さんと交流できたりしますから。自分たちも続けていきやすく、お客さんにももっと喜んでもらえる宿にしたいですね」
今回の募集は、将来独立したい気持ちがあればどんな人でも応募が可能。
でも、ある程度の覚悟は必要ですね」と隣で聞いていた山口さんが話を続ける。
「野口さんのように、以前の仕事より所得が下がるかもしれないし、職場となる施設の充実度も劣ることがある」
「過去には、奥さんが嫌になってしまうパターンもありました。旦那さんと24時間過ごすし、一緒に仕事をすることになる。仲良く同じ方向を向いていければいいけど、なかには喧嘩が絶えなくなってしまう人もいますよ」
家族と一緒に過ごす時間をたくさんつくりたい、自然豊かな場所で生活したい。自分の城をもって好きなように生きたい、人に喜ばれる仕事を生業にしたい。ペンション経営を目指す理由は人それぞれ。
そのために何が必要なのか、目的を見失わず全てを吸収するつもりで飛び込んでいけると、きっと独立のタイミングは早まっていくと思う。
「独立してからも手厚いサポート制度を拡充していくつもりです」と山口さん。
伊豆地区では不動産紹介料を半額にする取り組みもはじまっている。独立後も良い関係を築いていきたいそうです。
資金やノウハウがなくてもかまいません。家族との時間や自分のキャリアを見つめ直すとき、ペンション経営は新しい選択肢になるように思います。
気になった人は話を聞きに行ってみてください。
(2019/5/24 取材 並木仁美)