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結婚指輪って、特別な買いものだと思います。何度も買い換えるわけではないし、毎日身につける、大切なもの。
今回募集するのは、手づくりのマリッジリングのブランド“uchimari(ウチマリ)”の店舗で働くスタッフ。
東京・神楽坂に来春オープンする新店舗で、訪れるカップルの指輪づくりをサポートする仕事です。
素材やデザイン選びのアドバイスはもちろん、作業中の技術的なアシストも行い、指輪づくりの一連の流れを支える役割です。
あわせて募集するのは、指輪を自宅で手づくりできる新しいサービス“ウチマリ小箱”の運用スタッフ。お客さんからの問い合わせ対応や制作キットの発送など、サービス全般を担当します。
どちらも、接客やものづくりの経験は問いません。
指輪そのものだけでなく、つくる体験も含めて大切な思い出にしてほしい。結婚するふたりの想いに寄り添いながら働く人たちに出会いました。
兵庫県・芦屋市。阪神打出駅を出ると、目の前に住宅街が広がる。
公園や神社もある静かな街。駅から歩いて2分ほどで、uchimari芦屋店に到着した。
お店のガラス戸の奥には、木製の家具が置かれた温かみのある空間。
「遠いところ、ありがとうございます」と、代表の矢野さんが出迎えてくれた。
矢野さんが、指輪づくりの師匠である南口さんと会社を立ち上げたのは5年前のこと。
現在は、オーダーメイドリングのmina.jewelryやベビーリングブランドのnenenowa、そしてuchimariの3ブランドを展開している。
「『お家のような空間でマリッジリングをつくる』から、ウチマリ。家のようにリラックスして指輪を手づくりしてもらえたらいいかなって。自分たちでつくったものって思い入れや愛着も湧くし、それをずっと身につけるっていいなあと思うんです」
uchimariでは、お客さまにロウで指輪の原型をつくってもらう。その原型をもとに職人が鋳造し、研磨などの仕上げをすると、原型の風合いそのままの指輪ができあがる。
原型づくりの作業にかかるのは、一組4時間ほど。ふたりだけでリラックスしてもらおうと、お店は一組ずつ貸し切って営業している。
「芦屋、大阪、福岡にお店があって、神楽坂で4店舗目。僕らのお店はどこも繁華街からちょっと外れた場所にあるんです」
「ここもちょっと来にくいでしょう? でも結婚指輪って、ふらっと用事の合間に買うようなものでもないから。わざわざ指輪をつくりに行くっていう体験そのものを楽しんでもらえたら嬉しいですね」
遠方から訪れるお客さまもいるものの、今は店舗が西日本に集中しているので、東北や北海道のお客さまは少ない。
東京にお店を出すことで、指輪づくりをより多くの人に体験してもらいたいと考えている。
「僕らの会社がやりたいのは、結婚指輪の選択肢を増やすことなんです」
選択肢を増やす?
「既製品とオーダーメイド、それに手づくり。それぞれに良さがあるから、どの指輪も僕らは否定しません。ただ、手づくりの結婚指輪を選ぶ人って、今は全体の1割もいないんちゃうかなって」
「知らなかったから選べなかった、って状況はなくしたくて。ぽんぽん取り換えるものでもないので、いろんな選択肢からふたりで満足いくものを選ぶのがあるべき姿。手づくりの良さを広めていくのも、僕たちの役割かなあと思っています」
手づくりの結婚指輪をもっと身近に感じてもらいたい。
そんな考えから新しくはじめるサービスが、“ウチマリ小箱”。
指輪の原型づくりのキットを受け取れば、自宅で指輪づくりの作業ができる。
「来店が難しい人たちにも手づくりの楽しさを知ってほしい。お店でつくるよりシンプルなデザインになるとしても、なんとか届けられないかと考えてこのキットをつくりました」
お客さまからの依頼を受けて、キットを発送。その後、送られてきた原型をもとに、職人に指輪を鋳造・研磨してもらい、完成品を発送する。ウチマリ小箱を担当するスタッフは、この一連の流れを任されるという。
最初は担当者一人ではじめてみて、依頼が増えてきたら徐々にスタッフも増員していく予定だそう。
「ウチマリ小箱のスタッフは、神楽坂店近くの事務所で働くことになります。店舗スタッフも、接客以外の事務作業はそこで。今回神楽坂店に加わる人たちには、お客さまが少ないところからだんだん増やしていく、お店の立ち上げの過程も楽しんでもらえたらいいなと思います」
矢野さんは、働く人にはどんなことを大切にしてほしいですか?
「結婚指輪って代わりが利くものではないので、一組一組のすごく大事なポイントに立ち会う仕事です。『手づくりを選んでよかった』『つくってみて楽しかった』と思ってもらうことを一番に考えてほしいかな」
「大切な指輪をちゃんとつくれるのか、お客さまは緊張や不安もあると思うんです。それをプロとしてさりげなくサポートしていく。仕事だからやるのではなくて、こうしたらもっと喜んでくれるんちゃうかなって、自然と思える人がいいなと思います」
技術や知識は入社してから身につけられるから心配しなくていい、と矢野さん。
今働いている人も未経験の人がほとんどで、研修期間中に仕事を覚えていったそう。
芦屋店のスタッフとして働く平木さんも、もともとはアパレルのデザイナー。uchimariで働きはじめておよそ1年半になる。
「前職のころから、いろいろな人の想いが集まって形になるものづくりの奥深さを感じていて。その想いを知れば知るほど、実際に完成したものが届く人の表情を見たいと思ってきて、接客のお仕事も素敵だなと感じるようになりました」
「それと、消費されることなく長く使っていただけるものに携われたらいいなと思っていて。この仕事は自分の想いとすごくリンクしているので、日々充実しています」
uchimariは、どの店舗も3人ほどのスタッフで運営している。
カップルの相談に乗ってデザインや素材を選んだり、制作のアドバイスをしたり。お客さまにとっては指輪づくりの先生だから、安心して任せられる雰囲気が大切になってくる。
「ロウはここまで削ってくださいねってガイドをしたり、削りすぎてしまったときはこちらで素早く修正を加えたり。スムーズにフォローする必要があるので、最初は少し苦労しました」
技術のほかにも、指輪づくりにまつわる専門知識の勉強も必要。
複数の素材を組み合わせるときの相性や、お客さまが希望する装飾にuchimariが対応できるかどうかなど、最初のころはすぐに答えられないこともあったそう。
「ほかのスタッフにその都度確認できるんですけど、お客さまをお待たせしてしまうのは申し訳ないので。しっかりインプットして接客に臨むよう、今でも常に心がけています」
店舗スタッフは、お客さまが原型をつくっている最中も、すぐそばで作業を見守る。一緒に過ごす時間が長いから、さまざまな話をするそう。
「付き合っていた期間が長いカップルで、『結婚式も挙げないから、結婚する実感があまりない』という方々がいらっしゃいました。でも指輪をつくっている間すごく楽しそうで、終わった後に『本当に結婚するんだって実感が湧いて、久しぶりにワクワクしました』と伝えてくださって」
uchimariでそんな時間を過ごせてもらえたのが嬉しかったと、平木さん。
「リングを受け取りにいらっしゃったときも、新郎さまがつくった指輪を、新婦さまがすごく嬉しそうに眺めていたんです。指輪をつくってからその話ばっかりしているんですよって言ってくれて。楽しんでいただけたんだなって、本当にありがたくて…。なんだか泣きそうになりますね(笑)」
結婚指輪を自分たちでつくるという、特別な時間。
できあがる指輪だけでなく、その過程も楽しんでもらうことがこの仕事の醍醐味なんだろうなと思う。
続いて話を聞くのは、芦屋店がオープンしたときから働いている、店長の北川さん。
大切な瞬間に立ち会うからこその責任について教えてくれた。
「一生に一度きりのものだから、より良い空間、時間、ものを提供したいと思っています。良い思い出になるように、一組一組いつも細かい部分まで気にかけています」
「ちょうどいい距離感で接することが大切で。たくさん話す方もいれば、黙々と作業を楽しむ方もいる。それぞれに合わせて、心地よい空気感がつくれるようによく観察しています」
相手に合わせながらも、伝えるべきことはきちんと伝えていく。
それも、大切な指輪づくりだからこそ。
「たとえば難しい装飾を希望されている場合は、そのまま受け入れるのではなく、デザインの変更も提案します。受け入れて進めてしまうと、思い描いたようなリングが仕上がらなくて、かえって悲しい思いをされてしまうかもしれないので」
「盛りだくさんな装飾を考えている方々に、少しシンプルなものを勧めることもあります。理想を叶えながらも、より長く使えるちょうどいいものをつくってほしい。何十年も手元にあるものだから、将来的に後悔してほしくないんです」
uchimariにはエンゲージリングづくりのコースもあり、プロポーズ前から長く関わることもあるそう。
「エンゲージ、マリッジと手づくりして、長いお付き合いになったお客さまがいて。この前、用事があって久しぶりにお電話したときに、『元気ですか?』って、こちらを気遣ってくださって。その一言に親しみを感じて、なんだかすごく嬉しかったんですよね」
同時に、最近子どもが生まれたことも教えてくれた。
そんな変化を見守っていくことができるのも、この仕事ならではのこと。
「一組一組にドラマがあるんです。恋人のふたりが夫婦になって家族になるっていう、人生のなかでも重要な時間に深く関わらせてもらう。すごく幸せな仕事だと思います」
uchimariで働く皆さんは、柔らかく温かな雰囲気が印象的。
話を聞きながら、きっとお客さまもこんなふうに感じているんだろうなと思いました。
人生のなかの大切な時間に立ち会う仕事です。
誰かの喜びを自分の喜びとして感じられる人なら、仕事のなかに幸せを見つけながら働くことができると思いました。
(2019/7/19取材 10/21更新 増田早紀)